仮面つけてないライダー八幡。   作:kawasaki士

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比企谷と別れて(こう書くと私と比企谷が付き合ってたみたいだな。ムフフ…)視力検査を終えた私(因みに両目とも2・0だふふん)はそのまま奥の部屋に向かう。ここが免許センターの一番面倒くさい所、免許引き換え書類の受け渡しだ。ダラダラと続く列が3~4つあり、しかも並びは適当である。更に何より正面の窓口から名前を呼び出されて取りに行くのだが。

 

「○○さ~ん。」

 

「あっ…。」

 

列の順番通りではないのだ。その為自分の後ろが先に呼ばれたり、前と自分に凄くラグがあったりとなかなかやきもきさせられる。

 

しかしどうやら私は運良く!

 

「平塚静さ~ん。」

 

「!はいっ!」

 

わりかしスムーズに呼ばれた。嬉しくて元気に返事しちゃった。てへっ。

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「!?…奥の部屋から先生みたいなデカイ声が聞こえた…気のせいか?」

 

 

 

 

 

 

 

―――

そのまま書類を持ってさぁ証明写真だ!此処は大事な要素がある!免許未取得者は覚えておけよ!お、早速私の前の少女が。

 

「あっ…えっ…。」

「はい次の人―。」

 

餌食になったか…この様に凄まじいスピードで流れ作業で撮られるのだ。故に準備不足だと髪型も表情もグダグダになりやすいのだよ。

 

「はい次の人~。」

 

さあ私だ!

 

「はいっ!」

 

ムフフ準備は万端。後は少しでも若く見える様に笑顔で「真顔でお願いします。」

 

「はい…。」

 

くっ…だがまぁまぁだろう。さぁいよいよ講習だ!…違反者の…ぐすん…。

 

書類に押された違反者講習のハンコが悲しいよぉ…階段上がるの気が重いよう…比企谷…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

残念ながら直通路が無いので、一旦外に出て二輪棟へ向かった。あぢぃ。

 

 

大きさは本館の半分以下の、コンパクトな建物だ。

 

(うん…まぁ何もねぇよな。)

 

本館と同じで収入証紙販売所と書類を書く台、窓口がそれぞれ規模を縮小してあった。人が少ないせいで更に殺伐としている。

 

(しかし…この空気は人気の少なさだけではない…?)

 

目立たない様に奥の隅の長ソファーに座った俺だが…なんだこれは。本館がどちらかといえば消化試合のやる気のないオーラに満ち溢れていたのに対し…ここはまるでこれから戦地に赴く様なピリピリ感が強い…何が…!

 

するとまばらな人々にある共通項を見つけた。

 

「ヘルメット…?」

 

皆、ヘルメットに手袋を持っており、更に残暑厳しい今、やたら厚着だった。で、ほぼ野郎だらけ。

 

「何が…!」

 

疑問が増えた俺の耳に学校のとは違う電子的なチャイムの音が届いた。すると事務室から職員が四、五人出て、正面奥の学校机に座り、開口。

 

「では只今より実技試験を始めます。試験を受ける方は道具の検査をしますので持って来て下さい。」

 

すると周りの野郎共がガタッと立ち上がり、机の前に並び、ヘルメットを職員に見せ、ぐるぐるその場で回る。そして「はい。大丈夫です」と言われると更に正面奥に消えた。しかし皆が皆通る訳ではなく、中には「その格好じゃ受けられないよ。」と言われ、必死こいて格好を変えてる奴もいた。というか…。

 

「これ、なんだ?」

 

 

 

 

 

妙に気になって仕方ないので、ここはグーグル先生に頑張ってもらった。

 

「ほう…そういう事か…。」

 

結論から言うと、どうやら彼等は今から、「本来の免許の取得方法」を受けるという事らしい。

 

免許というのは本来、この運転免許センターで実技試験、筆記試験を受けて取れる物。なのだそうだ

 

しかし、その合格率は極めて低い上、筆記は勉強のしようがあっても実技はそれまで自動車やバイクに乗った事の無い人間が受かる事など、当たり前のようにほぼ無い。

 

そこで存在するのがご存知、総武高校の近くにもある教習所だ。

この教習所で練習を行い、教習所内の卒業検定を合格する事で免許センター内の実技試験を免除される。という体らしい。免許は買える。というのは此処に由来するんだそうだ。

 

そしてこの免許センター内での試験を。

 

「本免一発試験と呼ぶ…因みに教習所の卒業検定合格レベルでは此に受かる事はほぼ無い。それほど迄に本免一発試験と教習所の卒業検定は難易度の格差が大きい…本免試験の合格率は…5~10%強…って事はさっき20人位行ったから受かって帰って来るのはせいぜい一人か二人か…良く受ける気になんな…。」

 

教習所がウン十万に対して7000円程度…安上がりで済むのもあるだろうが…

 

「やたら目がギラギラしてる野郎ばっかりだったな…どれだけ自分のスキルが通用するのか試したい連中…なのか。」

 

有り体にいえばアホなのかもしれない。が

 

「まぁ見るだけ…。」

 

とりあえず暇潰しを見つけた。

 

 

 

――――――――――

 

「以上の様に飲酒運転は非常に危険であり…。」

 

(うーん…。)

 

長いなあ…いや、こういう事態になったのはそもそも私の責任…しっかり聞かねば…というか割と新鮮だな。私が聞く側に回るというのは。

 

(そういえば比企谷は何をしているかな。)

 

暇潰しらしい暇潰しは出来ているだろうか。左側にある超巨大ショッピングモールもまだ開いてないだろうしな…というか比企谷はああいう場所は嫌いだろうから行かないだろうな。私も嫌いだ!リア充が大量に居るからな!ふんっ!

 

「そこの人よそ見してないで聞きなさーい。」

 

「はい…すみません…。」

 

はあ…煙草吸いたい…早く休憩時間にならないかなぁ…。

 

 

 

 

 

――――――――――――――

そもそもの話、俺は行って大丈夫なのか。という事なのだが、結論。

 

「普通に行けちゃった。」

 

二輪棟の裏口を出ると…そこは試験場でした。どうやらバイク専用らしい。というかさっきチェック受けていた人達がコースを歩いている。

 

「あれ何してんだ「あれはね、コースを歩いて走行順路を確認しているんだよ。」!…えっと…。」

 

誰?

 

フェンスの隅っこで日差しを避けながら観察していた俺に知らない太った妙に暑苦しそうなおっさんが声をかけた。ただ、格好からすると職員だろうか。というかこの雰囲気何処かで…。

「息子がいつも世話になっているね。比企谷君。」

 

「!何で俺の名前知ってるんですか…。」

 

ふぇぇ…知らないおっさん怖いよぉ…。

 

「これはすまなんだ。私は材木座義輝の父だ。」

 

「!」

 

あぁ…なんか妙に暑苦しい感じそれかあ…。

 

「材木座の…初めまして。俺の事知ってるんですか?」

 

「うむ。義輝がちょくちょく話すものでね。」

 

うーんなんか全然嬉しくないのはやっぱり材木座だからだろうなぁ…。

 

「それで先程駐車場で君と…。」

 

「あぁ、あれ先生です。」

 

「そうか。あの人が平塚先生か。中々に美人な先生だねぇ。それで、その平塚先生が君を比企谷と呼んでいたからもしやとな。君が此方へ来たから話かけさせてもらった。比企谷君、バイクに興味があるのかね?」

 

ズイッと迫る材木座父。暑苦しいなあ…。

 

「あ、いや…先生を待ってるんで暇潰しに…。」

 

む、よくよく考えると教師と二人っきりを保護者に見られるって結構ピンチじゃね?

 

「そうか。いや、結構結構。ただひょっとしたらその内のめりこんでいるかもな。」

 

しかしこの人はそんなことは一切気にしてない素振りで、目の前で行われようとしていることだけ、教えていた。

 

「はあ…そうでしょうか…。」

 

「あぁ…何せこの試験は誤魔化しが効かない一発試験…本物の免許の取り方だからね。」

 

!………本物…本物ね。じゃあ教習所に通って取った免許は偽物なのかと言われればそんな事は勿論ない。どちらも立派な本物だろう。ただ…この材木座父の言葉が妙に引っ掛かった俺は、もう少しモチベーションを上げて見る事にした。

 

 

 

 

「む、そろそろ始まるね。」

 

材木座父と話している間に試験受験者はコースからいなくなり、プレハブ小屋の様な場所に入っていた。

 

「彼処で試験官から点呼と簡単な説明と質疑応答を受けてスタートだ。ただし禁止事項の説明のみであり、採点に関わる質疑応答には一切答えないんだよ。」

 

「…要は法規走行に則ってやれば受かるぞって事ですか。」

 

「うむ。しかしそれがどういう運転なのかはこの試験受ける人間なら知ってて当然だろう?って事だ。」

 

「実際知ってるものなんですか?」

 

「正直な話完璧に把握している人間は一般人にはいないだろうねぇ。」

 

「それでも受けるんですね…。」

 

「色々な理由があるだろうけど…まぁ一番は、厳しい試験を突破して手に入れた免許はカッコいいってのだね。」

 

カッコいいかは別として、何かを成し遂げたという感覚は人間には大事な感情なのは間違いない。俺も文化祭で成し遂げたけど。ふひっ…へへへ…。うん、やめよう。

 

「比企谷君も何か大きな事を成し遂げるかもしれんな。」

 

「…さぁ、どうでしょうね…!」

 

すると試験場にエンジンの音が聞こえ始めた。重低音の鼓動が場内に響く。

 

「そろそろだね。では、実際に見てみようか。はぽん。」

 

えっ?口癖遺伝?

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

「一旦休憩です。10分後にまた始めますよー。」

 

よし!

 

「煙草だっ!」

 

 

 

 

 

「ぷはぁ…ウマイ。」

 

後一時間だな。終われば比企谷とぐぅらーめんだ。むっ…「比企谷と」をさりげなくつけてしまった…てへっ☆

 

「ん?…あれは…。」

 

二輪棟の奥に見慣れたアホ毛を見つけた。少し…楽し気にぴょこぴょこ動いているな。

 

「そこの人始まりますよ。」

 

「あ、はい(ほう…あいつ…)。」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

「お、来たな。」

 

さっきの人達がゼッケンを着けてぞろぞろ出てくる。大体野郎だけど俺と同じ位の歳の奴から爺さんまで様々だ。目立たない様に材木座父の腹の影で隠れよう。

 

「比企谷君試験方法は。」

 

「勿論わかりません。」

 

「そうか。ならそうだな…君の年齢ならちょうど中免だな。三台あるバイクの真ん中で解説しよう。」

 

材木座父の言う通りに三台並んだバイクのうちの真ん中を見る。ん?俺のニチアサレーダーが反応した!あれは…。

 

「ランプやら鉄パイプやらガチャガチャいろんな物が付いているが龍騎の手塚が普段乗っていたバイクと…ゴーバスのニックのバイクモードに良く似ているな…。」

 

「手塚とニックというのは友達かね?」

 

「いや…なんでもないです。」

 

そもそも友達いないです…。

 

「因みにあのガチャガチャ付いているのはそれぞれブレーキ、シフトポジションに対応したランプだ。外からでも何速に入っているかわかるようにするためのものだよ。」

 

「理由は…。」

 

「基本的に試験中は停止時からの発進は1速からでなければ減点なのだ。故に2速発進等を誤魔化せない為の措置だよ。試験官は彼処から双眼鏡で見ているから欺けない。」

 

材木座父が指差す。試験場直ぐ隣に管制塔の様な建物があった。というか刑務所の見張り台?

 

「とりあえず事前説明はこれくらいだな。さぁ、始まるぞー。」

 

すると管制塔からアナウンスでゼッケンナンバーが言われ、呼ばれた人が試験を開始した。重低音のエンジンからヒュルヒュルと高い音が出て発進する。

 

「先ずは慣らし運転だね。採点には関係ないが、100メートル程走ってマシンの癖を掴みとるのだ。」

 

「俺バイク詳しくないですけどバイクの100メートルってかなり短いですよね。」

 

「ふむぅ…そこに気付くとは中々やるではないか。その通り、そこも含めて試験なのだよ。」

 

…なんていうか、材木座親子の会話もこんなんなんだろか。

 

「ではいよいよ始まるぞ。」

 

そして慣らし運転を終えた最初の人が試験を開始した。40くらいのおっさんがバイクの周りをキョロキョロしている。

 

「あれは乗降前の安全確認だよ。初歩中の初歩だが見落としがち…おっとあまり言い過ぎもよくないな。」

 

いやもう大分内部事情言っちゃってますって。

 

「一つ言えるのはこの試験で一番大きなウェイトを占めるのは安全確認だ。これの不備の積み重ねだけで…。」

 

『ゼッケン一番、戻って下さい。』

 

?何かトラブルでもあったのか?

 

「まだ途中ですよね。」

 

「いや、終わりだよ。あの人は残念ながら失格だ。」

 

「えっ!?」

 

マジかよ…スタートからまだ一分経ったかどうかだぞ…。

 

「驚いたかね。普段通り公道を走っている感覚だとまず受からないのがこの試験だ。それぐらい安全確認というのは大きなウェイトなんだ。おっとまた口が。」

 

解説したいが為にわざとやってんのか…?それにしたってクソ厳しいな…まるで俺の人生みたい。俺の人生一分で終わっちゃうのかよ。

 

「次は…ほう。」

 

「外国人…ですね。」

 

「結構いるんだよ。教習所だと言葉のコミュニケーションが取りづらい為にね。」

 

「へぇ…。」

 

言っている内に外国人が発進した。意外と言ったら失礼だが先の人より長く乗っている。

 

「止まった…あの板なんですか?」

 

外国人が長い板の様な物の前で止まる。

 

「あれは一本橋。安全確認以外で乗り越えなければならない壁その1だ。」

 

なんとなく聞いた事あるな。

 

「彼処を走るんですよね。」

 

「うむ。しかし中型なら長さ15メートル、幅30センチの狭路を八秒以上かけて行かなければならない。」

 

「それ人間の歩きより遅いですね…。」

 

「更にバイクがエンストしない様に走らなければならないからな。脱輪したら即失格だ。時間は教習所だとおまけしてくれるが…。」

 

『二番、戻って下さい。』

 

「ここはおまけ一切無しか…。」

 

「うむ…む。」

 

中々外国人が帰ってこない。

 

「あの人、言葉良くわかってない?」

 

すると周りの見てる受験者が「おーい戻れ―」とか「終わりだよー」と呼び掛け、理解した外国人は戻ってきた。

 

「皆結構親切ですね。」

 

「ふふん。バイク乗りとはああいう物だよ。」

 

「そうですか…。」

 

バイク乗りの知り合いなど居ないが、まぁ確かに仮面の二輪乗りの人達は親切というか、親切の極致というか。

 

 

 

 

 

 

 

その後、数人が受けるも一本橋ないし手前で脱落していった。

 

「全然ゴールが見えない…。」

 

「まぁ大体こんなものだよ…お?」

 

「あのおじさん一本橋をクリアした!」

 

やべ、やきもきしてたせいでちょっとテンション上がっちゃった。

 

「だがまだだ!」

 

うわあテンション高いと材木座そっくり。

 

「次はパイロンスラローム…パイスラが待っている!」

 

パイスラ…だと!?

 

『あれ?ヒッキー?ゆきのん?』

 

ららぽーとでの由比ヶ浜を思い出した。あいつわざとやってたのか。目線合わせらんねっつの。

 

「どうしたね比企谷君。鼻の下が伸びているぞ?」

 

「!…いえ、で、あれはどうすんすか。」

 

「彼処に立っているパイロンの間を八秒以内で走り抜けるんだ。パイロンに接触したり八秒以上かかったら失格だ。」

 

「勿論おまけは…。」

 

「ないね!」

 

ですよねー。

 

そしておじさんがするりするりと走り抜ける。しかし…。

 

『11番の人、戻って下さい。』

 

ああ残念…つかこれ受かる人いんのか?

 

つか俺見入り始めてんな…。

 

 

 

 

 

続く。

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