ありがとうございます、どう考えても生物兵器です   作:アイソー

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飯と首と厨二病

 とりあえず、今の家の中の状況をまとめてみようか。

 

 俺、綱島海斗(10歳)。転生者。生物兵器。

 

 弟、綱島空也(5歳)。転生者。医療チート。

 

 客人、高町なのはちゃん(5歳)。主人公。将来の魔王。

 

 客人、銀髪の子。おそらく転生者。

 

 

 カオスだ。

 今家にいる人の3分の2が、実年齢と精神年齢合ってないってなんなんだよ。

 

 おまけにもう一人は原作主人公だし。

 

 

 

「おいこら。睨んでいるんじゃねぇぞ、銀髪ぅ……」

 

「…………」

 

 で、精神年齢は高いはずの弟と銀髪の子が睨み合い、今にも喧嘩が起きそうな雰囲気だ。

 銀髪の子は喋っていないが、確実に弟に敵意を持っているのが分かる。

 

 

「ふぇ……」

 

 そしてそんな二人の様子を怯えて見ている5歳の幼女と。

 

 

 

 一体何があったらこんな状況になったのだろうか。

 

 てか弟よ。何故こんな厄介事を家に持ち込んだ。

 

 

 

「……とりあえず、何でこんな状況になっているのさ。てか何で家に来た」

 

 両親が二人ともいないので、俺が三人にお茶を配る。

 そのついでに弟に状況の説明を求める。

 

 

「公園でなのはを見つけたのはいいんだけどこいつもいてさ、同じ転生者だし、最初は三人で仲良く遊んでいたんだ。こいつも結構おもしろい奴で――」

 

 まぁ簡単に言うと、最初はなんだかんだ仲良くしていたらしい。

 特に銀髪の転生者――神谷零とは馬が合い、下手すればなのはちゃんよりも仲良くなっていたらしい。

 

 同じなのはちゃん狙いでかぶっているが、こいつなら良い恋のライバルになれるのでは、と弟は考えていたらしい。

 

 

「だけどこいつ、ハーレム狙いって言うんだぜ! そんなの許容できねぇ!」

 

 どうにも考え方が決定的に違ったようだ。

 

 弟はなのはちゃん一筋だが、神谷の方は他の子にも気があるらしく、それが喧嘩の原因らしい。

 しょうもなさすぎる。

 

 

「ハーレム狙いとか女性に失礼だろ! あれは意図せず出来るからこそ意味があるんだ!」

 

 なんか弟が熱い。

 てか5歳児の見た目でハーレムについて熱く語らないで。

 

 一方の神谷はやけに静かだなと思い視線を向けると、プルプルと小刻みに震えていた。そして勢いよく椅子から立ち上がった。

 

 

 

 

 

「それは歪んだ妄想……否! それは大いなる夢! 八百万の紳士が求める、汚れなき野望なり!」

 

 え、何語?

 

「あ、こいつ特典でデレステの蘭子みたいな、厨二病的言い回ししかできないようになっているんだって」

 

 なにそれ可哀想。

 

 

「我が言霊は縛られている……」

 

 ほら神谷も顔紅くして恥ずかしそうにしているし。

 

 じゃあ銀髪もそれが原因か。

 言葉縛られるのは辛そう。あの箱の中身、やっぱり碌なものじゃなかったな。

 

 

「まぁ仲悪い原因は分かったが、何で家来た」

 

「そろそろお昼ご飯の時間だったし」

 

「極上なる糧が得られると空からの誘惑が(おいしいご飯が食べられると空也から招待されました)」

 

「家は食堂か」

 

 てかあれだけ喧嘩していながら、神谷もしっかり誘っているのな。

 

 

 

「あ、あの……」

 

 そんなやりとりをしていると、なのはちゃんがおずおずと声を上げた。

 

 

「わ、わたしやっぱり帰るの……」

 

 なのはちゃんは消え入りそうな声でそう言うと、玄関の方に向かい始めた。

 そんな彼女を空也が慌てて止めにはいる。

 

 

「だ、大丈夫だよ。アニキもああ言っているけど、本当は人にご飯作るの大好きだし!」

 

 まぁ嫌いではないが。

 

「目が細いけど、味も上手いし!」

 

 目が細いのは余計だ。てかそれ悪口か?

 

 

 

「でも空くんも零くんも、なのはのせいで喧嘩しているの……。何を言っているかは良くわからないけど」

 

 話の内容は理解していないようだが、なのはちゃんとしては自分が原因が喧嘩している事はなんとなく感じ取っていたようだ。

 

 そんな反応を見て空也と神谷は急に肩を組み始めた。

 

「いやいや、俺達めっちゃ仲良しだし!」

 

「争いもまた絆を深める手段(喧嘩する程仲が良いって言うし)」

 

 息ぴったしだな。実際仲良いだろお前ら。

 

 

「でも、なのは良い子にしていないといけないから……」

 

 なのはちゃん目は、とても悲しそうだった。

 

 

 そういえばこの頃の彼女は父親が怪我をして、殺伐とした家庭環境の中にいるのだったか。それで良い子にしていればお父さんの怪我も治って家族がまた仲良くなれると信じて、感情を押し殺して我慢しているのだったか。

 

 

 ……原作とか関係なしに、そう言う目をした子供は放っておけないよな。

 俺も今子供の姿だけど。

 

 

「あー、なのはちゃん? 実は皆が家に来た時、俺もお昼食べて貰おうと考えて、もう4人分の料理の用意を始めちゃってるんだよね。もしなのはちゃんが帰っちゃうと、一人分余っちゃうんだ」

 

 これは嘘だ。

 流石に4人分の用意はそう簡単にできない。

 

「え、えっと……その……」

 

 しかしなのはちゃんは嘘を真に受けてオロオロし始めた。

 普通に考えれば嘘だと気づきそうだが、5歳児では気づけないようだ。

 

 

「食べていってくれれば食材も無駄にならない。さっき弟も言ってたけど、俺も人に料理作るの好きだから、是非食べてってよ」

 

「……はいなの」

 

 なんか脅している感じだが、なのはちゃんは首を縦にふってくれた。

 

 ちなみの親御さんへの連絡は弟が既にしていたらしい。地味に手を回してるな。

 

「ありがとう」

 

 最後になのはちゃんの頭をポンポンと叩くいて、まだ肩を組んでいる弟達の所へ向かう。

 

 

「じゃ料理作ってくるから、相手頼んだぞ」

 

「流石アニキ! てか4人分の用意なんていつの間に始めてたの?」

 

 お前も嘘信じてたのか。ちょっと弟の将来が心配。

 

 

「……掲げられし旗?(なんかフラグ建っていませんか?)」

 

 なんか神谷が不吉な事言っているがスルーしとこう。

 

 

 

 その後は普通に昼飯を食べた。

 ちなみに昼の献立は肉野菜炒め。ちょっと量が少なかったかもしれないが、濃い味にして誤魔化した。ご飯は大量にあったし。

 空也はもとい、なのはちゃんも神谷も美味しそうに食っていたし問題ないだろう。

 

 

 飯を食べ終わると、三人はまた外に遊びに行った。

 俺も保護者としてついて行こうかと思ったが、これ以上厄介な事に巻き込まれるのが嫌だったので家に残る事にした。

 

 そのまま俺は掃除、洗濯等の家事を行い、終わった後まったりとテレビを見ていた。

 振り返ると、主婦みたいな生活だな。

 

 

 

 

 そのままこれ以上は何も起こらず一日が終ると思っていたのだが、夕方になって空也が帰ってくると、何故か神谷も付いてきていた。

 

「何でまた来ているの?」

 

「転生の同胞として、心を交わそうと(同じ転生者仲間として、挨拶をしておこうかと)」

 

「零の奴がアニキに挨拶しておきたいんだって」

 

 何故か空也の奴は神谷の言っている事が分かるらしく、通訳してもらった。なんで分かるんだよ。

 

 それにしても神谷は礼儀正しそうだな。ハーレムなんて思考を持っているとは、とても思えない。

 

 

「成程ね。俺は綱島海斗。転生者だが、原作にからむつもりはない。よろしく頼む」

 

「我が忌み名は神谷零。誓いをここに(私は神谷零です。よろしくお願いします)」

 

 だからこの厨二的な言葉の縛りが不憫でならない。

 俺の能力は危険だが、普段は問題ない。しかし彼の場合は日常生活に支障をきたしまくりだろう。

 

 

「ちなみにどんな特典貰ったんだ? 一つは中二病的な奴だと分かるが」

 

「あ、それなら見た方が早いと思うよ。クレイジー・ダイヤモンド!」

 

 急に空也がスタンドを出した。しかもクレイジー・ダイヤモンドは既に大きく振りかぶり、神谷の顔面を狙っている。

 

 

「ドラァ!」

 

 静止する間もなく、神谷の顔面に拳が叩き込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ、フライングヘッド!」

 

 その直前、神谷の首が宙に浮かび上がり、そのまま静止する。

 

 

「悪魔の戯れか!(いきなり何をするんだ!)」

 

 

 今目の前には厨二言葉を並べながら空中に浮かぶ生首が目の前にあった。

 

 

 何これ怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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