ありがとうございます、どう考えても生物兵器です 作:アイソー
弟の転生者告白、及びに神谷との出会い、それから主人公との邂逅から、早くも数か月が経った。
その間に空也達へもデバイスが届き、一応俺が二人よりも魔法歴が長いので、先生役として教えている。
とは言っても俺も魔法はアルトから教わった独学のようなものなので、指導というよりかは一緒に確認を行っているような感じだ。
あとなのはちゃんはたまに家に遊びに来て、俺の料理を食ったりしている。基本は空也と神谷の三人で遊び、暴走しやすい二人の良いストッパー役になっている。五歳児に心配される転生者ってどうなのだろうか……。
恋愛的な話はまだなのはちゃんが幼いのであまりないようだ。流石にあの二人も五歳児にアタック出来るほどぶっ飛んではないようだ。
ちなみに俺は海兄ちゃんと呼ばれて懐かれている。優しい年上の人みたいな認識だろう。
こちらとしても、小動物に餌付けしているような気分だ。
あとなのはちゃんのお父さん、高町士郎は空也の能力でもう治っている。
夜に病院に忍び込みクレイジー・ダイヤモンドを使ったようだ。病院側も瀕死の重傷だった患者が一晩で治った事で少し騒動あったようだが、無事に退院出来たみたいだ。
今では元気に喫茶店の仕事に戻っているとなのはちゃんが嬉しそうに語っていた。家庭環境も良くなったようだし、一安心だ。
そんな訳で明るくなったなのはちゃんは、空也と神谷と連日のように一緒に遊んでいる。まだ学校もないので朝から夕方までずっと遊んでいるらしい。
これで二人ともまずは幼馴染のポジションは獲得出来ただろう。ここから発展出来るかどうかは彼らしだいだが。
ちなみに俺は今日も学校で、帰ってからは家で家事をしていた。父さんも母さんも食堂の仕事で忙しいので、家事は基本俺がやっている。
まぁ母さんに至っては家事があまり得意ではないので、例え仕事がなかったとしても俺がやっていただろう。
そうして家の掃除を行っていると、食堂の方から父さんがひょっこりと顔を見せてきた。
ちなみに家は1階部分が食堂、2階が家族の居住スペースになっている。
「海斗。悪いのですが空也を迎えに行ってくれませんか? 今日はなのはちゃんの所に遊びに行っていて、少し遠いので心配なんです。私はこれから店の方が忙しくなりますし……」
時計を見ると、もう17時を回っていた。確かに5歳児ならそろそろ帰って来てもいい時間だ。
あの家に行くと変なフラグが立ちそうで怖いのだが、父さんの頼みなら仕方ない。
「了解。そういえばなのはちゃんの家ってどこ?」
「今日は家ではなくてなのはちゃんのご両親が経営している翠屋という喫茶店に行っているそうです。有名な喫茶店なので場所は大丈夫ですよね?」
そんな訳で、翠屋にやって来ました。
海鳴市でも有名な喫茶店だが、原作に関わるのが嫌で今まで一回も来た事はなかったので、これが初来店だ。
窓から店内を確認すると、夕方時だが多くの客で賑わっていて、空也達の姿は見えない。これで窓から見えれば店内に入る必要はなかったんだけどな。
仕方ないのでガランガランと音が鳴るドアを開け、翠屋に入る。
入るとドアの前のレジがあり、男の人がちょうどお客さんの会計を終わらせていた。あそらくこの人が高町士郎さんだろう。
「いらっしゃいま――」
そんな士郎さんは入って来た俺を見て、信じられないもの見るような顔で絶句していた。
俺初対面のはずなんだけどな……。
「初めまして、綱島海斗っていいます。弟の空也を迎えに来たのですが……あの、どうかされましたか?」
俺が自己紹介すると、士郎さんは我に返り、笑顔になった。
「ごねんね、ちょっと昔の知り合いに君と似ている人がいてね。
ともかく初めまして。なのはの父です。空也君なら店の奥でなのはと零君とで遊んでいるよ。今呼んでくるね」
どうやら店ではなく店の奥のスタッフのスペースで遊んでいたようだ。どうりで窓から見えない筈だ。
士郎さんは速足で奥に向かい空也を呼びに行ってくれた。
……それにしても、士郎さんの知り合いって父さんの事か?
俺は顔が父さんに似ているし、その可能性は高い。しかしあの驚き方は少し異常だった気が……。
「ん? 店の入り口で固まってどうしたんだ?」
いろいろと考え事をしていると、新たに店に入って来た学生服を来た男子に声をかけられた。
見ると、士郎さんに似ている。おそらくなのはちゃんの兄の高町恭也だろう。
「遊びに来た弟を迎えに来たんですよ。綱島空也の兄の海斗って言います」
「ああ、空也の兄か。俺はなのはの兄の高町恭也だよろしく頼む」
恭也さんは合点がいったようで、自己紹介をして手を差し出した。こちらも手を出して握手をする。
「それでいきなりで悪いんだが……空也君と零君についてどう思う?」
「……どうとは?」
握手が終ると、恭也さんは神妙な顔で聞いて来た。
まさかあいつら転生者ってバレたんじゃないだろうな?
「5歳児にしてはどうにもませていてな……まさかとは思うがもう恋愛事に興味があるんじゃないかと不安で……」
目の付け処は良いが、ズレていて助かった。そういえばこの人は重度のシスコンだった気がする。
「まぁまだ恋愛感情とかはないんじゃないですか? まだ5歳ですし」
すんません。弟、バリバリ恋愛感情持ってます。
「神谷もまともな喋り方できませんし」
神谷に至ってはハーレム形成を目指しています。
「あ、迎えってアニキだったんだ」
「心地よい夜がくるぞ、闇の主君よ(海斗さんこんばんわ)」
そんな事を言っていると、ちょうど二人が店の奥から出てきた。
タイミングが良いというか、悪いというか。
「あ、海兄ちゃん。それにお兄ちゃん」
二人に続いて、なのはちゃんが出てくる。
なのはちゃんは無邪気な笑顔でこちらに手を振ってくるが、そんな彼女に恭也さんは固まった。
「お、お兄ちゃん呼び……だと」
それもシスコン判定でアウトなのかよ。結構面倒くさいなこの人。
「まぁこのくらいの年だと年上はそんな呼び方になりますよ」
とりあず変な暴走をしないように宥める。この人なんかの剣術を収めていて、物理的に強かった筈だ。暴れられたら困る。
「ま、まぁ確かにそうだが……」
「それに恭也さんは血のつながった真の兄で、家族ですから」
「……それもそうだ――」
「でももしなのはが俺と結婚したら、アニキがお義兄さんになる訳だな」
おい愚弟。火にニトログリセリンを投げ入れるな。
「フッ、伴侶に相応しきはここに(いや、俺が結婚するから)」
お前もだ、生首厨二病。
「もぉ二人とも……」
なのはちゃんは冗談だと思っているが顔が赤い。流石にあんな事を言われたら恥ずかしいのだろう。
そしてなにより問題なのは、冗談を冗談で受け止められない人がいる事だ。
まぁ二人は本気で言っていると思うけど。
「よし! ならば二人ともなのはに相応しいかどうか、俺が見極めてやる!」
恭也さんは何処からか木刀を取り出して構えた。
5歳児に何言っているんだこの人。
「ちょ、お兄ちゃん!? 何言ってるの!」
なのはちゃんも流石にヤバイと思ったのか、恭也さんを止めに入る。
しかし肝心の二人は何故か不敵な笑みを浮かべていた。
「上等! 俺の男を見せてやる!」
「我が開眼せし瞳、今こそ示さん!(俺も相応しいという事を分からせてやる!)」
え、なんで二人ともこんなに乗り気なの?
「なら場所を移そう、家の道場がいいな」
そんな二人を見て恭也さんは店をでた。なのはちゃんも兄を止められなくてオロオロしている。
「……なんでそんなにやる気なの? 何か算段があるのか?」
「ここで恭也に認めてもらえれば、兄公認になれるからね。恭也はなのはと仲良くなる上で大きな障害だから、最初に認めて貰わないとね」
「天からの特典もあり、敗走はなし!(特典もあるし負けはしませんよ)」
この様子を見るとどうやら二人はワザと恭也さんを煽ったようだ。
しかし、そんなに上手くいくのだろうか。
確かに俺達は特典もあるし、身体能力も上がっている。だが、相手はきちんと鍛錬を積んだ人間だ。いきなりただ力を与えられた人間が勝てるだろうか。
結果だけ言うと、二人は恭也さんに全く歯が立たなかった。
最後には二人がかりで挑んだが、一撃も当てる事なく負けた。てかあの人の速さ異常だろ。あれが転生もしていない只の人間って、恐ろしい限りだ。
流石に恭也さんも5歳児を木刀で殴ったりはせず、軽く小突くぐらいだったが、それでも二人は完膚なきまで負けた。
ただ二人とも筋は良いという事で、恭也さんに稽古をつけてもらう事になった。なんだかんだ恭也さんも戦っている内に、絶対に食い下がってくる二人を少し認めていたようだ。
恭也さんにはこうやって少しづつ認めてもらうしかないみたいだな。
それに二人ともなのはちゃんに涙目で手当てしてもらってて役得だろう。
まぁ原作に関わる気ならこういった戦闘訓練は二人にとって重要になるはずだ。
ちなみに俺はそもそも戦ってないし、稽古も遠慮した。
基本俺は戦う気ないし、近接戦やるよりも遠くからぶっ放した方が良いし。
なんだか一悶着があったが、神谷を家の近くまで送り、俺達も家に帰った。
その日の夜。
「父さん、高町士郎って知っている? なんか向こうは俺の顔見て知り合いに似ているって言ってたから、父さんが知り合いなのかと思ったけど」
「高町? 聞かない名ですね」
「そういえばアニキ、あの人旧姓あったよ。確か、不破だったかな」
「ああ、不破士郎なら昔殺し合いをした仲です」
「「え」」
「冗談……ですよ」