・・・
・・・・・・
「・・・・・・ハッ!?」
「ん?やっと起きたか。」
ふと気が付くと俺は木造の部屋の片隅で座っていた、カズの台詞から察するに寝ていたらしい、
「ここは・・・?」
まだ頭が寝ぼけた状態で上手く状況を把握できないので目をこすりながらカズに訪ねる、
「選手控え室だ、なんだお前様子がおかしいと思ったら無意識に準備してきたのか?」
ということはここは龍宮神社か、しかしここに来るまでの記憶が曖昧だ、確か昼夜祭があって・・・
「・・・あぁ、思い出した、大急ぎでここに来たんだっけか。」
そう、あの後昼夜祭にも関わらず皆がはっちゃけるもんだから午前4時までドンチャン騒ぎして、その後二時間寝てから急いで家に帰って着替えてパーラー用の料理の仕込みをして、それを教室に置いてきた後ここに着いた所で力尽きたんだ。
「ふあぁ、昼夜祭からあんなに飛ばしてあいつら息切れしないのかね。」
「午前4時まであれほどテンション維持できるのは軽く恐ろしいな。」
一つ欠伸をして立ち上がる、見渡すと大体の選手が集まっていた、あと来ていないのはネギ先生、刹那、神楽坂さん、小太郎か。
「あ、あとさっきレイと会ったぞ。」
「そうか、桜花から聞いたんだろう。」
兄がいるとはいえ男子の中で女子が一人で一晩過ごすのも問題だろうから、桜花は途中で家に帰した、その時レイに伝わったのだろう。
応援してくれるならば嬉しい限りだ、しかしレイの場合冷やかしの可能性もあるが・・・
控え室の戸が開き、ネギ先生達が入ってくる、神楽坂さんと刹那は制服、小太郎は学ランだがネギ先生は正に魔法使いといった風貌のローブ姿だ。
気合いが入るのも無理はない、なんせ初戦の相手は高畑先生だ。
魔法世界でも有名なその戦闘力は折り紙付きだ、高畑先生の性格を考えて瞬殺ってことはないだろうがそれでも勝てる可能性は低いだろう、そんな相手にどう闘うのか見物だな。
ネギ先生が高畑先生と何か話している、どうやら手加減しないでと言ったみたいだな、男として気持ちは分からないでもないが普通だったら自殺行為だ。
その後刹那が高畑先生と話してからこちらに気付き近づいてきた。
「おはよう。」
「あ、ああ、すごいクマだぞ義切。」
どうやら目の下にすごいクマができてるらしい、鏡がないから気付かなかった、まぁ二時間しか寝てなければ当然か、
「二時間ちょっとしか寝てないからな・・・」
「に、二時間・・・初戦だろう、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫・・・多分、それよりどうかしたのか、挨拶だけというわけでもないだろ?」
「ああ、二人とも超さんを監視するために大会に参加したのか?」
二人とは勿論、俺とカズのことだ、
「・・・まぁそんなところだな。」
少し茶を濁す様な応えになってしまった、嘘をつくのも楽じゃないな、
「俺は腕試しの意味の方が大きいがな。」
まぁカズはそうだろうな、
そこに大会主催者である超と朝倉さんが現れた、
「ようこそお集まり頂きました!!30分後より第一試合を始めさせて頂きますが、ここでルールを説明しておきましょう。」
マイクを片手に朝倉さんがルールの説明を始める、
「15m×15mの能舞台でおこなわれる15分一本勝負!!『ダウン10秒』『リングアウト10秒』『気絶』『ギブアップ』で負けとなります、時間内に決着がつかなかった場合観客によるメール投票に判断を委ねます。」
ルール説明が終わり、他の出場者の人々が準備を始める。
俺も腱を伸ばしたりして動く準備を始めた。
三十分後・・・
『ご来場の皆様お待たせいたしました!!』
会場中に拡声器からのアナウンスが響く、
『只今より麻帆良武道会、第一試合に入らせていただきます。』
得物である木刀を手に取りカズと共に舞台に向かう、
「義切さん、頑張って下さい!」
向かう途中でネギ先生に応援された、
「見ていて下さい、凄い勝負を見せてあげますよ!」
ネギ先生や刹那達に軽く手を振ると舞台に向かった。
舞台に上がると選手席より客席からの歓声がよく聞こえた。
観客の中に桜花とレイを見つけて軽く手を振ると桜花は笑顔でブンブンと手を大きく振り返してきた、レイはその隣でニヤニヤしている、なんか嫌な顔だなあれ、高みの見物を決めてる感じだ、実際そうなんだが。
『第一試合は漆川義切選手対風原一騎選手です!麻帆良学園の女子生徒を筆頭に圧倒的な人気を誇る二人、会場内は黄色い歓声に溢れています!』
確かに騒いでいるのは女子生徒ばかりだ、悪い気分はしないな、
しかし浮かれてる場合じゃない、今日は相手が相手だ気を引き締めて行こうと気持ちをリセットしてカズと向き合った。
「寝ていなくて大丈夫か?」
「問題ない、何時でも動けるように鍛えてある。」
「そうか、ならば最初から本気でいかせてもらおう。」
「来い!」
『それでは第一試合、Fight!!』
試合開始の合図と同時に二人の姿が消えて木のぶつかり合う様な音が幾つか聞こえた後に二人の立ち位置が変わっていた。
二人は同時に瞬動術を使い、入れ違いになる際にお互いに攻撃していたのだ。
司会の朝倉だけでなく観客も一瞬静まり返っていたが段々とカラクリは分からずとも何が起こったのか理解すると歓声が巻き起こった。
ワァァァァァ!!
『瞬間移動でしょうか?一瞬で両選手の立ち位置が入れ替わりました!』
カズは力が高くかなりのタフネス、所謂パワータイプだ、ならば俺は・・・
義切はもう一度瞬動を使い、一騎の後ろに回り込んだ。
スピードで勝負だ!
一騎が気付いた時には義切は後ろに回り込み攻撃を放つ瞬間だった。
「くらえ!」
「クッ、やらせん!」
一騎はその攻撃を木刀で防御し、反撃する。
「ぐおっ!」
カズの反撃の蹴りを受ける瞬間に咄嗟に左手でガードしたものの後ろに吹っ飛ばされた、すぐに体勢を立て直してカズの方を向くと、追撃をかけようと跳んでいた、
「ヤ、ヤバイ!」
防御を!いやあの攻撃はマズい、回避だ!
義切が横に転がり回避する、一騎の木刀が振り落とされると剣圧により舞台の義切がいた場所の床が裂け、堀の水面が割れて水飛沫が上がる。
ワァァァァ!!
観客は一種の演出だと思っているのか大喜びだが冗談じゃない、あんなの喰らったら怪我じゃ済まないぜ!
「・・・チッ。」
「チッじゃねえぇ!なんだあの威力は!」
「言っただろう、本気でいくと。」
澄まし顔でしれっとそんな事を言ってくるカズ、たしかにそう言ってたけどな・・・
「・・・そうか、ならよぉ!」
一気にカズに近づき木刀を振るう、勿論それは防御されるが鍔迫り合いに持ち込み自分の左手で相手の左手を突き上げて開いた所に膝蹴りを打つ!
「ぐ、おぉ!」
「まだまだ!」
蹴りが入り少し浮いたカズに追撃しようと木刀を振るう、その攻撃は防御されてしまうがこの攻撃の目的は他にある、
「何!?」
「吹っ飛べぇぇぇ!」
気力を込めた攻撃によりカズを上空に打ち上げ、俺も虚空瞬動を使い上空へ跳んでカズの上を取る、
「空は俺の領域だぜ!」
カズが防御するより早く、攻撃を放ちカズを地面に叩きつけ、着地する、
『決まったぁ!漆川選手の怒涛の連想攻撃により風原選手ダウンです!』
「クッ・・・」
脇腹を抑える、あの野郎最後の攻撃を喰らう瞬間に攻撃の反動を利用して脇腹に蹴りを入れてきやがった、流石は超闘士と呼ばれるだけある。
『1、2、3・・・』
「おい、いつまで寝てやがる、お前があの程度で沈む男じゃないだろ。」
義切がそう言うと一騎が起き上がった。
『おぉっと、風原選手起き上がった!!』
あの程度の攻撃で動けなくなる奴じゃないのは俺自身よく知っている、
「効いたのは確かではあるがな。」
ゆっくり立ち上がったカズは俺に向き合い木刀を構えなおした、
そして両者は凄まじいスピードで剣戟を始める、その威力たるや、舞台の床を抉るほどのものだ。
「うらぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁ!」
その剣戟はしばらく続き観客を大いに盛り上げた。
不意に二人が間合いを取る、両者とも少し息が切れてきている。
時間はゆうに十分を過ぎ、試合終了までわずかだ。
「時間も近い、そろそろ終わりにするか?」
「いいだろう・・・。」
俺は脇構えをカズが八双の構えを取った。
会場がシンと静まる、
「「・・・いざ!」」
お互いがお互いに向かい突進しながら技を放つ、
「鳳閃火ぁぁ!」
「計都流奥義!一刀両断!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「チェェストォォ!!」
両者の技が激しくぶつかり合い衝撃波を巻き起こした。
『す、凄い衝撃です!』
そして勝負がつく・・・
『こ、これは!?』
一騎、義切の両者共地に伏せていた。
『両者ともダウンしています!!』
そしてカウントが始まる。
『1、2、3・・・』
「ぐぅ・・・」
うつ伏せに倒れていた状態の義切が顔を上げ、フラフラと立ち上がろうとする、
『4、5、6、・・・』
そして完全に立ち上がる、観客席から数多くの歓声が響く。
「・・・負けた、か。」
その様子を仰向けに倒れたまま見てそう呟く一騎。
「木刀だったから勝てたんだ。」
「何・・・?」
義切がカズの方を向き話し出す、
「お前の技は力と武器の重さを利用して叩き斬る技だ、今回は武器が軽い分威力が削がれたんだ、斬艦刀で放たれていたら俺は勝てなかっただろう。」
「そこまで計算していたか・・・」
「いや、どこまで削がれるかわからないからな、正直賭けだった。」
『7、8、9、・・・』
「賭けか、そうか・・・クク、ハハハハ!!」
「カズ?」
「クク、あー負けだ負けだ、俺の完敗だよ。」
『ここで10カウント!ということは勝者は漆川 義切選手です!!』
ワァァァァァァァァ!!!
その瞬間会場は割れんばかりの歓声に包まれた、そんな中俺はカズに手をさしのべる、
「いい勝負だったぜ、立てるか?」
「あぁ、何とかな。」
カズは俺の手を取り立ち上がった、俺はその手を肩に回して二人三脚で歓声を背に受けながら舞台を後にした。