Sword Art Online:Early Break 作:Happy-snow
書き出し、たいへん……
二度目のデスゲームが始まって3週間がたった。死者は前回から一気に減って800人ほどらしい。しかしながらそのうちの8割弱が元ベータテスターだろう。そう、アルゴから伝えられていた。1000人いたベータテスターの損耗率は7割を超えようとしていた。
それでも、前回から1週間も早くここトールバーナにて第一層ボス攻略会議が開かれることに俺は驚きを感じていた。俺達が会議場所に到着したのは会議開始の5分前であったが、既に前回よりも多い人数が集まりつつあった。
「な、なあ、アスナ?何か前より期間が短いのに人数は多くないか?」
「少なく見積もっても50人はいそうね。前回よりも街を最初に出る人達が多かったみたいだから、その人達がメインで集まっているのかもしれないわね」
「そうなのか、ってことはあの中から人数を絞り込んで……」
会場に目を向けると、ふと檀上の中央にいる青髪の騎士と目が合った。
「お、皆!英雄が来たぞ!」
「は?!」
会議場にいた全員の視線がこちらを貫く。これだけの視線を向けられたのはヒースクリフとのデュエル以来だろうか。プレイヤー達の中には懐かしの風林火山のメンバーの姿もあった。
「おう、キリトじゃねえか!ようやくお前に追いつくことができたぜ、ボス戦でもよろしくな」
「あ、ああ、それで、英雄って一体何なんだ?」
「あ~お前さん、はじまりの街で演説をぶち上げて攻略を始めたろ?その演説とか、その後に出た攻略本とかが役に立ったって連中がここには多くってな。その連中が敬意として英雄って呼んでるわけだ」
「はあ……あんまり視線を集めたくはないんだけどなぁ」
「なぁに言ってやがるキリト。あんな演説したら人の目も集まるってもんよ」
「あれは、その、思い付きで……」
「思い付きでおめえみたいな奴があんだけ堂々喋れるんなら大したもんだ。ま、とにかく頼りにしてるぜ、キリトよ」
そう言ってあいつは風林火山のメンバーの輪に戻っていった。
「それじゃあ、これから攻略会議を始めたいと思う。俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」
あの時と同じネタで周りの意識を一気に引きつける彼のカリスマ性はやはり見事なものだ。とてもじゃないが俺には真似できないと思う。
口笛や拍手が鳴り止むと同時に彼は少し声のトーンを落として続けた。
「今日、俺達のパーティーが第一層のボス部屋を発見した。俺達はボスを倒してこのゲームをクリアできるんだってことを皆に示して、攻略に勢いをつけなきゃならない。そうだろ、みんな!」
そう言えば、彼はここにいるのだろうか?例の特徴的な髪型は……居た。おとなしく最前列に座っているということはあの物申しイベントはないみたいだ。
「それじゃあ、まずは2人一組のタッグを組んでくれ!最初はメンバーの選抜をしたい。できるだけレベルが近くてそれぞれタンク同士、サポート同士、アタッカー同士になるように組んでくれ」
前回よりも人数が多いからか、最初は人数調整から始めるようだ。
「アスナ、俺と組んでもらってもいいか?」
「当たり前でしょ。私以外にキリト君のタッグが務まる人なんかここにいるわけないじゃない」
「そ、そうか。じゃあよろしく」
「組み終わったかな?じゃあ、サポートは右側、タンクができる人は中央に、アタッカーの人は左側に集まってメンバー決めをしてほしい。キリトさん!アタッカーのリーダーをやってもらってもいいかな?」
「は!?え?お、俺が?」
「キリトさんならベータの経験を生かしてバランスを取れると思うんだ、頼むよ」
「わかった。何とかやってみるよ」
突然の指名に驚いたが、彼は俺のベータ時代を知っていて、なおかつ元ベータテスターであることを明かしている唯一の人材を使わないわけはないと考えたのだろう。
「じゃあ、まずは平均レベル順に前から列を作ってくれ。6人パーティーが4つだから、この中から12組を選抜する。せっかく集まってもらったのに申し訳ないけど、残りの人は今回は辞退してほしい」
高効率の狩りをできる俺とアスナのタッグは周りとの差が必然的に大きく、当然先頭に立ちグループ分けを手早く済ませた。結果として、編成はボス用のDPM型のパーティーが二つに雑魚狩り用のパーティーが二つの編成に落ち着き、タンク、サポートもそれぞれ2パーティーずつの形に収まった。俺達のパーティーにはクライン達のパーティーから4人がこちらに集まり、計らずして知っている顔ぶれとなった。
「それじゃあ、再開しようか。昨日、俺達のパーティーがボスの部屋を発見した」
おお、と感嘆の声が広がる。
「ボスの名前は攻略本通り、イルファング・ザ・コボルト・ロードだ。初期武器は片手斧と円形の盾、取り巻きは
来た。まず間違いなくあるだろうと予測できた質問。
「ボスの最終装備についてか?なら言えるのは、その可能性があるなら考慮すべきってことだけだ」
「キリトさんはこのネタがガセネタである可能性は低いと?」
そりゃあ低いだろうね。何せ俺がアルゴに頼んで追記してもらったものな訳だし。
「それを発行している元ベータテスターは情報だけは信頼できるプレイヤーだ。恐らくベータにはなかったクエストか何かでその情報を得たんじゃないか?」
内心上手く乗り切ったことを確信しながらも、不安で拳に力が入る。
「分かった。情報の真偽については考慮しない。ただ、キリトさん。もし本当にボスが使う武器が
「刀スキルは速度とクリティカルに重きを置いたスキルだ。もし、クリーンヒットをくらえば当たりどころ次第では一撃死も考えられる。だからまずは攻撃をクリーンヒットさせないように防御することを意識して欲しい」
「注意すべきスキルとかはあるかい?」
「最も注意するべきはコンボ技だろう。連続で無防備なまま攻撃を受けるようなことがあれば、即死は免れない。どうしてもブロックできない場合は体を丸めて防御姿勢をとるんだ。あとは、ボスは恐らく範囲攻撃技を持っている。囲むのは最後の最後まで控えてほしい」
これで伝えるべきことは全て伝えたはずだ。
「わかった。皆、聞いてたな!コンボも含めて防御重視だ!アタッカーは囲まないように注意!これで攻略会議は以上だ!」
「ハアアアア~」
宿を取っている農家の二階にようやく辿りつくと緊張の糸が切れたせいか、思わず大きなため息が出てしまった。俺の相方はそれを聞いていたのか、クスッと笑う。
「相変わらずキリトくんはああいうの苦手なんだね」
「大勢の前で話すのは苦手なんだよ……」
「でも、今日のキリトくんはカッコよかったよ」
どうしてこんなにも人をドキッとさせるような言葉がスラスラとでてくるのだろうか。思わず嬉しさと恥ずかしさで頬に朱が差す。よく見ると彼女の耳も真っ赤に染まっていた。
「あ、ありがと」
「さ、早く寝ちゃいましょ!明日の本番に寝不足なんて笑えないわ」
照れ隠しなのか、強引に布団を被ったアスナの横に俺も潜りこんだ。
「頼りにしてるよ、アスナ」
「うん、キリトくんの背中は私が守る。だからキリトくんは私の背中を守ってね」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
死闘の時は近い……
DPM:Damage per minute の略、分間ダメージ量
DPM型:DPM重視の単発火力は低いが1分間に与えるダメージの大きいタイプ
⇔単発型:単発火力重視
一言で良いので感想、評価等、待ってます!