セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第27話 勝負の行方

 美哉からの斬撃が、地面に到達すると大量の土煙が発生したが結女はそれを回避して、上から美哉に対して蹴りを入れようとした。

 しかし、美哉にとっては結女の技であろうともすぐに対応できてしまうため、カウンターとして美哉が駒のように回転して結女の蹴りに刀身を当てた。

 その衝撃で、結女が吹っ飛ばされたのだが無事なようなので俺は彼女に駆け寄って声を掛ける。

 

「結女」

「道人…さん」

「大丈夫だ、君は負けない」

「道人さん?」

「俺達の願いは、皆の願いは嵩天(ここ)まで届いた。だからきっとNo.00(あのひと)にも届く」

「道人さん」

「きっと届くから君は勝てる。頑張って!」

 

 俺の言葉に、最初は何のことだか分からずに戸惑っていたが俺が持ってきた肩掛け鞄から、彼女専用のグローブを取り出して渡すと結女は笑顔になってこう言った。

 

「はい!私の葦牙様♡」

「結女……」

 

 そう言うのと同時に、俺に抱き着いたと思ったらキスされた。

 無線機や薬、グローブなどを持ち込めたのは前々から不測の事態になった場合の対応として、社長に申し出ていたためであって本来なら自分のセキレイに有利になるような者は持ち込めない。

 これは、公平なルールの下でやるべきという社長の理念に基づいて作ってきたものだが、神座島にある船が未だに人間のコントロールの及ばないこともあるが故に特例として許してくれた。

 他には、緊急用の止血剤などの持ち運び可能な医療機材と1食分の食料と水ぐらいだ。

 とは言え、現状においてはそれらの全てが無意味に思えるほどの戦いなので、俺にはグローブを渡すことぐらいしか出来ない。

 そんな彼女は、恥ずかしそうにこう言った。

 

「えへ、つい抜け駆けしちゃいました。でもありがとうございます、道人さん!私達(・・)!頑張ります!」

「……行ってこい!結女!」

 

 俺がそう言うと、俺が渡したグローブを身に付けた結女は駆け出していったがその直後、俺は親しい5羽の幻影を見た。

 

『全く、大した抜け駆けだが彼女だけでは少々力不足だな。フン!』

 

 その声が聞こえた瞬間、美哉に斬撃が飛んで彼女はその迎撃に当たってから、それぞれに攻撃が4回も続いた。

 

『花旋風』

『蛇炎』

『クフフ♡』

『氷柱』

 

 風が、炎が、氷が発生するのと同時に嵩天も大きくぐらついたため、大きな隙を結女に与えることになってここで初めて美哉が苦しげな表情になった。

 そして、結女の攻撃で発生した土煙が晴れると美哉は、ヤレヤレといった感じの表情で結女達(・・・)にこう言った。

 

「…ああ、全く―――あなた()ここ(・・)に昇れるのは一羽(・・)だけなんですよ。ねぇ?皆さん」

 

 美哉がそう言うと、結女の周りには5羽のセキレイが立っていてそしてそれは美哉がよく知っているメンバーだった。

 鴉羽を始めとして松、風花、焔、秋津の5人。

 俺と婚いだメンバーは、俺の再起動時に自分の魂の一部を俺自身に預けているために、機能停止にならずにそれぞれの技を使うことが出来た。

 それを確認した美哉(No.00)は、戦いをやめて言葉を続ける。

 

「…みなさんで嵩天(ここ)まで来ちゃったんですね」

「みんな」

「…私1羽(ひとり)では道人さんを嵩天(ここ)まで連れて来る事は出来ませんでした」

 

 彼女の言葉に、満足そうに俺は呟くと結女以外の皆が振り返ったが結女は自分の胸の前に両手をかざすと、事実をいって美哉と会話を始めた。

 

「そして、No.08(わたし)だけではきっとNo.00(あなた)にはとても敵いません!」

「―――それは負けを認めているのですか?」

「いいえ、違います!」

 

 美哉の質問に、結女はそう断言すると自分の思いを言葉に紡ぐ。

 

「No.00、あなたは強い。強いからとても孤独です。だからこそ、あなたをその座から解き放たなくてはなりません」

「……」

「あんたがいるべき場所へ。出雲荘へ帰す為に!」

「……!」

 

 その言葉と共に、俺達が出雲荘に来た当初や健人とのやり取り、皆人と結がやって来てから増えていった仲間達。そして、千穂と鈿女。

 出雲荘で、築いてきた一時は確実に結女や結達を強くした。

 そのことを思い出したのか、美哉が笑みを浮かべると結女の言葉に疑問を呈した。

 

「私には敵わないのでは?」

「はい!まだまだ敵いません!強さも!料理も!掃除も!洗濯も!」

 

 その疑問に、結女は紛れもない事実を述べて答えていくがそれでも1つの、変えられないつながりを美哉にぶつけた。

 

「ですが!皆と一緒なら!道人さんが繋いでくれた大好きな仲間と一緒なら!」

『征け、結女。美哉に今まで全てをぶつけるんだ』

『言う事はないです~』

『結女…行っちゃって……』

『思いっきり、いけばいいいいのよん♡』

『私達の想いを全部、キミに届けたからね』

「仲間や…今までに出会ったセキレイ達。皆との絆を紡いだこの拳なら!」

 

No.00(あなた)にも!どこまでだって!届きます!!」

 

 結女がそう言うと、美哉は満足そうな表情になって裁定をした。

 

「―――(みたま)は6羽…が実際に昇って来たのは1人と1羽(・・)…裁定のルールに於いて嵩天はあなた方を認めています。ほぼ裏技ですけどね♡」

 

 裁定をし終わった美哉……いや、No.00は最後の闘いの為に刀を構えて宣言をした。

 

「ではその拳で、倒してごらんなさい。No.00(裁定者)を…この私を!」

「……」

「あなた達に未来はその先にあります!」

「はい!」

 

 その言葉と共に、結女は自分の祝詞を唱えた。

 

「我が誓約の“縁”、葦牙が願い 鶺鴒が願い 天に届けん!」

 

 祝詞を唱えた結女と、No.00である美哉が一撃で決める為に互いに急接近して己の全てを拳と刀でぶつけ合った。

 ぶつかり合った瞬間、巨大な土煙と光が発生して嵩天が揺れたが土煙が晴れていくと、そこには仰向けに倒れた美哉の姿と光の羽を生やした結女がいた。

 結女にNo.00の権限が、移行したことが分かったのだが気絶している美哉のことが気になっていると彼女はこう言った。

 

「―――大丈夫、No.01は機能停止しているだけです。生物としての死ではありません」

「結女…」

「前の管理者であったNo.01が停止して、嵩天の全ての権限は私に移行しました。嵩天は私の機関に応えてくれています」

「……」

「さぁ、道人さん。葦牙(あなた)様の望みを」

 

 彼女は、自信を持ってそう言ったので俺は自分の望みを伝える。

 

「…以前から言っているように俺の望みは君と一緒だよ。“全ての鶺鴒に自由な羽ばたきを”」

「……」

「そしてもう1つ、絶対に叶えたい願いがあるんだけど聞いてくれるかい?」

「なんでしょう?」

「俺は…No.08の結女…君と婚いで皆とこれからもずっと一緒にいたい」

「…っ!」

 

 俺がそう言うと、結女はかなり驚いていたが俺は言葉を続ける。

 

「でもこれは嵩天や誰かに叶えてもらうものじゃないからな。その望みを、夢を叶える為に俺自身が努力しないといけない。これが俺の願いだ」

「…道人…さん……えへ♡えへへ、嬉しいです!ですが今はまだダメなんです」

「ん?どうしてだい?」

「本当なら嵩天は、葦牙と鶺鴒が揃っていなくてはいけないんですが私は鶺鴒基幹と葦牙基幹の両方を、兼ね備えているので1人で大丈夫です!」

「……」

「だって道人さんは皆のところに帰らなきゃダメなんです」

「おい、さっきから何を…」

 

 結女とのやり取りに、ある程度の未来が見えてきた瞬間に彼女からキスされた。

 

「私も私の夢の為に頑張ります!だから私、いつかきっと帰ります。あなたの元へ」

 

 そして、そう言いながら俺は彼女に押されて嵩天から落ちた。

 それを悟った瞬間、離れていく嵩天から声が聞こえながらも叫ばずにはいられなかった。

 

「鴉羽さん、松さん、風花さん、焔さん、秋津さん。道人さんをよろしくお願いしますね♡」

「ゆ、結女ぇぇぇぇえええ!!」

 

 そして、重力という強力で全てのものに平等に掛かる力に引っ張られながら、俺は涙を流して呟いた。

 

「結女、必ず帰って来いよ。絶対に…!」

 

 

 

「美哉さん、お役目ご苦労様でした。ゆっくり休んで下さいね」

 

 葦牙を降ろして1羽になった嵩天で、機能停止で眠っている美哉に声を掛けた結女は彼女も地上に降ろしてから、先に降りた道人とその仲間達を見てこう呟いた。

 

「私の仲間達、後はよろしくお願いします♡」

 

 そして、本当に1羽になると台座が動き出して鶺鴒紋が描かれた中心部が開いて、新しくなった管理者を招き入れる準備は整った。

 それを確認した結女は、その台座に開いた空間に飛び降りてからこう言った。

 

「―――さぁ、嵩天!私と1つになりましょう!」

 

 

 

 そして、その時から結女は新たな管理者として嵩天と1つになった。




これにて鶺鴒計画の全てが終了。
後は、後日談を2~3つ書いて本編が終了します。

ここまで長かったような短かったような、複雑な感じです。
書き始めた当初は、「セキレイ」って20話ぐらいで終わるんじゃね?と思っていたんですが、蓋を開けてみると約30話+αになりました。
まさか、1ヶ月ぐらいも掛かるとは思っていませんでした。
とは言え、セキレイの中で完結したのが本作が初めてですので荒削りな部分はありますし、これが完璧などとは露とも思っていません。
あくまで、作者がセキレイという物語を書きたいが為に作者なりに書いた結果が本作となります。

そのため、これを足がかりにセキレイの新たな物語が生まれることを期待しています。


ではまた次回。
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