また懲りずに投稿を始めました。
読んで頂く方々に楽しんで頂けるよう、頑張って書いていこうと思います。
では、どうぞ。
プロローグ
第九七管理外世界《地球》の小さな島国である日本。
その日本のさらに小さな街の一つに、海鳴という街がある。街が海に面しており、カモメが鳴いていることからその名が付けられた――のかは定かではない。
時刻は夕方。日がだんだんと翳り、帰宅途中の学生やサラリーマンが家路を急いでおり、そこにはどこにでもあるような風景が広がっていた。
――そんな街を、一際目立つ人物が歩いていた。
年の頃は一六歳ぐらいと若く、黒髪を短く切り揃え、切れ長の瞳の色は黒と典型的な日本人ではあるのだが、日本人にしてはかなり珍しい一九〇cmはあろうかという長身であった。
また、その佇まいと無駄の無い動作からかなり体を鍛えていることが見て取れ、筋骨隆々というわけではないが無駄の無い引き締まった体型をしている。
さらに青年を際立たせているのがその格好である。全身が黒一色で統一されており、周りの人達もちらちらと青年を横目で見ていた。……たまに、女性陣からは黄色い声が聞こえてくるのは余談であるが。
(――今日の依頼主は羽振りが良かった。これで当面の生活費は困らないな)
お金に困っているわけではないが、と青年は呟く。
(――地球に来て、もう一年か……早いものだな)
青年は一年前まで、"ミッドチルダ"という地球とは別の次元世界に住んでいたのだが、"とある事情"から自身の母親の故郷であった地球へと移住してきたのだ。
生活費としては、今は亡き両親が何かあったときのためにと、貯えを残してくれていた。
だが、それはあくまで生活をするための金銭であるので、青年はこの地球で《便利屋》を始めていた。文字通り、頼まれた仕事ならば何でもこなす仕事である――殺人や、明らかに犯罪であるといったこと以外は、であるが……。
初めの頃はなかなか海鳴では仕事がなかったが、最近では依頼の内容は千差万別ではあるがくるようになっていた。また定期的に古くからの"友人"からの依頼もこなしており、十分生活できるだけの金額は稼げるようになっていた。
(さて、晩飯は何を食べるか……)
そんなことを考えながら、青年は近くのスーパーを目指し、ゆっくりと歩みを進めた。
青年はスーパーで買い物を済ませ、家路をゆっくりと歩いていた。その手にはスーパーで買った食材が入った袋が握られており、歩く度にガサガサと揺れていた。
(今日はカレーでも作るか。二日ぐらいは持つだろう)
そんな庶民的な考えに思考を巡らせながら歩いていると、住んでいるマンションの目の前まで来ていることに気付いた青年は思考を止め、自身の部屋番号のポストを見る。
(ん? 手紙が入っているな。差出人は……どこにも書いていないようだが……?)
青年は差出人不明の手紙を訝しげに眺めながら部屋へと移動する。
(差出人不明か……とりあえず開いて見てみるか)
青年が封を開けてみると、中には一枚の紙が入っており、そこにはこう書かれていた。
『あなたに頼みたいことがあります。詳しいことは会ってから話したいです。依頼料は弾みます』
青年は文章を読み終え、少しだけ視線を下にずらすと、その表情が驚きに染まった。
内容的には簡潔なものだった。それだけならば、青年が驚くこともなかっただろう。
だが、最後に書いてあった文字により、青年の表情は一変したのだ。
そこには、こう書いてあった。
「……"P.T"、だと……?」
青年は驚きの表情とともに、その"文字"を呟く。
この"文字"は、とある人物のイニシャルであり、かつて、青年が会ったことのある人物であった。
そして、青年が知る"P.T"のイニシャルの人物など、一人しかいなかった。
「……《プレシア・テスタロッサ》……」
そんな青年の呟きが、虚空へと消えた。
――この一通の手紙から、止まっていた青年の時が再び動き出す――
――かつて、《黒衣の騎士》と呼ばれた青年――黒沢祐一(くろさわゆういち)の物語が始まろうとしていた――
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