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呂布、黄巾党と交戦するの事
「卞喜様!右翼の周倉殿が敗走いたしました!」
「何ぃ!?」
卞喜率いる5万の黄巾党は袁術が治める荊州を狙って攻撃を仕掛けていた。
噂に違わぬ弱兵さで攻勢を進めていた。
だが、途中「孫」と言う旗が混じるようになってから戦闘が膠着しはじめていた。
「あの周倉を敗走させるとは…」
「伝令!左翼の裴元紹様が周倉様敗走の報を受け、撤退!」
「あのバカがぁぁぁぁぁぁ!」
周倉の親友である裴元紹は周倉が黄巾党の思想に共感したため黄巾党に参加したが、モチベーションが低いので軍を率いていても周倉と共に行動している。
故に今回の様な状態が起きるのは珍しくもなかった。
「ちっ、袁術さえ討ち取れればこちらのものよ!」
卞喜はそう笑みを浮かべると全軍に総攻撃命令を下す。
だが、彼らの命運は既に尽きていた。
「邪魔だ!どけぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ぎゃああああ!」
突撃した先鋒が吹き飛んだ。
「な、何があった…?」
卞喜の視線の先には孫呉の当主『孫策』と黒い鎧の大男が自分の配下を草を刈るようになぎ倒していた。
「見つけたわ、あれが大将ね」
「ほう。あれが大将……なるほど小物が大物ぶっていると言うわけか」
卞喜は視線を受け、重圧を受けたように感じていた。
「てめえら、何者だ!」
「私は孫伯符。まあ、ここの当主に従っているから出張ってきたわけ」
「俺は李封。孫伯符の客将だ。お前を討ち取らせてもらう」
散歩でもするかのように軽く言う二人に青筋を立て、怒る卞喜。
だが、その実力差は弱い卞喜にも理解できた。
いや、理解させられたと言った方が良いだろうか。
「策殿。俺が殲滅しよう」
「んー…、そうね。貴方が敗退させた周倉って言う子とやり合ってみたかったけど」
「……大将が前に出るのはやめてほしいのだがな」
そう言った李封の言葉を軽く聞き流すと、孫策は背を向けてその場から離れた。
重圧が一つ減り、少し動きやすくなった卞喜は怯んでいる配下の兵を李封目掛け突撃させた。
突撃する兵に向け逆に突撃する李封。
先頭を走る二、三人を戟で切り裂くと倒れ伏す前に兵が持っていた剣を奪い取るとそれを投げ、一人を倒す。
「鬱陶しい!!」
そう言いながら、腰に下げた小刀を放射状に投げ、複数人を撃破する。
それを見ていた黄巾兵は腰を抜かし、武器を放り出し逃げ出す。
「お、おい逃げるな!」
卞喜はそう言うが逃げる雑兵たちは口々に「一人で大勢を相手にできる化け物なんかと戦えるか!」と叫び、戦場から逃げ出す。
「ちっ、俺がこいつを倒せば問題ないって事だろ!」
卞喜は自分も逃げ出そうと言う心を押さえつけ、手にした豪槍『蛇斃躙』を李封に振るう。
「甘い!俺を殺すなら、娘か張遼を呼べ!」
戟を横薙ぎに振るうと豪槍が中ほどからぼきりと言う音と共にへし折れる。
「ひ、ひぇぇぇ!?」
「終わりだ!」
返す刀で尻餅をついた卞喜の首を刎ねる。
「敵将!この俺が討ち取ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
戦場を震わす大声で戦の終りを告げる。
一瞬の空白の後、歓声が血を震わす。
袁術兵からすれば精強だった黄巾党をいともたやすく撃破し、なおかつ敵将まで討ち取る働きを見せた李封に対する称賛が多かった。
この敗戦を受け、黄巾党は荊州への手出しを控えることに決めた。
逆に連合軍は久々に聞いた勝利の報を受け、戦意が向上。
また、曹孟徳、劉玄徳と言った武将も各地で戦功をあげ始め、黄巾党は徐々に追いつめられていった。
呂布、偽名名乗るの事
俺、呂布が孫伯符と黄公覆に拾われてから数年が経った。
俺の知っている孫伯符と黄公覆とは違い、女性だった(それも露出の多い服を着ている)。
となると、呂布と言う名前はいるだろうと予測した俺は名前を聞かれた時、偽名を使う事を考えた。
そこで俺は俺の配下の中から名前を借りることにした。
(李封、名前を借りるぞ)
李封、俺の配下として各地の放浪に付き合ってくれた気のいい奴で、ある時拠点に使った廃砦が曹操の軍勢に攻められたとき、俺たちを逃がす為に一人残り許褚と戦い戦死した。
あろうことか曹操は勇敢に戦い討ち死にした李封の服を剥ぎ、五体をバラバラに、そのすべてを槍の穂先に刺し、俺達に見せしめの様に掲げながら俺達への追撃を行った。
あの時の怒り、憎しみ、そして俺自身の無力さを忘れない。
「俺の名は“李封”だ。よろしく頼む」
“俺”の事を知らないこの世界で俺は生きて行こう。
呂布、戦災孤児を拾うの事
黄巾党が引き起こしている問題は多々あるが、基本的にそのどれもが哀しみを産むものだ。
略奪によって冬を越すことが出来なくなり、年頃の娘たちを売った村。
親を殺された子供、子供を殺された親。
俺のいた世界でも同じ事が起きていた。
それは黄巾党が滅亡した後も同じで、一度戦が起きれば、民草は必死に耐えるしかなかった。
特に董卓が治めていた長安等は酷かった。
董卓軍所属であると言うだけで店の料金を払わない、年頃の女子が居れば無理やりにでも襲う。
はっきり言えば獣畜生の所業だった。
現代日本の倫理観を持った俺は大分、後漢・三国時代の風習等に染まったが、この民からの略取や暴行などには忌避感が先行した。
俺の感覚は俺の配下にも広がっていき、俺が董卓を殺すと決めた辺りになると、被害を受けた民が俺達の屯所に駆け込んでくるようになるくらい信頼を受けられように思う。
そして、俺が何故こんなモノローグを使っているかと言うと…。
「李封!どうするんだ、この子供たちは!」
散発的に起きる黄巾党による村への略奪。
俺達は早馬からの情報を得、急行したが時すでに遅く、火の手が上がり村の住人の殆どが殺されていた。
生き残った村の住人は俺たちを見ると「何故もっと早く来てくれなかった」と悲鳴じみた怒りの言葉をぶつけてくる。
だが、俺たちにこれを甘んじて受ける。
「すまなかった。これより、貴殿等の恨みを晴らすため、黄巾党を追いかける。どちらへ行ったか教えてもらいたい」
そう言うと、村人たちは押し黙る。
やはり甲冑を着た将が頭を下げるのはこの時代はおかしいのだ。
わかってはいても、これはやめられない。
「に、西の方角に。村の女子供が連れて行かれてしもうて」
「あいわかった。絶対に全員連れ戻して見せる」
「……村には戻さんでいいです。……苦渋の決断ですが儂らはこの村を捨てます」
「っ!だが!」
「連れ去れらた子らの親は全員殺されてしもうてな…。それにここまでやられたら、村の再建もままならんのです。そちらで雇うなり、売り飛ばすなりしてくだせえ」
「……」
「儂らのような者にも頭を下げてくだすった貴方様ならば悪いようにはなさらんでしょう」
そう言って、村人は東の方角へと歩いて行った。
「李封様!ここより一里先に黄巾の軍勢が止まっております!」
「ならば、早く行くぞ!」
“何故か”この世界にいた愛馬の『赤兎』に跨ると、一目散に駆ける。
「お頭ぁ、そろそろ味見しても良いですかぃ」
「まだだな。商人が来て、売り飛ばす奴以外だったらいいぞ」
黄巾党と言う名を後ろ盾に自分たちの欲望を満たしてきた盗賊団は今日もまた一つの村から食料、金目の物、そして売り飛ばして金に換えられる女子供をさらってきた。
「一人くらいいいでしょう?」
「そう言って、壊しただろう。ああ言う奴の処理は楽でいいが、金が減るからな」
あくまで金に対する欲を優先させる頭目に不満を募らせるが、頭目の言う事にも一理あると頭を切り替え、いきり立つ部下たちをなだめにかかろうとその場を離れよう立ち上がった瞬間、力なく倒れた。
「あ?」
次の瞬間、疑問の声を上げ、そちらを見ると鬼のような形相の大男がこちらへ岩を投げているのを視界に捉え、悲鳴を上げようとした瞬間、上半身と下半身が永遠に離れ離れになった。
岩を投げた音で頭目に無断で攫ってきた女子供の味見をしようとしていた黄巾賊の面々は武器を片手に李封の周りに集まってきた。
「なんだぁ?てめえ」
「一人かよ」
「ガタイはいいようだが、一人ではなぶり殺しだぁ」
「ひゃひゃひゃ!ばぁかじゃねえの?」
口々に李封を罵倒する。
だが、それを軽く受け流すと手にした方天画戟を軽く横薙ぎに振るう。
「ぐべ?」
「はへ?」
正面にいた四人の頭が半分無くなる。
一瞬間抜けな声を上げると噴水の様に血を噴き出しながら地面に崩れ落ちる。
賊たちは李封が何をしたのか分からない顔をしていたが、次の瞬間攻撃されたことを認識すると怒声を上げる。
「っけんなてめー!」
「楽には殺してやらねえぞ!」
「泣き叫ぶまで切り刻んでやるよ!」
手にした剣を振りかぶった男たちは李封の泣き叫びながら死ぬ姿を思い浮かべ嗜虐的な笑みを浮かべる。
だが、その願望は叶うことは無い。
「その品性のない口を閉じていろ。永遠にな」
ようやく口を開いた李封。
攻撃を避けながら、左手に構えた朴刀で男たちの腕を肩から切り落としていく。
腕が亡くなった男たちは地面に倒れ込むと、痛さのあまり地面を転げまわる。
「死ぬまでそこで転げまわっていろ」
転げまわる賊を一瞥すると、李封は攫われた女子供が固まっている場所へと向かった。
魏続と言う少女は村の子供たちをまとめるリーダー格だ。
妹分の高順、曹性、楊奉の四人と自警団を組んでいたが、今回の襲撃で多勢に無勢で捕まってしまった。
「へへへ、良い身体してんじゃねえか」
彼女たちを捕まえている賊の見張りが魏続たちの身体を舐めまわすように見る。
「味見してもいいよな?」
「殺されるぞ?」
「ばれなきゃいいんだよ」
「それもそうだな」
我慢が効かなくなった男たちはそれぞれ好みの少女たちに手を伸ばした。
……ところで力なく倒れた。
男たちの背中には小刀が刺さっていた(後に錶と知るのだが)。
「大丈夫か」
倒れた男たちの後ろには黒い鎧を着た大男、後に魏続達が生涯の主と呼び、恋い慕う李封の姿があった。
「あたしは魏続!真名は奏!」
「私は高順。真名は翼」
「私は曹性です!真名を響って言います!」
「私は楊奉と言います。真名を未来と言います。響共々よろしくお願いします」
のちに李封四天王と呼ばれ、魏の曹操や蜀の諸葛亮らから最も警戒された武将となるが、この時はまだ初めての命の危機に震える子供であった。
面白さは保障しません。
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