セキレイがいる世界   作:八雲ネム

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第5話 緑の少女

『だったら、数で畳み掛ければボク達の陣営に引き込めるんじゃない?』

『……と、彼は言っているんだがどうだ?お前の葦牙が了承すればこっちに来ないか?』

『うーん、どうだろうねぇ?彼はあまり、そう言ったのは好きじゃないから』

 

 鴉羽がそう言うと、こっちを見てきたので俺はすぐに首を横に振った。

 あんな小僧の下で懲罰部隊の活動もしないといけないとか、どんなドMプレイだよ。

 いやらしい展開にはならないが、少なくとも秋津に関してはあいつの物になるだろう。

 そうならば、秋津は涙を流すだろうからそんなことは到底できないし、わがまま小僧の下で働くとどんな命令を受けるか分からない。

 その分、御中社長の方が交渉の余地が残っているからまだ良いんだが、あいつの場合はそう言った交渉がしにくいから困る。

 

 そのため、俺は彼の傘下に入らない旨をヘッドセット越しに伝えながら首を横に振ったのだ。

 

『残念だけど、うちの葦牙はあんたみたいな坊ちゃんの下に付く気はないとのことさ』

『なんで?』

『よせ、御子上。ここは引くぞ』

 

 そこまで言ってないとは言え、鴉羽がそう言うと御子上が突っかかってきたのを陸奥が制した。

 その際、陸奥もこっちを見てきたので誰が彼女の葦牙をやっているのかが分かったのだろう。

 初代懲罰部隊の中でも1番、接点がなかったと言ってもあくまで美哉達と比べての話なので、彼とはそれなりに交流はあった。

 そのため、陸奥としても俺と関わって面倒なことになるよりかは撤退した方が得策だ、と判断したようだ。

 しかし、当の本人は彼の意図する所に気が付かないまま、鴉羽に突っかかっている。

 

『なんでさ。3対2なら有利に勝てるだろ』

『残念だが遠くで見ているセキレイがいる。しかも、そのセキレイはシングルナンバーで2羽もいるから話にならん。とっとと引くぞ』

『こんな奴、私1人で充分ですわ!シングルナンバーだからってあんたに命令される筋合いはなくってよ!』

『そうよ!陸奥は下がってて!』

『オイ馬鹿ヤメロ』

 

 陸奥は、鴉羽のヤバさをよく知っているから制止しようとするが彼のセキレイは、陸奥の制止を無視して車から飛び出してからこう言った。

 

『No.43の夜見(よみ)ですわ。そのすました顔をズタズタにしてあげますわ』

『No.38の蜜羽(みつは)よ。あんたなんて速攻で倒してあげるんだから』

『No.04の鴉羽。そこまで言うんだ、少しぐらいは楽しませてくれよ』

 

 そんな彼女達の意気込みを感じて、ゾクゾクした鴉羽がそう言ったので俺は既視感を覚えた。

 

「見える、見えるぞ。御子上の方のセキレイが数秒後に血の海に沈んでいるのを」

「鴉羽ちゃんは結構、強いからね~」

侵攻(あの)時みたいになりますよねぇ』

「それだけ、強いんですか?」

 

 俺や風花、松は神座島侵攻の時を思い出してそう言うと千穂は不思議そうに、聞いてきたので俺から説明する。

 

「鴉羽はセキレイの中でも上位にランクインするほどの強ささ。鈿女でも彼女に勝てないだろうな」

「そんなに強いんですか」

「正直、彼女が俺のセキレイになってくれなかったらどうなっていたことやら」

 

 俺がそう言うと、千穂は唖然とした顔になった。

 何故なら、セキレイ計画に深く関わっている俺が鴉羽の強さを思い出したかのように軽く身震いしたからだ。

 そのことから、鴉羽がどれだけの強さなのかが分かるという物だ。

 そして、そんな会話をしている内に鴉羽が一瞬のうちに決着を決めて、夜見と蜜羽は自分の血で地面を濡らして倒れていた。

 その様子を見て、秋津はぞくりと背中が寒くなったように息を吐いた。

 あそこでもし、自分が鴉羽と敵対していたらすぐにやられていたと考えたようなので、後でちゃんとあやして置くことを決めた。そういう配置にしたのは俺なんだし。

 

 そんな様子を見た御子上は、陸奥を引き連れてさっさと車を出して逃走していった。

 

『こちら、鴉羽。戦闘は終了した』

「了解した、変化があるまで待機せよ」

『鴉羽、了解』

「………秋津」

『なに?』

「鴉羽とペアを組ませて済まなかった。後でちゃんと愚痴を聞くからな」

『………その時にお菓子もちょうだい』

「わかったわかった」

 

 俺がそう言うと、鴉羽や風花が嫉妬して焔も「うれしくなくなくなく………」と呟いていた。

 そんなことを言い合っていると、松からの通信で皆人達が無事に草野を発見して救出したことを伝えてきたので、俺達は植物園の入り口で落ち合った。

 それと、皆人達を待っている間にM.B.Iのヘリが来て機能停止したセキレイを回収して、痕跡も可能な限りなくしていったので皆人に戦闘があったことを悟られずに帰ることが出来た。

 

 

 

 

 深夜

 

 

 あの後、出雲荘に帰ると誘拐だと勘違いした美哉が居合いの練習で使う日本刀を出して、出雲荘から犯罪者を出す訳にはいかないと言ってきたので俺が釈明した。

 彼女は長年、セキレイ計画から手を引いていたので最後の方のセキレイはあまり詳しく知らないとのことだった。

 一応、松から説明してもらっていたので軽い冗談ではあったが皆人には、充分な恐怖を与えることができた。

 

 その一方で、久し振りの戦闘で興奮してしまった鴉羽の体の疼きをなくすために、俺達は深夜の町並みを歩いてラブホに到着した。

 

「こんな場所に来たからには徹底的にやろう」

「ふふっ、君は私のことをよく知ってるんだねぇ」

「そりゃ、伊達に君の葦牙をやってないからね」

 

 俺らがそう言うと、俺のセキレイが先回りして来ていたので呆気に取られつつも彼女達と共に入っていって、7人で夜明けまでやりまくったよ。

 すると、彼女達は猛獣のように俺を求めてきたので夜が明ける頃には疲れ果てたさ。

 そんなこんなで終わった後、翌朝には俺達が出雲荘に戻ると庭に面している廊下で草野が皆人と婚いでいた。

 そうすると、草野の背中から6本の翼のような光が現れてそれを祝福するかのように、草木が生い茂ったのでこの場面だけを見たら、ロリコン容疑で逮捕されてもおかしくはない。

 

「よぉ、ロリコン葦牙」

「ロリコンって……」

「まぁ、作戦を立案した俺も1枚噛んでいるからとやかく言わないけどさ。ちゃんと責任、持ってやれよ~?それと草野ちゃん、羽化おめでとう」

「お兄ちゃん、ありがとう。それと、クーはクーで良いよ?」

「オケオケ、これからもよろしくね。クーちゃん」

 

 彼女が無邪気な笑顔でそう言ったので、俺も笑顔を作って親指を立ててそう返した。

 そのため、皆人をからかいつつも朝食を摂るために台所に向かった。

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