第四回戦の決着が付いてから数日後、第三段階も終了して一先ずは平穏が戻って東陣営との戦闘で損傷した箇所を修復しているのだが、今の状況は明らかに日常からかけ離れた非日常だった。
理由は、帝都にあるM.B.I本社の上空に嵩天そのものが現れたせいだ。
嵩天というのは、セキレイ達の出身地であるのと同時に葦牙とセキレイ達の魂の裁定をする者でもあるNo.00が生まれた場所でもある。
No.00は現在、No.01である美哉が担っているために御中社長達が発見した当時から、成人として彼らの前に姿を現していた。
そして今、それまで隠していた嵩天が人前に姿を現した事によって美哉はNo.00として、行動に移さないといけなくなった。
そのため、最終局面に抜けて結女達が何かをやろうとしていた。
「じゃんけんぽん!あいこでしょ!あいこでしょ!」
「…ん、勝っちゃった」
「ふむ、この順番って…」
「奇遇ですね、羽化した順の逆です」
「……?何してんだい?」
俺がそう言うと、彼女達は顔を赤らめて色々と言っていたが秋津が近づいて来てこう言ってきた。
「マスター、ちょっといい?」
「よくわからんが、大丈夫だな」
俺がそう言うと、秋津と一緒に縁側に座って彼女の話を聞く。
「マスター、最初に会ったときのことを覚えてる?」
「それって神座島の時?それとも公園でばったり会った時?」
「……公園で」
「あぁ、よく覚えてるよ」
「あの時、私はあなたの事をよく知るまでに自分はダメなセキレイだ。だから調整を失敗したんだと思い込んでいた」
「………」
「けど違った。失敗したのは偶然で私の責任じゃなかった。だから私は決めた」
「………」
「私を縛っていた氷を溶かしてくれたあなたを、私の氷で守りたい」
「………そうか。ありがとうな、秋津」
「……ん」
俺がそう言うと、彼女は顔を赤らめてその場から立ち去った。
彼女が言いたいのは、今まで縛っていたわだかまりを解いてくれた俺のために、自分の持てる能力を出し切って嵩天まで導きたいという事だろう。
そんな彼女が、1番大きく変化したのは表情が豊かになった事だ。
今までは、感情を表に出さないように無表情でいる濃っが多かったが、最近ではぎこちなくではあるが笑うようになったり、顔を赤らめるようになった。
そんな彼女の後ろ姿を見ていると、今度は焔が話しかけてきた。
「おぉ、なんだ?秋津と言い、今日は何かのイベントでもあるんかい?」
「そう言うわけじゃないよ。ただ、君と話したいことがあったから」
「話したいこと?」
「うん」
俺がそう聞くと、焔は少しずつ話してくれた。
「道人、私のことをどう思ってる?」
「どうって…好きだよ?」
「!?」
「女性としても好きだが、頼りがいのある格好いい女性といった感じでもあるかね」
「あ、あぁ……そう言うね」
俺がそう言うと、焔の動きがぎこちなくなったので俺から話を振る。
「そう言えば、第四回戦の時に焔に礼が言いたいって言う人と出会ってな」
「え……私に?」
「No.87の鹿火、薙刀を持った女性なんだが第一段階の時に助けてもらったのにすごく感謝していた」
「……」
「そいつらは第四回戦が終わるとさっさと撤収したらしいから引き合わせられなかったが、No.06の葦牙だからと助けてくれたよ。だから、君のやって来たことは無駄じゃなかったんだ」
「………そっか、そう言うのってなんか、嬉しいね」
「あぁ……」
「ところで道人」
「んん?」
そう言い合って、俺が空を見上げると焔が自分の心情を語ってくれた。
「君は私と婚いでくれた後も、ガーディアンとしての仕事を認めてくれて続けた結果、色んな人を見てきたから分かったんだけどさ」
「うん」
「人って本質的に他人の痛みに鈍感なんだよね。肉体の痛み、心の痛み。自分が傷つけば大騒ぎするクセに、他人のことになると解っているようで解っていない」
「……」
「本当は解ろうともしていない……そういうものだと思っている」
「……」
「だけど君は違った。不安定な私のことを諦めずに最後まで付き合ってくれたし、婚いだ時もこんな私を受け入れてくれた」
「かなり大変だったけどねー、ハハ」
「……そんな私を受け入れてくれたあなただから私は私という存在を赦していける。だから道人、私はあなたの篝火になりたい」
「……焔?」
彼女は、俺の隣で座っていたがそう言いきると立ち上がってその場を去ってしまった。
焔はガーディアンの仕事において、帝都という暗闇を飛ぶ小鳥たちの篝火になりたいと言って“篝”というもう1つの名前を持った。
俺はそれを承認したし、鴉羽達も彼女が仕事中においてはそう呼んでいた。
彼女がそう言ったと言うことは、恐らくは―――――。
「って、ぬあああああ~~~っと!」
俺はそこまで考えて、風によって屋根にまで吹き飛ばされた。
こんなことができるのは、セキレイの中でも1人ぐらいしか思いつかない。
俺が屋根に着地した後、後ろから腕を回されてこう言われた。
「ンフ♡ だーれだ♡」
「全く…さっきの風と言い、この色っぽい声は風花さんだな?」
「ふふ、あーたり♡」
彼女は、笑いながらそう言ったので俺も釣られて笑っているとこんなことを聞いてきた。
「ねぇ道人クン、道人クンは私のこと、好き?」
「勿論ですねぇ、俺と婚いでくれたあなたのことも好きですよ」
「じゃあ、皆の中では何番目?」
「……答えに困りますねぇ。順位なんて決められません」
「………そう」
俺がそう言うと、風花にはいつもの余裕はないようで少し寂しそうだったので、俺から彼女に聞いてみることにする。
「……もしかして、嵩天のことで不安になっています?」
「勿論よ、あんなものが現れたら誰だっておかしくなるわ」
「ですよねぇ……俺も少し緊張していますよ」
「………」
「しかし、鶺鴒計画の当初から参加して皆の姿をこの目に写した時から俺が望むものはもう決まっていたんだ」
「望むもの?何何?なーにー?おねーさんにも教えてー」
俺がそう言うと、風花は俺が望むものを聞いてきたが俺は後ろ振り向くとある行動に出る。
それは―――。
「……(チュッ」
「え?」
「それを言えるのは計画が終わってから、ですかね」
それは、風花の頬にキスをしたことだ。
予想外のことに、風花は頭が真っ白になっていたが我に返ると頬を膨らませて、怒った表情で俺に言ってきた。
「むー!おねーさんをからかって面白いの!?」
「スマンスマン。だけど、俺の望むもののためにやれることをやるつもりだ」
俺がそう言うと、彼女は驚いた表情になってから優しい顔で俺とキスをした。
風花は、昔から俺が男らしく行動できるかを見続けている。
その行動は、肉体的にたくましいとかではなくて自分の考えで行動できるかが、彼女が惚れる基準になっているから俺は俺なりの行動をしてきた。
それは例え、葦牙として泥水を啜っても前進し続けることとも考えているので、つらい状況になって弱いところを見せても進み続けた。
その結果が、俺達が置かれている今の状況であると確信している。
これらのやり取りを、風花と気が済むまでやってから俺達は地上に降りた。
・ちょっとした補足
鶺鴒表明は、セキレイ達がそれぞれの意思表示を葦牙や他の仲間達に伝えることです。
今回の場合、主人公のセキレイは主人公と他の5羽に伝えることになります。
皆人達の場合、本人と他の3羽に対してです。
風花の場合、鶺鴒計画終了後にキスの先のことを主人公とやることです。