「ここで景色見てたら中二が突然走って入ってきて叫んでいるからびっくりしちゃって」
まずい、今のを聞かれたのだろうか?冷や汗が流れる。
「なんか言いながら泣いてたみたいだけどまたヒッキーとゆきのんにめちゃくちゃに言われたの?」
よかった、聞かれなかったようだ。少しホッとする。
「中二も懲りないね」
そういうと由比ヶ浜はニコッと笑った。
「あたしも懲りずに行った方がいいのかな…でもゆきのん相手じゃかなわないよ…」
と泣きそうな顔になる
これはいかん、何か、何かないか、焦って考えを巡らせる。
そういや結局ラノベを見せてないことに気が付き鞄の中を手探りであさり現行の束を引きずり出す。
「ゆ、由比ヶ浜殿!、我が書いたラノベを読んでみてはくれないか?、気分転換になるかもしれない、気が向いたらでいいから読んでくれ、気に入らなかったら捨てても構わん」
そういって鞄から原稿を引きずり出し押し付ける。
「では我はこれにて失礼」
「ちょっと中二!」
後ろで由比ヶ浜殿がなにか言いかけたが無視してその場から逃げるように去る
「やってしまった」
気が付いたのは家に帰った後、新作のラノベの原稿はあるのにユイとヨシテルの冒険の原稿が無いことに気が付いた。間違って渡してしまったらしい。
それより問題なのは今日由比ヶ浜が泣いていた原因を思い出させるようなことが書いてあることだった。
唯一の救いは主人公同士の恋愛要素は皆無なところだろうか、むしろ姫は騎士を踏み台にする勢いで引きずり回すような内容だがそれでも気持ち悪いだろう。
いくら焦っていたとはいえ酷いことをしてしまったが今更返してくれともいえない、その日は罪悪感と自己嫌悪で早々と寝てしまった。
次の日から材木座は完全にボッチになってしまった。
校内でトップを争うほどの美少女雪ノ下と比企谷が付き合い始めたという噂が学年中に広まり唯一の話し相手だった比企谷が一躍スター状態になってしまったからだ。
比企谷は今や体育の授業でもペアを探す必要もなく逆に周囲から話しかけられる状態、とても近寄れる存在ではない。
由比ヶ浜とはあんな原稿を渡してしまった手前近づくことができなくなってしまい見つけたら隠れるように逃げる日々。
無論無茶苦茶な言動をした奉仕部に行けるわけもなく結局一人寂しい学校生活を送るのを余儀なくされそうだった。
数日後久しぶりに屋上に出る、誰もいないのは確認済みだ。
「これは勝手に由比ヶ浜殿達をラノベに登場させた罰なんだろうか…もう会うこともできなくなってしまった…」
一人つぶやきがっくりと気落ちする。
しかしこの程度で落ち込んでられないと思い直す
「所詮人間は一人で生まれて一人で死ぬんだから今更どうということもあるまい!」
そう自分に言い聞かせテンションを少しでも高めようとする。
「うむ!我には執筆活動が残っておる!そっちに邁進しよう!我こそは孤高の存在!ラブコメなぞ不要だからな!」
無理やり自分に言い聞かせテンションを上げる為何か叫んでみようかと色々思案していると。
「やっと見つけた」
振り返ると由比ヶ浜がそこにいた。
焦る、何故ここに由比ヶ浜が?足がすくんで動かなくなってしまう。こういうときどうすればいいか全くわからない、下を向いて思案していると
「あのラノベ読んだよ」
そう由比ヶ浜は言う、読んでしまったか、だと気持ち悪いとか色々言うために来たんだろうか?我の学校生活もこれでおしまいか…明日からどの面さげて登校すればいいんだろう、材木座は頭の中でぐるぐると思案を巡らす。
「意外と中二って周りのこと見てるんだね」
「は?」
意外すぎる発言に一瞬固まる。
「やっぱヒッキーとゆきのんって中二からみてもそうだった?」
材木座は言葉が出ず無言でゆっくりうなずく
「そっか、あのさ、あのあと二人と話し合ってさ、友達をやめないでいこうってなったんだ」
え?マジで?由比ヶ浜殿のメンタル半端ないな、これがトップカーストに君臨するもののサガなのか?
自分でも若干混乱しながら顔を上げる、そこにはいつもの太陽のような笑顔を振りまく存在がいた
「中二のラノベがきっかけだよ」
「え?」
「あのなかではあたしがヒッキーとゆきのんをくっつけてさ、それで二人と友だちになるじゃん?現実の順番は逆だけどなんかそういう関係っていいなーって思ってさ」
「はぁ」
どう返事したらよいか返答に困る
「んもう!だからヒッキーのこともういいの!ヒッキーもゆきのんも大事な友だち!」
よくわからない、由比ヶ浜殿はそうとう八幡に入れ込んでたのではないだろうか?
あれから数日経ってるわけだし我の知らない間にいろいろあったんだろう、心境の変化というやつか?三日あわざれば括目してみよとか言うけどそれなのか?あれ。これって男子だけだっけ?
材木座がしばらく固まっていると
「それでね、あの小説ってまだ続きあるんでしょ?あと獄炎の女王ユミコってうちのクラスの優美子のことでしょ?どういうふうに話に絡んでくるのかちょっと楽しみなんだよね」
「い、一応考えてはあるが書いていいのだろうか?」
「もちろん!楽しみにしてるね!あと、ヒッキーも最近中二が来ないって寂しがってたよ!奉仕部に絶対きてね!約束だよ!」
そう笑顔を振りまき由比ヶ浜は去って行った。
「ハハハ、かなわんな」
想定外の事態に体の力が抜けその場にへたり込んだ。
テンション上げる為になんか叫んだことってありませんか?
自分は、Gガンダム好きな奴と2人で流派東方不敗は!の口上をよく叫んでました。なかなかすっきりしたのを覚えてます。今やれと言われたら勘弁ですけどね。