セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第22話 鴉羽 VS 鹿火

『5!4!3!2!1!』

 

 カウントダウンが始まる前に、神器を所定の場所に差し終えた俺達はカウントダウンが終了するのと同時に、息苦しさがなくなったので全ての神器が収められたことになる。

 そのため、とっとと皆人達と合流しようとした瞬間、俺達の周りにあった機材が動き出して社長からのアナウンスが流れた。

 

『申し訳ないが…たった今、君達はそこから出られなくなった。ステージⅡの始まりだ!!』

「痛っ…!」

「光の壁か?」

「そうみたいだ」

 

 そのアナウンスと共に、機材から上空に向けて光が発射されたので焔が触ってみると、その光から弾かれるように手を引いた。

 一列に並んでいるところから察するに、差し詰め光の壁のように見えるのだがそんな状況を社長が説明してくれた。

 

『ルールは簡単だ。この光の壁で区切られた“(ゲージ)”にはそれぞれに葦牙が2人ずつ。同じ(ゲージ)にいるいるもう1人の葦牙がまずは諸君と“闘う相手”だ』

『ちなみに私は気が長い方ではないのでね。制限時間(タイムリミット)は1時間。1時間以内に決着の付かない(ゲージ)は葦牙、セキレイ共に全員が機能停止となるのでそのつもりで』

『では、私はこれにて。諸君らの健闘を祈る』

 

「……ここまでが社長の計画という訳か」

「全く、社長は意地悪だね」

「私、負けるつもりはありません!」

「ですが現状において、相手がどういうセキレイなのかが分からないと……っ!」

 

 松がそう言いかけて、光の壁で仕切られたフィールドに目をやると既に、相手の葦牙とセキレイがこっちに来ていた。

 そして、セキレイの方はやる気満々のようだ。

 

「鴉羽様!」

「なんだ、最初の相手はキミか」

「……」

「ええっと確か、No.87。……ああ、そうだった。2回目の“神座島侵攻”の時に、人間に攫われかけて道人に迷惑をかけた間抜け」

「…っ!鴉羽、言葉を選びなさい!」

 

 鴉羽は、鹿火のことを思い出して憎しみの表情を浮かべながらそう言った。

 何故なら、彼女が小さい頃に起こった第二次神座島侵攻が起こった当時、船の外に新設されたセキレイの調整施設にいたのが俺を始めとする数名の研究者と2羽のセキレイの幼体。

 その時には、初代懲罰部隊は相次ぐ離反によって解散していて2代目懲罰部隊は、別の用事で神座島を離れていたので侵攻を許してしまった。

 そのため、懲罰部隊が帰ってくるまで籠城していたのだが研究者達が次々に射殺され、入り口を突破された俺も侵攻してきた奴らに肩を撃たれたのだから。

 幸いにも、俺が殺される前に結女と鴉羽が帰ってきたので死なずに済んだが、それでも俺が怪我したことに本気で怒っていた。

 そして、その原因が鹿火と結にあるのだから言い訳できないのだが、そんな彼女を庇うように結女が鴉羽にそう言った。

 

「だけどゆーちゃん?彼女は、当時の道人に恐怖という物を教えてしまった。だから万死に値すると思うんだけど?」

「ですが……!」

「結女、鴉羽の言葉にも一理ある」

「道人さん…」

「だけど鹿火、お前はあの時のようにひ弱な幼生ではないのだろう?」

 

 代えがたい事実に、結女は反論するが俺はそれに待ったをかけて鹿火に聞いた。

 すると、彼女はそれを合図に薙刀を構えて鴉羽に接近した後、彼女にその刃を突き立ててこう宣言を行った。

 

「はい!私は私の運命(キズナ)と出会えたのです。よって今の私に迷いは無く、ここにあるのはあなたの闇を砕かんが為ッ」

「……」

「―――それを伝えたかったのです!刃の心念、貫かせて戴きます!」

「…面白い、では遊んでもらうとするかね。前菜ぐらいにはなっておくれよ?」

 

 鴉羽が、俺に目配らせしてきたので俺が頷くと彼女は自分が持っていた刀を鞘から抜いた瞬間、鹿火が見計らったように技を繰り出す。

 

(いくさ)ノ舞 “咲姫(サクヒメ)”!!」

 

 鹿火がそう言うと、斬撃がソニックブームとして飛び出したので鴉羽が軽くいなすとその直後、鹿火が薙刀を槍のように持って突進してきたので鴉羽は寸での所で防御した。

 鹿火の表情は、余裕そのもので彼女が飛び上がると次の技を繰り出す。

 

(ツワモノ)ノ舞 “百華(ひゃっか)”!!」

 

 薙刀の強さは、日本刀の柄の部分が長くなったような武器のため、そのリーチを生かした戦い方ができると言うことだ。

 槍のように突くこともできるし、リーチを生かして相手のアウトレンジから撫で切りにすることもできる。

 そして何より、鴉羽が防御の構えを取ったにも関わらずに彼女の頬が軽く切れて血が静かに肌を伝う。

 そんな様子を見て、俺は鹿火の成長を嬉しく思う。

 侵攻時には、何もできない幼女でしか無かった彼女が鴉羽と闘っているのだから。

 鹿火は、次から次へと攻撃を繰り出して鴉羽がそれに付き合うという光景は、あの時には想像できなかった光景だから可能な限り、続いて欲しいと願ったが鹿火の葦牙である大角がこう言った。

 

「鹿火、祝詞だ!一緒に戦おう!」

「…はい!」

 

 その返事を聞いて、鴉羽も俺を見てこう言った。

 

「……だってさ、道人。ここは受けて立つべきだよね?」

「勿論。俺達も一緒に戦おう」

 

 俺もそう言うと、鴉羽は嬉しそうに笑ってキスをした。

 後ろから、5羽の嫉妬のオーラが来ていたが鴉羽はあまり気にしていないようである。

 そして、鴉羽と鹿火はそれぞれの祝詞を宣言した。

 

「我が誓約の刃、葦牙が怨敵 鏖殺せん!」

「我が誓約の舞、葦牙が厄 薙ぎ払わん!」

 

 互いにそう言うと、鴉羽の背中から骨が組み合わさったような羽が光り出して、鹿火からは布のような羽が光り出した。

 そして、鴉羽と鹿火はそれぞれの必殺技を唱えて攻撃を繰り出す。

 

鶺鴒神楽(セキレイカグラ)・“比翼(ひよく)ノ舞”!!」

(メイ)太刀(タチ) “久怨(くおん)”」

 

 そして、それぞれの技がぶつかり合って拮抗した。

 その衝撃波は、かなりのものだが少ししてから鴉羽の技が鹿火の技を押して行き、ついには鹿火の技を押し切った。

 しかし、その衝撃波までは防ぎ切れなかったようで最初に付いた傷とは反対側の頬にも傷が付いた。

 それを見届けた鹿火は、満足したように仰向けに倒れていった。

 

「鹿火…!鹿火!!」

 

 自分のセキレイが負けた、という事実を知った大角は急いで鹿火の元に駆け寄って彼女を抱きしめると、鹿火は嬉しそうに何かを呟いて意識を失った。

 その様子を見て、俺は鹿火が負けたという事実を受け入れて目をつぶると鴉羽を歓迎した。

 

「よくやった。思うところはあるだろうが、十二分にやってくれたよ」

「……その割には悔しそうだけど?」

「癪に障ったらスマン。何だかんだ言って、思い入れがあるもんでね」

「別に気にしないよ。研究者として携わってきたのだから当たり前だしね」

 

 そんなやり取りをする間、結女達は微妙な顔だったがすぐに社長からのアナウンスが入った。

 

『諸君!注目!ちゅうもーく!!早々に1人目の脱落者だ!』

 

 その宣言と共に、敗れた鹿火達が映し出されて次に俺の姿が映し出された。

 

『勝者は弊社研究員の武田道人!セキレイは同じく弊社所属の懲罰部隊補佐の6羽だ。その内の鴉羽君が見事な一騎打ちをしてくれたぞ!』

『これで残る葦牙は7人!さあ、皆もそろそろそれぞれの相手と遭遇しても良い頃じゃないのかね?』

 

 その言葉と共にアナウンスが止まったため、鹿火と大角を乗せたヘリコプターが飛び立つのを確認してから俺はこう言った。

 

「さて、どうせ暇なんだからこの台座を弄って船を弄ろう」

「ですね~、どこかが動けば急いで行か……ってみったん、今なんて言いました?」

「いや、ここで待機するのも面倒だから他の戦いに乱入できたら楽しそうじゃね?」

「乱入するのは頂けませんが、退屈しのぎにはなりそうですね。一先ず、アクションを起こしましょうか」

 

 俺の発言に、松と結女はさっきまでのシリアスな雰囲気から意地悪を企む雰囲気になったので、焔と風花はため息を吐いた。




鹿火はある意味、人間側の都合に翻弄されたセキレイだと感じています。
でなければ、鴉羽に恐怖を植え付けられることもなく、純粋に結との約束を守ろうと努力したはずですから。
そんな訳で、こうなりました。
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