一夜明け、ついに麻帆良祭開催日となった。
麻帆良祭は麻帆良学園全体を使って行われる催しで近所では割と有名なイベントだ、学園の生徒の家族、友人は勿論、他校の生徒や一般人まで色々な人まで来る一大イベントだ。
クラスや部活、同好会などの出し物で得た利益の何割かは生徒の手元に入ってくる、なので生徒は出し物に対して気合を入れる(勿論ただ行事が好きだからなど色々な人がいるだろうが)。
活気は活気を呼び、結果、この一大イベントを起こす原動力となる。
勿論俺のクラスも気合十二分に今日まで準備を進めてきた、さらにクラス出し物であるパーラーは食べ物という需要が100%見込める出し物は利益を得るチャンスと言うことで多分に気合を入れていた。
かく言う俺も料理の仕込みを家でギリギリまでやっていたため珍しく登校時間ギリギリの登校だった、昨日桜花と麻帆良祭を回ると約束したので仕事を抜ける分は多めに用意しなければならなかったからだ。
学校に着き、教室の扉に手を掛けるが教室内の様子がおかしいことに気付く、静かすぎる。
学園祭が始まる朝は一日目の中夜祭の次にテンションが高いのがお決まりであるが、今教室内からは五月蝿いぐらい騒ぐ声どころか物音さえ聞こえない。
入らないという選択肢がない以上、開ける時間が早いか遅いかの違いだけなので普通に扉を開ける、すると
「黒だよ、真っ黒・・・」
教室内は思わずそう呟いてしまうほど沈みきった雰囲気だった、教室中を見回してもただ一人を除いて皆うなだれていた。
唯一の生き残り、カズが俺が入ってきたのに気付くとこちらに近づいてきた、
「来たか義。」
「どうしたんだこれ?」
「ああ、それがな・・・」
カズの話によると初めからこんな雰囲気ではなかったらしく、最初は皆テンションが高かったらしいが、ある生徒が言った
「そういえばパーラーってさ超包子とジャンル被らねぇ?」
この一言が引き金に一気にこんな雰囲気になったらしい、確かに耳を澄ましてみると
「料理研究会がやってる超包子にかなうわけねぇよ・・・」
などと皆小声でそんなことを呟いていた。
「えっ、そんなこと気付いてたんじゃないのか?」
「俺も最初からそのつもりでやってるものだと思っていたんだがな、素で気付いていなかったみたいだ。」
皆に聞こえないように小声でしゃべる。
俺とカズ以外からすればキン肉マンもビックリな上がってるとこからの落っことしだろう。
しかしまぁなんと間抜けなことか、対抗勢力なんて一番最初に気づくことだろうに。
「なんとかしてくれ、正直この雰囲気は耐えられん。」
「え~!?」
などと言ってみたが確かにこの雰囲気の中には長く居たくないし、なによりこのままでは麻帆良祭にも響く、ってか我がクラスが機能しなくなる、それは困る、
「はぁ、しかたねぇ。」
一つ溜め息を吐くと教卓まで歩いていくと空気を吸い込み、教卓を思い切り叩いた、
「おい、お前ら何へこたれてやがる!!」
教卓を叩く音と大声によりうなだれていたクラスメイト達がこちらを向く、
「何ってお前、俺達みたいなのがちょっとパーラーやったところで超包子にかなうわけないぜ。」
言葉を返せるだけダメージが少ない奴がそう言った、
「だからって鼻から諦めんのか、これまでの準備全て無駄にするつもりか?」
皆の目に微かに光が灯ってきたが、まだうなだれてる奴もいる、
「だって超包子には・・・」
「それがどうした!よそはよそ、うちはうちだ、なぜベストを尽くさないのか!絶望するのは客が来なかった後でもいいはずだ!!」
「・・・!?」
だいぶ顔に精気が戻ってきたあと一押しだ、
「それに超包子を超える料理の一つや二つ、俺が作ってやるよ!!」
「・・・そうだ、俺達には義切がいる、それにここまで準備したんだ、やるっきゃねぇよな・・・」
「諦めるには・・・まだ早いか・・・」
よし、とどめの一撃だ、
「奇跡を見せてやろうじゃないか、野郎共!」
「「「オォォォーー!!」」」
クラスの皆の心が一つになった瞬間であった。
その後先生が入ってきた時には異常に気合の入ったクラスメイトを見て軽く引いていた。
俺の説得?のおかげでなんとか気合を取り戻したクラスメイト達が客引きを熱心にやってくれていることにより、お客は入ってきていた、まだまだ始まったばかりだから数は多くないがしょうがないことだ、後は勝負時の昼頃までにどれだけ良い評判を流せられるかが鍵だ、最悪今日呼び込めなくても明日、明後日入ってくれる可能性がある。
俺は一番早い時間にシフトを入れてもらった、昼前には終わってしまうが桜花と麻帆良祭を回る約束なのでしょうがない、次のシフトの人に頑張ってもらおう。
「じゃあ俺はちょっくら用事あるから。」
シフトが終わって、次の人に細かく指示を出した後、失礼させてもらう、
「義切居なくなるのか~、昼頃は辛いなぁ。」
次のシフトの担当が呟いている、
「悪いなこの用事は外せないんだ。」
「なんだ、デートかぁ?」
「・・・まぁ、そんなところだ。」
桜花とは校門前で待ち合わせているので向かうと、校門に寄りかかる桜花を見つける。
桜花はこちらを見つけると満面の笑みで手を振る、
「兄さ~ん!!」
大声で呼ぶから周りの人がこちらを向く、恥ずかしいからやめて欲しいんだが。
「おいおい、あんまり大声あげるな、恥ずかしいだろ。」
「だって兄さんと会うの久しぶりで楽しみだったから・・・」
そう言って少し残念そうな顔をする桜花。
俺は普段、麻帆良に居て夏休み等は遊撃士の仕事があるため色んなところに出張するため、京都に帰れることは稀だ、その間桜花は基本的には一人(向こうの学校の友達は勿論いるらしいが)なので、気が向いた時に電話してはいるが、やはり寂しいというのもあるのだろう、たまの我が儘くらい聞いてやるのが兄の甲斐性というやつだろうか、
「そうか、・・・まぁそれはいい、折角遠いところを来たんだ、回りたいところとかあるか?」
「うん、待ってる間に全部決めておいた!」
そう言うと途端にパァッと笑顔になりはしゃぎ始めた。
まったく元気な妹様だ。
その後二人で色んなところを回った。
途中昼食時に桜花がアーンを強要してきたり、同じクラスの奴から隠れたり大変だったが、たまにはこうゆうのも悪くない。
「ちょっと待っててくれ、トイレ行ってくる。」
「うん、わかった。」
一通り桜花が行きたがっていた出し物を回りちょっとトイレへ行くことにする、
「オ?義切クンネ。」
「超 鈴音・・・。」