「ふん!」
「ぐっ!」
皆人が第四回戦で2つ目の神器を手にしている頃、出雲荘では神器を巡って“北”と“東”が対立して戦っていた。
攻める方は東陣営のセキレイ達で、守る方は北陣営と懲罰部隊のセキレイ達だ。
現状では北陣営だけではなく、懲罰部隊や
ナンバーが、10番台以降のセキレイを複数いるとしても懲罰部隊に席を置いて、神座島侵攻を経験したセキレイのほぼ全員がいる以上は奪取することはほぼ不可能と言える。
ましてや、そのセキレイ達を機能停止にすることは不可能で、逆に東陣営のセキレイが殲滅されそうになっていた。
そんな中、氷我達が乗っている車に衝突した車があった。
出雲荘が都心から離れていると言っても、乗用車がすれ違って走れるぐらいの道幅はあるはずなのに、氷我達の車にぶつかったとなれば故意にぶつけたことになる。
そのため、柿崎という眼鏡をした氷我の秘書兼友人が車から降りて車の後ろを見ると、もう一台の黒塗りである車が自分達の車に軽く衝突していた。
柿崎達が唖然とする中で、その車から降りてきた人物にさらに驚くことになる。
「あれぇー?こんな所に車が止まっていたんだーー。気付かなかったよねー、長谷川ー」
「はい、坊ちゃま」
「そーだよねー、こんなとこに葦牙の車が止まってるわけないよねーー」
長谷川というのは、御子上のじいやをしている人物で御子上隼人はこう言いながら車から降りた。
「あんた達、大人は自分の狭い視野でゲームをひっかき回すから嫌いなんだ」
そう言うと、氷我も苛立ちそうな表情をしながら出てきたので御子上は畳み掛けるように言葉を続ける。
「セキレイも葦牙も規格外だというのに、自分達の決めた狭い世界のルールにムリヤリあてはめようとするんだよね!」
「……何を言っている?」
「“東の氷我”サン、あんたの考えてることぐらいお見通しだってコト!」
北と東によるセキレイの戦いの中、東の葦牙に南の葦牙が文句を言いに来た形ではあるがそれと同時に御子上は氷我の境遇も理解している。
氷我がトップのグループ企業は、古い体質の特徴である
しかも、鶺鴒計画自体もそいつらに強制的に参加させられているのでセキレイは、ライバル会社を知る道具程度にしか見ていないとのこと。
そのことから、他者を利用する程度にしか見えていないがそれはあくまでも、狭い世界で生かされてそれが全部だと思い込んでいるからだ。
御子上にとって、セキレイというのはそう言った世界観から解き放ってくれた存在であり、自由な世界を飛び回る仲間として見ている。その反面、ややモノ扱いしている部分もあるのだが。
それはともかく
大胆な氷我達の行動に対して、止めに入った御子上の理由はそれだけではなくて最大の理由は陸奥からの助言だった。
それは、北の般若であるNo.01美哉の存在で隠居した彼女が動けばすぐそばにいて、戦闘狂であるNo.04の鴉羽がそれに釣られて大暴れする。
そうなったら、帝都の多くは更地と化すので流石にM.B.Iも動かざるを得ないので、鶺鴒計画自体が崩壊すると御子上は予測したため、彼としては不本意な終わり方はしたくないのが本音である。
そして、その上で氷我に尋ねた。
「―――でさぁ。1つ疑問なんだけど、どうして北なの?」
「………」
「神器だけが目的なんだったら僕んとこ来てもいい筈じゃん。第四回戦に参加したって手に入ったかもしれない訳だし、もしかして第三回戦の事とか根に持ってる?」
「………」
「それとも、“懲罰部隊補佐”兼“北の葦牙”に守ってもらっている葦牙を妬んでのコトかなあ?」
「なんだと?」
“懲罰部隊補佐”兼“北の葦牙”とは、北エリアにおいて圧倒的な力を持つ複数のセキレイと婚いで共に生活しながら、M.B.Iの狗として主力をサポートする形で活動している道人を指す。
しかも、主力の懲罰部隊ほどに過激ではないので第二段階まで道人達がどう動くのかを、注視していた葦牙はかなり存在していた。
そして、その下で何ら不自由を感じずに生活できた御中社長の実子である皆人を、氷我は妬んでいるのではないかと感じていた。
似たような生い立ちを持っているはずが、皆人の方はのほほーんと2浪しているのに対して氷我の方は身内に足を引っ張られまくっているからだ。
そのため、御子上は氷我の行動に一定の理解を示しつつもこう言い放つ。
「もう1つ上からものを見てみなよ、御中社長のように。僕らは葦牙なんだからさ!」
その瞬間、氷我と婚いだセキレイのうちの1羽が結の「熊の手」と言う技によって、撃破されたのを合図に氷我は状況を確認するとさっきの攻撃でやられたのを含めて合計で5羽をやられていた。
氷我は、婚いで今までに生き残った全てのセキレイを投入したにも関わらず、完全に弄ばれていたことに気が付いた。
もしも、この場に道人がいて彼のセキレイに号令を出したら氷我にとって、最悪のパターンになる事は一目瞭然だった。
そのため、彼はつまらない“人間”としてここでリタイアするか、“葦牙”としてさらに遊び尽くすかの二択を迫られている事になった。
一方、道人達も状況が変化して3つ目の神器を瀬尾達が見つけた。
しかも、結女達が戦闘を行っている最中にくーちゃんが落とした2つ目の神器を鹿火が拾い、残る1つは真田が見つけている。
それによって、第四回戦は終了したのだがそれと同時に始まったカウントダウンによって、葦牙に配られていたカードから強力な何かが発生した。
それによって、神器を第四回戦やそれ以前に入手した葦牙以外の奴らが急に倒れ始めた。
恐らく、神器に関する事なんだろうけど説明がない以上はなんとも言えない。
そうこうしている内に、エネルギーの影響を受けなかった葦牙とセキレイである千穂達とユカリ達も来たので体調を聞いてみると特に問題ないらしい。
と言うより、ユカリ達は他のセキレイ達との戦いでカードを壊したようなので難を逃れたようだ。
そして、この状況から俺はある仮説を集まった面々に伝えた。
「このままだとまずいな。神器は全て、それぞれの葦牙の元に渡った以上はM.B.Iも黙っちゃいないだろうから懲罰部隊を差し向けてくるだろう」
「だな、そうなれば余ったセキレイは機能停止になるだローから佐橋の妹と千穂ちゃんには、どうにかしてもらわねーと………」
俺の仮説に、同調するように瀬尾が言ったので船を歩き回っていた彼に聞いてみた。
「……なぁ、瀬尾」
「あん?」
「救命ボートはあったか?」
「無論だ。船が沈んで葦牙が全滅したら話になんねーからな」
その質問に、平然と言いのけたので俺は頷きながらこう言った。
「じゃあ、問題ないね」
「そりゃあ、どういう―――」
「おぉっと、それを言わせるかい?ルールに従わねぇ瀬尾さんよ」
「チッ………という訳だ。オメーらはとっとと行っちまいな」
俺がそう言うと、瀬尾が舌打ちをしてからユカリや千穂にそう言ったので、頭をかしげる千穂を連れてユカリ達は行ってしまった。
元々、ユカリと椎菜はくーちゃんの安否を確かめに第四回戦に参加しただけだし、千穂達もあわよくば神器を入手できると思って参加しただけだ。
そして、残っていた神器はユカリや千穂に行かなかった以上は、鶺鴒計画に参加する理由はなくなったので計画から抜けることになる意思を俺達に伝えた。
そのため、船が着岸する前にユカリ達は救命ボートで船から脱出して行ったのを確認してから、俺達も船を下りる準備をして着岸するのを待った。
因みに、第四回戦が始まる直前にユカリから東陣営が葦牙を集めていた、という情報を受け取っていたので対応がしやすかった。
これが以前、ユカリが言っていた『お兄ぃの利益になるようなことを伝えればいいんだね?』ということの真相だった。
・ちょっとした補足
主人公達が第四回戦を行っている間に、氷我達が出雲荘に強襲。それを御子上が阻止したという内容です。
ここら辺の話は少々、ややこしいので作者なりにざっくりとまとめてみました。
氷我さんは、皆人に嫉妬していましたので無謀と知りながら強襲を仕掛けた感じです。
また、ここが違うんじゃない?というのがあれば教えて頂けると幸いです。
一方、第四回戦をリタイアするグループは本作においても出てきているので、懲罰部隊で生き残った紅翼と灰翅によって殲滅されています。
鴉羽が参加していないのが、原作との違いです。