Sword Art Online:Early Break   作:Happy-snow

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第2話 贖罪

 ゲーマーとしての勘は告げる。早く次の村へ行って武装を強化しろ、と。

 だが心は真逆に、あの時と全く同じことをしていいのか、今行動を起こせば死ぬはずだった千人以上の人を救うことができるのではないか、と。

 

 過去の初心者を置いてきぼりにしてしまったという罪悪感と人前に出ることに対する恐怖の葛藤の末、導き出した結論は折衷案であった。

 

 

 

「みんな、聞いてくれ!」

 

 お前は誰だ。何をするつもりだ。この状況をなんとかしてくれるのか。そんな鋭い視線が身体を貫き今にも座り込んでしまいそうになる。

 

(ここで退いては駄目だ!俺は救えなかった人達を救うために行動を起こしたんだ!)

 

 そう、自らを奮い立たせ、声を張り上げる。パニックに陥っていた群衆もこの状況を打破できるのならと静寂を保っていた。

 

「俺は元ベータテスターだ。みんなよりは知識も経験も積んでいる。そのベータテスターの代表として俺にはこのゲームを引っ張っていく意思がある!無理に戦ってくれとは言わない。恐らく奴の言っていたことに間違いはないだろう。この世界ではHPが0になれば死ぬ。それでも前に進む覚悟があるやつは少しづつでいい、小さな一歩でもいいからゲームクリアのための一歩を踏み出して欲しい」

 

 上手く言いたいことを伝えられたかどうかは分からない。それでもこの言葉で、一人でも多くのプレイヤーが生き残り、ゲームクリアに貢献してくれることを願おうと思う。

 

「クライン、さっきの狩りの素材とコルを全て預ける。できることならお前のその仲間と一緒に最前線まで来てほしい。来いとは言わない。それをどう使うかもお前の自由だ」

 

「だ、だが、キリト、先に進むなら……」

 

「最初の数時間で手に入るアイテムなんかたかが知れてるさ。どのみち次の村のクエストを慎重にこなせばもっといい武器が手に入る。それはお前と仲間に使ってくれ。じゃあな、また会おう」

 

「あ、おい、キリト!……キリトよ、死ぬんじゃねえぞ。生きて帰って来いよ!」

 

「ああ、ああ!」

 

 そう腹の奥底から今出せる精いっぱいの声を響かせて、石畳を蹴って最初の一歩を踏み出した。

 

(やってやるさ、茅場!これが俺の二回目の挑戦だ。こんどこそ救えなかった人達を救ってこのゲームをクリアしてみせる!)

 

 そう決意して剣を振り抜いた後にはポリゴン片が散乱し、ただResultの文字が並んだ戦闘結果が表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホルンカ、それがこの少し寂れた村の名前だ。ただの村であるなら補給や休息をとること以外が目的のプレイヤーはいないだろう。そんな村で俺は計二回クリアした片手剣アニールブレード獲得クエストをするために動いていた。

 このクエストの概要は病気の女の子のためにリトルネペントの胚珠を届けるというクエストであり、ネペントの中にごく稀に存在する花つきのネペントを倒さなくてはならないというものであった。クエストの内容は今回も変わることはなく、その親子が示す表情まで同じであるように思えた。

 

「必ず君を助けるから安心して欲しい」

 

 そんな気休め程度の言葉をかけて、早速ネペント狩りを始めようとして俺が開けたドアの目の前で俺は運命的な再開をすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「キリト……くん……?」

 

 紅のフーデッドケープを被った懐かしい相棒の姿がそこにはあった。

 

「あ、アスナ……?」

 

「キリトくん!」

 

 僅か数時間ぶりの抱擁であったがその瞬間は何物にも代えられるものではなかった。俺達は互いに人の目を気にすることなく抱き合ったまましばらくの間互いを離すことはできなかった。




 本作のキリトはゲーマーとしては完成していますが、GGO編などを経ていないので救えなかった命に対して罪の意識を抱えたままになっています。副題の贖罪ってのはそういうことを含めた題というわけです。
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