Sword Art Online:Early Break   作:Happy-snow

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まさか前回から一年以上空いてしまうとは……
もはや誰もブックマークを残してはいないと思いますし、中身も忘れているでしょうから、新鮮な気持ちで見返して感想を頂けると幸いです。
恐らくこれからもかなり気まぐれな投稿になると思いますので、忘れたころに見るくらいの気持ちでいてくれますとうれしいです。

なんもかんも意味わからん量の課題があるのが悪いんじゃ……


第8話 体術スキル獲得クエスト

「……くん!キリトくん!」

 

「ごめん、アスナ。また無茶しちまった」

 

 上体を起こそうとしてグイっと引き寄せられた体はすぐさま細い腕に抱えられた。

 

「あんまり強く抱きしめると俺のHPがなくなるぞ。なんてな」

 

「……もう!あとでお説教だからね!」

 

「それはそうとアスナ、皆見てるけど?」

 

 俺の体に馬乗りになって俺を抱きしめる様子を攻略組に見られていることに気づき顔を真っ赤に染める。

 

 

 

「じゃあ、俺達は先に言って転移門をアクティベートしとくよ」

 

「何から何まですまない、キリトさん。今度何かお礼をさせてくれ」

 

「気持ちだけ受け取っておくことにするよ。アスナ、行こうか」

 

 二種類の靴音を響かせながら少しでも前に進もうとする彼らに、ディアベル達は尊敬を抱いていた。

 

 

 

「ね、ねえ、キリトくん。2層ってことはひょっとして、体術スキルを取りに行ったりするの……?」

 

「ん?ああ、そうだな。体術スキルには何度も助けられたし、今回も取っておいて損はないだろうしな。何か行きたくない理由でもあるのか?」

 

 珍しく歯切れの悪いアスナだが、首をブンブン振って否定する。

 

「う、ううん! まあ、アルゴさんの言ってたキリえもんが見られるならいっか

 

「ん?何か言ったか?」

 

「な、何にもないよ!ほら、早く行こ!皆待ってるよ」

 

「あ、ああ。」

 

そういえば前回はアルゴに体術スキルの取得場所を教えてもらったわけだが、あの時にアルゴを追っかけまわしていた風魔忍軍の二人はこの世界でもアルゴにスキルの習得場所を教えるよう迫るのだろうか?

 俺が犠牲者を減らすためと思って前回と違った行動を起こしたせいか、今まで大小様々な変更点があった。攻略期間が短く改善されることもあれば、ボスのAIが強化されて難易度が上がる改悪もあった。果たして俺の行動は正しいものなのだろうか?

 

 

 

「アクティベート!」

 

 アスナが転移門に向かってそう叫ぶとすぐに淡い青い光につつまれてプレイヤー達が飛び出してくる。その流れに押し潰されないようにアスナの手を引っ張って後退する。

 

「アスナ、脱出するぞ!」

 

 一層に留まっていたプレイヤーとステータスに雲泥の差がある俺達は難なくプレイヤーの群れから脱出することに成功した。

 

 

 

 

 

 第二層最初の街、ウルバスからダンジョンタワーとは反対方向に少し歩いた場所、それが今回の目的地である体術スキル獲得クエスト場所だ。正直なところ、アスナにキリエモン顔を見られるのは後々弄られそうで極力避けたいところではあるが、それもまあ、アスナの猫顔を見られるので帳消しと言えるだろう。

 

「そういえばアスナは体術スキルを取ったのはだいぶ後になってからだったんだよな?岩は簡単に壊せたりしたのか?」

 

「あ、そっか。私のときはもう結構レベルが高くて筋力値も高かったけどキリトくんは最初に取りに来たんだもんね。うん、確かに不思議なくらい簡単に壊せたけど、もしかしてこんな低レベルでも岩の固さはそのままなの?」

 

「ああ、正直なところ、この層はほんとにアスナと再会するまでこれしかやらなかったくらいだから敏捷よりのステータスのアスナはかなりキツいと思うんだけど……」

 

 アスナはテーブルマウンテンの岸壁を持ち前の敏捷値とセンスで軽々登っていくが、俺にはちまちま登っていくほかない。その分アスナの筋力値は俺の敏捷値程度のものになっている。

 

「それじゃあ、私はまだやめておこっかな。私は別にすぐに必要ってわけじゃないし……」

 

「いや、今回のSAOはどこか変なところがある。ボス戦だってそうだ。あんな高度な動きはベータでもしなかった。できれば安全のためにアスナにも体術スキルを取っておいて欲しい」

 

 アスナが少しだけ膨れっ面をする。

 

「キリトくん、目が笑ってるよ。確か前回の5層の幽霊のときもそんな顔してたよね。なに考えてるの?」

 

「な、なにも考えてないって……」

 

「うーん、怪しいなあ……」

 

 アスナのジト目からにげるように俺はせかせか岩肌を登っていく。その先をひらひらと赤いフーデッドケープが舞うように駆け上がっていく。途中、洞窟を潜り込むときにアスナのスカートの中が見えそうになるアクシデントがあり、ダメージにならないギリギリのビンタをくらったが、特に戦闘にも問題はなく、俺達は二層の東の端にひときわ高くそびえる岩山の頂上あたりにたどり着いた。その山頂はカルデラ状になっていて、小さな泉と一本の木、小屋が一軒建っていることも前回と全く同じであった。

 中で座禅を組んでいるNPCのオッサンの前にアスナと二人で立つと、そのNPCは俺とアスナを見て口を開いた。

 

「入門希望者か?」

「そうだ」「そうです」

「修行の道は長く険しいぞ?」

「望むところだ」「望むところです」

 

 NPCの頭上のマークが変化し、クエストログが流れた。そのNPCが連れて行ったのは、やはり見覚えのある巨大な岩の前だった。

 

「汝らの修行はたった一つ。両の拳のみで、この岩を割るのだ。為し遂げれば、汝らに我が技の全てを授けよう」

「うっわあ、やっぱり前と一緒なのね……」

「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。汝らにはその証を立ててもらうぞ」

 

 NPCが懐に手を入れ、例の壺と筆を取り出さんとした瞬間に、前回の二の舞にならぬように後ろに一歩遠ざかった。だがしかし、NPCは前回と同じかそれを上回る速度で、たっぷりと墨を吸った筆を両頬に三度づつ閃かせた。同じように筆を回避しようとしたアスナも、同様に墨をつけられる結果となったのを見ると、このイベントはやはり確定イベントなのだと察する。

 

「う~、やっぱり避けられなかったか~。で、キリトくん、ちょっと顔を見せてくれる?」

「奇遇だな、俺もアスナの顔が見たかったところだ」

 

 お互いに顔を見合わせる。すると、カルデラ内は俺たちの笑い声で満たされた。

 

「あはははははは!なるほどね、アルゴさんが言ってたキリえもんってのはそういうことだったのね!」

「それを言うならアスナはアスにゃんになってるじゃないか!」

「記録結晶があればこれも保存できたのになあ」

 

 アスナが少し悔しそうにするが、こんなものを公開されたらたまったもんじゃない。だが今回のイベントで密かに見ようと計画していたアスナの猫顔を見れたことは俺にとって一つのいい思い出になった。

 その後、どちらが大岩を先に壊せるかで競争になったものの、どちらも同時に壊れてしまい、賭けは無効になってしまったのは少し残念であった。




アスナの猫顔……見てみたいですね……

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