セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第26話 嵩天

「……ん?結女?」

「起きられましたか?道人さん」

「…?結女、これはいった……!?」

 

 誰かの重みと暖かさに、俺が目覚めると目の前に結女がいたので起き上がって辺りを見回すと鴉羽達が俺の周りで倒れていた。

 さっきのことと言い、この現状は機能停止した俺を再起動させるために彼女達が己の機能停止と引き換えにやった結果なのだろう。

 全く、こうならないように神器から過剰に発生したエネルギーのガス抜きを行うプログラム作成したのに、その結果がこれとは俺もまだまだだな。

 俺が、そう思っていると結女はこう言った。

 

仲間(みなさん)の想いは結女が引き継ぎました!―――この羽に!!」

 

 彼女がそう言うと、背中から大きな光の羽が生えて嵩天へと行けるようになった。

 そのことが、周囲のセキレイ達に知れ渡るとあちこちから声が聞こえてきた。

 

「北のひと!お願い、助けて。マスターを助けて…!」

「ますたー」

「ますたぁーー」

「結女様!皆人さんを救って下さい!」

 

 その声が彼女に伝わったのか、結女は嵩天を指さして宣言した。

 

「伝わって来ます。私の光の羽に、皆さんの想いが。その想い、私があそこへ!届けます!!嵩天へ!」

「……」

「だからみなさん、安心して機能停止していて下さいねー♡」

「ムキーーッ!ムカつくー!!」

 

 真面目な雰囲気だったのに、ここに来てシリアスブレイクである。

 結女は、二代目懲罰部隊の隊長をやっていたのにどこか抜けているんだよなぁと思いつつ、現状を見てみるとこの計画の勝者は俺達のようだ。

 他の葦牙達は、未だに再起動せずに眠りについている上に残っているセキレイ達も、嵩天に行くだけの力は残っていない。

 そうなれば、必然的に行くのは俺達な訳で神座島にいるセキレイ達の想いを胸に、俺と結女は空へと昇るのだが問題はどうやって嵩天(あそこ)まで行くかだ。

 

「ところで結女、どうやって行くんだい?」

「それは勿論、回転しながら行くんですよ!」

「か、回転って……ぬおああああああああ!!」

 

 結女がそう言って、俺の両手を持つと繋いだ部分を中心に駒が回る要領で回転を初めて空を飛んだため、俺は情けない声を出してしまった。

 そして、その様子を見届けた他のセキレイは次々に力無く倒れて機能停止になった。

 

 

 

「くぅ、なんもなしに空を飛んでいるのは怖すぎるが……ここが嵩天か」

 

 俺は結女の手伝いによって、嵩天の上空に到達するとその様子を確認した。

 嵩天の中央には、台座があってその中心には鶺鴒紋と同じセキレイのマークがある。

 そして、それを囲うように十数本の柱が立っているのだがそこまで確認すると、空中を飛ぶのに必要なエネルギーを使い切ったせいで今度は嵩天へ落ち始めた。

 

「流石に、皆人達と出雲荘で出会った時のように木に引っかかれないぞーー!」

「大丈夫です!熊の手!」

 

 俺の叫びに、結女は自信を持ってそう言うと自分の技を使って落下するエネルギーを相殺して、俺達は無事に上空に浮かぶ島に降り立った。

 

「ここが嵩天か。長年、セキレイについて研究しているがここに来るのは初めてだ」

「―――そうですね、“あなた”がこの世界に来てから私達は始まったのです」

 

 後ろから、その声が聞こえたので振り返ってみると大きな儀式を行うために、正装姿の巫女さんの格好をした女性が立っていた。

 そしてその女性こそ、No.01であり、No.00の機能を持っている浅間美哉本人だった。

 そして、何よりも気になる発言があった。

 

「始まった?つまり、原作から外れたこの世界が始まるきっかけになったのが俺だと?」

「そうです。そして、あなたが幼女神と呼んでいる存在が誰に似ているのかは既に気付いているはずですよ」

「……“あんた”じゃない“あんた”から見た世界にいたあんたの姿だったんだな」

 

 そう、俺を転生させたのは美哉をかなり幼くした姿をした存在だった上にそれこそ、年齢が二桁に行かないような幼女だったのでくーちゃんと良い勝負だ。

 そして、そいつは美哉に対して俺がいることで原作の世界とは別の世界だいうことを知らされたのだろう。

 鶺鴒計画が始まったら、俺達がここに来ることも含めて。

 そのため、俺は美哉に聞いてみた。

 

「セキレイは基本的に、脳筋なのは知っているからあんたがここにいるのもよくわかっているつもりだ。だけど健人はどうした?彼は鶺鴒計画に参加するのを反対していたじゃないか」

「健人さんには悪かったのですが、ダメと言われて止まるほどにセキレイは賢くないのですよ?」

「つまり、彼の反対を押し切ってここに来たのか」

 

 美哉が面白そうに、クスクスと笑いながらそう言うので俺は健人の心配を察してヤレヤレと首を振った。

 そして、それを見た美哉は和やかな雰囲気から真面目な雰囲気になってこう言ってきた。

 

「私はNo.01であり、No.00である者。全てのセキレイと全ての葦牙の魂の裁定をする者。最後の葦牙とセキレイが力を渡すに足る存在であるかを試す者―――」

「―――つまり、勝者のみが報われる、と言うことか」

「そう言うことです。あなた達はご褒美がもらえるかな?」

 

 「ヤレヤレ、これだから脳筋は…」とぼやつくと、美哉は余裕を持った表情で話を続ける。

 

「フフ…ここまで昇ったセキレイにはもう言葉は要りませんね。最後に聞いておきましょう」

「……」

「葦牙とセキレイよ、汝らは嵩天に何を望む?」

 

 美哉にそう聞かれて、俺と結女は息を併せてこう言った。

 

「俺達の願いは…」

「…ただ1つです」

「全てのセキレイに」

「全ての葦牙に」

「「自由な羽ばたきを!」」

「ではその願い!その拳で!叶えて御覧なさい!」

「はい!」

 

 俺と結女で宣言すると、美哉は嵩天の番人として俺達の前に立ちはだかったので結女は元気そうに返事をした。

 それを確認した俺は、結女達から距離を取って観戦することにした。

 セキレイ同士の最後の戦いは、苛烈さを増すと予想できるので彼女達の邪魔にならないようにするのも葦牙の役目だ。

 要は、この戦いは全てのセキレイと葦牙の子孫である俺達に関わっているNo.00の、主導権争いと言うことになる。

 つまり、古代の日本に降り立ったセキレイ達は神器と呼応した人と交わったがその力は、世代を超えても決して消えることがないので場合によっては不特定多数の人類大虐殺なんかも出来る。

 とは言え、それが俺達の望みではなくて機能停止したセキレイとセキレイに婚がれた葦牙が、自由な空を羽ばたけるようにしたいという望みだ。

 そのため、まずはNo.00の保持者である美哉からそれを奪わないといけない。

 

「大丈夫です!私達(・・)は絶対に負けません!」

「あぁ、俺は君達を信じている。だから行ってこい!」

「はい!」

 

 俺の不安を払拭するかのように、結女がそう言うので俺も思いきって返すと結女は美哉と戦うことになった。

 その様子は、どことなく楽しそうでありながらも美哉からは倒して欲しそうな感じがした。

 まるで、今にでもNo.00の機能を結女に明け渡したがっているような感じだ。

 しかし、そんな美哉の心情を知ってか知らずか結女はこう言った。

 

No.00(美哉さん)!」

「…?」

「私達は、みんなと戦うのと同時にあなたに鍛えてもらってとても強くなりました!本当にありがとうございました!」

「……」

「だから!本気で戦っても大丈夫ですよ♡」

「…!」

 

 それを聞いた美哉は、少し呆気にとられていたがすぐに笑って言い返した。

 

「…フフ、それは心配いりません。最初から私は本気です♡」

 

 美哉がそう言うと、長さが1メートルぐらいの日本刀から斬撃が飛んできた。

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