お久しぶりです。
お待たせ致しました。
遅れて申し訳ありません。
楽しんで頂ければ幸いです。
では、どうぞ。
なのはとフェイトは今、アリサとすずかと共に海鳴の町を歩いていた。
間もなくクリスマスということもあり、サンタクロースの格好をした売り子がケーキやグッズなどを売っていた。
「そっかぁ~、もうすぐクリスマスだったんだね」
「……なのは、あんた、その発言は女の子としてどうかと思うわよ」
「はは、まぁまぁ、アリサちゃん……」
なのはが賑わっている町を見渡しながら思わずそう言葉を零すと、アリサが呆れたようになのはを見つめ、すずかが苦笑を浮かべながらそれを宥めていた。
フェイトはそんな三人のやり取りを聞きながらも、町の賑わいが気になるのか、辺りをキョロキョロと珍しそうに見ていた。
なのははそんなフェイトを見て、微笑を浮かべる。
「どう、フェイトちゃん? なんだか、楽しくなってくるでしょ?」
「うん、そうだね。人がたくさんいて戸惑っちゃうけど、みんなとても楽しそう」
「フェイトちゃんは? 楽しいかな?」
そう質問してくるなのはに、フェイトは「そうだね」と頷くと、なのはに笑顔を向けた。
「わたしも楽しいよ。――なのはといっしょにいられるし……」
「フェイトちゃん……」
フェイトが僅かに頬を赤く染めながら話すと、なのはも同じように頬を赤く染めながら、フェイトを見つめた。
お互いに見つめ合い微笑みあう二人に、アリサが引きつった笑みを浮かべながら声を掛ける。
「……なに二人で良い雰囲気作ってるのよ……」
「にゃっ!? べ、べつにわたしはそんなつもりは……っ!?」
「そ、そうだよっ!? 別にわたしたちはそんなつもりじゃ……っ!?」
「ふぅ~ん。そうなんだぁ~」
先ほどよりも頬を赤く染め弁明するなのはとフェイトの言葉を、アリサは瞳を細めながらそう言葉を口にした。
「まぁまぁ、アリサちゃん、二人が仲が良いのは今に始まったことじゃないでしょ?」
「……まぁ、そうなんだけどさ……」
「もしかして、アリサちゃんも……」
「なっ!? わ、わたしは、別に何とも思ってないわよっ!?」
「ふぅ~ん。そうなんだぁ~」
「……すずか、あんた最近、言うようになったわよね……」
アリサが僅かに頬を赤く染めながら苦々しげに話すが、すずかは「そんなことないよ~」と、優しげな笑みを浮かべていた。そんなすずかを見て、アリサは溜め息を吐いた。
そんな二人のやり取りを見て、なのはとフェイトも思わず笑みを零しながら、これまでのことを考えていた。
――あの戦い以降、守護騎士たちとの戦闘をなのはとフェイトは行っていない。
守護騎士たちも管理局を警戒しているのか、最近は地球で蒐集は行っていないようで、管理局も守護騎士たちを見つけ出すことができないでいた。
それゆえになのはとフェイトの出番は未だに無く、待機はしているものの、現状では訓練しか行ていない状況であった。
そんな二人を見てリンディが、
『こちらはわたしたちに任せて、なのはさんとフェイトさんは友達と遊んでくるといいわ』
そう笑顔で話しをしてきたのだ。
二人は後ろ髪を引かれる思いもあったものの、現在の状況からリンディの言葉に甘えることにしたのだ。
そして二人はアリサとすずかと合流し、クリスマスムードとなっている町に繰り出すことと相成ったのだ。
『――でも、ほんとによかったのかな? リンディ提督やクロノたちに任せちゃって』
『大丈夫だよ。リンディさんも言ってたでしょ? それに、わたしたちが居たとしても特に何もできないしね。ああいうことは、クロノくんやエイミィさんの方が得意だから』
『そうだね。じゃあ、リンディ提督がくれたお休みを楽しまないとね』
『うんっ!』
フェイトとなのははアリサとすずかに聞かれないよう、念話での話しを終えると、互いに笑みを浮かべて、まだ話しをしているアリサとすずかの方へと向かった。
◆
いろいろと店を回った後、四人でどこかでお茶でも飲もうという話しになったが、いつもと同じようになのはの両親が経営している《翠屋》へと足を運んでいた。
「ん~いつ来ても桃子さんのお菓子は絶品ねっ!」
「ほんと、とってもおいしいよねっ!」
「うん。ほんとにおいしい」
「へへ、なんだか照れるな。ありがとね、みんなっ!」
みんなに桃子のお菓子を絶賛され、なのはも嬉しそうに微笑んでいた。
そして、そこからいろんな話しを四人でしたあと、アリサが微笑を浮かべながらしみじみと呟いた。
「クリスマスもみんなで集まって、もっといろんな話しをしたり、楽しく過ごしたいわね」
「そうだね」
アリサの言葉に、すずかも笑顔で頷きを返すが、なのはとフェイトの表情が困ったような笑みを浮かべていた。
「あ、あの、アリサちゃん……わたしたちは……」
「わかってるわよ。用事があるかもしれないんでしょ。でも、その用事もどうなるかはわからないんでしょ?」
「う、うん……」
「なら、その用事が無かったら、みんなでクリスマス会でもしましょう。もちろん、フェイトもね」
「あ、う、うん……」
アリサは不敵な笑みを浮かべながら、なのはとフェイトへとそう話した。
そう話すアリサに、なのはは申し訳なさそうな表情をしながらも、笑みを浮かべた。
「――ありがとうね、アリサちゃん」
「ふんっ。別にお礼を言われるようなことはしてないわよ。……みんなでクリスマス会とかが出来たら、わたしが楽しいから、そうしたいって言ってるだけよ」
「それでも、だよ」
笑顔でそう言うなのはに、アリサは僅かに頬を染めながら「ふんっ!」と、顔を横へと向けた。
そんなアリサを見て、すずかはアリサちゃんらしいな、と思いながら笑顔を浮かべていた。
「それと、すずかが最近友達になったって言ってた子も呼びなさいよ」
「それって、八神はやてちゃんのこと?」
「ええ、そうよ。人数が多い方が楽しいだろうしね」
「うん。わかった。わたしから誘ってみるね」
アリサの言葉に、すずかは笑顔で言葉を返した。
そんな二人の会話に、事情を知らないなのはとフェイトが首を傾げていた。
「すずかちゃんの知り合いなの?」
「そうだよ。図書館に行ったときに知り合ったんだよ。ほんとに最近のことなんだけどね。わたしたちと同い年の女の子だよ」
「そうなんだ……」
すずかの説明を聞き、なのはとフェイトは頷きを返した。
(八神はやてちゃんか……どんな子なんだろう? でも、すずかちゃんと仲良くなれるような子だから、とっても優しい子なんだろうな)
すずかの説明を一通り聞いたなのはは、今は名前だけしか知らない少女を思い浮かべた。
「会えるのが楽しみだねっ、フェイトちゃん」
「うん。そうだね」
「優しい子だから、きっとみんなとも仲良くなれると思うよ」
なのはとフェイトの言葉を聞き、すずかも笑みを浮かべながら太鼓判を押した。
それからしばらくの間、すずかからはやての人物像などを聞きながら盛り上がった。
そんな中、アリサが僅かに聞きにくそうにしながらも別の話題を口にした。
「それで、祐一さんは海鳴に戻ってきたの……?」
その人物の名前を聞くと、なのはとフェイトが寂しげな表情を浮かべた。
「まだ、戻ってきてないんだ……」
「仕事が片付いてないみたいで、しばらくの間、戻って来れそうにないんだって……」
寂しそうに微笑みながら話すなのはとフェイトの言葉を聞き、アリサとすずかも悲しげな表情を浮かべた。
祐一は未だに海鳴に戻ってきてはいなかった。現在は消息不明であり、連絡も取れない状況であった。そんな事実が二人の心を未だに縛っていた。祐一のことを慕っている二人ならば、当然のことだった。
しかし、一般人であるアリサとすずかに詳しい事情を話すのは躊躇われるし、だからといって知らないと一言で済ましてしまうのも違うと思い、二人はそのような返答しかアリサたちに返すことができなかった。
そんな二人の葛藤に気付いたわけではないだろうが、アリサはすぐに表情を戻すと、いつもと同じように不敵な笑みを浮かべた。
「でも、戻ってこないわけじゃないんでしょ? だったら、祐一さんもクリスマス会に参加してもらわないとね」
そんな風に話すアリサを見て、なのは、フェイト、すずかの三人は微笑を浮かべた。
「でも、そのクリスマス会、祐一お兄さん以外はみんな女の子だよ? 祐一お兄さんが参加してくれるとは思えないんだけど……」
「そこはなのはとフェイトが説得しなさいよ。基本的に祐一さんって、なのはとフェイトには甘いからきっと二人に頼まれたらノーとは言えないはずよ」
「そう、なのかな……?」
「間違いないわよ」
なのはとフェイトが首を傾げるが、アリサが断言するように告げた。すずかも何も言ってはいないものの、アリサと同意見なのか頷いていた。
そんな二人を見て、なのはとフェイトは確かな二人の優しさを感じていた。
(――わたしたちが祐一お兄さんのことを気にしているってことを知ってて、アリサちゃんとすずかちゃんはそんなわたしたちに気を遣ってるんだ。そんなことは気にする必要はない、祐一お兄さんはきっと戻ってくるって……)
なのははそんな二人の気遣いが嬉しくて泣きそうになったが、なんとか堪えた。
「……うん、そうだね。祐一お兄さんもきっと連れて行くから」
「ええ、そうしなさい。みんなで集まったら、きっと楽しくなるわよ?」
なのはの言葉に答えながら、アリサは優しげな笑みを浮かべた。
アリサの言葉に、なのはは満面の笑みを浮かべて「うんっ!」と頷いた。
そんな二人のやり取りを見ていたフェイトもまた、同じように笑みを浮かべながら思った。
(――祐一、きっと大丈夫だよね? なのはも待ってるし、それに――わたしも待ってるから)
フェイトは三人の会話を聞きながら、ここには居ない黒衣の青年の姿を思った。
◆
――間もなく夜が明けようかという時間――
守護騎士の一人であるシャマルは、静かな八神邸の居間で一人、みんなの帰りを待っていた。主であるはやては、いつもどおりに就寝しており、今は布団の中で気持ちよく眠っていた。
シャマルは他の守護騎士たちが蒐集を行っている間、彼らのサポートのため、カートリッジに魔力を込めている。
シャマルとザフィーラがこれを使用することはないが、シグナムとヴィータはほぼ必須のアイテムと言ってもいいぐらいに使用していた。本人が用意できるものであるのだが、シグナムとヴィータには蒐集を率先して行ってもらっているため、少しでも彼女たちの負担を減らすために、また、ベストなコンディションで戦闘を行えるよう、シャマルはカートリッジの準備も含めて、サポートに徹していた。
シャマルは魔力を込め終わったカートリッジを机へと置くと、静かに息を吐いた。
(――そろそろ、みんな帰ってくるかしら……)
シャマルはそう考えながら、魔力を込め終わったカートリッジを片付けていった。
そんな風に作業に没頭しながら、シャマルは自分たちの主のことを考えていた。
(……はやてちゃんの体は、もうちょっとで限界を迎えてしまう)
その事実に、シャマルは表情を曇らせる。
病院でも検査をし、シャマルたちも僅かながらも検査を行った。何度も嘘であって欲しいと願った。……だが、現実は残酷だった。
(闇の書が、主であるはやてちゃんのリンカーコアを浸食してきている。このままじゃ、はやてちゃんの命は……)
シャマルはそう考えながら、悔しげに表情を歪めた。
本当ならば、闇の書をはやてと切り離すことができればいいのだろうが、永い間、はやてとともにあった闇の書ははやてと深く結びつき、それも不可能。ゆえに、残された方法は――
(闇の書を完成させて、魔力の侵食を止める。そのためなら、わたしたちは何でもやる。……そう決めたのよね。はやてちゃんはそのことを知らないけれど……)
それに、とシャマルは一人静かに呟いた。
(彼――祐一くんは、最後までわたしたちの考えには反対していたわよね)
黒衣の青年の姿をシャマルは思った。
(祐一くんははやてちゃんのことを大事にしてくれてた。だけど、わたしたちの考えには賛同してくれなかった。はやてちゃんがそれを望んでいるのかって……)
祐一はあくまではやての意思を尊重するとして、最後までシャマルたちの考えには反対していた。その結果、祐一とシャマルたちは戦うことを余儀なくされてしまった。
そして、結果として祐一は仮面の男に重傷を負わされ、今はどこにいるのかもわからなかった。
(戦った相手を心配するというのも変な話だけど、きっと祐一くんなら大丈夫よね)
祐一のことを考え、シャマルは心配そうに表情を歪めたが、すぐに表情を戻すと、大きく息を吐いた。
(どのみち、わたしたちはもう止まれない。どんな罪を背負うとしても、はやてちゃんを救ってみせるわ)
そう自分に言い聞かせるように、シャマルは心の中で何度も思っていた。
いろいろと考えていると、玄関の扉が静かに開いた音にシャマルは気付き、ソファーから立ち上がると、そちらへと向かい、帰ってきた人物たちへと笑顔を向けた。
「おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
シャマルに言葉を返したのは、守護騎士のリーダーであるシグナムであった。
「はやては……?」
「まだ寝てるわ。みんなが帰ってくるまでは起きてるって言ってたけど、途中で寝ちゃったの」
「……そっか。はやてには悪いことしちゃったな」
「そうだな」
「あとで皆で謝ろう」
待っていたはやてのことを思い、ヴィータは泣きそうな表情をしながら顔を俯かせ、ザフィーラとシグナムはヴィータを慰めるように、そう言葉を口にした。
シグナムはヴィータの頭をぽんぽんと軽く叩いた後、リビングに足を踏み入れ、はやてからプレゼントされたお気に入りのマフラーを大事そうに首から外した。
「今日は結構時間が掛かったのね?」
「ああ。少し足を伸ばしてな。だが、その甲斐あって闇の書のページもかなり埋まってきた」
「それはよかったわ」
シグナムの言葉に、シャマルは微笑を浮かべた。
「管理局のやつらも捜索範囲を広げてきてやがるし、早いとこ蒐集しないとはやての居場所まで突き止められちまうからな」
ヴィータは先ほどよりも元気になったのか、いつものように腕を組みながらそう話した。
「そうね。できるだけ早めに終わらせないと」
「だが、焦りは禁物だ」
「そうね。わかってるわ」
ザフィーラの言葉に、皆が頷きを返した。
そして、しばらくの間、これからのことを話た後、ヴィータが不安げな表情で口を開いた。
「……なぁ、闇の書を完成させて、はやてが本当の闇の書の主になったら、はやては幸せになれるんだよね?」
「どうしたんだ? いきなり」
シグナムが眉を顰めながら、ヴィータへと問い掛けた。
「……わかんねぇ。だけど、なんか不安なんだ。ほんとにこれで大丈夫なのか、ってさ。何か大事なことを忘れてる気がするんだ」
「大事なこと……?」
ヴィータの言葉を聞き、シグナム、シャマル、ザフィーラは怪訝な表情をしながら首を傾げた。
そして、誰かが口を開こうとした。そのとき、
――ガシャンッ!
少し離れた場所から、そんな大きな音が聞こえてきた。
「「ッ!?」」
異変を察知し、四人はすぐさま音のした方へと向かい、そして、その部屋の扉を開けた。
すると、そこで四人が目にしたのは、苦しげな表情で胸を押さえながら床に蹲っている一人の少女の姿があった。
「っ!? はやてっ!?」
ヴィータの叫び声を聞いても、蹲っている少女――八神はやては苦しげに胸を押さえているだけであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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