「場所と時間以外、具体的な事は何も書かれてねぇ。謎かけのようなメール…オイ、道人」
「なんだい?クズの人」
「……てめー、後で覚えとけよ? ンで、御中からメールか何か送られてこなかったか?」
「仮にも懲罰部隊だからねぇ、このメールとは別のメールが来ている」
第三段階、四回戦目の会場は船が止まる港であるのと同時に詳しい状況が分からない以上、何も手を打てないが俺は今回の会場を知っている。
この世界に来て早二十数年、元の世界で知ったセキレイの内容は細かい部分は忘れてしまったがそれでも大まかな内容は覚えているものだ。
第四回戦の会場は、船に乗っての最終戦だから乗船しなかったら懲罰部隊に粛正される。
全く、ケツに火をつけてぶっ叩くのが好きな人だとは思うがこうでもしないとノリの悪い人は乗らないだろうし、乗ったとしても神器が確保できるかは分からない。
結局、どんな手段を講じても最終的に神器を持っていたら試験の合格だと言うんだから、普通の葦牙にはつらいものがある。
そのため、俺は個人的に送られてきたメールを皆人や瀬尾達に見せた。
『道人くん、今回の試合でつれない葦牙の始末を頼む。何、全員をこっちに回せとは言わない。最低でも1羽は参加させてくれ』
第四回戦のメールとは裏腹に、俺に言い渡されたのはまたしても粛正についてだったので皆人達は、共闘を組んで俺も参加しようとした時に千穂とウズメがやって来た。
そのため、千穂達は瀬尾達に挨拶してから第四回戦の強制参加に対抗する意味で、共闘する俺達のチームに加わる事になった。
こうすれば、少なくとも敵は減るので神器を入手の有無に関わらず、第四回戦終了まではなんとかなるだろう。
しかし、問題はその後だ。
神器を持っていない葦牙がいたら、セキレイの方は強制的に機能停止させろとの社長からの勅命が、電話を使ってやって来たので俺は速攻で断ったよ。
これは随分と先になるが、生き残った8組の葦牙達が集う時に神座島で戦う事になる時に想定外の事が起きて外部と連絡が取れなくなった際に、何が起きるかを考えてみたんだ。
生き残ったセキレイと葦牙、そして社長が孤島にいて何らかの理由で外部との連絡が不可能。
最終段階までに、生き残ったセキレイはそれほど多くない。
そうなれば、海外勢力の奴らは本社をめがけて強襲を仕掛けるだろう。その上、神座島にも強襲してくるかもしれないから可能な範囲で生き残らせる必要がある。
そのため、鴉羽には四回戦の試合中は出雲荘で待機してもらって神器を、奪いに来た奴らの足止めをお願いした。
だって、東陣営が怪しい動きをしまくっているからどうしても気になったから、第四回戦が始まる前に俺が動ける範囲で対策を講じていった。
第四回戦 洋上の船の上
「んで、ハッキングを受けたんだな?」
『ごめんなさいです~、みったんにも手伝ってもらったのに~』
「やられたもんは仕方ねぇ、復旧にどのぐらい掛かる?」
『後数分はかかります~』
「了解した、こちらも適度に戦いながら移動する」
俺はそう言うと、松との通信を切って皆人達に事情を話す。
「えぇ~!じゃあ、ここから支援なしで行動するんですか!?」
「大方、東だとは思うが現状ではここを突破しないといけないんだ」
俺達が、そう言い合っている間も神器狙いで声を掛けられた葦牙達の包囲網が狭まっている。
本来であれば、『N0.108が機能停止した』という偽情報を流すはずだったのだが、肝心の松のパソコンはハッキングによってシステムエラーに持っていかれたため、結女に指示を出して俺も背中の棒を手に持って戦闘態勢に入る。
元々、俺のセキレイは単独でも戦闘力がかなり高い個体がメインになっているので、一対多の戦闘でも苦労しない。
しかも俺自身、セキレイ対策である程度の棒術を習っていたので数人の人間相手ならそれなりに戦える方だ。
ましてや、相手はごく普通の一般人であるので飛び道具がなければ大丈夫だ。
そのため、結女が戦い始めると俺も葦牙相手に戦おうとして1人の女性が出てきた。
「下がってください!」
「っ!君は!」
「え…っ!」
「戦ノ舞・“
その女性がそう言うと、持っていた薙刀から斬撃が飛んで皆人達に集まっていた葦牙やセキレイが吹き飛んだ。
そんな彼女は、俺にとっても忘れられない思い出として懐かしそうに話しかけた。
「No.87の鹿火だな?懐かしい上に凜々しくなったな」
「お久し振りです、道人さん。積もる話は多々ありますが今は戦いに専念させてください」
「はいよ、存分に戦ってきな」
俺がそう言うと、鹿火と呼ばれた巫女服姿の女性が薙刀を振るって結女と共闘を始めた。
一方、事情を知らない皆人は震えながらも状況について行けてなかったが、鹿火の葦牙である青年が近づいてきて俺達に話しかけてきた。
「あなたが北の葦牙兼懲罰部隊の武田サン、ですよね?」
「あんたが鹿火と婚いだ葦牙だな?」
「えぇ、始めまして。鹿火の葦牙をやってる
大角と名乗った彼曰く、鹿火、第二次神座島侵攻の時に拉致されようとして俺や鴉羽達に守られたセキレイなので、その恩返しをしたくて今まで技術を高めていたらしい。
そして、彼と出会う前にNo.06であるのと同時にガーディアンとしての仕事をしていた焔にも、救われたらしいのでそのお礼を言う前に俺に何かが起きたら困る、という事で救ってくれたようだ。
そんな事を言ってくれている間に、結女と鹿火はその場を制圧したようなので鹿火は結女に対してお辞儀をしながらあの時のお礼を言っている。
その様子を見て、大角は鹿火が強くなった理由を伝えてくれた。
「第二次神座島で救われたあの日、結と共に結女さんに誓ったそうです。大好きな人を見つけて羽化したら、私達は誰よりも強くなると。そして、どちらかが“最後の1羽”になったら―――」
『翼の折れたセキレイ達を再び、自由の空へ解き放つ、と』
その理由とを言う時に、鹿火も一緒に行ったのだがその姿はまるで結や結女と瓜二つだった。
『や~ら~れ~た~で~す~!!』
一方、出雲荘ではシステムダウンしたことによって松は大慌てで復旧に当たっていた。
それによって、M.B.Iの監視衛星や
そのため、道人や皆人に付いていかなかったセキレイ以外が出雲荘の防衛に当たることになる。
そのメンバーは、道人のセキレイで鴉羽を始めとして風花、焔、秋津で皆人のセキレイは結に月海、葛城で結女とくーちゃんはそれぞれの葦牙に付いていき、松はシステムの復旧のために手が出せない。
縁側には、美哉の他に健人が座って寛いでいるのだがその間には無造作に神器が2つ、置いてあるので無造作すぎるかもしてない。
しかし、それほどに信用していることも窺い知れるので彼女達は気合い充分だ。
そんな中、結から1つの提案があった。
「鶺鴒表明をしませんか?」
鶺鴒表明とは、鶺鴒計画の中で最後の1羽になった時に何をしたいかを皆の前で言うものだ。
自分がやりたいことを伝えるだけならともかく、最後の1羽になると言うことはそれ以外のセキレイである仲間さえも超えて葦牙と一緒になることである。
そのため、皆が戸惑って結に事実を告げると結もそのことに気が付いて少し緊張したが、それでも自分のやりたいことを皆の前で発表した。
それに釣られて、その他のセキレイも自分の鶺鴒表明をはっきりと言った。
鴉羽や風花、焔は道人とずっと一緒にいる生活を望み、松はあらゆる実験を道人にしたいと伝え、月海や葛城は皆人と一緒に、そして結は皆と一緒にいることだ。
そんなことを言い合っていると、ついに東陣営のセキレイ達の姿が見えたので結達も戦闘態勢に入っていった。