「もし嫌な過去を変えられるとしたら・・・君はどうするカナ?」
「・・・なに?」
いきなりの言葉に頭が対処しきれていない。
過去を変える?
確かに、人間生きていれば嫌なことや苦しいことの一つや二つ経験するだろう。
変えたいと思うことだってあるだろう、
「なんていうか、嫌な過去があるから人は成長する、嫌なことを繰り返さない為に。過去を変えられるとして、おいそれと変えるべきではない・・・と思う。」
「フフフ、そう言うと思たヨ、まるで模範解答ネ、しかしその出来事が多くの人々の命を奪い、その後もずっと人々を蝕むとしたら?」
超は顔では笑っているが眼が本気だ、何の話をしているのかは判らないがふざけてなどいない、本気で遊撃士・漆川 義切に語りかけてきている。
俺を試している・・・
「そ、それは・・・。」
答えがだせない、過去は変るべきではない。
しかし、もし、一つの過去を変えることで多くの人命が救えるのならば、遊撃士としては変えるべきなのかもしれない。
「ソウ、それが正解ヨ、君の言うことは正論ダガ、過去を変えて救える命があるなら・・・それもまた正義ネ。」
超の言うとおりだ、どちらにも正義がある、だから否定しきれない。
しかし超の話には一つ気掛かりなことがあった、それは手段だ、過去を変えると言うのならば過去に戻る方法がなくてはならない。
しかしタイムトラベルなんて今の魔法では無理だ。
先ほどの超の発言、未来から来た火星人というのをそのまま解釈すれば未来から来たと言うことか?
ならば過去に遡る手段を持っているということだろうか。
「しかし、こんな話をしたって過去に戻る方法がないんならなんにも・・・」
「ならば戻ってみるカネ?過去に。」
「手段があるのか?」
「アレコレ説明するより実際に体験した方が早いネ。」
超は懐から一つの懐中時計を取り出した、
「それは?」
「これが過去へ遡る為の装置、航時機(カシオペア)ネ。」
航時機(カシオペア)と呼ばれたそれは外見は只の懐中時計だったが、言い知れぬ気配が漂っていた。
「ササ、手を触って欲しいネ。」
「え、なっ?」
「航時機は使用者と接触してる者に効果があるネ。」
「あ、ああ、そういうことか。」
いきなり手に触れてくれと言われて一瞬何事かと思ったがそういうことか。
さっそく超の手を取る、超はもう片方の手で航空機に魔力を送り、操作する。
すると航時機が光り出し、時計の針が高速で回りだす。
俺と超の二人は光に包まれる。
「うおっ!」
眩しくて目をつむる。
しばらくして眩しさを感じなくなり目を開けるとそこは跳ぶ前と同じパソコンルームだった。
「ん、ここは・・・え?」
しかし違うことが一つあった、外が明るい。
「なんだと、まさか!?」
『これより麻帆良祭を開催します!』
外を見ると開催式典の小型飛行機が飛び回っていた。
「本当に・・・時間を遡ったのか?」
俺が唖然としていると後ろから超が声を掛けてくる、
「フフフ、驚いたカネ?」
「マジかよ・・・」
携帯を見るが、時間は夜の7時を指していた。
「それでは、再び今日を楽しむとイイネ。」
そういうと超はで本殿の奥へ消えていった。
「あ、おい!」
追おうとした時にはもう超の姿はもう見えなかった。
「なんだよ・・・、どうすっかなぁ。」
とりあえず何をしようかと考えて最初に思いついたのがクラスの出し物の手伝いだった。
しかし俺は昼頃までのシフトだ、やはりこういう場合は自分に会ってはいけないんだろうなぁ、
「しゃーない、昼頃まで適当に回って時間潰すかぁ。」
とりあえず神社から出るか。
早朝なので正門が開いてないので屋根づたいに境内から出る、誰かに見られたら絶対に変人扱いされるよこれ。
しばらく歩いて人気のある場所に出る、周りの様子から本当に一日目の朝に戻ってきたらしいな、信じていなかった訳ではないが、やはり自分で確かめてみると実感する。
しかしどうしようか、だいたいの場所は一回目の一日目で桜花と回ってしまったからなぁ。
とりあえず出ていた露店でオレンジジュースを買った。
飲みながら歩くってのはあまり行儀がよろしくないが、ま、今日くらいはいいだろう。
桜花と大体回ったと思っていたのだが正直麻帆良祭の規模をなめていた、驚くほど出し物が沢山ある、これじゃあ三日あっても回りきるのは難しいだろう。
特に大学のサークルの出し物は流石と言うべきか、出来が良い。
機械系のサークルは遊園地のアトラクションの様な本格的な物をやっている辺り熱の入りようが伺える。
「結構面白かったな。」
一つ試しに入ってみたが遊園地顔負けのクオリティだった、結構人も入っているから人気があるんだろう。もうそろそろ一回目の俺のシフトが終わる頃だから、少し休憩してから行こうとした時だった、
「ぶっ!!」
口に含んだジュースを盛大に吹き出してしまった、幸いに掛かった人は居なかったので良かった。
俺が吹き出したその理由は・・・
「あ、義切さん。」
「な、義切!?」
「せ、刹那・・・」
ばったり会ったのは刹那とネギ先生とカモっちだった、しかしただ彼等を見ただけなら吹き出したりなんかしない、そんな要素が無いし何より失礼だろう。
しかし吹き出したのだからその要素があるという証拠でもある、
「お前・・・その格好、ぷっ・・・なんだ?」
「!?」
そう、その要素とは刹那の格好にあった。
麻帆良祭中はイベントの一環として仮装用衣装が貸し出され、どんな人でも借りることができる、恐らくそこで借りてきたんであろう。
一緒にいたネギ先生はウサギの着ぐるみだ、顔が出るタイプでこちらはまぁ可愛いと言える。
一方の刹那もウサギなのだが着ぐるみとかではなくウサギの耳を模したカチューシャを被り、毛皮で出来た柔らかそうだが露出の多い服装だ、そしてトドメのヘソ出しルック。
もう一度言おう、トドメのヘソ出しルック。
大事な事なので二回言いました。
こちらも可愛いし、似合っていないということはなかった。
なかったのだが、いつもとのギャップによる破壊力がその気持ちを遥かに凌駕していた。
顔を背けてなんとか笑いの衝動を抑えようと奮闘するが、どうしてもチラチラ見てしまい、遂に限界を超える、
「も、もう駄目、ククク・・・ハハハハ!」
声を出して笑ってしまう、刹那は恥ずかしいの顔が赤くなっていく、
「わ、笑うなっ!!」
「義切さん、どうしたんですか?」
「まぁ、いつもの姉さん知ってる人からしたら面白いわな。」
その後、笑いっぱなしだったのがなんとか会話できるまで落ち着くまでしばらく掛かった。
「で、いくら麻帆良祭だからって何でそんな格好してるんだ?・・・プッ。」
落ち着いたといっても改めて見ると笑いが込み上げてくる、刹那が睨んでくるのでなんとか抑え込む、
「それは・・・」
刹那が言葉を濁す、何か言いにくいことなのだろうか、ネギ先生とカモっちと相談し始めた、
「話しても大丈夫でしょうかカモさん?」
「義切のアニキなら大丈夫じゃねぇか?魔法生徒だしな。」
「僕も大丈夫だと思いますよ。」
なにやら少し離れて三人でコソコソ話をし始めた。
ちょっとして話が決まったらしい、
「実は・・・」
刹那達の話によると昨日に学園長が魔法先生、生徒を集めた時にトラブルが起こり、そこで故あって超を救い、そのお礼に懐中時計を貰い、実は貰った時計がタイムマシンで、色々あってそれが作動して、今日の朝に戻ってきたらしい。
それで航時機について問いただす為、超を探しているらしい。
「タイムマシンねぇ・・・」
すぐにそれが航時機(カシオペア)だと判ったが、あえて黙って知らない振りをした、
「信じられないかも知れませんが、本当なんです。」
「まぁ確かに、にわかには信じがたい話ではありますが、三人が言うのだから本当のことなんでしょう。」
「信じてくれるのか?」
「お前がそんな面白い嘘つけるはずないし、俺に嘘をつく理由がないだろ。」
「なんか軽く馬鹿にされた気がするが・・・、ありがとう。」
そう言う刹那は少しムッとしていた。
「ま、俺は超がどこにいるかはわからないし、これからクラスの出し物を手伝わなきゃいけないからそっちは手伝えないが、二人とも日頃は遊んだりはしてないんだろうから探すついでに色んな所回って楽しんだらいいんじゃないか?」
居場所を知らないのは本当のことだし、この二人はお堅いから良い羽伸ばしになるだろう。
烏族だけに羽伸ばし、上手いことを考えたな俺。
「ああ、そうだな。」
「ハイ、そうします。」
「んじゃあな。」
軽く手を振り、挨拶をして刹那達と別れる。
しかし数歩歩いてあることを思い出し、懐からあるものを取り出し振り向いて声を掛ける。
「あ、そうだ刹那。」
「ん、なんだ?」
声を掛けられたが刹那振り向く、今だ!
カシャ
携帯電話のカメラ音が鳴り響く、
「・・・・・・」
「うしっ!ナイスショット!」
撮った画像を見て、余りに撮れ方が良かったので思わずガッツポーズをする。
一方の刹那は俯き、肩が震えている、キッと顔をあげるとその顔は真っ赤で怒りの表情をしていた。
「義切!!」
「ハハハ、こいつは記念に取っておくぜ、今度こそじゃあな!」
「待てぇぇ!」
そんな悲痛な刹那の叫びを背に、走ってその場を去る。
こんな面白い物消せるかよ。
その後、クラスに帰るとクラスメイトに用事はいいのか?と聞かれたがもう終わったと言って手伝っていた。
客入りは上々で、俺が予想していたよりも多かったくらいだ。
この調子なら明日俺とカズがいなくても大丈夫だろう。
武道大会の予選が始まる少し前に上がり、予選が行われている最中はまた麻帆良祭を見て回り、予選が終わったくらいの時間に中夜祭の会場に向かった。
「義!?」
「あれ、兄さん?」
「おうカズ、桜花も、案外遅かったな。」
会場に来たカズと桜花が驚いた顔している、まぁ後から来る筈の人間が先に来ていたらそりゃビックリするよな。
「偵察はどうしたんだ?」
「全然だ、めぼしいことは何も無かったから、すぐに引き上げて急いで来たからどっかで追い越したのかもな。」
「そうか。」
「また明日調べりゃあいいさ、それより中夜祭始まるから行こうぜ。」
「それもそうだな。」
「兄さん、早く早く!」
桜花に促され、俺とカズは会場に入る。
中一の時の麻帆良祭に来てから桜花が中夜祭に参加するのが当たり前みたいになっていた、クラスが誰も反対しないし、桜花も明るい性格なので皆から好かれている。
クラスメイトと下らない話をしながら中夜祭を楽しんでいると進行役がどこから取ってきたのかマイク片手に喋りだした。
『さあ皆!中夜祭は楽しんでるかい!!』
その声に反応するように叫び声があがる。こいつら素面なのに酒が入ったみたいなテンションだな・・・
『ここで重大発表があるぞ!』
ざわ…
ざわ…
会場がざわつき始め、顎と鼻が伸びてるやつもいる、芸が細かい奴らだ。
しかしなんか嫌な予感がしないでもない、こういう時の感ってよく当たるんだよなぁ・・・
『なんと今年の麻帆良武道大会に我がクラスから義切と一騎が出場することになったぞ!!』
うわぁ、やっぱりだよ。
まぁ別に隠してるつもりも無かったし、皆が知る分にはいいんだがおおっぴらに発表するのは止めて欲しかった。
しかし会場は大盛り上がり、一斉に俺達に群がってきて、質問責めにあった。
「ふぅ、えらい目にあった。」
「まったくだ。」
俺とカズの二人は質問責めの地獄から抜け出し、会場の外に出た。
始まってから結構経つというのに中夜祭の勢いは止まることを知らない。
桜花まで一緒になって騒いでるよ・・・
あの調子だと死人まで出てきそうな勢いだ。
「なあ義、明日の事だが。」
「なんだ?」
不意にカズが声を掛けてくる、カズは少し真剣な顔をした後、表情を緩めた、
「本気でやれよ。」
「・・・・・・ハ、当たり前だろ。」
カズが拳を突き出し、俺がそれに自分の拳を軽く打ちつけ本気で試合することを誓い合うのだった。