【仮面】さん日記 作:復帰アークス
相変らずのギャグです。
□月■日
「センパーイ!」
声が聞こえる。聞き覚えの無い声だが、懐かしい呼ばれ方だ。
私をこの呼称で呼ぶのは……。
「わたしなんかじゃ力不足と思いますが……”先輩”に誘ってもらえるのなら……、わたし頑張ります!」
私がアークスだった頃、ショップエリアにいた研修生の一人だ。名前はロッティだったか……。研修生の制服に身を包み、仔犬の様な眼差しで私にクライアントオーダーを依頼してきたものだ。
まだ実戦経験がない研修生の筈なのに、依頼内容が難易度ベリーハードのブーストエネミー撃破なのは深く考えてはいけない気がする。
まあそれよりも……、彼女の最大の特徴は……。
多分、十四歳程度だというのに、素晴らしく発育をしているスタイルだろう!
その胸囲たるや、双子の情報屋の妹の方は軽く超えている! しつこいようだが、ロッティはまだ十四歳。これからまだまだ
マトイを救うための時間遡行の旅が無ければ、あの娘の成長をこの目で確かめたかった!
だが、それは最早叶わぬ夢。仕方ないので、そこはまだアークスをやっているかつての私に任せておこう。なにせ自分自身の思考だ。ヤツだってそう思っているに違いない。
そう言えばもう一人、私を”センパイ”と呼んでいた娘がいたか。確か……。
「センパイ……その、助かった。来てくれて、ありがとな」
女性デューマンの特徴である二本の角、そしてオッドアイでボーイッシュなショートカット。女の子だというのに、一人称が”おれ”なイオだ。
自分の容姿や性格にコンプレックスを持っている様な発言をしていた。確かにロッティに比べれば胸は小さいかもしれない。
しかし! あれはスレンダーというのだ! あの体のラインがはっきりと分かるエーデルゼリンを着ている彼女は健康的な色気を醸し出し、会うたびに会話をするのが楽しみだった。
胸の大きさなんてのは、いちいち気にしてはいけない。私はどっちも良いものだと思っている! これだけは自信を持って言えるのだ!
……ふぅ。少し思い出に浸りすぎたか……。そういえば誰が私を”センパイ”と呼んでいるのだろう? まあ、私を先輩と呼ぶのは、おそらく可愛い女の子に違いない。今までの二人がそうだったのだ。
三人目の希望としては、一人称が”わたし”と”おれ”の中間の”僕”で、小悪魔的なのが良いな……。
と、その人物が目の前に現れた。
「セーンパイ。お望み通りの僕っこ小悪魔系後輩のエルミル君だよ。やっぱりセンパイにはちゃんと挨拶しとかないと――」
なんか野郎が私に語り掛けている。野郎なんてお呼びじゃない。こいつは一体何なんだ!?
そんな一瞬の放心の隙に、ダークファルスとしての力と私の記憶を奪われた。これはマズい! だがこの場は一旦離脱して、体勢を立て直さなければ……!
この屈辱……忘れない……。絶対に借りを返してやる!!
そして、”その時”が訪れた。かつての私は迫りくる魔物種の大軍をオメガで知り合った人々や初代クラリスクレイスが呼んだ先代の六芒、そしてダークファルスの依代達まで味方につけ、これを撃破。ついにはエルミルを追い詰めていた。
あの野郎は、しぶとく戦おうとしていたが、ルーサー達が昔の私の中に戻り……。
「調子に乗ってんじゃねェ!!」
ダークブラスト――『エルダーフォーム』からのアッパーがエルミルに炸裂。ヤツの体が空に舞う。
「きみは、邪魔!」
次は『ダブルフォーム』。花火のような攻撃で追撃。汚い花火でないのが救いだ。
「目障りなヤツ!」
追い打ちをかける様に『アプレンティスフォーム』に変化し、偽【仮面】を叩き落す。
「その所業、万死に値する」
最後は美しい翼を持つ『ルーサーフォーム』からのビームの様な攻撃でエルミルを完全に捕え、かつての私は元の姿に戻ったあと、コートダブリスを振りかぶりエルミルに止めを刺そうとしていた。
ここまで来たら、私も力を貸さないでどうする! ついでにあの憎っくき野郎に一撃入れるチャンス!!
そうして、かつての私にありったけの力を分け与えていた。いくら偽【仮面】が憎かろうと、ここは格好良く決めておくところだ。私は空気が読める【仮面】なのだ。本音は隠しておかないと。
「この私の期待と純情と男のロマンを裏切った罪、その身で償え! 野郎なんてお呼びじゃなかったんだよ!! 私が来て欲しかったのは、”僕っ娘”の可愛い娘ちゃんだ! この怒りを思い知れえええええ!!」
(……この程度の相手に苦戦して貴様は誰を、救うつもりだ?)
「「「「……えっ!?」」」」
なんか、昔の私を含む、ダークファルスの依代達まで固まっている。
し、しまった!? 本音と建前が逆になってしまった!? 時間遡行でやり直しできないか!? こんなの黒歴史だろ、チクショウ!!
「変態【仮面】を追い出す方法知りませんか?」
昔の私が、汚物を見るような視線を向けている。彼の中にいる依代達も”変態”とか、”これはない”とか、”駄目深遠”とかヒソヒソ言っている。
その後、エルミルが意味深な捨て台詞を吐き、かつての私がそれに注目している間、自分はひっそりと姿を晦ましたのだった。