魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ。


戦う心

 なのはたち三人は、時の庭園入り口付近にいた傀儡兵を全て倒すと、急ぎ内部へと向かった。

 途中、傀儡兵が何度か襲い掛かってくることもあったが、クロノとなのはは特に問題なく倒していった。傀儡兵にも強い個体がいるのだが、執務官としてかなりの力を持っているクロノと圧倒的な潜在能力を有し、フェイトとの戦いから実力を付けてきているなのはの敵ではなかった。

 傀儡兵を倒しながら三人がしばらく走っていると、さらに奥へと続いていく扉があった。

 その扉を三人の先頭を走っていたクロノは、走る勢いそのままに扉を蹴り開ける。

 扉をくぐると、そこは広い空間となっており、この先へは通さないと言わんばかりに大量の傀儡兵がいた。

 大量の傀儡兵の多さに、なのはとユーノの表情は強張るが、クロノはある程度予想していたのだろう、落ち着いた表情で辺りを見渡す。

 

「ここで二手に分かれる。なのはたちは最上階にある駆動炉へ向かってくれ」

 

「クロノくんは……?」

 

「僕はプレシアの下へ行く。それが仕事だからね」

 

 クロノはなのはの質問に力強く頷く。そんなクロノに微笑みを返すが、すぐに表情を引き締める。

 

「――でも、そっちにはきっと祐一お兄さんがいるよ。その、大丈夫……?」

 

 そう心配そうに話すなのはに、クロノは僅かに眉を顰める。

 なのはに言われるまでもなく、プレシアの方に向かえば、まず間違いなく祐一と相対するということは分かっていた。

 クロノは、祐一とは二度交戦しているが、いずれも煮え湯を飲まされる結果となっている。

 

(――だが、だからこそ、僕は黒沢祐一と戦いたい)

 

 決して、クロノは戦いが好きというわけではない。

 だが、クロノにも、男としての意地と負けたくないという気持ちがあるのだ。

 クロノはそう考えると、なのはへと頷きを返した。

 

「大丈夫だ。それに、黒沢祐一と戦えるのは僕だけだろうしね」

 

「……そっか……そうだね」

 

 力強く頷いたクロノに、なのははクロノを応援する気持ちと祐一への想いから、少しぎこちない笑みを浮かべた。

 話を終えると、クロノは気合いを入れるように叫ぶように声を上げる。

 

「僕が道を作るっ! その隙にっ!」

 

「わかった!」

 

「了解!」

 

 なのはとユーノの返事を聞くと、クロノは自身のデバイスである《S2U》を構え、

 

『Blaze Cannon』

 

 クロノが砲撃魔法を放ち、上層へと続く道を塞いでいた傀儡兵を吹き飛ばす。

 

(――すごい。これが、クロノくんの実力なんだ)

 

 なのはは心の中でクロノに称賛の声を上げる。今の砲撃魔法も、威力こそなのはのデバインバスター程ではないにしろ、精度と速度は上回っていた。

 

(わたしも頑張らなきゃだね)

 

 なのはは隣にいるユーノと頷き合い、クロノが空けてくれた道へと飛翔した。

 

「気をつけてね、クロノくんっ!」

 

 最後までクロノを心配するなのはに、クロノは笑みを持って答える。

 そして、なのはとユーノの姿が見えなくなると、クロノは残りの傀儡兵に向かって叫ぶ。

 

「悪いが、お前たちに用は無い。推し通らせてもらう!」

 

 クロノは魔力スフィアを生成しながら、傀儡兵へと突っ込んでいった。

 

 

 クロノたちが時の庭園で戦いを繰り広げている頃、リンディを含め、アースラの局員たちはジュエル・シードの暴走を止めるべく、対処を励んでいた。

 そして、その騒がしいアースラの一室に一人の少女がベッドに寝かされていた。

 母親であるプレシア・テスタロッサから決別を言い渡され、絶望の淵に立っているフェイト・テスタロッサである。その瞳からは今まで感じられていた力などなく、ただ虚空を彷徨っているだけであった。

 そして、そんなフェイトを心配そうに見つめている一人の人物の姿もあった。

 

「あの子たちが心配だから、あたしもちょっと手伝ってくるね。すぐに帰ってくるから」

 

 フェイトの使い魔である――アルフは微笑みながら話を続ける。

 

「そしたらさ、ゆっくりでいいからわたしの大好きな、"ホント"のフェイトに戻ってね。これからは、フェイトの時間は全部、フェイトが自由に使っていいんだからさ」

 

 アルフは話を終えると、フェイトを心配そうに見つめながらもなのはたちの手助けをするために、部屋を後にした。

 

 

 アルフがいなくなり一人となったフェイトは、相変わらずぼんやりと力ない瞳で、虚空を眺めていた。

 

(――結局、母さんは最後までわたしに微笑んでくれなかった。わたしが生きていたいと思ったのは、母さんに認めてほしかったからだ。どんなに足りないと言われても、どんなに酷いことをされても――だけど、笑ってほしかった。あんなにはっきりと捨てられた今でも、まだ母さんに縋りついている)

 

 プレシアからあれだけ拒絶されてもなお、フェイトはそう思っていた。

 ふと、フェイトは視線をモニターへと移した。そのモニターは、アルフが気を利かせたのか、なのはたちが戦っている姿が映し出されていた。

 そのモニターをぼんやり眺めていると、なのはたちと合流しているアルフの姿が映し出される。

 

(――ずっと傍にいてくれたアルフ。言うことを聞かないわたしのせいで、きっとずいぶん悲しい思いをさせてしまった)

 

 フェイトは、そうアルフに心の中で謝罪する。

 フェイトが寂しかったとき、アルフは必ず傍にいてくれた。そのおかげでどれだけ自分の心が救われたか、フェイトにはわからなかった。だからこそ、今まで迷惑を掛けてごめん、とフェイトは純粋に思った。

 そして、フェイトはモニターに映し出された、純白のバリアジャケットを身につけている少女へと視線を移す。

 

(――何度もぶつかった、真っ白な服の女の子。初めてわたしと対等に、まっすぐに向き合ってくれた女の子)

 

 アルフの姿、そして、なのはの姿を見ていたフェイトの瞳に、僅かながら光が灯った。

 

(――何度も出会って、戦って、何度もわたしの名前を呼んでくれた。――何度も、何度も)

 

 自然な動作で、フェイトはベッドから体を起こした。その瞳からは、うっすらと涙が零れていた。

 フェイトには、同年代の友人はいない。今まで、フェイトが知り合ってきたのは、ほとんどが年上の人物ばかりであった。だからこそ、なのはが本気で自分と向き合ってくれたことが、心底嬉しかった。

 

(――生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたかったからだ。それ以外に、生きる意味なんてないって、そう思ってた。それができなきゃ、生きていけないと思ってた)

 

 自身の母親に認めてもらうことが、今までのフェイトの全てであった。だが現実では、自分はプレシアに認められることなどありはしなかった。だから生きている意味などない。――そう思っていた。

 

(――わたしは、どうすればいいんだろう……?)

 

 そう心の中で誰かに問い掛ける。誰も答えてくれるはずなどないのに、フェイトの脳裏には、"黒衣の青年"の姿が思い浮かんだ。

 

『――お前はどうしたいんだ、フェイト』

 

 黒衣の青年――黒沢祐一は、いつもこの言葉をフェイトへと言っていた。

 

(――わたしは――)

 

『――お前ならわかっているはずだ』

 

 そう祐一が笑ったように、フェイトは感じた。その笑顔が自分に勇気をくれると、フェイトは感じていた。

 

(――捨てればいいってわけじゃない、逃げればいいってわけじゃ――もっとない)

 

 フェイトはベッドから静かに降り立ち、その手に破損したバルディッシュを優しく握り、話し掛ける。

 

「わたしたちの全ては、まだ始まってもいない――そうなのかな、バルディッシュ――」

 

 すると、主の言葉に答えるように破損している状態にも関わらず、ミシミシという音を出しながら起動状態となった。その姿はまるで、主であるフェイトの背中を押しているようであった。

 

『Get set』

 

「バルディッシュ……?」

 

 そんなバルディッシュの姿に、フェイトは涙を流しながらバルディッシュを自身の胸に抱きかかえる。

 

「そうだよね。バルディッシュもずっとわたしの傍にいてくれたんだよね。……お前も、このまま終わるなんて、嫌だよね?」

 

 バルディッシュはフェイトの言葉に返事をするように、強く明滅する。

 すると、フェイトは涙を拭き、バルディッシュを構える。

 

「上手く出来るかわからないけど、一緒に頑張ろう」

 

 フェイトは、静かに、だが力強く言葉を放つと同時に、自身の魔力を両手に込める。すると、あっという間にバルディッシュが修復された。

 そして、漆黒のバリアジャケットを纏い、その上からマントを羽織る。

 そんなフェイトの真紅の瞳には輝きが戻り、新たな決意が漲っていた。

 

「わたしたちの全ては、まだ始まってもいない。――だから、本当の自分を始めるために、今までの自分を終わらせよう」

 

 そう静かに呟くと、フェイトの姿はその部屋から消えていた。

 

 

 ――『時の庭園』内部――

 

 なのはとユーノ、そして二人と合流したアルフは駆動炉を目指し、最上階を上がっていた。だが、最初は順調であったが、駆動炉が近づくにつれ、傀儡兵の数が多くなり、三人は苦戦を強いられていた。

 なのはは射撃魔法を放ち、次々と傀儡兵を撃破していくが、如何せん数が多すぎた。傀儡兵はまるで数が減っていないかのように、なのはたちへと襲い掛かってくる。

 

「くっそっ、数が多いっ!」

 

「だけならいいんだけど……っ!」

 

「なんとかしないと……」

 

 そう、傀儡兵の力は一体が魔導師ランクAほどの実力があり、そう簡単には倒せるような強さではない。なのはの力量では、一体二体ならば問題なく倒せる。だが、それの数が多くなると、

 

「あっ!?」

 

 なのはたちの僅かな焦りから、ユーノがバインドで捕獲していた一体の傀儡兵が拘束を破り、なのはへと襲い掛かった。

 その光景に、ユーノは他の傀儡兵を抑えながら叫ぶ。

 

「なのはっ!!」

 

「――っ!?」

 

 ユーノの声を聞き、なのはが背後へと振り返るが、傀儡兵が持つ戦斧はなのはの目の前へと迫っていた。

 その光景に、ユーノとアルフは焦ったように目を見開き、何かを叫んでいるが、なのはには何も聞こえなかった。

 

(――っ!? だめ、避けれない……っ!)

 

 なのははすぐ訪れるであろう衝撃に耐えるように、思わず目をぎゅっと閉じる。

 

 ――だが、その衝撃が訪れることはなかった。

 

『Thunder Rage』

 

「サンダーレイジッ!!」

 

 その叫びとともに、なのはの周りが金色の光に満たされた。それは雷撃――その攻撃により、なのはに襲い掛かってきた傀儡兵を含め、三人の周囲にいた傀儡兵までも粉砕された。

 なのははその雷撃の発生源を見つめる。

 

 ――そこには、美しき金髪の少女――フェイト・テスタロッサの姿があった。

 

「フェイト……っ!?」

 

 アルフがフェイトの姿を視認し、驚きの声を上げる。

 フェイトは叫ぶアルフへと少し視線を向けた後、なのはの傍へと移動する。その表情には、まだ戸惑っているように感じられた。

 そんなフェイトになのはは何かを言おうとするが、

 

 ――ドゴンッ! と、轟音が響き渡り、周囲が振動した。

 

 なのはとフェイトがはっと、音がした方へと視線を向けると、そこには今まで見てきたものの中で一番の大きさを誇る傀儡兵が壁を破壊し姿を現した。

 なのははフェイトへと向けていた意識を大型の傀儡兵へと向け、レイジングハートを構える。

 すると、フェイトが大型傀儡兵へと視線を向けながら、静かに口を開いた。

 

「大型だ、バリアが硬い。――だけど、二人なら」

 

「っ!? ――うん!」

 

 なのはは一瞬何を言われたのかわからなかったのか、ポカンとした表情となっていたが、すぐに喜びの表情を浮かべた。

 

(二人で力を合わせて戦えば、何も怖いものなんてないっ!)

 

 なのはは今までにないくらい感情が昂ぶっていた。フェイトが僅かながらにも、自分に心を開いてくれたと、そう感じていたからだ。

 だからこそ、今のなのはには恐れるものなど、何もなかった。

 

「いくよ、バルディッシュ!」

 

『Get set』

 

「こっちもだよ、レイジングハート!」

 

『Stand by ready』

 

 二人は同時に射撃体勢に入る。

 すると、大型傀儡兵が肩に備え付けている砲塔から、砲撃魔法を放とうとしていた。――だが、それよりも早く、二人は攻撃の準備が整った。

 

「サンダースマッシャー!!」

 

 フェイトが突き出したバルディッシュの先端から金色の魔力が放たれ、雷撃を纏った砲撃が大型傀儡兵へと直撃する。

 

『――!?』

 

 大型傀儡兵はフェイトの攻撃を受け、少し怯んだものの、その硬い防御力を持ってフェイトの攻撃を防ぎきった。――だが、攻撃はそれだけではない。

 

「ディバインバスター!!」

 

 なのはがフェイトとは反対側から砲撃魔法を放った。魔導師となってからなのはが使用を続け、もはや十八番となりつつある砲撃魔法は、その攻撃力を十二分に発揮する。

 

「「せーーっの!!」」

 

 そして、二人の声が重なり、金色の砲撃魔法と桃色の砲撃魔法はさらに威力を上げ、その攻撃は大型傀儡兵をいとも簡単に飲み込んだ。その攻撃力は、外壁が厚い時の庭園であるのにも関わらず、全ての壁を破壊するほどであった。

 その攻撃力は、言わずもがなであった。

 

「フェイトちゃん!」

 

「……ん」

 

 なのはが笑顔でフェイトの名前を呼ぶと、フェイトも少しだけ微笑んでいた。

 

「フェイトーー!!」

 

 そんな二人のやり取りとは関係なく、狼形態から人間へと戻ったアルフがフェイトへと抱きついた。その瞳には涙が浮かんでおり、フェイトが元気になったことを心の底から喜んでいた。

 

「――アルフ……心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、それから始めるよ。――本当のわたしを」

 

「うん、うん……っ!」

 

 幼子のようにフェイトの胸で泣いているアルフに、フェイトはアルフを抱きしめながら話した。

 そんな二人のやり取りを、なのはは少し涙を浮かべながら見つめていた。

 

 

 そんな感動の再会の後、なのは、フェイト、ユーノ、アルフの四人は駆動炉へと急いだ。途中、やはり傀儡兵が襲い掛かってきたが、今のなのはとフェイトたちに勝てる者など、いるはずもなかった。

 そして、行く先を塞いでいた扉を吹き飛ばすと、四人は大きなホールへと足を踏み入れた。

 

「あのエレベータに乗っていけば、駆動炉に辿り着ける」

 

「うん、ありがとう。……フェイトちゃんはお母さんのところに行くんだよね……?」

 

「……うん」

 

 そう心配そうな顔で質問してくるなのはに、フェイトは僅かにぎこちなく微笑みながら頷いた。

 決意を決めたと言っても、やはりフェイトは未だ恐れていた。プレシアにこれ以上、何かを言われることを……。

 それに――、

 

(――祐一は何で母さんといっしょにいるのか。もしかしたら、祐一も母さんと同じことを思っているのかもしれない。……わたしのことなんて……)

 

 フェイトが思わずそう考え、顔を俯かせていると、

 

「――大丈夫だよ、フェイトちゃん」

 

 顔を上げると、そこには微笑みを浮かべているなのはがいた。そして、なのははフェイトの手を自分の手で優しく包み込んでいた。

 

「わたし上手く言えないけど、祐一お兄さんはきっと、フェイトちゃんのことをとても心配してたと思うんだ。最後までフェイトちゃんのことを気に掛けていたから」

 

「――祐一が……?」

 

「うん。だから、フェイトちゃん。祐一お兄さんを信じてあげて。あの人は、きっとフェイトちゃんの味方だから――」

 

「…………」

 

「だから、頑張って、フェイトちゃん!」

 

「――うん。ありがとう」

 

 なのはの精一杯の笑顔に、フェイトも不器用ながらも笑顔を向ける。

 フェイトは、自分を心配してくれるなのはの言葉に心が温かくなると同時に、祐一のことを信じようと、心に決めた。

 そして、二人が話を終えたのを見たユーノが叫ぶように話す。

 

「今、クロノが一人で向かってる。急がないと……っ!」

 

「祐一も、そっちにいるのかな?」

 

「たぶんね。おそらく、プレシア・テスタロッサのところへ行かせないように足止めをしてくると思う」

 

 フェイトは僅かに考える仕草をすると、すぐに口を開いた。

 

「じゃあ、急ごう」

 

 ユーノの言葉にフェイトは頷きを返すと、なのはたちと別れ、アルフとともにプレシアたちの下へ向かった。

 

 

 ――一方その頃――

 

 クロノはプレシアの下へと急いでいた。途中には大量の傀儡兵がいたが、クロノは問題なくそれらを撃破していった。

 もう少しで、プレシアの下へと辿り着くところまできていた。

 

「エイミィ、状況は……?」

 

『なのはちゃんとユーノくん、駆動炉に突入っ! フェイトちゃんとアルフは最下層へ。大丈夫、いけるよ、きっと』

 

「ああ、そうだなっ!」

 

 エイミィと会話しながらもクロノは襲い掛かってきた傀儡兵を蹴散らしていく。それだけで、クロノの実力がかなりの高さであることが窺える。

 

『クロノくんの方は大丈夫?』

 

「大丈夫だよ。傀儡兵なんかで苦戦なんかしていられないからね」

 

 心配そうに質問してくるエイミィに言葉を返しながらも、クロノは走るペースを落とさない。

 そうしてしばらく走っていると、今までで一番大きな扉が見えた。

 クロノは立ち止まり、扉へと手を掛け、そこで一度動きを止める。

 

(――間違いない。――ここに、"奴"がいる)

 

 クロノの表情が緊張で僅かに強張り、額から汗が流れる。

 

(いまさらだ。――もう負けるわけにはいかないんだ。相手が誰であろうとも)

 

 そう思い、クロノは一度大きく深呼吸をした後、扉を開けた。

 そこは、今までの空間よりも一段と広かった。中はドーム状となっており、ぎりぎり空戦も可能であるぐらいの広さがあった。

 だが、クロノが気にするべきところはそこではなかった。

 

(――正念場だ)

 

 クロノはデバイスを持つ右手に力を込めながら、一人の人物をじっと見つめた。

 

「――よく来たな。あれだけの傀儡兵を物ともしないとは、流石は管理局執務官と言うべきか」

 

 よく響く低い声が周囲に響き渡る。

 クロノより頭二つ分は高い身長と立派な体躯。漆黒のロングコートに身を包み、サングラスが掛けられており、表情は読めない。そして、その手には鞘に収まった長剣が握られている。

 "その人物"を睨みつけるような視線でクロノは見つめながら、静かに呟いた。

 

「――黒沢祐一」

 

 今回の事件の首謀者であるプレシアの協力者であり、フェイトとなのはの憧れの人物。

 

 ――そこにはかつて、《黒衣の騎士》と呼ばれた人物――黒沢祐一が佇んでいた。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、指摘をよろしくお願いします。

今回は早く投稿できました。
いつもこれぐらいならいいのですが(汗)
次回も早めに投稿できるように頑張ります。
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