セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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一応、原作沿いで進んでいきます。その方が、話の構成が簡単ですし。

そんな訳で、本編が始まりますよ~


第9話 脱走計画 前編

「珍しいわね、お酒を飲まないあなたが私と一緒に飲むなんて」

「そりゃ、美人な姉ちゃんと一緒に飲めるんだったら飲むさ」

 

 風花の質問に、俺が答えるが今の時間は脱走前日の深夜だ。

 さっきまで、駆け落ち作戦の宴と称したものが風花が主催と俺の出費で行われていた。

 ここで、皆と会ったのは何かの縁と言うことでどんちゃん騒ぎをしていたのだが、10時が過ぎれば眠たくもなる上に明日が決行と言うことで日付が変わることにはお開きとなった。

 そんな中、風花は寂しそうに缶ビールを片手に飲んでいたのでお酒をあまり飲まなかった俺が、彼女の話し相手になっていたのだ。

 

「だけど、あの葦牙クン。ちゃんと脱出できるかしら」

「久能をつれて、か?懲罰部隊のメンバーを見たら無理だねぇ」

「ふぅん、それなのに脱出計画を立てたの?彼女達に嫌われるかもしれないのにぃ?」

「別に紅翼達に好かれようとして入った訳じゃないしねぇ」

 

 俺はそう言いつつ、缶ビールを仰ぐがあまり残ってはいなかったので気晴らしにはならなかった。

 そんな俺に対して、風花はビールを少し飲んでから俺とキスをして口移しをしてきた。

 どうやら、お姉さんの目はごまかせないらしい。

 

「とても不安がるあなたを見ていても面白いけど、格好いいあなたの方が良いわ~」

「そうだな。計画実行時に、懲罰部隊と鉢合わせになったら鉄橋で戦闘になるだろう。そうなれば、今の結達だけでは役不足だろう」

「それでもあなたは計画を進めた。理由があるなら聞かせて欲しいわ」

「理由は単純で、自分達の限界というものを知ってもらいたかったのさ」

 

 俺はそう言って、結達と出会ってからのことを思い出すとセキレイに関してのイベントでは、俺達が必ず関わっていた。

 そのため、皆人達は俺達と行動すれば大丈夫だという安心感の中で、無防備にも鶺鴒計画を進んでいってしまう。

 そうなれば、彼ら自身の壁にぶつかった時に彼らの力で乗り越えることができなくなってしまう可能性が、非常に高いのでここら辺でボディブローを入れてもいいのではないかと思う。

 そういうことから、脱出計画で中心的に働くのが皆人達で俺達はそのサポートに務める方針だ。

 

 原作では、鉄橋を渡る最中に紅翼と戦った結の覚醒するきっかけとなった訳だが、この世界では彼女に渡した結女の鶺鴒基幹がないので今のままでは結が機能停止してしまう。

 そうなれば皆人は慟哭するだろうし、その影響で彼の性格が歪む可能性もある。

 そうなる前に、懲罰部隊の主力とぶつかることになっても結達の戦いに介入する必要がある。

 元々、行動範囲が増えれば良いなと思って入ったから問題はないんだけどね。

 

 

 

 翌日

 

 

「よし、作戦開始だ!」

「はい!」

 

 まず、脱走計画の第一段階は駅の検問を突破して線路を使って鉄橋に向かって走り出す。

 それと同時に、鉄道に使われる変電所を攻撃して電車の動きを止めつつ、本社への連絡をさせないようにする。

 そして、第二段階では荒覇川(あらはがわ)という帝都の内側と外側を分けている川を、越えるために内外を繋いでいる鉄橋を渡りきる。

 計画自体は、非常にシンプルで分かりやすいものではあるが懲罰部隊による妨害は必至だろう。

 となれば、ある程度の戦闘力がありながら過剰戦力にならない程度のセキレイである焔と風花、そして結女を従えてこの作戦に参加した。

 

 彼女達ならば、相手の強さや鉄橋の耐久力を考えながら戦えるのだが鴉羽の場合、リミッターはあってないようなものなので懲罰部隊の主力を殲滅してしまう。

 現在、鶺鴒計画はまだ中盤戦なのでここ倒れられても困るし、秋津に関しても婚いだことがこの作戦で公になるのは避けたい。こう言うのは、可能な範囲で隠しておきたいし。

 そんな訳で、第一段階では草野で検問をしていたM.B.Iの常設部隊の足止めをしてもらうと、ホームに行ってそこにいた奴らの動きもガムテープで動きを止める。

 それと同時に、お金に釣られた瀬尾に頼んで光達で変電所をストップさせてから、レールが通っている場所に降りて走っていった。

 

 

 

 出雲荘

 

 

「あれ?君は行かなかったんだ」

「………ふん」

 

 一方、出雲荘に残った鴉羽は帰ってきくーちゃんと一緒に屋根に上るとそこには、作戦に参加しなかった月海がいたのでそう言うと彼女はそっぽを向いた。

 そんな様子を、隣から見ていたくーちゃんがむくれながらこう言った。

 

(つー)ちゃん、つまじゃないも」

「な…っ!?」

 

 その言葉に、月海は驚いたがくーちゃんは話を続ける。

 

「お兄ちゃんの一生懸命なお願いをお手伝いできないのは妻じゃないもん」

「……」

「くーも最後までお手伝いしたかったんだもん。でもくー、(むー)ちゃんみたく、早く走れないんだもん。月ちゃんはクーよりも速く走れるのに何にもしてないも」

「………」

「だから月ちゃん、妻じゃないもんっ。そんなの妻じゃないもーーーっ」

「!?」

 

 そう言われて、月海はかなりのショックを受けていたがこう反論した。

 

「し、しかしだな。草野?隣にいる鴉羽も一緒に行ってないのじゃが?」

(すー)ちゃんはここを守っているも」

「何?」

「ここがないと皆が悲しむもん。だから鴉ちゃんは白衣のお兄ちゃんのお願いでいるんだも。じゃないと白衣のお兄ちゃんもくーのお兄ちゃんも悲しむんだもん。だからいいんだも」

「ははっ、そうか………妻じゃない、か」

 

 くーちゃんの鋭い指摘に、月海が呆然としながらも立ち上がって屋根から地面に向かって頭から落ちた。

 普通だったら、それだけで大惨事になるのだが彼女達はセキレイである。

 体の頑丈さで言うなら、成人女性なら出雲荘の屋根程度の高さであれば問題ない。

 そのため、セキレイや葦牙の考え方に囚われていた自分をぶん殴る代わりに一旦、地面に落ちてから立ち上がってこう言った。

 

「妾は皆人の正妻ぞ。契りも交わさずに未亡人にされては困る!吾は征くぞ、草野!!」

「あ、だったらそろそろ懲罰部隊と戦いになりそうだから早めに行った方が良いよ。さっきから、不安な気持ちが伝わってくるから」

「あい分かった!」

 

 月海がそう言うと、彼女の思い人を胸に馳せて勢いよく飛び出していった様子を、見ていた松は鴉羽にこう言った。

 

「いいんですか?彼女に任せて」

「心配ないさ。道人は先天的に、物事を見極める才能があるから彼が決めた人選に文句を言うつもりはないよ」

「クフクフクフ、セキレイとして妻として信用しているんですね」

「紛いなりにも彼と最初に婚いだからね」

「最初ではないとは言え、松も同じなのですよ」

 

 松と会話をした鴉羽は、くーちゃんと一緒に屋根から降りたものの待ち焦がれる恋人のように、道人がいる方角に顔を向けた。

 

 

 

 道人side

 

 

「はぁ……はぁ………」

「よし。このまま、順調に鉄橋を渡っていけば後数分で境界を通り抜けるぞ」

「結構、駅から離れましたよね?」

「あぁ、ここまで来れば残る心配は………っ!」

 

 俺が言い終える前に、帝都との境界付近に4つの人影が見えたので悪い予感が当たった気がした。

 作戦を決行したのが夜の11時、日付が変わる1時間前に行動を開始したのでM.B.Iの部隊は戻っているだろうからこんな時間にこんな場所にいるとすれば懲罰部隊しかいない。

 そのため、互いの顔が認識できる距離まで走ると紅翼が獲物を見つけたような顔で、俺にこう言ってきた。

 

「夏朗の言った通りだ。例え、どんなに役職で縛ってもお前だけは行動を縛れないって」

「褒め言葉としては嬉しいね。だからそこを通してくれないか?」

「それはお断りよ。懲罰部隊の理念を忘れたの?」

「ルール違反するセキレイを機能停止にしてもいいんだろ?全く、この場に限って言えばひでぇルールだよ」

「そう言うこと。だから―――――死ね」

 

 

 

 俺が文句を言いつつ、背中に背負っていた棒の1本を取り出すと紅翼はそう言って、俺に向かって走り出した。

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