魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ。


さよならは言わない(後編)

 祐一とクロノが転送ポートへとやってくると、元気の良い声が響き渡った。

 

「祐一お兄さんっ!」

「おっと……」

 

 その声とともに自分の胸に飛び込んできた少女を祐一は優しく抱きとめ、そんな行動を起した人物に思わず苦笑を浮かべた。

 

「急にどうしたんだ、なのは」

 

 白い制服を纏い、肩に掛かる髪をツインテールにした少女――高町なのはは、祐一の胸に顔を埋めていた。

 なのはのことを昔から知っている者ならば、その光景はとても珍しく見えただろう。

 小学三年生という年齢でありながらも、なのはは大人に対して甘えるという行為をあまりしない子であった。特異な家庭事情もあったこともあり、その性格と相まって、そういう行為をすることはあまりなかった。

 なのははしばらくの間祐一の胸に顔を埋めていたが、ゆっくりと離れた。祐一を見上げるその瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 

「わたし、信じてた……信じてたよ、祐一お兄さん」

「――そうか。ありがとう、なのは」

「……うん」

 

 祐一は頷いたなのはの頭を優しく撫で、そっと涙を拭ってやりながら、口を開く。

 

「今回のことはすまなかった。お前には、とても迷惑を掛けてしまったな」

「ふふ、祐一お兄さんがそんなこと言うなんて珍しいよね」

「む、そうか……?」

 

 祐一はなのはを撫でていた手を放しながら、僅かに首を傾げる。

 

「そうだよ。祐一お兄さんは一人で何でもやっちゃうから、わたしに迷惑を掛けるなんてこともなかったし」

「そう、だったかもしれないな」

「うん。だけど、わたしは今回のことを迷惑だなんて思ってないよ……?」

 

 笑顔でそう言うなのはに、祐一は少し驚いた表情となった。そんな祐一を見つめながら、なのはは話しを続けた。

 

「――だって、フェイトちゃんと知り合うことが出来たし、他にもいろんな人たちと出会うことが出来て、わたしは良かったと思ってるよ」

「……そうか」

 

 なのはの言葉を聞き、祐一は笑顔を見せる。

 

(――ほんとうに、なのはにフェイトを任せてよかった。二人には、お互いが対等に話ができる"友人"が必要だった)

 

 だからこそ、祐一はなのはとフェイトを引き合わせるように動いたのだ。

 

(まぁ、俺が手を出さなくとも二人は惹かれあっていたかもしれんがな)

 

 心の中で祐一は良い結果になってよかった、と思っていた。

 そんなことを考えていると、別の人物から声が掛けられた。

 

「あらあら、なのはさんは意外と大胆なんですね~」

「なのはも嬉しかったんですよ」

「こほんっ! そろそろいいか……?」

 

 リンディがにこにこ笑いながら、ユーノはリンディの言葉に答えつつ、クロノは苦笑しながら近づいてきた。

 リンディの言葉になのはが先ほどの自分の行動を思い出したのか、赤くなりながらわたわたと慌てたように手を横に振っていた。

 

「にゃ!? そ、そんなのじゃないんですよっ!?」

「ふふふ、恥ずかしがらなくてもいいんですよ?」

「だ、だからぁ~!」

 

 そんな感じで、リンディにからかわれるなのはの構図がしばらく続き、それを他のメンバーも笑顔で見つめていた。

 

 それからしばらくの間、皆で談笑していたが、そろそろ祐一、なのは、ユーノが地球へと戻る時間となったため、三人は転送ポートへと移動した。

 

「うぅ~リンディさん、酷いですよぉ~」

「ごめんなさいね。なのはさんの反応が可愛くて、つい」

 

 なのはは恥ずかしかったのか、まだ少し頬を赤く染めながらリンディへと恨めしそうに話す。リンディはそんななのはの言葉に、笑顔をうかべなら言葉を返していた。

 そんななのはの頭を祐一はポンポンと優しく叩き、

 

「さて、そろそろ帰ろう」

「あ、う、うん。そうだね」

 

 祐一の言葉に、なのははハッとするが、すぐに笑うかべて祐一へ言葉を返した。

 そんななのはの姿にリンディはさらに笑みを深くしながら、転送の準備をしているエイミィの方を向く。

 

「エイミィ、準備はできたかしら?」

「はいはい、いつでも大丈夫ですよ~」

「ありがと。じゃあ、祐一くん、なのはさん、ユーノくん」

「ええ、お世話になりました」

 

 リンディの言葉に、三人を代表して祐一が答える。

 

「フェイトの処遇は決まり次第連絡する。大丈夫、決して悪いようにはしない」

「うん、ありがとう、クロノくん」

「ユーノくんも帰りたくなったら連絡してね? ゲートを使わせてあげる」

「はい、ありがとうございます」

 

 いつものように話すクロノになのはは笑みで答え、ユーノもリンディの言葉にお礼を述べた。

 

「じゃあ、そろそろいいかな?」

 

 エイミィの言葉になのはとユーノは、「は~い!」と元気よく返事をし、祐一は静かに頷いた。

 

「それじゃあ」

「うんっ! またね、クロノくん、リンディさん、エイミィさん!」

 

 笑顔で別れの挨拶をするなのはに、三人も手を振って答える。

 

「祐一くんも、また会いましょうね」

「ええ、機会があれば……」

 

 祐一がそう告げると、三人の姿は転送ポートから消えていた。

 

 

 ――そして、祐一となのはが地球へと戻った数日後――

 

 祐一は昨日、久しぶりに帰ってきた家の掃除や片付けを済ませ、今日は久しぶりに日課である鍛錬を行っていた。木刀を使用し、クロノに負わされた怪我の具合を確かめるように祐一は木刀を振っていた。

 しばらくの間、同じように木刀を振っていたが、木刀を静かに下ろし深く深呼吸をした。

 

「ふぅ、こんなものか。やられた左腕もようやく完治したか」

 

 左手を開いたり閉じたりして、祐一は感触を確かめるように手を動かしていた。

 左腕の状態を確かめた後、祐一が軽く汗を流し着替えをすませた。すると、祐一の携帯端末が鳴り響いた。

 祐一が誰だと思いつつ端末のコールサインを見ると、そこには古い友人名前が表示されていた。

 通信を繋ぐと、モニターに男性の姿が映し出された。

 

『久しぶりだな、祐一』

「ええ、お久しぶりです。珍しいですね? 先輩が連絡してくるなんて……」

 

 祐一の言葉に、「なに、後輩が心配になったのさ」と、明るい声音でそう告げた。

 モニター越しに写っている人物は、年齢は祐一よりも少し上、くたびれたスーツの上から白衣を羽織、肩の位置より下まで伸びている黒髪を後ろで結んでいる。祐一を見ているその切れ長の瞳にはモノクルをしており、口には煙草が咥えられていた。

 

『まぁ、暇だったのでな。変わりはないか気になったのは本当だよ』

 

 そう祐一と話しをする人物――リチャード・ペンウッドは少し笑いながら、紫煙を吐いた。

 

「先輩、煙草を吸うようになったんですね?」

『俺も二十歳だからな。……ストレスが溜まってかなわん』

「先輩はまだ前線に?」

 

 苦笑しつつ話すリチャードに、そう祐一は質問を返す。

 その質問に、リチャードは首を横に振り、

 

『いや、今ではデバイスマイスターとしての仕事が主だ。お前"たち"がいたときのように前線に出ることは無くなったよ』

「そうですか」

 

 リチャードはデバイスマイスターの資格も取得しており、デバイスの制作と整備については、若くして管理局でも有数の腕前であった。

 その証拠に、今、祐一が所持しているデバイス"二つ"を作成したのは、このリチャードであった。

 祐一が頷くと、リチャードは祐一へとさらに言葉を投げ掛けた。

 

『――お前、少し良い顔になったんじゃないか?』

「そうですか?」

 

 自分の頬に右手を当てながら祐一は首を傾げる。

 リチャードはそうだよ、と言葉を返すと、僅かに表情を曇らせる。

 

『……管理局を辞める前のお前は、見てられないぐらいの顔してたからな。人生が終わったかのような表情だった』

「…………」

 

 リチャードの言葉に、祐一はあの頃を思い出す。

 

 ――何もかもに絶望し、管理局を辞めたときのことを――

 

(あの頃、俺は大切な人を失い、絶望していた。……だがもし、俺の表情があの頃から変わっているのなら、それはフェイトとなのはのおかげなのかもしれないな)

 

 祐一は今はこの場にいない二人の少女のことを想い、少しだけ笑みを浮かべた。そんな祐一を見て、リチャードもにやりと笑みを浮かべる。

 

『ふ、やはり、良い顔をするようになったよ』

「……そうですね。ほんの少しだけ、心の整理が出来たのかもしれません」

『そうか』

 

 リチャードが祐一の言葉に静かに頷きを返した。

 内心ではリチャードは祐一のことを心配していた。知らない仲でもなかったし、なにより、同じ部隊に所属していた仲間であった祐一を放っておくほど、リチャードは人でなしではなかった。

 そうして、二人がしばらく話をしていると、祐一の家のインターホンが鳴り響いた。

 

『客か?』

「そのようです。では、先輩――」

『ああ、また連絡する。お前も何かあったら連絡しろ』

「ええ、ありがとうございます。では、また」

 

 そう言うと、祐一は携帯端末を切り玄関へと急いだ。

 そして、扉を開けるとそこには、

 

「はぁ、はぁ、おはよう! 祐一お兄さん!」

「おはようございます、祐一さん」

 

 走ってきたのか、肩で息をしているなのはがそこにいた。その肩には、定着しつつあるフェレット姿となっているユーノが乗っており、祐一へと挨拶をしていた。

 

「おはよう、二人とも。どうしたんだ、こんな朝早くから。何かあったのか?」

「あ、あのねっ! 実は朝、クロノくんたちから連絡があって――」

 

 慌てたようになのはが祐一へと事情を話し始めた。

 内容は、クロノからフェイトの本局への移動とその後の事情聴取や裁判などの細かなことが決まったこと。

 今から少しだけの時間だが、フェイトと会うことが出来るということだった。

 

「わたしに会いたいって言ってくれてるんだってっ! それに、祐一お兄さんにも会いたいって」

「そうか。それで俺の家を訪れたというわけか」

「うんっ! だから、祐一お兄さんも早く行こう!」

 

 なのはは祐一の手を両手で掴み、急かすように引っ張った。そんななのはに祐一は苦笑を返しながら、

 

「わかった。準備をするから少しだけ待っていてくれ」

「うんっ!」

 

 こうして、三人はフェイトとの待ち合わせ場所へと急いだ。

 

 

 祐一、なのは、ユーノの三人が待ち合わせ場所である海鳴公園に着くと、先に着ていたフェイト、アルフ、クロノの三人の姿が見えた。

 なのははフェイトの姿を見つけると、横にいる祐一を見つめた。その表情は、少しだけ不安そうであった。

 そんな表情で見つめてくるなのはに、祐一は笑みを浮かべるとなのはの背中をそっと押し、

 

「行ってこい。お前の今の気持ちを伝えてくるといい」

 

 祐一の言葉を聞くと、なのはは不安そうだった表情を微笑みに変え、元気よく返事をすると、フェイトの方へと駆けて行った。

 そんななのはの後姿を、祐一は笑顔で見つめていた。

 

 

「フェイトちゃ~ん!」

 

 なのははユーノを肩に乗せたまま、フェイトたちのいる方へと駆け寄った。

 クロノはなのはが来たことを確認すると、

 

「あまり時間はないんだが、話をするといい。僕らは近くにいるから」

「うんっ! ありがとう!」

「ありがとう」

 

 クロノの言葉になのはとフェイトがお礼を言うと、クロノ、アルフ、ユーノの三人はなのはたちから離れていった。

 三人が離れていくのを確認すると、なのはとフェイトは顔を見合わせ、少し気恥ずかしそうに微笑みあった。

 

「えへへ、何か変だね。フェイトちゃんとたくさんお話したかったのに、フェイトちゃんの顔見たら忘れちゃった」

「わたしは……そうだね、わたしも上手く言葉にできない」

 

 お互いの言葉に、二人そろって苦笑する。

 そして、フェイトは少しだけ息を吸うと、話を始めた。

 

「……嬉しかった、わたしと、まっすぐ向き合ってくれて」

「うんっ! 友達になれたらいいなって、思ったから。でも、今日はこれから出掛けちゃうんだよね……?」

「……そうだね、少し長い旅になる」

 

 分かり合えたのも束の間、お互いに別れが近いことから、自然と二人の表情は暗くなっていった。

 だが、なのはが静かに口を開いた。

 

「また、会えるんだよね?」

「うん。少し悲しいけど、やっとほんとの自分を始められるから。君に来てもらったのは、返事をするため」

「えっ?」

「君が言ってくれた言葉、友達になりたいって。わたしに出来るなら、わたしでいいならって。……だけどわたし、どうしたらいいかわからない。どうしたら友達になれるのか、教えてほしい」

 

 フェイトの真剣な言葉に、なのはは少しだけ驚いた表情となったが、それはすぐに笑顔へと変わった。

 

「簡単だよ――友達になるの、すごく簡単」

 

 キョトンとするフェイトに笑みを浮かべながら、なのはは告げる。

 

「――名前を呼んで――」

 

 なのはの言葉に、フェイトは目を大きく見開いた。

 

「始めはそれだけでいいの。君とかあなたとか、そういうのじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、はっきり名前を呼ぶの。わたし、高町なのは、なのはだよ」

「……なの、は」

「うんっ! そう!」

「……なのは」

「うんっ! うんっ!」

「なのは」

「っ! うんっ! うんっ!」

 

 なのはは我慢できなくなったのか、瞳に涙を溜めながら、フェイトの手を優しく握った。

 

「……ありがとう、なのは」

「っ!」

「君の手は温かいね、なのは」

 

 フェイトの言葉に、なのはは堪えきれず涙を流した。

 なのはは涙を袖で拭いながら、フェイトの方を見ると、フェイトも同じように、その目に涙を浮かべていた。

 

「――少しわかったことがある。友達が泣いていると、同じように自分も悲しいんだ……」

「フェイトちゃん……っ!」

 

 なのははフェイトへと抱きつき、さらに涙を流し始めた。本当に、やっと、自分の想いがフェイトへと伝わった。そんな嬉しさが感じられるなのはの涙であった。

 そんなはのはを、フェイトは優しく抱きしめる。

 

「ありがとう、なのは。今は離れ離れになってしまうけど、きっとまた会える――そうしたら、また君の名前を、呼んでもいい?」

「うんっ! うんっ!」

「寂しくなったら、きっと君の名前を呼ぶから、だから、君もわたしの名前を呼んで……なのはに困ったことがあれば、今度はわたしが助けるから」

 

 フェイトが優しい言葉でそう話すと、なのはは涙を流しながらも、「うんっ! うんっ!」と、何度も頷きながら、誰の目も憚ることなく、嗚咽を漏らしていた。

 

 

 二人が抱き合っている姿を祐一は少し離れた場所から見つめていた。

 

(プレシアさん、あなたの娘は、今、笑っていますよ)

 

 そう心の中で、今はいないプレシアへと報告するように告げた。

 なのはとフェイトお互いに、よき友人ができたことに祐一は内心でとても嬉しく思っていた。

 そう祐一が思っていると、時間なのかクロノが二人に近づいているのを視界に捉えたため、祐一も同じようにフェイトたちの方へと歩みを進めた。

 皆、祐一が近づいてくると、そちらへと視線を向けた。そんな中でも祐一は動じることなく、静かに口を開いた。

 

「話は済んだのか?」

「うん、大丈夫。ちゃんと言うべきことは、全部言ったから。もう、大丈夫だよ」

「そうか」

 

 なのはの言葉に祐一は頷きを返し、そのままフェイトへと視線を向ける。

 フェイトは祐一へと体を向け、両手を前で組んだ状態で背の高い祐一と視線を合わせるように、上目遣いで祐一を見つめていた。

 そんなフェイトの瞳を見つめながら、祐一は静かに話す。

 

「もう、気持ちの整理はついたのか、フェイト?」

「……ううん。正直、まだ気持ちの整理は出来ていないと思う」

 

 祐一の言葉にフェイトは首を振るが、すぐに話を続けた。

 

「――だけど、俯くのはもう止めて前へ進んでいこうと、わたしは思ってるよ。大事な友たちも出来たし、何より、母さんが願っていたことでもあるから……」

 

 フェイトの瞳には、以前にはなかった力強さがあると、祐一は感じていた。

 その力強さ、前へと進んでいこうとする気持ちこそ、祐一がフェイトに持っていてほしいと思っていたものであった。

 

「みんながわたしを支えてくれる限り、わたしはまだまだ頑張れるんだって、そう感じることができたから」

「そうか。そう思えるのなら、お前はもう十分にやっていけるだろう」

「うん。ありがとう、祐一」

 

 久しぶりに見た祐一の微笑みとその力強い言葉に、フェイトは嬉しさに頬を赤く染めながら微笑を浮かべていた。

 

「――時間だ、そろそろいいか?」

「あ、うん」

 

 クロノが僅かにバツが悪そうな表情となりながらも、そう言葉を口にしながら割り込んできた。

 フェイトが少しだけ悲しそうな表情をしたことも相まったのか、申し訳なさそうな表情であったが、これだけの時間を取ってくれたクロノを責めることはできないだろうと、祐一は思っていた。

 そんな雰囲気の中、なのはが叫ぶように声を上げた。

 

「フェイトちゃんっ!」

「……?」

 

 大きな声で自分の名前を呼ばれたことに少しだけ驚きながら、フェイトがなのはへと視線を向けると、なのはが自信の髪を結んでいたピンクの二つのリボンを外し、フェイトへと差し出してきた。

 

「――思い出にできるもの、こんなのしかないんだけど」

 

 なのはが申し訳なさそうに言葉を口にするが、フェイトは微笑を浮かべながら、

 

「じゃあ、わたしも」

 

 同じように自身の髪を結んでいた、なのはとは対照的な黒色のリボンをなのはへと差し出した。

 フェイトが同じことをしてくれると思っていなかったなのはは、驚いた表情をしていたが、すぐにその表情を微笑みに変えた。

 そして、二人はお互いのリボンを大事な宝物のように受け取った。

 

「ありがとう、なのは」

「うん、フェイトちゃん」

「きっと、また」

「うん――きっと、また」

 

 二人が名残惜しそうに距離を取ると、なのははアルフとクロノにも別れの挨拶を口にする。

 

「アルフさんも、また」

「ああ、ありがとうね、なのは」

「それじゃあ、僕も」

「クロノくんも、またね」

「ああ」

 

 皆の挨拶が終えると、転送用の魔法陣がフェイト、アルフ、クロノの足下に展開された。

 そんな中、フェイトが目に涙を溜めながら祐一へと声を大にして叫ぶ。

 

「祐一もまた会おうねっ! 絶対だからねっ!」

「ああ、また会おう」

 

 フェイトの言葉に祐一はそう言葉を返した。

 そして、祐一はクロノへと声を掛ける。

 

「クロノ、フェイトのことをよろしく頼むぞ」

「あなたに言われるまでもない。……最善を尽くしますよ」

「そうか。リンディさんにもよろしく伝えておいてくれ」

 

 そう話す祐一に、クロノは僅かに目を逸らしながらも片手を挙げることで答えた。

 

「アルフもフェイトのことを――いや、お前にはそんなこと言う必要もないか」

「そうだよ。わたしはどんなときでも、フェイトの味方だからね」

 

 得意げに話すアルフに、祐一は苦笑を浮かべる。

 

「――今更だが、怪我をさせて悪かったな、アルフ」

「もう気にしてない。ちゃんと理由があったんだから、もういいさ」

「すまない」

 

 気にしていないと、豪快に笑みを浮かべるアルフに祐一は苦笑を浮かべると、再びフェイトへと声を掛ける。

 

「俺はお前と共に行くことはできない。だが、これだけは覚えておいてくれ――お前の身に危険なことがあればいつでも俺を呼べ。必ず、お前の下へと駆けつけることを約束する」

「っ!? うんっ! ありがとう、祐一!」

 

 祐一の言葉に、フェイトは嬉しさと恥ずかしさから頬を赤く染めながら叫ぶように声を上げた。

 そして、魔法陣の光がいっそう強くなってきた。もう間もなく、三人の姿がこの場から消えてしまう。

 

「またね、クロノくんっ! アルフさんっ! フェイトちゃんっ!」

 

 なのはは三人に向かって叫び、それにフェイトは手を振ることで答えた。

 

「じゃあな」

 

 最後に祐一が片手を挙げながら声を上げると、魔法陣がさらに光り輝いていった。

 そして、光が消えたその場所から三人の姿は消えていた。

 しばらくの間、なのははフェイトたちがいなくなった場所を見つめ、

 

「さて、祐一お兄さん、帰ろ!」

「そうだな」

 

 なのはは祐一の手を両手で引き、そんななのはに苦笑を浮かべながら、祐一たちはその場を後にした。

 

 

 ――この一連の事件は、首謀者であったプレシア・テスタロッサの名を冠し、"PT事件"と呼ばれることとなる。

 

 ――そして、かつて《黒衣の騎士》と呼ばれ名を馳せた青年は、また、新たな事件へと巻き込まれていく。

 

 

 ――次なる物語の舞台は半年後――

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、指摘をよろしくお願いします。
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