ありがとうございます、どう考えても生物兵器です 作:アイソー
気がつくと、俺の周りからなにもかもが無くなっていた。
見渡す限り、辺り一帯は真っ白で、物体と呼べるものは何一つ存在していない。
『無』という概念を実際に表すと、きっとこんな世界ができあがるのだろう。そう感じてしまうほど、何もない場所だった。
そんな場所で唯一形を保っている俺は、正座をしている。
いや、させられているという方が正しいだろう。何故なら、体が正座の体勢から動かす事ができないからだ。
……何なんだこの状況。
とりあえず、記憶の糸を手繰ってこの状態になる前を思い出してみる事にする。
車に轢かれて死亡。
……これだけ思い出せれば充分だな。そういえば俺死んでたんだ。
意外と死んだ事に対する絶望感とかはあまりない。先に死んでしまって、親には申し訳ない気持ちがあるが、もう死んでしまっているので仕方ないと割り切ってしまっている。
こんな風に思えるのも、二十年と少ししか生きれていないが、結構人生が充実してたからだろう。
あ、でも彼女欲しかった。
ともかく、ここは死後の世界的なあれなのだろうか。
とりあえず俺は今動けないし、何か動きがあるまで待つか。
しかし、その後動きは一切なかった。体感時間的にはもう二時間近くは経っている。
流石に何もないような空間でこれだけじっとしているのは精神的にくるものがあった。
だが、何よりも問題なのは正座させられている足だ。もう殆ど感覚がない。
何の拷問だこれ。何が悲しくて死後こんな長時間も正座をしてなくちゃいけないんだ。
そして更に時間が経ち、なんかもういろいろと達観できそうになってきた頃、やっとこの空間に変化が起きた。
「ヤッフー、お待たせー。ごめんねー、仕事が長引いちゃってさー」
独特の喋り方をする男が、まるで初めからそこにいたかのように俺の目の前に現れた。
服装はジーパンとシャツ一枚とラフな格好で、ヘラヘラと笑っていて、髪も茶髪で正直チャライ印象だ。
「……あなたは?」
それに対する俺のテンションは低い。もうはしゃぐ気力もなかった。
「神様的な感じー?」
「なんで本人が疑問形なんですか」
神か。なんか随分とちゃらんぽらんな感じだな。
だが神という事は……。
「……これから、俺の天国行きか地獄行きかが発表されるという事ですか?」
「いや違うよー」
あっさりと否定された。結構覚悟して聞いたのに。
「とりあえず君には、君のいたのとは全く違う世界に特典付きで転生してもらいまーす。そうすれば君も第二の人生を特典使って面白おかしく生きれて、我々もそれを見て暇をつぶせる。これぞWIN-WINってやつだー」
そう言うと神はサムズアップしてニッと笑う。
……これって俗に言う神様転生か。二次創作でよくある。
正直嫌な予感がする。特典のせいで否応なしに戦闘に巻き込まれたりとかしそうだ。争いごとはあまり好きではない。
勿体ない感じもするが、とりあえず断ろう。
「……すみませんが、自分としてはあまりそういった――」
「えいやー」
俺が断ろうとすると、神は足を伸ばして俺の事を踏んだ。
今だに正座を続けている足の裏を狙って。
「ぬぉぉぉぉぉ……」
「いやー、そんな悶えるくらい喜んでくれて僕も嬉しいなー。じゃ早速特典決めよっかー」
どうやら俺に拒否権はなかったようだ。悶える俺をおいて、神は話を進めていく。
神が手を叩くと、俺の前に大きめの穴が一つだけついた箱が現れる。
「じゃじゃーん。この箱の中にはいろんな漫画やらアニメやらの能力が書いてある紙が入っててー、引いた紙に書かれた能力をプレゼントしちゃう的なやつだー」
そして神は箱の中に手を入れ、ガサゴソと中身をあさる。
「例えばこんなチート能力が――」
そして一枚の紙を取り出すと、俺に見えるように広げた。
『志村新八のツッコミ能力』
一瞬場が凍った。
「……なんと今なら特別に三枚も引いていいよー」
「今のを流すつもりですか。あれ程の地雷を見せておいて」
そうとうバラエティーに富んでいるんだな、あの箱。
まぁツッコミ能力って戦闘にはまず使えないが、平穏に生きるにはいいかもな。他のやつらに目をつけられないだろうし。
俺はそう考えると箱に手を伸ばす。断る事は不可能なようだし、変にしぶっておかしな能力つけられるより、自分でなにか無難なものを掴み取るほうがいいだろう。
先程神が引いたのを見て、俺はどこか油断していた。
『ドクドクの実』
『オエコモバのスタンド能力』
『核融合を操る程度の能力』
だからこの三枚を見たときは心臓が止まるかと思った。
分からない人のために説明すると、ドクドクの実は毒を体から自在に出せ、それを操る事が出来る。
オエコモバのスタンド能力は触れたものに部品(ピン)を付け、部品が取れたら爆発する爆弾に変える能力。
核融合を操る程度の能力は――もう名前から察してくれ。
つまりまとめると俺は、体から猛毒を出し、触れたものを爆弾に変え、核エネルギーを自在に操れる存在になるわけだ。
「なんだこの化け物は!」
思わず俺は叫んでしまった。
こんな能力を持っていることがバレれば確実に命が狙われる。そんなレベルの危険度だ。
「これもこれでありだと思うよー。生物兵器として」
「もう扱いが人間じゃない!?」
でもたしかにこれは人間の持つ能力じゃないよな。
「じゃ特典も決まったし、早速君には別の世界に行ってもらおうかー。一応少しおまけしてあげるねー。
あ、それから行く世界はリリカルなのはの世界だよー」
「え?」
……それはまずいぞ。管理局に見つかったら一体なにをされるか分かったものではない。
「じゃレッツゴー」
そして神は手を叩く。
これはまさか下に穴が開くパターンの――
「残ー念、上から吸引器だー」
すると俺の頭上に馬鹿でかいホースのようなものが現れ、意識がしたに向いていた俺は瞬く間に吸われていった。
「あああああぁぁぁぁ…………」
……嫌な生まれ変わり方だな。