スピーカーから発せられるアナウンスが境内全体に響き渡る、
『クウネル・サウンダース選手、優勝!!』
瞬間、観客席から場が割れんばかりの大歓声が舞台に立つ二人に送られる、
ネギ・スプリングフィールド、そしてその実父ナギ・スプリングフィールド、に変身したクウネル・サウンダース、
『それでは皆様、授賞式のほうへ移らせて頂きます!』
そして舞台に現れた超による挨拶の後、賞金の一千万円が手渡される、
すると武道大会のことを記事にしたいらしい記者陣がクウネルにインタビューしようと駆け寄るが逃げられてしまう、ネギや三位であった刹那、楓もその場から早々に離れ相手を失った記者陣は新しい相手を見つける、
「漆川選手と風原選手がいたぞ!」
「もうこの際四位でも何位でもいい、インタビューするぞ!」
「やべっ、行くぞカズ!」
「軽く失礼なこと言われた気がするが、今は逃げるのが先決か。」
義切、一騎の両人はそれを察知し、急いでその場を離れるのであった。
「何とか撒いたか・・・」
やっとの思いで記者陣から逃げ仰せたが、存外にタフでびっくりした、
逃げる途中で記者陣を錯乱させるためにカズとはぐれたが、超に聞きたいことがあり、境内に戻る必要があったのでむしろ幸いだったな。
「超は・・・おっと。」
超を探して境内の廊下を歩いていると、魔法先生に囲まれた超を見つけた。
咄嗟に影に隠れて様子を伺う、どうやら魔法先生達は超を捕らえようとしているようだ、
当たり前か、あんな武道大会を開催し、高畑先生を軟禁していたのだから。
しばらく言葉を交わした後、魔法先生達は超を拘束する為取り押さえようとしたが、超がその場から消えて捕まえるには至らなかった、
「一体どこへ消えたんだ?」
魔法先生達は周りを見渡すがどこにも超の姿は無い、カシオペアを使ったのだろう、
「・・・超君がどこへいったのか知らないかな、義切君?」
「っ!?」
高畑先生がこちらを向き、語りかけてきた、
ばれていたのか、流石だな。
隠れている訳にもいかず、影から身を出す、
「・・・さぁ、皆目検討もつきませんね。」
「漆川君、魔法生徒である君が何故ここに?」
魔法先生達は明らかに警戒していた、ここで超側に加担しているのがばれるのは非常にマズい、適当にはぐらかそうにも高畑先生もいる、こりゃ詰みか?
しかし、助け舟は意外な所から出された、
「ああガンドルフィーニ先生、私が頼んだんですよ。」
「・・・!?」
「高畑先生が?」
「ええ、武道大会に出場した折に、超君の監視を頼んだんです。」
「それは本当かい、漆川くん?」
ガンドルフィーニ先生がこちらに問う、
「え、ええ・・・。」
状況が上手く飲み込めず間の抜けた返事になってしまったが、それを聞いたガンドルフィーニ先生以下魔法先生は納得し警戒を解いたようだ、
「そうか、それではこれからも頼む。」
そう言うと魔法先生達はその場から去っていった、そのとき一瞬高畑先生と目があった、
「・・・・・・。」
高畑先生は一瞬笑顔を見せ、他の魔法先生と共に行ってしまった。
「・・・何を考えているんだ、あの人は。」
龍宮神社の境内にある櫓の屋根に立ち、空を見上げる、
何故高畑先生はあそこで俺を庇うようなことを言ったのだろうか、本当のことを言われて魔法先生に囲まれれば恐らく捕まっていただろう、なのにそうはしなかった、むしろ自分にとって不利になることをした・・・
考えているとなんとなく自分の心がもやもやしていく感じがする、
「・・・わかんねぇことは考えてもしかたねぇか。」
そう呟くと屋根の上に横になった、超はこの時間にはいないだろうし、待ち人もいるのでここで時間を潰すことにしよう。
「・・・来たか。」
「・・・・・・」
気配を感じ、振り返らずにつぶやく。
寝ている俺の後ろには刹那が立っていた、
「そろそろ来る頃だと思ってたぜ。」
ゆっくりと立ち上がり、ズボンに付いた埃を払う。
そんな俺を見て、刹那は困惑した顔をしていた、
「・・・武道大会中に超さんと一緒に高畑先生を軟禁したというのは本当か?」
「あぁ。」
「何故だ!?」
「そんなの超の思想に賛同したからに決まってるだろ?」
段々と語気が強くなる刹那に対して飄々と答えると、そんな俺の態度が気に障ったのか刹那の声に明らかな怒気が帯びる、
「義切!!」
「まぁそんなカリカリするなよ。」
「・・・ならば、超さんは何を企んでいる?」
「別に教えてもいいんだが、それじゃあ面白くないな。」
「何?」
俺の態度に明らかにイライラしている刹那を尻目に言葉を続ける、
「ヒントだ、鳥。」
「・・・は?」
キョトンとする刹那、言い聞かすように言葉を繰り返す、
「鳥だよ鳥、鳥はいいよなぁ空を飛べるんだぜ?」
「何を言って!」
「まぁ聞けって、空を飛べる鳥を羨んだ人は飛行機を作り出した、早く走れる動物を羨んで人は車輪を発明した、人は自分に出来ない事ができる存在を羨み、頭脳で補ってきた。」
「・・・」
刹那は黙って聞いている、俺は話を続けた、
「そんな動物達を人間は羨みこそすれ、恨んだりはしなかった。しかし、俺たちのような魔族との混血はどうだ?」
「!?」
「・・・受け入れられていない、正体を知れば疎み、無かったことにしようとする。」
「昔から人は肌の色、信仰の違いで他者を迫害し争ってきた、何故だと思う?」
「【自分の知らない、自分に良く似た何か】だと思ってるからだよ。」
「そ、それは!」
「ああ、勿論そんなこと思ってる人ばかりじゃないが、そんな人さえ人間は迫害する、自分のコミュニティと意見が合わないと言ってな。」
「そういうすれ違いはお互いの無知が引き起こす、人間ってのは基本的に知らないものに恐怖するからな。」
「さて、ヒントはやった、これ以上知りたければ・・・」
立て掛けてあった朧火を手に取り、切っ先を刹那に向ける、
「俺を倒してみろ・・・!」
「なっ!?」
放った攻撃は防御され鍔迫り合いになるが姿勢を変え、刹那を武道大会でも使っていた舞台へ吹き飛ばす。
吹き飛ばされた刹那は受身を取る、それを追い舞台に移動する、
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何で戦わなければいけないんだ!?」
一度構えを解く、
「超の企みを知りたいのであれば俺を倒せばいい、至ってシンプルな理由だと思うが。」
「だから何故、戦うことになるんだ!?」
「それは俺が戦いたくなったからだ。」
「え?」
意外な応えだったのか、驚き、固まっている刹那に言葉を続ける、
「今日までのお前はどこか気の緩みがあった、木乃香様と和解したからか、友人ができたからか・・・」
お前が笑顔で、幸せならば・・・
「それでもいいと思った、今日まではな。」
だけど・・・
「今日お前はエヴァに勝った、どんなことを言われたのかは知らないがそれは戦う決意をしたということだ。」
だから・・・
「だから俺は戦う決意をした本気のお前と戦いたくなったのさ。」
再び構え、言い放つ。
さっき感じた心のもやもやが大きくなっていく気がした。
「・・・わかった、それが超さんの企みを知る方法ならば!」
そう言って夕凪を構える刹那の眼付きに油断や困惑の色は無かった。
「そう、その眼だ!」
言うが早いかお互いに攻撃を仕掛け、鍔迫り合いとなる。
これまでの刹那の攻撃になかった重さを感じた、覚悟を決めただけでかなり変わる物だ。
「うぉぉっ!」
「はぁっ!」
再びお互いの刀が交差すると衝撃が走り、水面が波を立てた。
しばらくの膠着の後、間合いを取る為後ろに跳ぶ。
二人は再び得物を構えるが、不意に刹那が構えを解く、
「一体なんのつもりだ?」
「義切・・・、何か迷ってるんじゃないか?」
「・・・・・・」
「武芸者にとって得物は武器であり体の一部であり、自らの意思を写し出すもの、今の義切の剣撃からは迷いが伝わってくる。」
「っ!」
なんとも格好悪い話だ、格好つけて自分から戦いを挑んでおきながら自分自身に嘘が付き通せず、相手に心配される始末だ。
さっきよりいっそう心の靄が大きくなっている・・・
「さっき義切は超さんの思想に賛同したと言った、それは何故だ?」
「それは・・・、俺の望む物が手に入るからだ。」
なんでか気まずくなって少し眼を逸らす、そんな俺を刹那は真っ直ぐ見据えているのだろう、
「じゃあ、義切の欲しい物って一体なんだ?」
「俺は多くの人を・・・、違うな。」
こんな時まで嘘をつこうとする自分自身に憤りを感じた。
俺の欲しい物、俺の守りたい物は・・・!
刹那は何も言わずにこちらを見つめている。
「その前に一ついいか?」
「・・・なんだ?」
意を決し、刹那の眼を見つめ返し、ゆっくりと問う。
「刹那、お前は今幸せか?」
「私は・・・」
この答えの如何によって俺の返す言葉も決まる。
「今の、自分自身の感情で答えるなら、幸せじゃないな。」
「・・・何故だ?」
「それは、こんなよくわからない状況で義切と敵として剣を交えているから。」
刹那は今の自身の状況を不幸だと言った、理由は俺が敵だから・・・?
「そうか・・・、ククク、ハハハハハハ!」
「義切?」
その答えを聞いて沸いてきたのは自分に対する怒りでも呆れでもなく、自分の行動の矛盾、その滑稽さ対する可笑しさだった。
「悪いな、この勝負預けさせてくれ、お互い万全になったらまた勝負させてくれ。」
「あ、ちょっ義切!?」
そんな自分に情けなくなってその場に居たくなくなった俺は刹那から逃げるように舞台から去った。
とある屋外のカフェテラスで俺はオレンジジュースを頼んだ後、机に突っ伏していた。
「はぁ、なんつー道化だよ俺は・・・。」
自嘲気味に呟く。
改めて自分の滑稽さに溜息が出る、それに逃げ出すとか随分なヘタレだなぁ俺・・・
もう一つ溜息をつく。
不意に声を掛けられた、
「おや、武道大会第四位の漆川義切選手がこんな所でどうした?」
顔を上げ、声の聞こえる方を見るとそこには見知った顔がいた。