セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第12話 鶺鴒計画の当初

「………」

「………」

「………なぁ」

「なんだい?道人」

「オーラが妙に怖いんですけど」

「気のせいじゃないかな。私は決して怒ってないしね」

 

 絶対に嘘だ、とは言えないほどに鴉羽は怒っていた。

 顔は笑っているのに、目が笑っていない上に彼女の背後からどす黒いオーラが、物凄い量で出ているからとても怖い。

 完全にやらかしたなぁ、と思っていると包帯とギブスで固定されている右腕が冷たくなってきたので、そっちに顔を向けると秋津が無表情で氷を生成していた。

 

「秋津さん、冷たいんだけど」

「………」

「何も言わずに凍らせるのはやめてくれるかな?」

「………大丈夫、マスターの右腕がなくなっても私が代わりに食べさせるから」

「やめてー!研究できなくなるからやめてー!!」

 

 拗ねられて殴られるのはともかく、利き腕である右腕が凍って壊死すると研究がしにくくなるから本気でやめて欲しい。

 それに、彼女は俺が怪我したのがセキレイとの直接の戦闘によってなのでそのことで怒っている。

 そのため、本気で壊死させようとしている秋津に頼み込んでいると鴉羽がこう言ってきた。

 

「……道人」

「な、なんだい?鴉羽」

「1回、イってみようか」

「あの世じゃないよね!?そうだよね!?」

 

 俺がそう言って、騒いでいると女性の看護師から注意されたので秋津は氷を消して静かにしていると、彼女達はこう言ってきた。

 

「全く、私達がどれだけ心配したのかを知っているのかね?」

「すっごく心配した。怖かった。マスターが消えるんじゃないかって」

「すまんなぁ、2人とも」

 

 秋津はしょんぼりとした表情になり、鴉羽は心配そうにそう言ってきたので彼女が人を心配するのは珍しいなぁと思いつつ、面会が終了する時間まで世間話をした。

 それによると、結も一旦はこの病院に搬送されて集中検査と治療をして怪我を治したらしい。

 まぁ、セキレイは人間よりも頑丈にできているようなので問題はないようだがそれでも、彼女は紅翼の攻撃によって機能停止の一歩手前まで言っていたらしい。

 最後の攻撃を、俺が肩代わりできたのなら悪くはない代償だろう。そんなことを言ったら、鴉羽達から怒られるがね。

 

 そんな訳でそれから1週間、病院生活をした後に出雲荘に戻ったら松に呼ばれた。

 

「全く、鴉羽達が言ったようにみったんは運がよかったんです。月海たんが注意を引いて、結女たん達が一瞬で片してくれたからあの程度で済んだんです」

「スマンスマン、あれは完全に俺の慢心だったぜ」

「全くですよ~」

 

 そんなことを言い合いつつ、松の部屋に行くと先客として皆人と結、くーちゃんに月海、千穂と鈿女がいた。

 そのため、松になんで彼らがいるんだと聞くと懲罰部隊との戦闘で殆ど、何もできなかったことから鶺鴒計画に興味を持ったらしい。

 特に、俺が紅翼の攻撃で負傷しても弱音を吐かずに淡々と指示を出していたことから、松が知っていることを全て知りたいとのことだった。

 千穂達も、前々から気になっていたが俺達に直接聞くのを躊躇っていたらしいので、今回の件でちゃんと聞こうとしている。

 折角なので、それらの疑問に答える形で松に説明してもらうことにした。彼女は、何だかんだで説明が上手だからな。

 

 

 今から20年ほど前、日本海側に突如として地質学的にはあり得ない形で島が隆起して出現した。

 そして、その島に上陸した男女2人の学生によって発見された船の遺跡に108つの生命体が、存在していたことによってこの鶺鴒計画が始まったとされる。

 その内、男の方は後のM.B.I社長になる御中広人であり、生まれ持ったカリスマ性と遺跡にあったオーバーテクノロジーが組み合わさったことであらゆる方面で業界トップに踊り出た。

 一方、108体の生命体(セキレイ)は1体が成体としてとして完成していて8体は胎児の状態で眠りにつき、残る99体は受精卵の状態で発見された。

 これらは、現代社会に適応できるように調整されたが受精卵の状態で干渉するのと、できあがっている状態で干渉するのとでは大きく違う。

 絵で例えるなら、白紙の状態で1から書き上げるのと模様として線が書かれているのとで、仕上がりが大きく違うように能力を管理して安定させた10番台以降の方が、本来の力を発揮できるとのこと。

 と言っても、あくまで調整者に拠るところも大きいのだが。

 

 そんな訳で、順調に思えた鶺鴒計画―――当時はS計画と呼ばれていた―――は権力者達の共闘によって、表向きには国籍不明の軍隊が神座島に侵攻によって翻弄されようとしていた。

 御中が作った新興企業は、本来なら数十年の歳月をかけて拡大していくはずなのだがたった数年で業界トップになれば怪しむのは当然だし、当時は軍隊も持っていなかったので権力者達は簡単にM.B.Iの技術を奪取できると考えていた。

 しかし、その目論見は外れて国籍不明の軍隊を装った多国籍軍は、S計画守護のために設立された懲罰部隊によって全滅。

 その損害は戦車28台、歩兵戦闘車15台、ヘリコプター12機、輸送艦2隻に護衛艦1隻というもので、失った人命は数千人単位である。

 特に、No.01である美哉は刀から発生したソニックブームで軍艦を沈めるほどに強かった。

 無論、他に調整が終了していたNo.02~No.05までのセキレイも充分に強く、それぞれの力で多国籍軍を蹂躙を行っていった。

 その結果、S計画は鶺鴒計画となって計画を大きく変えることになったのだが、その中で俺も計画に参加していたので皆人達から驚かれた。

 

「えぇーー!!第一次神座島侵攻からいたの!?」

「みったんは当時から天才的な知識で調整してくれましたからねぇ」

「あぁ、途中で今回のような大怪我もしたからセキレイに怪我はつきものだと思っているよ」

「へぇー、じゃあ今回の入院も想定内?」

「あぁ、想定外だったのは入院日数ぐらいだったな」

「はぅう、話が壮大すぎるよぉ」

 

 そんなことを言い合っていると、なんで懲罰部隊に参加したのかという話になって松を始めとする俺のセキレイの話なった。

 元々、松や風花、鴉羽は俺に鶺鴒基幹が反応したためだし、焔も似たような同じように反応して紆余局施設しながらも彼女と婚いだ。

 秋津は、廃棄ナンバーだったが俺達と長くいるために羽化したのだが、結女だけは未だに羽化ができていない。

 本当は、彼女とも婚いで一緒に行きたかったんだが彼女自身が特殊すぎて仕方なかった。

 

 そして、そんな話の後は第三段階の話になった。

 

 現状、特徴のあるセキレイはそれぞれの葦牙と婚いでいるので第二段階はほぼ、残ったセキレイはどこに婚がせるのかという消化試合みたいになっているので、今は英気を養うためにゆっくりと過ごすことになった。

 何故なら、第三段階では葦牙とセキレイの絆が試されるチーム戦なので、第二段階のように複数のセキレイを同時に出すことはできない。

 原作では、1人の葦牙にセキレイは3羽までと決まっていたがこの世界の第三段階は分からない。

 少なくとも、人数制限はあるはずなので今の内に出るチーム決めておく必要がある。

 

 さて、誰を出すかなぁと思いながら皆人達の疑問は松によって消化されていき、夕食になる頃にお開きとなった。




神座島侵攻時の話はいらなかったかもしれませんが、おさらいと言うことで乗せておきました。
セキレイについて、ネットでググった程度しか知らない人が読んでいるかもしれませんし。

という訳で、次回は第三段階に入っていこうと思います。
グダグダやっても仕方ないですし。


ではまた次回。
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