魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

遅くなりまして、申し訳ございません。
楽しんで頂けたら幸いです。


わかりあえない気持ち(前編)

 ――海鳴温泉での一件から数日が経った。

 

 あの一件以来、なのははよく物思いに耽るようになっていた。これから自分がどうしていくか、また、自分がどうしたいのかを悩んでいるようであった。

 元気がないというわけではないが、少しぼーっとしていることが多くなっている。そのため、祐一も心配はしているのだが、現状では何も手助け出来ることは無いため、見守ることしか出来ない状況であった。

 

(――なのはには、辛い役目を負わせてしまっているな。……いや、それを言うならフェイトも、か)

 

 祐一は、一人、商店街を歩きながら、フェイトとなのはのことを考えていた。

 フェイトとなのはの二人はとても優秀な魔導師となる資質を秘めている。フェイトに至っては、祐一の一年間の訓練と祐一がいなくなった後、一年間の実戦経験を積んでおり、すでに一流と呼んでも通じる程の実力を持ち合わせている。

 なのはも実戦経験こそ少ないが、内に秘めた魔力はフェイトよりも上ではないかと、祐一は感じている。また、魔力の放出、集束と制御を得意とし、放たれる砲撃魔法は、祐一といえども当たればただではすまないほどの威力である。なにより、何事も諦めない強い心こそが、最大の強みだと祐一は感じている。

 今でこそフェイトの方が実力的には上であるが、状況や戦術によっては番狂わせもありえると祐一は思っていた。

 

(――本当ならば、二人が戦う必要などないのだがな)

 

 祐一は一人歩きながら溜め息を吐いた後、少し頭を振り、その考えを振り払った。

 

(今更だな。もう、後に引けないところまできているし、引くつもりもない)

 

 自分に言い聞かせるように、祐一は心の中で決意した。

 

 

 

 祐一がしばらく歩いていると、

 

「あれ? 祐一さんじゃないですか?」

 

「ん……?」

 

 聞き覚えのある声に祐一が足を止め振り返ると、そこにはなのはの親友である、アリサ・バニングスと月村すずかの二人が立っていた。

 

「「こんにちは、祐一さん」」

 

「ああ、二人ともこんにちは。どうしたんだ、こんなところで?」

 

「わたしとすずかはこれからお稽古があるんです」

 

 アリサの言葉に祐一は、なるほどと頷いた。

 アリサとすずかは俗に言う、お嬢様というものであるため、いくつもの習い事などをしているのだ。

 祐一がそんなことを考えていると、すずかが質問を返した。

 

「祐一さんは何してるんですか?」

 

「ああ、今日は仕事があったからな。今はその帰りだ」

 

 祐一の言葉に、アリサとすずかも納得したように頷いた。

 祐一の仕事とは、地球にやってきたときから始めた《便利屋》のことである。基本的に、依頼があれば何でもやるというのが、祐一のスタンスである。

 

 そして、しばらく祐一達が話をしていると、アリサが何かを言いたそうに、祐一を見つめていた。そんなアリサに気付き、祐一はアリサへと声を掛けた。

 

「アリサ。何か、俺に聞きたいことでもあるのか?」

 

「あっ!? えっと、その……」

 

 声を掛けられると、アリサは目に見えて動揺していた。そんなアリサの行動に、祐一が首を傾げていると、黙っていたすずかが口を開いた。

 

「あの、祐一さん。最近、なのはちゃんが考え事が多いみたいで、悩み事とかあるみたいなんですけど……祐一さんは、何か知っていますか?」

 

「なるほど。そういうことか」

 

 すずかの質問で、祐一は状況を理解した。

 ようするに、アリサもなのはが心配であったのだが、基本的に天邪鬼であるアリサは、素直に聞くことが出来なかったのだ。アリサは、ばつが悪そうに祐一から視線をはずしていた。その頬は、僅かに赤く染まっている。

 

(――なのはは、良い友人に恵まれているな)

 

 そう思いながら、祐一は僅かに笑みを浮かべる。

 アリサもすずかも本当になのはのことを心配していることが分かる。なのはのことが心配で、何を悩んでいるのか、何をしているのか、二人はそれが心配でならないのだということが、祐一には伝わってきていた。

 だからこそ、本当のことを伝えることが出来ないことが、祐一には歯痒かった。

 そして、祐一は表情を戻し、口を開く。

 

「すまないが、俺からは何も言えない」

 

 祐一の言葉を聞くと、アリサは僅かに怒ったように眉を吊り上げ、すずかは悲しそうな表情となった。

 

「……じゃあ、祐一さんはなのはが何で悩んでいるのか、知ってるんですか?」

 

「ああ。大体は知っているつもりだ」

 

 アリサの質問に、祐一は冷静に答える。

 そんな祐一の言葉を聞き、アリサは悔しそうに唇を噛み締める。すずかはそんなアリサを気遣うように、肩へと手を置いた。

 僅かな時間、三人は無言となり、祐一がアリサへと声を掛けようとすると、それより先にアリサが口を開いた。

 

「――なんで、祐一さんには話せて、わたし達には何も教えてくれないのよっ! わたし達は友達じゃないってのっ!」

 

「アリサちゃんっ!」

 

「何かに悩んでて考え事してるってのがみえみえなのに、どうしてわたし達には何も相談してくれないのよ……っ!」

 

 アリサが悲しみの声を上げる。

 自分を頼ってくれない悔しさが、その声から伝わってくるかのようだった。

 なのはは二人に心配を掛けたくなくて一人で悩み、そんななのはに気付いているが故に、二人は何も言えず、頼ってくれるのを待つしかないというのが現状である。

 それは、互いが互いを想っているだけに起こってしまうすれ違いであり、それゆえに解決することが困難な問題であった。

 

(全く、ままならない、な)

 

 祐一は心の中でそう思い、溜め息を吐く。

 ここで、なのはが何をしていて、何を悩んでいるのかを言ってしまうのは簡単だ。だが、それは無責任なことであり、なのはの気持ちを裏切る行為である。故に、祐一には二人に何も言うことが出来ない。

 

(だが、何も言わないのは、それもそれで無責任だな)

 

 祐一は二人を見つめる。

 アリサは悔しそうに俯き、肩を震わせており、すずかは心配そうにアリサの肩を抱いている。そんな二人を見つめながら、祐一は口を開く。

 

「二人とも、本当にすまないな。――だが、これだけは覚えておいてくれ。なのはは確かに悩んでいるし、それをアリサとすずかには相談はしていない。だが、それこそがなのはが二人を大切に想っている証拠だということを分かって欲しい」

 

 祐一の言葉に、肩を震わせていたアリサが顔を上げ、袖で涙を拭く。

 

「――そんなことは分かってます。なのはが、わたし達に心配を掛けたくないから何も言わないってことくらい」

 

「…………」

 

「それに、たぶんわたし達じゃあ、あの子の助けにならないってことも、待っててあげるしか、出来ないことも……」

 

 アリサは表情を曇らせながらも、そう言葉を口にする。

 

「……そうか。二人とも辛いかもしれないが、なのはが話すまで、待っていてくれるか? きっと、あの子は二人には話すはずだからな」

 

「わたしは、そのつもりでしたから」

 

 祐一の言葉にアリサは黙って頷き、すずかは少し寂しそうな表情をしながらも、笑顔で答える。

 

「――わたしは、ずっと怒りながら待ってます。気持ちを分け合えない寂しさと――親友の力になれない自分に――」

 

 アリサの表情はやはり僅かに曇ってはいたが、それでもその瞳からは想いの強さが伝わってくるように、祐一は感じた。

 

「そうか。すまないな、アリサ、すずか」

 

「いいえ、いいんですよっ!」

 

「そうです。祐一さんに謝ってもらう理由はありませんから」

 

「そうか。ありがとう」

 

 アリサとすずかの言葉に、祐一は礼を持って答える。

 そんな祐一に笑みを浮かべながら、すずかが真剣な声で話す。

 

「そのかわり、なのはちゃんのこと、よろしくお願いします!」

 

「あの子、すぐ無茶するから祐一さんがしっかり見てあげてくださいねっ!」

 

 すずかとアリサはそう言いながら、祐一へと頭を下げ、祐一はそんな二人の言葉に、

 

「――ああ。任せておけ」

 

 そう答えたのだった。

 

 

 

 祐一は二人と別れた後、ジュエル・シードの探索も兼ねて街を歩いていた。付近にジュエル・シードの反応を僅かに感じてはいるのだが、まだ見つけるには至っていなかった。

 

「もうすっかり日が暮れてしまったか」

 

 祐一が視線を上げた先では、太陽はほとんど隠れ、街灯が光り輝き始めていた。

 帰宅時間となっているので、たくさんの人間が行き来している。

 そんな人の流れを見ながら、今日は諦めて帰ろうかと思っていたときだった。

 

「この反応は……? ジュエル・シードを強制的に発動させようとしているのか?」

 

 祐一は強い魔力を感じ、視線をそちらへと向ける。

 

「……これは、アルフか?」

 

 感じた魔力の正体はアルフの魔力であり、祐一は眉を顰めた。

 ジュエル・シードの探索は確かに必要ではあるが、このような街中でジュエル・シードを発動させようとしていることは、祐一にとっては予想外であった。

 そう思ったと同時に、祐一は魔力の反応があった方へと駆け出そうとした。

 

「む? こちらの反応は、なのは達か?」

 

 アルフの魔力に気付いたのであろう、なのはの魔力の反応を祐一は感じた。

 そしてすぐに、街を結界が包み込んでいった。なのはの相棒でもある、ユーノが広域結界を張ったのだ。

 その後すぐに、ジュエル・シードが発動した。

 

「これで街の人達は安全か。……だが、強制的にジュエル・シードを発動させるとは、無茶なことをする」

 

 祐一はそう呟き、ジュエル・シードが発動した方へと飛翔した。

 

 そして、ジュエル・シード付近のビルの上へと祐一は降り立ち、そちらへと視線を向けると、発動したジュエル・シードを挟むように、フェイトとなのはが相対していた。

 

「リリカルマジカル――」

 

「ジュエル・シード――」

 

「「封印!!」」

 

 なのはとフェイトがそう叫ぶと同時に、二人はジュエル・シードへと砲撃を放った。

 そしてそれはジュエル・シードへと直撃し、魔力を放出していたジュエル・シードも止まり、一旦の落ち着きを見せる。

 

「――あれは、不味いかもしれんな」

 

 祐一は目を細め、落ち着いているかのように見えるジュエル・シードを見つめる。今でこそ落ち着いているが、フェイトとなのはの魔力を同時に受けたジュエル・シードは何かの拍子に暴走するかもしれないと、祐一は感じていた。

 だが、祐一の視線の先ではすでにフェイトとなのはが戦闘を始めている。

 

「とりあえず様子を見る、か」

 

 いつものごとく傍観に徹することに決めた祐一は、フェイトとなのはの戦闘を静かに見つめる。

 

(――何事も起こらなければいいんだがな)

 

 祐一は心の中でそう願った。

 

 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、指摘をお願いします。

次は早めに投稿出来るように頑張ります。
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