投稿が遅れて申し訳ありません。
出来るだけ一週間更新を続けていきたいと思います。
次はきっと。。。
では、どうぞ。
祐一、なのは、フェイトの三人は、クロノに連れられ、本局のとある一室へとやってきていた。
「――わざわざ来てもらってすまない。久しぶりだな、クロノ」
「ご無沙汰しています」
部屋へ入ると、そこには一人の初老の男性が椅子に座っていた。
――ギル・グレアム。
時空管理局顧問官を務める局の重鎮であり、今回、フェイトの保護監察官となった人物である。
白髪に白髭と、まさに老人を絵に書いたような人物であるが、その物腰穏やかな感じとは裏腹に、上に立つもの特有の威厳も兼ね備えていた。
(まさか、このような大物に出会うことになるとはな……)
祐一は温厚そうなグレアムを観察しながら、心の中でそう思った。
「フェイトとなのはは座るといい。祐一さんは……」
「いや、俺は部外者だからな。ここで聞かせてもらおう」
「わかりました」
そう答える祐一にクロノは僅かに苦笑し、フェイトとなのははグレアムの対面に座り、祐一は扉付近で立っていた。
皆の準備が出来たと判断すると、グレアムが笑みを浮かべながら口を開いた。
「まずは挨拶からだね。私がフェイトくんの保護監察官となるギル・グレアムだ。まぁ、保護監察官と言っても形だけだがね。君の人柄や"先の事件"のことについては、リンディ提督から聞いているしね。素直で優しい子だと聞いているよ」
「い、いえ、そんな……ありがとうございます」
フェイトは褒められたのが恥ずかしかったのか、僅かに頬を赤く染めた。
そんなフェイトの姿を笑顔で見つめた後、同じようになのはへと声を掛ける。
「君が高町なのはくんだね?」
「あ、はい。そうです」
「そうか。なのはくんは日本人なんだね。懐かしいな、日本の風景は……」
「え……?」
「私も君と同じ世界の出身でね。イギリス人だ」
「えぇ~!? そうなんですかっ!?」
グレアムの言葉に、なのはは驚きの声を上げた。
そんななのはに笑顔を向けながら、グレアムは「そうなんだよ」と頷きを返す。
「あの世界のほとんどの人間は魔力を持たないが、稀にいるんだよ。君や私のように高い魔力資質を持った人間がね」
そう話すグレアムになのははしきりに頷いていた。
そして、グレアムは自身も管理局員を助けて魔導師となったことなどを話すと、視線を祐一へと向けた。
「――君が黒沢祐一くんだね?」
「はい。紹介が遅れましたが、黒沢祐一と言います」
「そうか。君の噂は私の耳にも届いているよ。以前、管理局に所属していたときはとても優秀な魔導師だったと聞いているよ」
「いえ、そんなことはありませんよ。私なんかよりも、優秀な魔導師はたくさんいます」
祐一の言葉にグレアムは、笑みを深くする。
「はは、聞いていたとおりの男だな、君は。そんな君だからこそ、慢心することなく、常に高みを目指していけるんだろうね」
「……ありがとうございます」
グレアムの褒め言葉に祐一は、静かに頭を下げた。
「さて……では、フェイトくんの面談を始めようか。といっても、そこまで硬い内容でもないんだけがね」
そう口にしたグレアムの言葉を聞き、フェイトは僅かに表情を強張らせた。少し緊張した面持ちで背筋をピンと伸ばしている。
そんなフェイトの表情を見て、グレアムは苦笑を浮かべながらフェイトへと質問を開始した。
◆
「――私からの質問は以上だね」
「はい。ありがとうございました」
グレアムは資料から目を離しながらフェイトとなのはへと笑顔で話しを終えた。
結局、世間話に近い内容となっていたが、まだ弱冠九歳の少女たちへの対応だからこんなものだろうと、祐一は思っていた。
「では、最後に私から一つだけ言っておきたいことがある」
「はい」
すると、グレアムが笑みを消し真剣な表情となりながらフェイトへと話し掛けた。
「私が約束して欲しいことは一つだけだ。友達や自分を信頼してくれる人のことは決して裏切ってはならない。これが守れるなら、私は君の行動について何も制限しないことを約束するよ。――できるかね?」
その言葉を聞き、フェイトは静かに一度深呼吸をした後、真剣な眼差しでグレアムへと言葉を返えす。
「――はい。必ず」
「――うむ、いい返事だ。では、話はこれでお終いだ。疲れていただろうに、すまなかったね」
「いえ、ありがとうございました」
グレアムの労いの言葉に、フェイトとなのはの二人は頭を下げた。
そして、フェイトとなのはは退出するため扉の方へと向かっていき、それを見た祐一も後に続いた。
「では、これで失礼します。あ、それから――」
すると、クロノが退出しようとしていた足を止め、グレアムへと振り返った。
「もう聞き及びかもしれませんが、先ほど自分たちがロストロギア《闇の書》の捜索、調査担当になることが決定しました」
「……そうか。言えた義理ではないかもしれないが、無理はするな」
クロノの言葉を聞き、グレアムが静かに頷いた。
そのとき、グレアムの表情を見つめていた祐一は僅かではあるが、違和感を感じた。
(……? 今、グレアム顧問官の表情が僅かに揺らいだような……)
自身が感じた違和感に、祐一は僅かに眉を顰めた。
だが、それを感じたのも一瞬であり、もう何も感じなくなっていた。
(俺の気のせいか……)
祐一が一人首を捻っていると、クロノがグレアムへと言葉を返した。
「大丈夫です。"急事にこそ、冷静さが最大の友"――提督の教えどおりです」
「……うむ。そうだったな」
クロノの言葉にグレアムは一瞬驚いた表情をした後、深く笑みを浮かべた。
グレアムの表情を確認し、クロノは退出するために扉の方へと向かう。
「では、失礼します」
皆が退出し、部屋の扉が閉まるまでグレアムはそちらを見つめ続けていた。
そんなグレアムに祐一はやはり違和感を覚えながらも、部屋を後にした。
◆
(――この歳になってもまだまだ感情は隠せないものだな)
そう静かに息を吐きながら、ギル・グレアムは椅子に腰掛けた。
(まさかクロノたちが、《闇の書》の担当になるとはな。……運命だとでもいうのか)
心の中でそう考えながら、舌打ちしたくなる気持ちを無理やり押さえ込むように、椅子に深く体を沈めた。
――自身が決着をつけると決めた《闇の書》。
もう少しで目的が達成しようというところだった矢先、クロノたちが担当となってしまい、グレアムとしては行動をし辛くなってしまった。
(――それに問題がもう一つ)
頭の中で考えながら思い出すのは、《黒衣の騎士》――黒沢祐一の姿だった。
("二人"からの報告もあったが、《黒衣の騎士》の名は伊達ではないということか……)
グレアムが自信を持って送り出した二人が敗北した。見くびっていたわけではない。二人が敗北したことはグレアムを驚かせるのには十分な理由であった。
(私たちの計画を遂行する上で、厄介な存在になるのは間違いないだろう。だが……)
グレアムは祐一を評価しながらも、自身の心に決意させるように言葉を口にする。
「私は、もう止まるわけにはいかないのだよ。例え相手が誰であろうと、《闇の書》は必ず封印してみせよう。それが、この世界のためなのだから……」
自分に言い聞かせるよう静かに、だがはっきりと言葉を口にした。
◆
――八神家――
シグナムたちはなのはたちとの戦闘後、管理局の索敵を振り切り、無事にはやての下へと帰還していた。
(――主に我らがしていることを黙っているのは心苦しいが、主のこの笑顔が我らに更なる力を与えてくれている)
シグナムは頭の中でそんなことを考えながら、ヴィータと笑顔で話しをしているはやてを見つめ、思わず笑顔を浮かべた。
(この笑顔を守るためならば、私はどんなことでもしよう)
そうシグナムは静かに決意を固めた。
「はやてちゃん、お風呂の支度できましたよ」
そんなシグナムの決意を余所に、シャマルがエプロンで手を拭きながらはやてへと声を掛けた。自然な動作でエプロンをはずすシャマルの姿を横目に見ながら、シグナムは心の中で板についてきたな、としみじみ思った。
「うん、ありがとう」
「ヴィータちゃんも一緒に入っちゃいなさいね」
「はぁ~い」
はやては笑顔でシャマルへとお礼を言い、ヴィータも返事をした。
そして、シャマルははやてへと近づくと、失礼しますと断りを入れた後、はやてを抱え上げた。はやては足が不自由で立つことができないため、風呂場までは誰かがこうやって運んでいくのが通例となっていた。
「よいっしょっと。シグナムはお風呂どおします?」
「……私は今夜は遠慮しておく。明日の朝にでも入るよ」
シグナムはシャマルの質問に言葉を返した。
そんなシグナムの言葉が珍しかったのか、シャマルとヴィータが首を傾げる。
「そう?」
「お風呂好きが珍しいじゃん?」
シグナムははやてが主となってから、このお風呂を初体験し、これに魅了されてしまい、現在の八神家で一番の長風呂はシグナムとなっていた。
そんなシグナムがお風呂には明日入ると言っているのだから、皆が首を傾げるのも道理であった。
「たまにはそういう日もあるさ」
「ふぅ~ん」
「ほんならお先に」
「はい」
はやての言葉にシグナムは頷きを返した。
はやてたちが風呂場へと消えると、今まで黙っていたザフィーラがシグナムへと声を掛けてきた。
「今日の戦闘か?」
「聡いな――そのとおりだ」
ザフィーラの言葉にシグナムは答えると、おもむろに自分の服をたくし上げると、そこには大きな痣が出来ていた。
「お前の鎧を撃ち抜いたか……」
「澄んだ太刀筋だった。良い師に学んだのだろうな」
僅かに驚きを含んだザフィーラの言葉に、シグナムは努めて冷静に言葉を返しながら、たくし上げていた服を元に戻した。
「武器の性能の差がなければ、少々手こずっていたこもしれんな」
「だが、それでもお前は負けないだろう?」
「そうだな。……だが、もしあの場で手こずっていたら、不味いことになっていたかもしれん」
「……祐一、か」
ザフィーラが神妙にその名を口にすると、シグナムは静かに頷きを返した。
「あのとき感じた魔力は、間違いなく黒沢のものだった」
「ああ、俺もあのとき感じた。状況はよくわからなかったが、結界外で誰かと戦闘していたようだった。……そして問題なのは、祐一の魔力量が俺たちが知っている祐一の魔力量ではなかったことだ」
「ああ、そうだな。おそらく、黒沢は常に自分にリミッターを掛けていたんだ。理由は不明だが、そのときはそれを解除して戦っていたのだろう」
シグナムの言葉に、ザフィーラは静かに頷いた。
シグナムたちは魔導師としての祐一の実力は知らなかったが、純粋な戦闘技術の高さは知っている。そんな祐一に、あの魔力量の上乗せがあるのだから、その強さがどれほどのものになるか、シグナムたちには想像がつかなかった。
「黒沢が戦っていた相手も気になるところではあるが、今はそれよりも黒沢だ」
「そうだな。祐一は我らの行いには気付いているだろうから、きっと、近いうちにここを訪れるだろう」
「ああ。……出来れば黒沢とは戦いたくはない。もし、そんなことになってしまったら主が悲しむだろうからな」
「ならば、祐一を説得するのか?」
ザフィーラの言葉に、シグナムは頷きを返した。
「――黒沢は主はやての味方であり、その主が慕っている男だ。だからこそ、黒沢はきっと説得に応じてくれるはずだ」
そう自分に言い聞かせるようにシグナムは静かに話した。
そして、その言葉を聞き、ザフィーラが口を開く。
「――もし、祐一が説得に応じなければ……どうする……?」
ザフィーラが重く、しかしはっきりと口にした。
すると、シグナムは僅かに目を瞑った後、静かに瞼を開いた。その瞳には、決意が込められていた。
「――決まっている。もし、黒沢が説得に応じなければ――何者であろうと、我らの邪魔をするのならば、打ち倒すのみだ」
シグナムは静かにそう口にした。
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