魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ。


引越し

「家族……?」

「うん。そういう話しになってるみたい」

 

 そんな祐一の呟きに、なのはが笑顔で頷いた。

 あれから、祐一は無事退院となったなのはとともに地球へと戻っていた。

 なのはは体調は万全と言ってもいいものの、《闇の書》に蒐集された魔力は戻っていないことから、今はまだ戦闘が出来る状態ではなく、同じく蒐集されたフェイトとアルフも同様な状態であった。

 そのため、退院したものの三人は実質療養中のようなものであった。

 そんな状態でもあるため、本格的に《闇の書》を追うのはこちらが万全の状態になってからということになった。また、その期間でリンディ率いるアースラチームが一時的に地球へと住まいを移動するための準備期間となってもいる。

 そして現在祐一は、なのはとともにリンディたちが引越してくるマンションへと向かっている最中であった。

 

(リンディさんとフェイトが親子になる、か……)

 

 先ほどなのはから話しを聞き、祐一は思わず感慨深くなっていた。

 なのはもエイミィから聞いた話であったようだが、リンディがフェイトを自分の家族――娘にしようと思っているらしい。

 フェイトもプレシアを失い、家族と呼べる人物は使い魔のアルフだけとなってしまっている状態であった。そういった状態だから、リンディはフェイトを養子にしようとしているのだろうと、祐一は感じていた。

 

「なのは、お前はどう思う?」

「わたし? わたしはすっごく、良いと思うよっ!」

「そうか」

 

 質問に対し、満面の笑みで答えるなのはを見て、祐一はフェイトがリンディの養子になると決めたなら、きっとそれは必ずフェイトを良い方向へと導いてくれるに違いないと、そう確信していた。

 

 ◆

 

 祐一となのはがしばらく話しをしながら歩いていると、目的地であるマンションへと到着した。

 

「あら、祐一くんになのはさん、いらっしゃい」

「おじゃまします、リンディさん」

「おじゃまします。引越し中なのに、お邪魔してすみません」

「ふふ、いいのよ。気にしないで」

 

 到着すると、出迎えてくれたのは私服姿のリンディであった。僅かに申し訳なさそうに話す祐一に、いつものおっとりとした笑みで答えた。

 

「あ、なのは、祐一、来てたんだ」

「フェイトちゃんっ!」

「ああ、お邪魔しているよ」

 

 部屋から出てきたフェイトが、なのはと祐一の姿を見つけるとリンディと同じように笑顔で二人を迎えた。

 

「どんなところに住んでるか見に来たんだっ!」

「何か手伝えることがあればと思ったんだが……」

「そうなんだ。業者さんがほとんどやってくれたから、全然大丈夫だよ」

「そのようだな」

 

 フェイトの言葉に祐一は苦笑を浮かべた。

 祐一としては特にフェイトたちの下を訪れる必要もなかったのだが、なのはが行くと言ったため、病み上がりのなのはを気遣い、祐一も同行したのだ。

 なのはとフェイトが楽しそうに話をしている姿を見つめながら、祐一は今からどうしようかと悩んでいると、クロノが二人の下へとやってきた。

 

「なのは、フェイト、友達だよ」

「あ、はぁ~いっ!」

 

 クロノの言葉に二人は元気に返事をすると、玄関の方へと駆けて行った。

 二人が部屋から出て行く姿を見届けた祐一は、クロノへと声を掛ける。

 

「どたばたしてるところ邪魔してすまないな、クロノ」

「別に構いませんよ。祐一さんたちが来てくれた方がフェイトも嬉しいでしょうから」

「ふ、そうか」

「な、なんですか、急に笑みなんか浮かべて……」

 

 クロノは急に笑みを浮かべた祐一を訝しげに見つめた。

 

「いや、クロノとフェイトは案外、いい兄妹になるだろうと思ってな」

「……知ってたんですか?」

「ああ。先ほどなのはから聞いたよ」

「……まだ、決まったわけじゃないですけどね」

 

 クロノは恥ずかしいのか、僅かに顔を赤く染め、頬を掻きながら祐一へと言葉を返した。

 そんなクロノに祐一は笑みを返す。

 

「フェイトの気持ち次第だが、俺はフェイトがハラオウン家の人間になれることを祈っている」

 

 だからと、祐一は言葉を続ける。

 

「――フェイトがクロノの"妹"になったときは、大事にしてやってくれ」

 

 祐一の真剣な言葉に、クロノも表情を引き締め祐一へと言葉を返した。

 

「――もちろん、そのつもりですよ」

 

 ◆

 

 それからしばらくして、祐一はフェイトとなのはに連れられ、喫茶《翠屋》へとやって来ていた。マンションへとやってきていたアリサとすずか、それになのはの両親に挨拶をすると言っていたリンディも同行していた。

 

「――そんなわけで、これからしばらくご近所になりますので、よろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ」

「どうぞ、ご贔屓に」

 

 リンディの挨拶に、なのはの両親である高町桃子と士郎が笑顔で言葉を返した。

 すると、挨拶を終えた桃子が祐一へと話し掛けてくる。

 

「祐一くんも久しぶりね」

「ええ。ご無沙汰していました、桃子さん、士郎さん」

「元気そうでなによりだよ」

 

 士郎も笑みを浮かべながら祐一へと声を掛けた。

 そしてしばらくの間談笑していると、士郎がリンディへと質問を投げた。

 

「フェイトちゃん三年生ですよね? 学校はどちらに?」

「あ、はい。それなら……」

 

 士郎の質問にリンディが答えようとすると、外でなのはたちと話しをしていたフェイトが箱を持ってやってきたのだ。

 

「リンディてい……リンディさん、あの、これって……」

 

 フェイトが困惑しながら箱の中身を見せてくる。するとそこには――

 

「制服だな。それも聖祥――なのはたちと同じ小学校の……」

 

 祐一がその制服を見て静かに呟き、リンディがその言葉を引き継ぐように言葉を続けた。

 

「転校手続きはしておいたから、週末からなのはさんたちとクラスメイトね」

「あら、本当にっ!」

「聖祥小学校か。あそこは良い学校ですよ。そうだよな、なのは」

「うんっ!」

 

 笑顔で話すリンディに桃子が嬉しそうに声を上げ、士郎の言葉になのはも笑顔で頷いた。

 だが、フェイトは現状についてこれないのか、困惑の表情を浮かべていた。そんなフェイトを見て、祐一はフェイトの頭へと右手を乗せた。

 

「良かったな、フェイト」

「祐一……」

 

 祐一の笑みを見て、フェイトは僅かに瞳を潤ませながら、消え入りそうな声を上げた。

 

「ありがとう、ございます……」

 

 皆の視線に恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも、フェイトは嬉しそうにそう言葉を口にした。

 そんなフェイトを皆は笑顔で見つめていた。

 

 ◆

 

 その後、祐一はフェイト、なのは、アリサ、すずかとお茶をしながら話をしていた。

 リンディは帰宅、士郎と桃子は仕事があるからといなくなり、祐一も帰宅しようかと考えていたのだが、アリサに捕まりこの場に留まることを余儀なくされてしまったのだ。

 

(俺がいない方が話しもしやすいだろうに……)

 

 祐一は心の中で溜め息を吐きながら、四人の話しに耳を傾けていた。

 

「でも、フェイトと祐一さんが知り合いだったなんて、今日初めて知ったわ」

「そうだね。ビデオレターでもそんな話は出なかったしね」

「そうだったっけ?」

 

 そうよと、アリサが苦笑しながら答えた。

 すると、アリサが僅かに身を乗り出しながら質問してきた。

 

「それで、祐一さんとフェイトってどういう関係なんですか?」

「関係……?」

「妙に親しげだし、さっきも祐一さんがフェイトの頭を撫でてたし」

「……っ!?」

 

 アリサの言葉にフェイトが先ほどのことを思い出したのか、頬を赤く染めていた。

 なのはは内容的には気にはなっているようだったが、フェイトのために聞かないほうがいいのかと、僅かに迷っているような表情となっていた。すずかは変わらず笑みを浮かべていたが、話には興味津々といった感じである。

 フェイトの状態を見て、祐一はもう一度溜め息を吐きながら口を開く。

 

「フェイトは俺の教え子のようなものだ」

「教え子?」

「ああ。アリサもすずかも俺が《便利屋》をしているのは知っているだろう? それの関係で依頼があって、フェイトの教師をしていたんだ」

「そうなの?」

「う、うん。そうだよ」

 

 祐一の言葉を聞き、アリサはフェイトへと視線を向けるが、フェイトも同じように頷いていた。

 

「だから、アリサがどう思ってるかは知らないが、フェイトとはまぁ、そういう関係だ。強いてあげるならば、妹のようなものだな」

「そうなんですか」

 

 アリサは祐一の言葉に頷きながら、ちらっとフェイトへと視線を向けた。アリサの視線の先、フェイトはなにやら微妙な表情となっていた。

 

(祐一さんは特に何も思ってないけど、フェイトはやっぱり祐一さんを慕ってるようね。祐一さんはいつもこんな感じだから、フェイトも大変そうね)

 

 アリサは心の中でそう考えながら、僅かに苦笑を浮かべた。隣に座っているすずかも同じような表情をしていた。

 

(なのはもフェイトもこれから大変ね)

 

 アリサは親友のなのはと新しく友人となったフェイトを見つめながら、心の中でそう思いながら、すずかと顔を合わせながら笑みを浮かべあった。

 そして、そんな二人を見つめながら、祐一は僅かに眉を寄せ、なのはとフェイトは可愛らしく首を傾げていた。

 

(――本当に手の掛かる親友ね)

 

 そんな二人を見つめながら、アリサはさらに笑みを深めた。

 

 ◆

 

 あれから結局、祐一は夕方までなのはたちに付き合う羽目になっていた。アリサとすずかがいろいろとなのはとフェイトの出会いについてなど、いろいろと質問したりしていた。魔法関係のことは誤魔化しながら話しをしていたが……。

 

(まぁ、なのはもフェイトも楽しそうで何よりだ。少しは気も紛れただろうしな)

 

 二人はきっと、シグナムたちに負けたことを気にしていたはずだが、アリサとすずかと話しもできて良い気晴らしになったのではないかと祐一は感じていた。

 祐一は先ほどの風景を思い浮かべ、僅かに笑みを浮かべると、今後のことを考える。

 

(今、あの二人は戦えないし、管理局もまだ移動してきたばかりだ。それに、あまり管理局に出張られると話しもできなくなる可能性が高い)

 

 そう考えながら、祐一はそろそろ辺りが暗くなってきた市内を目的地に向けて歩いていた。

 

(俺がシグナムたちを説得できれば、それが一番良いはずだ。だから――)

 

 祐一は一件の民家の前で足を止め、インターホンへと手を伸ばした。

 

(皆にばれる前に、俺が一人で決着をつけよう)

 

 そして、家の中から一人の人物が声を掛けてきた。

 

「――久しぶりやね、祐一さんっ! 元気にしとった?」

「ああ。――久しぶりだな、はやて」

 

 祐一は目的地の家主である八神はやてへと、決意を灯した瞳を向けながら、静かに言葉を返した。

 

 




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