セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第3話 出会いと日常

 出会いというのは、いつも突然として起こるというもので俺達が出雲荘に帰ってくると、そこには庭の木に引っ掛かった青年とNo.88の姿があった。

 その姿に、俺達の間で見知った顔があると言うことで互いに驚いた。

 

「皆人と結!大丈夫か!?」

「いててててって、あー!なんで道人さんが!?」

「道人さーん、服が破けてしまいましたー」

「ていうか、私達のことも忘れてないかい?」

「久し振りですー、そこのお2人さーん」

「ていうか!なんで道人さんがいるの!?地元の製薬会社に勤めてたんじゃないの!?」

「騙して悪いがあれは嘘だ」

「えぇっーー!」

 

 とまぁ、5分ぐらいはこんな感じでカオスな状況だったが皆人の膝から血が出るほどの、怪我をしていたので一先ずは出雲荘に招き入れて怪我の治療と破けた服を取り替えることにした。

 そのため、治療を終える頃には結の服も着物となって部屋にやって来た。

 

「さて、何から話せば良いのやら」

「さっき、製薬会社に勤めてるのが嘘だって聞いたんだけど………」

「あぁ、あれは色々と事情があって対外的にそう言っているだけだからな?」

「結ちゃんと関わりがあるようだけど」

「セキレイ計画に関わっているからねぇ、彼女ともよく知った仲だよな?」

 

 俺がそう言って、No.88の結に話を振ると彼女は元気よく返事をしてくれた。

 

「はい!結女さんに手合わせしてもらいました!」

「………てことは、あなたも葦牙ですか?」

「勿論、少なくともここにいるメンバーは鶺鴒計画のことは知っているよ」

 

 俺が、事実を述べると鴉羽達も頷いたので居間に集まったメンバーで自己紹介を始めた。

 何故なら、初対面の人もいる上に皆人に関してはこの下宿に、多くのセキレイがいることを知ってもらうためだからだ。

 ん?今、思い返してみるとセキレイとそうじゃないメンバーの比率がアンバランスだな。

 葦牙が俺と千穂、葦牙じゃないのが健人、セキレイが美哉に松、風花に鴉羽、焔に秋津、結女に鈿女と人間に対してセキレイが2倍以上になっている。

 しかも、その原因が俺だから笑い話にもなりゃしない。

 そんなことを、説明すると皆人はこの下宿の大家である健人達に、自分達の事情を説明して頼み込んだ。

 

「お願いします!俺達、アパートを追い出されて行く所がないんです!」

「どうする、美哉」

「いいんじゃないかしら。これも何かの運命ですわ」

 

 健人と美哉で、相談し合うと佐橋皆人と結を歓迎したが彼らはM.B.Iと袂を分けているので、皆人と結には単なる大家さんとしか説明していない。

 しかし、いずれは彼らのことを深く知ることになるだろう。

 何せ、M.B.Iで働いている俺達がいる上に彼と婚ぐセキレイが俺の存在で少なくなっても、原作の主人公なのだから。

 とは言え、今は彼らを迎え入れるために歓迎パーティやら何やらで忙しくなるため、明日は色々と買い出しをしたり、皆人達の荷物を持ち運んだりする必要がある。

 

 そのため、今日は早めに寝ることにした。

 

 

 

 深夜

 

 

「………?誰だい?」

 

 私室のドアが開き、誰かが入ってくるのを感じたのでそう言いながら目を開けると、俺の布団に誰かが入ってきた。

 そのため、急な変化に戸惑いながら身構えていると寝間着姿の結女だった。

 

「ふふっ、抜け駆けしちゃいました」

「おいおい、変なことをすると美哉に殴られるぞ?」

「大丈夫ですよ、添い寝するだけですから」

 

 そういう彼女が、急に入ってきたことに対して考えを巡らせると1つのことに行き当たった。

 

「………もしや、結のことかい?」

「はい、神座島で彼女達を助けた(えにし)がここで繋がりました」

「そうだな、助けた甲斐があったというものさ」

 

 No.08の結女は、縁のセキレイと呼ばれていて鶺鴒基幹と葦牙基幹を併せ持つので俺と婚いだと言っても、粘膜接触によって実際に婚ぐことはできない。

 セキレイと葦牙の基幹は、凹凸(おうとつ)のようなもので彼女はそれが両方ともあるために完全体の個体として完結してしまっている。

 そのため、俺と婚ぐことができないのでやや寂しそうにこうやって来ることがある。

 

 そんな時は手を握ったり、抱きしめながら彼女と触れあっているのだが大概の場合は、途中で他のセキレイが入ってくる。

 

「やあやあ、暇にしていそうだったから遊びにって結女、何してるのさ」

「道人さんに抱きしめてもらっています」

「ずるいなぁ、2人とも。最初に婚いだ私と一緒に寝ないなんて」

 

 鴉羽がそう言いながら、既に俺達が入って満員な布団の中に無理矢理入り込んできた。

 

「ちょ、ちょっときついかな」

「大丈夫大丈夫、このぐらいならなんともないさ」

「そうですよ、道人さん。このぐらい、気にしないで下さい」

「気にする、めっちゃするよ」

 

 俺達はそう言いつつ、迫ってくる眠気に勝てずに眠りについたのだった。

 ついでに、こう言った出来事はよくあることです。

 

 

 

 翌日

 

 

 寝苦しく感じた俺は、目が覚めると状況は深夜よりも悪化していた。

 何故なら、深夜は結女と鴉羽だけだったのだが目が覚めたら6人に増えていた。

 全く、夜這いはよろしくないと言われているのにこの有様である。

 いつか、鍵でもつけようかと思ったが彼女達の腕力に勝てる鍵は存在していないし、松に至っては抜け道を通ってくるだろうから無意味だ。

 いつものことか、とため息を吐きながら時計を見ると6時半で起きるのには丁度よかった。

 そのため、彼女達の拘束を解きながら這い出て立ち上がると、顔を洗いに洗面台まで行くと先客がいた。

 

「おはようございます」

「おぅ、おはよう。早いんだな、起きるの」

「今日、バイトがあるので」

「なるほどね」

 

 俺と皆人でそう言っていると、美哉がやって来てこう言った。

 

「朝食ができましたので、起こしに行って下さい」

「あっ、はーい」

「分かりましたー」

 

 美哉にそう言われて、俺達はそれぞれのセキレイを起こしに行くと彼女達は既に起きていた。

 

「道人、起きたんだったら私達を起こしてもよかったんじゃないか?」

「そうですよ、いくら何でも酷すぎます」

「いなくて寂しかったわぁん」

「全く、君はつれないな」

「あやや、朝に悪戯しようとして失敗しました」

「勝手に入ってきたのによく言うぜ」

 

 そんなやり取りがあってから、彼女達はそれぞれの部屋に戻っていったので俺は布団を片づけてから居間に向かった。

 そして、朝食を摂りながら皆で今日の予定を組み立てていった。

 健人は出雲荘の管理をするため、そう簡単には出れないとのことで鴉羽と結女で皆人達の荷物を運んでもらい、秋津は美哉の買い物の手伝いをして松はいつものように自室に籠もり、俺は仕事のためにM.B.Iに足を運ぶ。

 

 風花は、その道中での護衛だな。

 

 如何せん、セキレイに深く関わっていてシングルナンバーを多数、婚がせている俺は敵対する奴らにとっては格好の的だ。

 セキレイは、個体によって強弱はあるとしても単体では充分に強いのだが、葦牙はあくまでも人間なのでそこまで強くない。

 セキレイ同士での戦いで、その余波を受けて死亡するなんてことになったら葦牙と婚いだセキレイは機能停止になってしまうため、複数のセキレイを持っているのなら可能な範囲で護衛してもらった方が良い。

 何故なら、勝敗は別にしてセキレイ同士の戦いからある程度の距離を、とれるぐらいには時間稼ぎができる。

 

 そういった事情もあって、セキレイ計画に深く関わっている俺は徒歩で移動する時はなるべく、セキレイの誰かと行動している。

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