セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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2部構成だと思った?
残念、3部構成でした!ホント、サーセン。
話がまとまらなかっただけです。


第10話 脱走計画 中編

 ガン、という音と共に両腕にかなりの衝撃が加わったので直前の踏ん張りが、意味を成さなかったように俺の体は後ろに吹き飛ばされた。

 そして、吹き飛んだ俺を受け止めてくれたのは結女だった。

 

「へぇ、あんたらも逃がす方に票を入れたんだ」

「はい!この数日前に会ったのも何かの縁!だからそれを大事にします」

「だったら同業者であろうとも許しはしないよ!」

 

 結女と紅翼が、そう言い合って互いにぶつかり合う傍らで皆人は自分のそばに立っている道人を見て、眉をひそめながらこう聞いてきた。

 

「僕達を騙していたんですか?」

「……分かっちまったらしいから隠さねぇが、俺達も懲罰部隊のメンバーだ。とは言え、あくまで主力は彼女達であって俺達はそのサポートさ。今回は懲罰部隊としてではなく、フリーのセキレイとその葦牙として動いている」

「え?てことは、あんたらも懲罰部隊?」

「一応は、な」

 

 俺がそう言うと、鷸と久能は俺達から距離を取る行動を取ったが焔や風花は特に関心がない、という感じの態度なので皆人はさらに聞いてきた。

 

「……僕達を罠にはめようとしたんですか?」

「それだったらもっといい作戦を考えるさ。東陣営に行って彼らにフルボッコにしてもらうとかな」

「だったら何故!」

「単純に、ただの葦牙と懲罰部隊のメンバーの両方から鶺鴒計画を見てみたかった。この計画がどんな風に結末を迎えるのかをね」

「………」

「鶺鴒計画に深く関わっている俺が葦牙として活動するとどうなるか。それを見てみたかっただけさ。君らが信じるか、信じないかは別としてね」

 

 俺がそう言っている間に、焔と風花も懲罰部隊のセキレイ達と戦い始めたので残る1羽が俺達の前に立った。

 

「No.74の習志野や。よろしゅうな」

「No.88の結です!懲罰部隊の人とは1回、戦いたかったんです!」

「む、結ちゃ~ん」

 

 結は、結女による特訓の成果で技術を習得しつつあるが習志野はよく分からないんだよなぁ。

 彼女はバリアを張れるんだが、それ以外の能力は天でダメだった記憶があるんだけど懲罰部隊に入って、どんな訓練を行ったのかが分からないので彼女の実力は未知数だ。

 可能性としては、低い方だが紅翼が特訓をつけて格闘術を習得していれば、結にとってはかなりの強敵になり得る。

 そのため、俺は結に対してこう言った。

 

「結~?習志野はバリアを張れるからそこんとこは注意な~」

「はい!ありがとうございます!」

「あららら、初っ端からネタばらしかいな。まぁ、ええけど!」

 

 習志野は、そう言いつつも結に急接近してパンチを繰り出したので俺は驚いたが、結は彼女の動きですぐに分かったようだ。

 そのため、結は習志野と打ち合う形になったが互角に戦っている状態にまで持っていっている。

 その様子を見つつ、他のセキレイ達の戦いを見ていると俺のセキレイに対して、懲罰部隊は悪くない戦いをしている。

 結女と紅翼は互いに拳でぶつかり合っているし、焔と来瀬は互いの射程が違うので両者ともに譲らない戦いをしている。

 その一方で、灰翅は完全に風花に弄ばれているようで竜巻の中を人が飛んでいる状態だ。

 その様子を見つつ、俺は皆人にこう言った。

 

「現状、俺がこの計画を立てていなかったら君らのセキレイは一瞬で機能停止にさせた上で、君らを尋問するために他の場所に連れて行くだろう。そうなれば、月海や草野も機能停止にされている可能性が高かった」

「……だから君に感謝しろと?」

「別にそうじゃない。実は昨日の夕暮れにこの鉄橋を見に来た時には既に彼女達に発見されていたという訳だ」

「なっ……じゃあ!」

「そう、既に昨日の時点で彼女達にマークされていたんだ」

 

 事前の作戦計画で葦牙が複数人、戦闘もせずに集まること自体が稀なのでM.B.Iも自ずとその集まりに参加していたメンバーをマークして聞き耳を立てている。

 そしてメールや電話、SNSなどの監視を行って決行日などが分かったら決行する場所に、懲罰部隊を配置して待ち伏せする。

 少人数で、大人数を相手取ることも考えられるので個々の戦闘力は高く調整されているので、現にバリアしか張れていなかった相手に対して結はかなり苦戦している様子を見ながら、俺はこう括った。

 

「鶺鴒計画が始まった当初は、本当にバリアしか出せなかった少女があんなにまで戦えるのが懲罰部隊の強さだ。そして、もしも結の相手が習志野ではなくて紅翼だったら一撃で機能停止になっていたかもな」

「それだけ、脱出は困難だと言う訳ですか」

「あぁ、見つかれば速攻で機能停止。見つからないようにするにしてもM.B.Iの監視下をくぐり抜けるのも困難」

「………」

「それらを考えれば、君が簡単な気持ちでシギ君達を連れてきたのをM.B.Iに尽きだした時点で、葦牙は本社に連行されてセキレイ達は神座島に連れていかれるね」

「……なんとか、ならないんですか?」

「1番、手っ取り早いのは鶺鴒計画自体をとっとと終わらせるだけだね。それ以外だとなれば俺は何もしないし、何もできない」

 

 俺がそう言うと、皆人は悔しそうに手を握ったがそれ以上のことはしないで、結達の戦いを見て叫んだ。

 

「結ちゃん!負けないで!」

「っ!はい!」

 

 皆人の発言に、結は元気よく返事をして戦いに勢いが増して行く様子を見て、よくまぁ平気な顔で戦えるものだと思う。

 紅翼の攻撃を、なんとか防いだのだがその衝撃はかなり強くて、両手首がなんか痛い。

 多分、骨にヒビが入ったと思うが今はそんな弱音は吐かないのは俺のセキレイもいる前では、かっこよくありたいからだ。

 そんな訳で、痛みを隠しながら戦闘を見守っていると最初に動いたのは結のところだった。

 

「この勝負、私の勝ちです!」

「そう、みたいやね。あたしの負けや」

 

 結が元気そうに言った反面、習志野は仰向けになって倒れていてそう言い切った後に気を失ったため、どうやら機能停止になったようである。

 そして、それを見ていた紅翼が結女との戦闘中にも関わらずに結に向かって走り出して、緊張の糸が解けた結に対して怒りの拳をぶつけた。

 いきなりの攻撃だったので、結は回避することができずに紅翼の拳をもろに食らって数メートル後ろの鉄橋に吹き飛んだ後、その衝撃で混乱しているようだった。

 そんな彼女に、紅翼は追い打ちをかけるためにさらに急接近して結のお腹に拳を入れる。

 すると、結を中心にクレーターができたのだがそれで俺はようやく理解が追いついた。

 

 恐らく、仕事とは言っても仲間をやられた以上はその仕返しをしないと、気が済まない性分なのだろう。

 敵に回せばかなり、厄介な性格ではあるがそれよりも厄介なのはこのままでは結が機能停止すると言うことだ。

 セキレイは、うなじの近くにある鶺鴒紋に指を当てながら祝詞を唱えると自動的に、機能停止するのだがもう1つのやり方としては一定以上にダメージを与えることだ。

 これは、今から鴉羽が夜見や蜜羽を攻撃して倒したのと同じようなことが、結の身にも起きると言うことだ。

 そうならないように、努力はしてきたのだが何が起きるのかが分からないのが現実だ。

 だとすれば、俺ができることとしては身を挺して彼女を守ることなのだが、紅翼があの状態では逆に俺ややれることになる。

 

 そのため、俺は結女に目配らせをするのと同時に彼女が動き出して紅翼を止めようとした瞬間、女性の声が聞こえてきた。

 

「水祝!」




習志野は犠牲になったのだ、物語を進めるためにな。
本当ならもう少し、彼女を登場させたかったんですが主人公の思惑通りにするために退場してもらいました。
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