セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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最終話 鶺鴒計画後 その2

 一通りの仕事が終了し、出雲荘隣に帰る準備をしてると俺の携帯に電話が掛かってきた。

 そのため、今日は電話が多いと思いながら出てみると懐かしい声が聞こえた。

 

「もしもー……」

『僕だけどっ!』

「……御子上か。どうした?」

『あのさぁ、なんか“島の船”と似た素材の破片が出てきたんだけど!』

「そりゃ、本当か。すぐに調査班を送らせるよ」

『うん!よろしく頼むよ!僕、あのおばさん苦手なんだよね!社長とは全然、連絡取れないしさー!』

「……こっちからも伝えておくよ」

『じゃあ、頼んだからね!』

 

 そう言って、御子上からの電話が切れた。

 御子上は現在、セキレイの痕跡を探して世界中を飛び回っている。

 なんでも、セキレイのことをもっと知りたいという事で俺や皆人達とは違う方法で、アプローチしているようで今日のはその報告という訳だ。

 ちなみに、御子上のセキレイは再起動した者も含めて誰一人としてかけることなく、彼に付いていったので今では大人数での冒険の旅をしている。

 それはそれで楽しそうだが、氷我の場合はセキレイの数をかなり減らした。

 今回の計画において、強引にセキレイと婚いだことへの反省なのだろうかと思ってみたりするが、本当のところは分からない。

 

 何故なら、M.B.Iと敵対している医療法人である氷山会グループの総帥にグループ最年少で就任した為、おいそれといって会って会話をすることができないからだ。

 そのため、彼と婚げなかったセキレイは他の葦牙を探すことになったがそれはそれで、新たな道ができたからその道しるべとして相談に乗ったりもする。

 そんな訳で、俺は高美主任に御子上達がいる場所を特定してからメールで、地図を載せて調査班を送るように進言した。

 この方が相手は空いた時間に見れるし、聞き間違いなんかも避けられる上に文章構成も見直せるので俺はこっちの方が好きだ。

 そんな訳で、健人と一緒に帰ろうとするとM.B.I本社の入り口で鴉羽が待っていたので、聞いてみるとどうやら俺達の帰りを待っていたようで、3人で一緒に帰っている間に鴉羽があることを話してくれた。

 

「昼過ぎから美哉がそわそわしていたけど、何か知らないかい?」

「あー、それは帰ってからのお楽しみだよな?健人」

「そうだね、帰ったらすぐに分かるよ」

「2人ともつれないねぇ」

 

 俺達がそう言うと、鴉羽は残念そうにしながら俺と手を繋ぐ為に隣に立って一緒に帰った。

 この1年、M.B.I本社に戻った俺は薬の開発と同時並行で世界各国との駆け引きを、行っていた為に結女をNo.00の役目から解き放つことが出来なかった。

 いや、正確に言うならば情報を健人や社長に渡していたので間接的には関わっていたが、その枠組みを作っただけで詳細を詰めたのは2人だ。

 それだけ、俺は俺で忙しかったのだが健人がM.B.Iに戻った事の方がが大きい。

 そもそも健人が離反した理由が、美哉を鶺鴒計画から遠ざけたかったのと社長の悪ふざけによって発動した計画に口を挟めなかったのが復帰の大きな理由だ。

 

 その結果、美哉は記憶の混濁と体調不良が続くことになったので自分の行動に後悔して、セキレイのシステムを変えようと行動に移したそうだ。

 まぁ、出来る技術があるのにそれを使って抗わないと自分が望まない結果になっても、受け入れるしかできない事を痛感したと本人が言っていたからすんなりと本社勤務になった。

 おかげで、原作と大きく変わったのは―――

 

「あっ、道人さん!仕事が終わったんですか?」

「あぁ、結女か。そっちはどうだい?」

「はい!無事にトラブルが解決しました!」

 

 ―――結女が、最初の1ヶ月でひょっこりと帰ってきたことだ。

 帰ってきた当初は、流石の俺でも驚いてしまったのだがその日の昼に神座島にあった船が嵩天に向かって飛び上がり、役目を交代したとのことだった。

 一応、全体像を提示しただけなんだが社長と健人の力が組み合わさると、ここまで早くなるのかと感じた一瞬だった。

 また、この1年で唯一の救いだったのが結女がそばにいてくれたからこそ、たった1年で薬が出来たことでデータの照合がしやすかったのが大きい。

 そのため、俺は彼女に開発した薬を手渡した。

 

「…結女」

「?なんですか、道人さん」

「今日はこれを渡したかった。鶺鴒計画が終わってから丁度1年になるからな」

「…これは?」

 

 俺が彼女に、試験管に入った薬を手渡すと結女が聞いてきたのでこう答えた。

 

「葦牙と婚げるようになる薬だ」

「…!」

「俺はこの1年、これを作る為に頑張ってきた。だから受け取って欲しい」

「ありがとうございます!道人さん!」

 

 俺がそう言うと、結女は心の底から嬉しそうに満面の笑みを浮かべて俺に抱き着いた。

 元々、結女はこっちに帰ってきてからトラブルに対応する為にあっちこっちで活動してたが、今日は神座島での戦いから丁度1年と言うことで出雲荘で宴会がある。

 そのため、この数日間は睡眠時間を削ってまで開発に勤しんでいたので、彼女の笑顔を見れるだけでも充分儲けものだ。

 そして、結女が婚ぐのは皆の前で、と言うことになったので急いで帰り道を歩いていると、ガーディアンとしての仕事が終わったであろう焔とも出会った。

 

「仕事は終わったのかい?」

「あぁ、なんとか宴会には出れそうだ」

「全く、高美さんも再調整が終了する時期を重ねたせいで焔とやり取りできる時間が少なくなっていたな」

「うん、彼女に言っておいてくれる?こきつかい過ぎるって」

「はいよ」

 

 焔も焔で、ガーディアンとしての仕事が多忙だったので結女にも手伝ってもらっていた。

 鴉羽は、興奮するとやり過ぎる可能性が高い上に風花はお酒に釣られるし、秋津は口数が少ないせいで誤解されるかもしれないからだ。

 シングルナンバーは、クセのある奴ばかりだったが実力はかなりあるからなんとも言えない。

 しかし、皆人も気にしていたんだが婚いだら主従というシステム自体が、現代に適合していないようなのでそれも変えていく必要がある。

 ある意味、セキレイというのは俺達に課せられた試験や課題なのかもしれない。

 そして、それらを1つずつ解決していくことこそが彼女達をよく知りたいという欲求を、満たす可能性が非常に高い。

 御子上が、世界各地を飛び回っているのもそれが起因している訳で、この1年で分かったのはセキレイのシステムは現代技術で変えられると言うことだ。

 

 とは言え、出雲荘に到着すると既に瀬尾や真田、ユカリや鷸君などの葦牙とそのセキレイ達がが集まっていたので宴会を始める前に俺は結女と、健人は美哉と婚いだ瞬間を見せた。

 これによって、全てのセキレイが婚いだ事になってより一層、宴会が騒がしくなった。

 ユカリや鷸からは、俺達に対して冷やかしの声や驚きの声がしたが瀬尾達は、美哉が羽化したことに驚いていた。

 それも当然で、美哉は健人一筋だった上に健人はセキレイと婚げないと言う彼らの常識を、覆したのは俺に付与された知識があってこそだった。

 そんな俺も、鴉羽や焔達から結女の羽化に対して驚かれたがすぐに歓迎された。

 そして、出雲荘の裏庭からは笑い声が聞こえてその場にいる皆が笑顔になっているのを見て、俺はこう思った。

 

 

 俺は今、とても幸せだと。




一応、完結しました。
最後、かなり雑になってしまいましたが現状では、これ以上の結末が思いつきませんでした。
そのため、後日、改めて再投稿や大幅な編集を行うかもしれませんでご注意下さい。
とは言っても、何ら補足説明もなしに終わるのも気が引けますので補足させて下さい。

・まず、結女が祝詞を唱えている点。
これは、主人公からグローブを渡された挙げ句にキスをしたからそうなったかと思いきや、主人公に自分の鶺鴒基幹の他に葦牙基幹の一部も無意識に渡していた為にこうなりました。
そのため、一時的に結女の葦牙基幹が主人公に移ったと誤認した鶺鴒基幹が、祝詞を唱えれるようになったのです。

・葦牙基幹付与と一時停止の薬
主人公も言っていますが、付与の方は遺伝子レベルで組み込む薬を開発しました。そういう知識があった為です。
一時停止の薬は、言葉のままで葦牙基幹を一時的に機能停止にする薬です。効果は1時間程度で、その間なら羽化が可能になります。

・世界各国との駆け引き
セキレイの技術の代わりとなる技術を、超大国を始めとした大国に渡しています。
そのため、国際的なパワーバランスはにわかに崩れつつあります。

他に、聞きたいことがあれば可能な範囲で応えていきたいと思っています。
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