「ギャンか、それともゲルググか、それが問題だ」次期主力MS選定レポート 作:ダイスケ@異世界コンサル(株)
続きは明日をお待ちください。
→花粉症が酷くて更新は1日パスします
「またされますね」
「そりゃあね。まあ寒い廊下でないだけマシでしょ」
握手をした官僚は「しばらくお待ちください」と2人を室内の待合ソファらしき場所に案内した後に早足で駆け出していった。
それから1時間近くになる。
応対を任されたらしき女性職員がときどきおっかなびっくりコーヒーを淹れにくるのだが、不味いので断っている。
室内で働く職員達も落ち着かないようで、チラチラとこちらを気にしながら仕事をしているのが視線でわかる。
アランとしては先日のホテル襲撃の意趣返しの面もあるので、相手が居心地悪そうにするのは一向に構わない。
今は、そうした嫌がらせにも飽きてきて、隣で姿勢良くソファに座っている秘書とお喋りにふけっていたりもするのだ。
「どうして必要なんです?」
「何が?」
「ザクの価格です。性能諸元データでしたら、ジオニック社から受け取った書類の中にあったと思いますが」
「あれね。ああいう見映えのいい資料も必要だけど、ちゃんと仕事をするためにはもっと汚ない現場のデータがいる」
「・・・それがザクを作るのにかかった費用なんですか?」
「金は嘘をつかないからね。隠れるけど」
「隠れる?」
「まあね。それは官僚さんが来てから話すよ。ところで、マリーさんは買い物をするよね?」
「はあ。非番の日にはしますが」
「お財布は無限じゃないから、新しい買い物をするためには、これまで買っていたものを諦めないといけないかもしれない」
「そうですね」
「新しい買い物が、実はそれほどお買い得じゃない可能性もある」
「・・・それは」
「そう。ジオンは勝った。ジオン軍は地球連邦軍を叩きのめしたわけだ。これ以上ない形で勝ったのだから、もう新型モビルスーツは必要ない、という結論もあり得る。
「AかBか」という選択肢しかないように見える状況でも、常に選択肢「C」は存在する。そうやって選択肢を増やすことで、計画の価値があがるんだ。理屈の上ではね」
「選択しないことで価値があがるのですか?」
軍人にとっては「行動することこそ善である」。マリーは、自分の常識に反する発言に眉をひそめた。
「そうだね。例えば”サイド3の30バンチから31バンチまで行く計画”があるとする」
「はい」
「”定期便のリニアレールで移動する計画”と”定期便リニアがダメなら高速挺、デブリ注意報がでている時は軍用船で移動するという代替案のある計画”を比較した時、どちらの計画の価値が高いと思う?」
「・・・後者です」
「そう。1つの選択肢しかない計画よりも2つ、2つより3つの選択肢を持つ計画の方が価値が高い、と経験的にも言えるわけだ。
つまり”次期主力モビルスーツ選定計画”よりも”次期主力モビルスーツ選定及び中止計画”の方が計画としての価値が高い、ということになる」
「理屈はわかりますが・・・そんな結論を出したら、軍も政府も大変なことになりますよ」
マリーは声を潜めて警告した。
だが、アランは秘書の警告にむしろ真っ向から悪びれず反論する。
「そうかい?ジオン国民のためにはその方がいいじゃないか。戦争に勝って、せっかくスペースノイドの独立自治権を勝ち取れそうなんだ。
軍備なんかよりも新規コロニーの建設や資源衛星開発に予算を振り向ける方が絶対にいい。
これからは連邦の税金のために働く必要はなくなる。稼げば稼いだだけ自分達のものになる、そういう世界になるんだから」
マリーは小さくため息をつくと首を左右にふった。
「・・・聞かなかったことにしておきます」
「そうかい。まあ地球でぬくぬくと不自由なく育ったボンボンの夢物語だと思ってくれていいよ」
アランは行儀悪くソファーで足を伸ばすと、再び室内を見回して職員たちを居心地悪くさせる作業に戻った。
いまだに官僚は現れない。
「それにしても遅すぎますよね。彼は上司を呼びに行ってるんでしょうか」
マリーもさすがに苛立ちを隠せないでいる。
「もしくは責任を押し付けられる誰かを。その誰かを探して説得するのに手間取ってるんじゃないかな」
「出直しますか」
「それはダメ。初回でそれをすると役人さんに舐められる。せっかく不意打ちに成功したんだから、戦果を得るまで帰らない覚悟を決めなきゃ。それこそ廊下のソファで寝たって構わない」
「正気ですか」
一見すると緩い民間人にしか見えないアランの強硬な発言に、マリーは驚いた。
「官僚機構とやり合うってのは、そういうものだろ?」
「詳しいんですね」
「まあね。私は金融街でのキャリアを選んだが、寄宿学校の同期では官僚になった連中もいた。今頃はどうしているか・・・」
と、言いかけて、アランは気がついた。
かつての学友は地球にいて、今は自分の敵になっているのだ。
宇宙出身の自分を目の敵にしていた嫌な連中もいたが、所詮は子供の喧嘩だ。今のように殺し合いをすることまでは望んでいなかった。
彼らも今頃は自分のように連邦政府の建物内で、ジオン公国の大質量弾による都市攻撃の収拾のために懸命に働いているのだろうか。
途中から厳しい目付きで黙り混んだアランの雰囲気に、彼の横顔を見つめるマリーの瞳には戸惑いの色が写り混んでいた。
感想はありがたく読ませていただいています。
プロットは最後まで組んでありますので、ご安心ください