我には青春ラブコメは不要   作:もよぶ

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第十一話

数年後

大学に入っても執筆活動を続けていた材木座は卒業後数年してとうとう本を出版することができた。

内容は以前取材した奉仕部活動記録を元に奉仕部にまつわる面々や事件を大幅に改編したものだ。

主人公は葉山と比企谷を足して2で割ったようなイケメン、

三浦と雪ノ下を足して2で割ったような普段は沈着冷静だが時には烈火のごとく感情を露にする黒髪の美少女、

天真爛漫で優しく分け隔てなくみんなに接するギャル

この3人は学内トップカーストに君臨している存在、そしてそのギャルに片思いする材木座のような存在がこの作品の本当の主人公、そしてこの3人がさまざまな事件を解決する中でカーストの最底辺にいる主人公が恋愛と自分の立ち位置に苦しむ話

 

元の奉仕部の関係者達とは性格も立ち位置も変えて主人公が手を伸ばしても届かない存在というところを強くアピールしたストーリにした。

実際材木座本人もあの3人にはそう感じていたということもある。

この話はキャラ設定は変えているが当事者が読んだらあからさまに自分たちのことだと分かるような内容の為、材木座としても出版していい物か大変悩んだが、ばればれたらその時だと思いそのまま出版された、しかしこの本がかなり売れてしまったのだ。

 

しかも好評の為今度実写映画化することになったとのこと、ここに至るまであの奉仕部の3人には何一つ断りもなく進めてきてしまっていた。

自分が本を出せるぐらい文章力が上がったのは雪ノ下と比企谷のおかげかもしれないと思い、お礼の意味も込めて比企谷に連絡したら

 

「この電話は現在使われおりません」

 

結局由比ヶ浜とも連絡先を交換していなかったため連絡の取りようがなかった。

もういいや知ってたら抗議の手紙ぐらい来るはずだ、そう思い連絡を取るのを諦めた。

 

 

材木座は今日から撮影が開始される映画のスタジオへ見学にいくことにした。

 

撮影現場はあわただしかった、主役達も今日やってくるそうだ

どんな人が由比ヶ浜を演じるのだろうか、未だに財布にしまっているだいぶ色あせたプリクラをちらっと見る。

そういえば今何をしているのだろうか?、自分とは比べ物にならないほどのかっこいい彼氏をつくって幸せにやっているんだろうな。

そう思ってると、現場がさらに騒がしくなる、ようやく主役とヒロインがやってきたようだ、

「ふむ、主役はジャニーズ事務所からか、まあ無難だな、一人目のヒロインは、まあイメージ通り清楚な感じだな、もう一人のヒロインは…」

とここで目が合う

「あーやっぱ中二じゃん!」

聞き覚えのある声

「はぇ?」

ずんずんと女優の一人がこちらに向かってくる

「あたしのこと覚えてないの?由比ヶ浜結衣だよ!」

高校の時よりもさらに磨きをかけて美しくなった初恋の人がそこにいた

「は?なんで由比ヶ浜殿がここに?」

「あたし大学で演劇やってそのまま養成所入ったんだ!これが初の映画の仕事なんだよ!」

 

材木座はすでに何を話していいかわからず口をパクパクしていた

「原作も読んだよ!奉仕部のことみたいな話で懐かしくなっちゃって、ヒッキーとゆきのんにも教えてあげたの!あ、あの二人結婚したんだよ!」

え?マジデ?我聞いてない、あと教えたってそれってやばくない?

 

「それでね、中二が今日撮影現場にくるらしいって伝えたらあの二人も来る気満々でね、きっちり挨拶してあげないとって言ってた!」

え?それって処刑されるのでは?まずい?今すぐ逃げた方がよい気がする!

 

そう思っていると

「久しぶりだな材木座、パクってばかりだと思っていたがまさか俺たちをパクるとはな、覚悟はできるだろうな」

「久しぶりね、材…木材くん、積もる話とかどうでもいいので、まずそこに正座ね」

聞き覚えのある声がする、振り向くとそこには見覚えのある二人が立っていた。

 

昔より切れ味が増した言葉のナイフを二人からグサグサと刺されてもはや涙目だ

「もうその辺にしてあげてよ!中二かわいそうだよ!」

「由比ヶ浜が言うならこのぐらいにしとくか、雪乃その辺見て回ろうぜ」

二人は腕を組んでどっかに消えて行った、お前らいつまでラブラブなんだよ、もう爆散しろよ。

 

そう思って恨みがましく二人の後姿を見ていたら由比ヶ浜が話しかけてくる。

「中二、あのね、もっと早く言えればよかったんだけど、誰も中二の連絡先しらなくてさ…」

八幡は知ってたはずなのに!あやつ卒業と同時に我の連絡先消したな!

 

由比ヶ浜殿が真剣な顔をして言う

「最後のラノベ読んだよ」

ギクっとする

「あたしさ、本当はヒッキーがゆきのんに告白した日屋上で中二が言ってること全部聞いてたんだ」

やっぱりか、冷や汗が背中を伝っていくのがわかる、これから何を言われるのだろうか?

 

「中二には悪いけどさ、その時は中二っていつもよくわからないことばかり言ってるからちょっと気持ち悪いなーって、だから聞いてないことにしたんだ、話しかけたのは誰でもいいから愚痴を聞いてもらいたかったからかな」

ほらみろ、今すぐダッシュでロープ買ってきて首を吊りたい衝動に駆られる。

 

「でもさ、中二に押し付けられたラノベ読んでたら、中二はヒッキーとゆきのんのことをよく見ててさ、あたしのこともよく見てくれてるのがわかって、なんか中二の内面というか気持ちがすっごく伝わってきたんだ」

由比ヶ浜は続けて言う

「それでもっとあの話読んで中二のこともっとわかろうと思った。中二の見ている世界を一緒にみたいなって思った」

 

材木座は顔を上げることができなくってしまう。

「中二はもう気持ち変わっちゃった?」

下を向きながら首を振る

「変わらん、あの時からずっと、でも我と由比ヶ浜殿では…」

 

「ラノベの最後のセリフなんだけど中二はもう中途半端じゃないよね?身分とかよくわかんないけど中二の方が上じゃん!大先生じゃん!」

「しかし我は…由比ヶ浜殿を笑わせることなんて…」

うつむいてしまう

「笑わせてくれたじゃん!あんなに面白いラノベ書いてくれたじゃん!中二の気持ち私にいっぱい伝わってたよ!」

何も言えない、泣きそうになる

「ねえ、もういいじゃん、それとも今のあたしじゃダメ?」

由比ヶ浜がじっとこちらを見つめてくる

もう後には引けない

「由比ヶ浜殿、我はあなたのことが・・・・」

 

映画の撮影は順調に進んでいた、

本来この映画のラストはカースト底辺の主人公は結局思いを告げることができなかったが、学内の立ち居ちなどというのは所詮小さい世界だったと気が付き、卒業式の日校門の前ですべてを吹っ切って新しい世界へ進むといった話だったのだが、出演している女優の一人が撮影期間中に入籍するということになり、しかもその相手が高校の時まさに原作とほぼ同じ境遇の関係であった原作者だというから大騒ぎになった。

 

監督の英断により大幅に映画の結末が修正され、卒業後主人公は片思いしていた相手に再開するという流れに変更になり、しかも実話という触れ込みで映画が公開されたため大ヒット、由比ヶ浜もデビューしたばかりだというのにいきなり主演女優賞も獲得してしまった。

本人役で出ているのだからある意味当然だったのだろう。

 

公開後、材木座の本は飛ぶように売れ、他にもいくつか出した本のうちには念願のアニメ化されたものもあった。

 

 

しばらくして、材木座邸

「中二~」

「結衣、もう中二はやめてもらえぬか?」

「えーだって中二もその口調続けてるじゃん」

「これは…その結衣の前で普通の口調にするのはなんだか照れくさいのだ…」

「えへへーじゃああたしもやめないよ!」

「はー結衣にはかなわんな」

 

「ふふーんだ、ところでさ、昔あたしに書いてくれたラノベだけど、あれ出版する気ない?この間担当さん来たときに見せたらおもしろいって言ってたよ!」

今や姓を材木座に変えた結衣は持ち前のコミュ力で知り合いを増やしていた。

 

「いやあんなの出版してばれたらそれこそ関係者に殺されてしまうからそれはやらぬ、この間の小説や映画だって皆に頭を下げまくっただろう、結婚式なぞはまるで謝罪会見のようだったではないか」

結婚式は比企谷夫妻が完全に仕切った為、総武高校のみならず他校に渡って奉仕部関係者が召喚され、式のほとんどが自分たちのことを無断で本に書いたことによる釈明を求める場となっていた。とはいっても皆同窓会気分で行われたので殆どがからかいに近い物で、逆に材木座の両親はこんなに友だちがいたのかと感動して涙するぐらいだった。

 

「あたしはなかなか斬新で面白かったよ、それにあの後ゆきのんが映画館借り切ってみんなで映画みて楽しんだからいいじゃん!」

「映画が売れても我にはほとんど入らぬと皆にいくら説明しても理解してくれなかったのが辛かったがな」

 

「んもー、本の宣伝になったからいいじゃん!んじゃあさアニメ化は?前さ中二のラノベアニメ化してたよね?あそこのスタジオの監督さんなんか企画無いかって探してたよ?深夜アニメになるらしいし、どうせみんなもう深夜のアニメなんて見てないだろうからいいんじゃない?」

 

「うーん、まあ、そのラノベは高校の時に結衣の為に書いた奴だし、結衣の好きにしていいぞ、どうせそんな企画通らないだろうし…」

「やったー、んじゃあさっそく連絡しとくね!」

そういって携帯を出し連絡する、原稿はそのまま郵送された。

 

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