遅くなりました。
遂にA's編突入です。
では、どうぞ。
新たなる幕開け
プレシア・テスタロッサが起こした事件から数週間が経った。
後に"PT事件"と呼ばれる事件は、この事件の首謀者であるプレシア・テスタロッサから取られている。
この事件の始まりは、プレシアが忘れられし都アルハザードへと至るため、ロストロギアである"ジュエルシード"を集めていたことから始まった。
アルハザード――この名前は魔導師ならばほとんどの者が知っており、古代ベルカよりさらに昔に存在したといわれている世界で、そこでは死者さえも甦らせる秘術があるとされていた。
そして、プレシアの願いとは、不幸な事故で亡くなってしまった自分の愛娘である、アリシア・テスタロッサを甦らせることであった。
――しかし、その願いとは別に、プレシアにはもう一つの願いがあった。
それは、アリシアのクローンであり、プレシアのもう一人の娘――フェイト・テスタロッサを"自分"という呪縛から解き放つことであった。
その悲しい願いがもたらした結果がPT事件であり、その事件の首謀者であるプレシアが虚数空間へと落ち、消えたことでこの事件は終わりを迎えた。
そのPT事件に深く関わり、この事件が良くも悪くも大きな転機となった人物が三人いた。
一人目は、魔法のことなど全く知らなかった弱冠小学三年生の少女――高町なのは。
事件の原因であるジュエルシードを回収しにきていたなのはと同い年の少年――ユーノ・スクライアと出会い、ユーノが持っていたインテリジェントデバイス"レイジングハート"を相棒とし、この事件へと深く関わっていった。
そして、この事件で関わることになったフェイトとお互い引けない想いから何度もぶつかり合いながらも、持ち前の不屈の心でフェイトと想いを通わせていった。
PT事件から様々な戦いを経験し、魔導師として急成長を果たし、PT事件の解決に大きく貢献した少女である。
事件後は、以前と変わらない普通の暮らしに戻っている。
二人目は、プレシアの娘であったアリシアのクローンで、長くて綺麗な金髪が特徴的な、なのはと同い年の少女――フェイト・テスタロッサ。
自身の母親であるプレシアに冷たくされながらも、懸命に母親のために文字通り体を張り、戦い続けた心優しい少女である。
魔導師としての才能はなのはと同様に目を見張るものがあり、戦闘においては、その圧倒的スピードで、他者の追随を許さないほどの力を発揮していた。
事件後は、自身の使い魔であるアルフとともに、PT事件の重要参考人として管理局へと赴いている。
そして最後の三人目は、地球の海鳴市で"便利屋"をしながら暮らしている青年――黒沢祐一。
過去に管理局に所属しており、戦闘経験が豊富で高い戦闘力を備えた魔導師である。
常に冷静沈着であり、また戦闘面だけでなく、全てにおいて高い能力を兼ね備えた魔導師であったことから、管理局に所属していた時には"黒衣の騎士"と呼ばれ、最強クラスの魔導師と言われていた。
そんな祐一は、プレシアからの依頼でフェイトを魔導師として育てたことから、今回の事件へと関わっていった。
プレシアから本当の願いを聞き、その願いを叶えるために管理局と戦い、最終決戦では管理局執務官のクロノ・ハラオウンと激しい戦いを繰り広げた。
そんな彼を、クロノの母親であり巡行艦"アースラ"の提督であったリンディ・ハラオウンは、祐一のプレシアたちへの想いと今回の状況から罪を許した。
事件後は、以前の生活へと戻っていた。
そんな激しかった戦いも終わり、平穏が訪れていたが、また新たな事件の幕が上がろうとしていた。
祐一はいつものように朝の日課であるトレーニングとなのはの魔法訓練の監督を終え、今は図書館へとやってきていた。
最近祐一は、図書館で知り合った少女――八神はやてに勉強を教えることが日課となっていた。
出会いは偶然だった。たまたま、祐一が本を探していたとき、車椅子に乗った少女が必死に手を伸ばし、本を取ろうとしている現場を目撃し、本を取ってあげたことが切っ掛けだった。
その後、はやてがお礼にと弁当を作ってくれたということもあり、親密になっていく中で、祐一がはやてに勉強を教えることとなった。
そして、今はそのはやてに勉強を教えているところであった。
「――なぁなぁ、祐一さん、今日はうちに晩御飯食べにきてくれへん、かな……?」
「……? どうしたんだ、急に?」
祐一は本から視線をはやてへと移しながら、首を傾げた。
そんな祐一の視線に、少しだけ恥ずかしそうにはやては頬を染めた。
「あ、あんな? ゆ、祐一さんは一人暮らしやって言うてたし、男の人は一人暮らしやと食べる物とか適当になるって聞いたし……あっ!? ゆ、祐一さんが適当とか言うてるんちゃうんやけど」
何故かはやては、慌てたように身振り手振りで祐一へと説明し始めた。
そんなはやてに祐一は笑みを浮かべながら声を掛ける。
「構わないよ。確かに一人だと何も気にしていないからな。……だが、いいのか? 俺のような男が邪魔しても」
「ぜ、全然かまわへんっ! むしろ、祐一さんに来てもらったほうがわたしも嬉しいからっ!」
「そうか。それなら、お邪魔させてもらおうか」
「は、はいっ! 歓迎しますっ!」
はやては頬を染めながら、満面の笑みで祐一へと言葉を返した。
その後、祐一とはやては図書館を出て、祐一は一度家へと戻り、はやては晩御飯の買い物へと行った。
はやてが買い物をすると言ったので、祐一も手伝おうかと言ったのだが、「わたし一人で大丈夫です!」と言われ、祐一は後からはやての家へと訪れることを余儀なくされたのだ。
そして祐一は、しばらくしてからはやての家を訪れた。
「あ、いらっしゃい、祐一さん」
「ああ、お邪魔させてもらうぞ」
祐一が玄関の扉を開けると、はやての満面の笑みで迎えられ、つられるように祐一も笑みを浮かべた。
そして、祐一がはやてに連れられリビングへと歩みを進めると、テーブルにはおいしそうな料理の数々が並べられていた。
「これは、すごいな」
「い、いや、そんなにすごないよ。一般的な料理ばっかりやし……」
「そんなことはないさ。ここまで作れるとはたいしたものだ」
祐一の賞賛の言葉に、はやては頬を赤く染めながらも笑みを浮かべた。
「さ、さぁ、そんなことより、はよ食べよっ」
「そうだな。では、いただこうか」
「はい、食べてください」
はやての言葉に祐一は食事を開始したのだった。
それから祐一は、はやての料理を食べる度に「うまいな」とはやてを褒め、それに「ありがとうございますっ」と、はやては頬を染めながらも嬉しそうに微笑を返していた。
そして、全ての食事を食べ終わると、祐一は後片付けぐらいはしないと申し訳ないと思い、今は食器を洗っている。その横に、祐一が洗った食器などを拭いているはやての姿もあった。
「すみません、祐一さん。後片付けさせてしもて」
「別に構わんよ。これぐらいはしないとバチが当たりそうだからな」
「ふふ、ありがとうございます」
それから二人は後片付けを済ませ、少し休憩するために席に着いた。
そして、しばらく二人で話をしていると、はやてが少しバツが悪そうにしながら口を開いた。
「ホンマは自分で言うのもあれなんやけど――実は明日、わたしの誕生日なんよ」
「本当か? それならそうと言ってくれればよかったんだが……残念ながらプレゼントは買ってきてないぞ?」
祐一はそう言いながら時計を見たが、もうすぐ二一時を回ろうかという時間帯であった。今から出て行っても、プレゼントは買えるような時間ではなかったため、僅かに眉を寄せた。
すると、はやては慌てて両手を振りながら祐一へと言葉を返した。
「プレゼントが欲しくて祐一さんに言ったわけやなくて、わたしの誕生日を知って欲しかったっちゅうか……」
「気にするな。ちゃんとプレゼントは用意するさ」
「い、いやいやっ! なんか、催促したみたいで申し訳ないんやけどっ!?」
「だから気にするな。俺がはやてにプレゼントしたいだけだからな」
祐一が笑みを浮かべると、はやては困った表情をしていたがすぐに笑顔を浮かべた。
「わかりました。じゃあ、楽しみにしてます!」
「ああ。だが、あまり期待はしないでくれよ? こういうのはあまり得意じゃないんでな」
祐一はそう話しながら苦笑する。
「それから、今日は晩御飯に招待してくれてありがとうな」
「いえ、わたしも久しぶりに誰かと食事するの楽しかったし」
「そうか……いつも、一人なのか?」
祐一の言葉にはやては寂しそうな笑みを浮かべる。
「……はい。お金はおじさんが援助してくれてるんで大丈夫なんやけど、他の人と食事をするとかもなかったから……だから、祐一さんといっしょに晩御飯食べれて嬉しかったです」
そう嬉しそうにはやては笑みを浮かべる。
「そうか。俺は予定が空いていればいつでも大歓迎だ。俺もはやてと食事をするのは楽しいからな」
祐一はそう言いながら、はやての頭をぽんぽんと軽く叩いた。
はやては少し驚いた表情をしたあと、満面の笑みを浮かべ、
「はいっ! また、いっしょに!」
元気よく言葉を返した。
その瞳には、僅かに涙が浮かんでいた。
「さて、もう時間も遅いし、俺は帰るよ」
祐一がそう話すと、はやてが一瞬だけ寂しそうな表情をしたが、すぐに笑みを浮かべる。
「そですね」
「そんな顔をするな。また明日も図書館で会える」
祐一はそう言いながら、はやての頭を優しく撫でる。
「……うん、ありがとな、祐一さん」
寂しそうにしながらも笑顔を見せたはやてに、祐一は頷きを返す。
「じゃあ、おやすみ、はやて」
「ほな、おやすみなさい、祐一さん」
そう言葉を交わし、祐一ははやて宅を後にした。
祐一がはやての家から帰った数時間後――
「っ!? ……この感じは……?」
祐一は微弱ながら魔力の反応を感じ、僅かながら眉を顰める。
「こっちははやての家の方角だが……一応、確認するか」
祐一は上着を羽織り、自身のデバイスである"冥王六式"を持ち家を出た。
もう日付も変わっていたこともあり、人もほとんどいなかった。
祐一は夜も更けた街を微弱な魔力を頼りに走る。
しばらく走り、祐一は魔力の出所に到着し、足を止めた。
「……まさか、はやての家から感じていたとはな」
祐一はそう呟いた後、はやての家へと――鍵は閉まっていなかったため――踏み込んでいった。
そして、はやての部屋へと祐一は入り、
「はやて、無事か!」
はやての名前を呼びながら祐一が部屋に入っていくと――そこには――
「貴様、何者だ……?」
剣を構えたポニーテールの女性、赤髪で気の強そうな少女、金髪をショートカットにしたおっとりとした女性、筋骨隆々な男、それぞれが祐一へと鋭い視線を向けていた。
「――なんだ、この状況は……?」
そんな状況の中、気を失っているはやてを見ながら、祐一は静かに呟いた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、指摘をお願いします。