魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。
少しずつ更新ペースが落ちてきて、申し訳ありません。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ。


守るということ

 ――時空管理局本局《医療室》――

 

 ここ管理局本局の医療室で、今、二人の少女と一匹の狼が眠っていた。

 高町なのは、フェイト・テスタロッサ、そしてフェイトの使い魔であるアルフの三人であり、そして、その三人を心配そうに見つめる人物が二人そこにはいた。

 

「三人とも怪我はないわ。ただ眠っているだけ」

「……そうですか」

 

 三人を見つめながら心配そうに、巡行艦《アースラ》の艦長であるリンディ・ハラオウンは言葉を口にした。

 それに静かに言葉を返したのは、漆黒の衣服に身を包んだ黒沢祐一だった。

 そんな祐一に少しだけ視線を向けた後、三人に視線を戻しながらリンディは話を続ける。

 

「ただ、魔導師の核であるリンカーコアが異様なほど小さくなっていたわ。……ああ、別に命に関わる問題ではないのだけどね。だからというわけではないけれど、あんまり自分を責めては駄目よ、祐一くん」

「……わかっています」

 

 リンディの言葉に、祐一は静かに頷きを返した。

 

(やっぱり、私が何を言っても駄目ね。こればっかりは自分の心の問題でもあるし、他人がとやかく言うことではないかしらね)

 

 横に立っている長身の青年を見つめながらリンディは静かに溜め息を吐いた。

 だが、自分にはそんなに疲れている時間も無いと気持ちを入れ替え、リンディは祐一へと話し掛ける。

 

「時期に三人とも目を覚ますでしょうから、それまでに祐一くんが知っていることを教えてくれるかしら?」

「ええ、わかりました」

 

 祐一はリンディの言葉に頷くと、自分が知っていることをリンディへと話し始めた。

 

 ◆

 

 祐一の話を聞き終わると、リンディは顎に手を当てながら静かに呟いた。

 

「祐一くんを襲ったっていう《仮面の男》は、結局何が目的だったのかしら……?」

「俺にもそれは分かりません。ただ、よほど俺を結界内に行かせたくなかったようですが……」

「祐一くんを結界内に行かせたくなかったということは、結界内で行われていたことを邪魔されるのが嫌だったから。――となると、結界内でなのはさんたちを襲った人たちと《仮面の男》は仲間だったということかしら?」

 

 リンディの言葉に祐一は首を振る。

 

「いえ、それは無いと思います」

「どうしてそう思うのかしら?」

「奴らの強さは並じゃなかった。それこそ、今のなのはとフェイトには少々荷が重かったはずです。もし、"結界内にいる奴ら"と《仮面の男》たちが仲間だったなら、早期決着を狙ったはずです。だが、奴らは結界の外で待っているだけだった」

 

 祐一の言葉にリンディはなるほど、と頷いた。

 

「そういうこと。確かに、《仮面の男》が結界内の人たちといっしょになのはちゃんたちと戦っていたら、もっと早く決着がついていたでしょうね」

「そういうことです」

 

 そう話した祐一にリンディは疲れたように溜め息を吐いた。

 

「はぁ、結局、祐一くんが戦った《仮面の男》の目的はわからずじまいですか。なら、私たちはやっぱり、結界内にいた人物たちを追った方がよさそうね」

 

 リンディの言葉に祐一は何か言おうとしたが、今は話すべきではないと思い口を噤んだ。

 

(ここでシグナムたちのことを話せば、すぐに事件は解決するのだろうが、それでは駄目だろう。はやてのこともある。――やはり、あいつらと一度話をしなくてはな)

 

 結界内でなのはたち三人を襲ったのは、シグナムたちであった。それはクロノから見せてもらった映像で確認済みだった。そして、シグナムたちの目的は魔力の蒐集。

 自身を襲ってきた《仮面の男》の動向も気に掛かるが、今はシグナムたちの方が最優先だと、祐一は心に決めた。

 そして、しばらくの間リンディと話をしていると、

 

「う……ん、ゆういち、おにいさん……?」

「……ここ、は……?」

 

 なのはとフェイトがゆっくりと目を覚ました。

 そしてリンディは、すぐに近くにいたスタッフへと先生を呼んでくるように話すと、なのはたちへと声を掛けた。

 

「なのはさん、フェイトさん。気分はどう……?」

「リンディさん……? は、はい、なんとか大丈夫です」

「わたしも、大丈夫です」

「そう、よかったわ」

 

 まだ万全ではないものの、なのはとフェイトはベッドの上で体を起こしながら小さく笑みを浮かべ、それを見たリンディもほっとしたように息を吐いた。

 するとなのはが、フェイト、祐一の順番に視線を向けると、僅かに悲しそうな笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「にゃはは、ごめんね、フェイトちゃん、祐一お兄さん。久しぶりの再会がこんなことになっちゃって……」

「ううん、気にしないで。それより、わたしの方こそなのはを助けられなくてごめんね……」

 

 なのはの言葉に、フェイトは首を横に振った後、僅かに目尻に涙を溜めながら謝罪の言葉を口にした。

 そんな優しいフェイトになのはは微笑を浮かべながら、フェイトと同じように首を横に振る。

 

「ありがとう、フェイトちゃん。わたしを助けに来てくれて。それに、久しぶりに会えて、わたしとっても嬉しいよ」

「……うん、わたしも、なのはに会えて嬉しいよ」

 

 お互いに笑顔を浮かべながら、なのはとフェイトは再会したことを喜び合った。

 そんな二人を見て、祐一とリンディは微笑を浮かべていた。

 そして、二人はしばらくの間、お互いに視線を合わせていたが、そろって祐一の方へと視線を向ける。

 

「――祐一お兄さんと会うのも、久しぶりだね」

「ああ、そうだな。フェイトも久しぶりだな」

「うん。祐一に会えて嬉しいよ」

 

 祐一が笑みを浮かべながら話し掛けると、フェイトも久しぶりに祐一と会えたことが嬉しかったのか、花が咲いたように微笑んでいた。

 

「祐一お兄さんも、久しぶりに会えたのにこんなことになってゴメンね?」

 

 そして、なのはは申し訳なさそうに顔を俯かせながら口を開いた。しかし、祐一はそんななのはの謝罪の言葉に小さく首を横に振った。

 

「いや、フェイトも言っていたが、気にしなくて大丈夫だ。それに、謝らなければならないのは、俺の方だからな……」

「なんで……?」

 

 祐一の言葉になのはは首を傾げた。

 そして、祐一は事の顛末をなのはとフェイトに説明した。

 

「――《仮面の男》に邪魔をされたのも事実だが、そんなものは言い訳にもならない。だから、二人とも助けに行けなくて、すまなかったな」

 

 祐一はそう話しを終えると、フェイトとなのはに向かって頭を下げた。

 そんな祐一の姿を見て、なのはとフェイトはお互いの顔を見合わせ、笑みを浮かべた。

 

「相変わらずだな、祐一お兄さんは。律儀というか、なんというか」

「わたしたちは大丈夫だから、気にしないで」

「そうだよ。それに、魔力が減っただけで怪我も治ってるんだから、そんなに気にすることないよっ」

「……そうか」

 

 フェイトとなのはの言葉に、祐一は苦笑を浮かべながら静かに頷きを返した。

 

「祐一お兄さんもありがとね。わたしを助けに来てくれて」

「いや、結局は何も出来なかったからな……」

「ううん、助けに来ようとしてくれただけで、わたし、とっても嬉しかったから」

「なのは……」

「そうだよ、祐一。なのはの言うとおり、わたしたちを助けようとしてくれたその気持ちだけでも、わたしもとても嬉しいよ。祐一が頑張ってくれていたって、わたしとなのはは分かってるから」

「フェイト……」

 

 なのはとフェイトは、二人を助けることが出来なかった自分を責める祐一に、笑顔で励ましの言葉を掛けた。そんな二人の言葉に、祐一は礼を持って答える。

 

「……ありがとう、フェイト、なのは。もう、お前たちを危険な目には合わせないと約束するよ」

 

 なのはとフェイトに向かって、祐一は静かに頭を下げた。

 二人といえば、祐一の言葉に僅かに頬を赤く染めながら笑顔で答えた。

 

「ありがとう、祐一お兄さん」

「うん、ありがとう、祐一」

「ああ」

 

 笑顔で言葉を返した祐一に、なのはとフェイトの二人は祐一の笑顔が戻ってよかったと、そう思った。

 

 ◆

 

 それから、クロノとエイミィも合流し、皆で情報交換を行った。そうしてまとまった話が、下記になる。

 今回の一件は、管理局で第一級捜索指定されているロストロギア、《闇の書》が絡んでいるということ。また、それを完全なものとするため、リンカーコアの蒐集に《守護騎士》が動いているということ。

 そして、目的は不明ではあるが、祐一と交戦した《仮面の男》が二人いるということ。二人掛かりではあるものの、祐一を苦戦させる程の実力を有していることから、警戒が必要であるということ。

 

「――というのが、今、僕たちが分かっている情報だ。他に何かあるか?」

「……いや、大丈夫だろう」

 

 クロノの言葉に祐一は静かに頷いた。

 今、同じ部屋にいるのは、祐一、フェイト、なのは、アルフ、リンディ、クロノ、エイミィの七人である。しばらく時間が経ったこともあり、フェイト、なのは、アルフの三人も動く程度は回復したので、今は着替えて話を聞いていた。

 ちなみに、この場にはいないがユーノも今回の一件に協力してくれている。一足先に《闇の書》について調べるために、《無限書庫》へと向かったのだ。

 

「じゃあ、僕からの話は以上で終わりだ。何か質問はあるか?」

「あっ、はい。これから、わたしたちはどうすればいいのかな?」

 

 そう手を上げてなのはがクロノへと質問した。

 

「とりあえず、この一件は僕たちの担当になることが決定した。だが、なのはとフェイトは僕たちを手伝う必要はないんだが……きっと、言っても聞いてくれないだろ?」

「うん。わたしも手伝うよっ!」

「わたしも。あの人たちとちゃんと話をしないと」

 

 そう話すなのはとフェイトに、クロノははぁ、と溜め息を吐くと、観念したように話を続けた。

 

「まぁ、そう言うと思ってたけどね。なら、なのはとフェイトには嘱託魔導師として、僕たちの捜査に協力してもらうよ。ただ、二人の魔力が戻って、レイジングハートとバルディッシュの修理が完了したらだけどね」

「さっすがクロノくんっ!」

「ありがとう、クロノ。迷惑掛けてゴメンね?」

「もう慣れたよ」

 

 フェイトの言葉に、クロノは苦笑しながら答えると、視線を祐一へと移した。

 

「それで、あなたはどうしますか?」

「……いや、俺にはまだやることがある。それが終わったら協力しよう」

「そうですか、わかりました」

 

 祐一の言葉にクロノが頷くのを確認すると、リンディが口を開いた。

 

「じゃあ、今日はこれで解散かしらね。今から準備しないといけないことが沢山ありますからね」

「了解です、艦長」

 

 リンディの言葉で今日は解散となった。

 

「祐一お兄さんっ! いっしょに帰ろ」

「そうだな」

 

 なのはが元気よく祐一へと声を掛け、祐一も頷きを返した。

 

「あ、なのは、帰るのは少し待ってくれないか?」

「なんで……?」

「今からフェイトの面接があるんだが、その面接官に会うのになのはもいっしょに来てもらおうと思ってね」

「そうなの……?」

 

 クロノの言葉に、なのはが不思議そうに首を傾げた。フェイトは分かるが、何故自分が呼ばれるのかが理解出来なかったのだ。

 そんななのはにクロノがその理由を説明し始めた。

 

「その面接官になのはの話しをしたら、一度会って話しをしてみたいと言っていてね。だから、お願いできるか?」

「うん、わかった」

 

 そこまで言われると、なのはとしても断る理由がないため、なのははクロノへと頷きを返した。

 そして、そんな二人のやり取りを黙って見ていた祐一は、今からどうしようかと考えていると、クロノが声を掛けてきた。

 

「よかったら、祐一さんもお願いできますか?」

「会うぐらいなら構わないが。……その面接官とは、誰のことなんだ?」

 

 祐一の言葉にクロノはその面接官の名前を答えた。

 

「――ギル・グレアム顧問官です」

 

 思いがけない重鎮の名前を聞き、祐一は僅かに驚きの表情を浮かべていた。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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