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ユートがターレスを見付けるか見付けないかという時間帯、遂に二機のアタックボールが地表に激突。
修業をしていた天津飯にクリリンにヤムチャに餃子はすぐにも現場へと急行したけど、ピッコロと悟飯の場合は動く必要も無い。
スカウターにより戦闘力も位置も把握されており、一番の戦闘力を持っていたピッコロの元へサイヤ人が向かったからだ。
ビーデルは星聖衣を受け取る最終試験の為、すぐには動けなかったから多少の悟飯の戦闘力に差違はあったが、基本的には原典と同じ様に推移する。
サイヤ人――ベジータがナッパに言って栽培マンを出させ、六匹もの栽培マンが生まれ出た。
その間に到着する天津飯と餃子とクリリンとヤムチャの四人、栽培マンが六匹に此方が六人。
先ず、天津飯が栽培マンの一匹を片付ける。
トドメは全力を出さなかったと、ベジータに制裁をされてのもの。
次にヤムチャ。
上手く斃したのは良かったのだが、栽培マンが自爆をして【ヤムチャしやがって】の言葉が生まれた瞬間となった。
怒ったクリリンが氣による攻撃でベジータとナッパを含む、残りの栽培マンを一斉に攻撃。
何とか栽培マンは三匹を始末、躱した最後の一匹は悟飯を襲ったが普通に撃破してしまう。
本来ならピッコロが助けた場面だが、ユートによる修業が功を成したらしい。
そしていよいよナッパ、巨漢スキンヘッドに髭面な強面で、然しベジータには従う辺りそれでもナッパの方が弱いのだ。
だけど、やはりそれでもナッパはエリート戦士とされるサイヤ人。
戦闘力が千か其処らでは敵う筈もなく、天津飯は敢えなく左腕を叩き落とされてしまい、餃子が自爆攻撃を仕掛けるもまるで効果が見えなかった。
ナッパが攻撃に移る瞬間の隙を突くピッコロと悟飯とクリリン、原典とは違って悟飯も確りとナッパへと攻撃を仕掛けるが、やはり斃すには至らない。
天津飯の全生命力を懸けた気功砲すらも効かずに、天津飯は戦死してしまう。
とはいえクリリンが再々言っていた名前、【ソンゴクウ】に興味を持ったらしいベジータは、ソンゴクウがカカロットかと訊ねる。
クリリンが肯定をして、三時間だけ悟空の到着を待つと宣言、ナッパが暴走をしそうになるもベジータの一喝で止まった。
だが、無情にも三時間は過ぎてしまう。
テクニカルなクリリンが翻弄するが、圧倒的な差が埋まらないからどうにもならない。
尻尾を掴む作戦も弱点が克服されて失敗に終わり、気円斬も躱されてしまては万事休す。
だが、悟空の氣がやって来るのを感じたメンバーは喜色満面となる。
試しにスカウターで調べたベジータ、その数値は驚きの六七〇〇程。
原典より少し高い。
だけど多少の差違は此方にもあるが、結局は原典の通りにピッコロは死亡。
悟飯の魔閃光もナッパには通じず、踏み潰されそうになっていたが……
「な、なにぃ!?」
白銀の鎧をレオタードの上から身に付けた黒い髪の少女が、悟飯を救っていて少し離れた位置に浮かび、大地に降りて悟飯を地上に立たせてやる。
「ル、ルーシェさん?」
ユートと共にパオズ山で暮らしていた仮面の少女、故に悟飯はそのルーシェの事を数年前から……物心がつく頃から知っていた。
よもや、十年も先に同一存在と出逢うなどとは流石に思いもよらないが……
「ゴメン、試練が長引いちゃって……」
「あ、いえ」
悟空も来ていたがすっかり登場シーンを持っていかれて、目を瞬かせながらもクリリンと合流する。
ビーデルも同じく合流。
「久し振りです悟空さん」
「そうだな、ルーシェ……悟飯を助けてくれてサンキューな?」
「いえ、私がもっと早くに試練を終えていれば、他の皆さんも或いは死ななかったかも……と思うと」
まるで自分が居ればというある種の傲慢な物言い、だけどビーデルは確信をしていたのだ。
二人のサイヤ人を視て、少なくとも巨漢の方ならば自分は斃せるのだと。
「おい、ベジータ。あいつの戦闘力は幾つだ?」
「五〇〇〇程だ!」
「なっ!? そいつぁ、何かの間違いだ! そりゃあ機械の故障だぜ? カカロットが六七〇〇だとか女が五〇〇〇だとか?」
此方にやって来る中で、スカウターが感知したのは悟空のもののみ、ビーデル――ルーシェの戦闘能力は未知数だったのを、改めてベジータが計った結果出た数値が五〇〇〇。
然し、これは彼女の未熟な証でしかない。
「悟空さん、私があのおっきいのを斃します」
「やれんのか?」
「はい、小さい方はちょっと無理ですけど」
「判った、行ってこい!」
「はい!」
表情は仮面で見えない、だけどソコには決意に満ちたナニかが在った。
「てめえが相手かよ?」
「白銀星聖闘士ルーシェ」
「ナッパだ……」
名乗られたからか名乗り返してしまう。
粗野な乱暴者にしか見えないナッパだが、ギネ達みたいな下級戦士ではなく、一応はエリートの名家出身なのである。
サイヤ人な上に見た目の通り脳筋だけど。
グッと構えるナッパに対して自然体なルーシェ。
「構えねーのか?」
「これが私の構えよ」
「なら死ね!」
襲い来るナッパ。
その拳がルーシェを襲撃するが、フワッと華麗なる跳躍を魅せつつ一回転しながら背後に廻り……
「はっ!」
延髄蹴りを喰らわす。
「ガハッ!?」
前のめりに倒れたナッパだがすぐ起き上がる。
「くっ! この野郎!」
今度は右手に集めた氣を投げ付けてきた。
「ふっ!」
ルーシェは力に逆らわず両手を前に出し押し返すのではなく、氣砲を廻る様に動いて後ろに往なす。
ドガァァンッ!
往なされて後ろへ飛んだ氣砲は地面に落ちて爆発、その威力を物語る破壊力を見せ付けた。
「星聖衣が有るとはいえ、やっぱりまともには受けたくないわね」
聖衣自体はあの程度ではビクともしないのだけど、如何せん生身の部位は普通にダメージを喰らう。
女性用故に、この星聖衣・鷲座は胸部、左肩、左腕とニーパット、腰部がパンツ状なパーツに右手首のリストリングに左腕の腕輪、首を護るネックガードに頭部のティアラみたいなヘッドギアという簡素な構成。
同じ白銀聖衣でも男用に比べて露出が高い。
あんな攻撃を受けたら、ダメージも入る。
戦闘力の内訳的に云えば速度特化、だから生身での防御力は低めなのだ。
「(まあ、小宇宙をちゃんと扱えてればナッパ程度の攻撃は効かないって言っていたけどね)」
然し、ユートは同じ様にこうも言っていた。
『このスカウター、コイツは氣を感知して戦闘力を計るけど、これに数値が大きく反映されるのは小宇宙を練れてない証拠だ』
五〇〇〇と大きな数値を記録したなら、ルーシェの小宇宙の燃やし方が中途半端だという事。
氣殺してないから小さめな戦闘力が出るのは当たり前にせよ、五〇〇〇は今のルーシェには大きい。
ユートなら素の状態でも可成り大きいが、ルーシェのこれは未熟だからだ。
仕方がない。
ユートは命懸けな闘いへ何度も身を置き、ユーキが曰く闘う度に傷付いた。
ハルケギニア時代の話だとはいえ、死に掛けたのも一度や二度ではない。
そんな蓄積された経験が転生により魂の格が上がる毎に力となり、今や神殺しの肉体という地球人としては破格な肉体と、神殺しでありながら修業による増力が確実に出来る特殊性が、ユートの今を支えている。
況してや、嘗て津名魅と接触した事により光鷹翼を展開可能な技能すら獲て、パワーアップをしていた。
その光鷹翼を任意に肉体の強化に使えるユートは、ちょっとした事では敗けたりしないだろう。
何より、ユートの目……【叡智の瞳】はある意味で既知外な能力だった。
だが、ルーシェというかビーデルは実戦なんて経験してはいない。
人造人間17号に殺され掛けたあれを実戦とは呼ばないし後は基本、模擬戦的にユートとの組み手をしていたくらいだった。
まあ、それは良い。
ルーシェとして偽名を名乗るビーデルは、ナッパと戦うに辺りアドバイスなども貰っていたし、戦闘力が実質的に一万程度とはいえ敗ける心算は無かった。
まず、ナッパの戦闘力は約四〇〇〇だから戦闘力という意味では敗けない。
だが、タフネスなナッパはビーデルの速度特化型が斃すには時間が掛かる。
そしてサイヤ人は変身型の宇宙人で、満月によって放たれる一七〇〇万以上のブルーツ波を目で受けて、それが尻尾に反応する事で十倍の戦闘力を持つ大猿に成る事が出来る。
ピッコロが悟飯を鍛えていた際、月を破壊しているからすぐに変身は出来ないのだが、ベジータなら人工的に月代わりのパワーボールを作り出せるから時間を掛けるのはヤバい。
そうなる前に動けなくなる程度には傷付けろと。
それでベジータが始末をしてくれるし、上手くやってルーシェが斃してしまうのも良しだ。
「ハァァッ!」
ラッシュラッシュと素早い動きでパンチを繰り出すルーシェだが、やはり速度特化型でパワーには難があるのか、ナッパも受ければダメージを負うが単純な拳の一撃では痣がやっと。
「はん、こそばゆいぜ!」
ドゴン! 隙を突かれて蹴りを喰らった。
「キャァッ!」
悲鳴を上げて吹き飛ぶ。
岩にぶつかって止まったものの、その岩を破壊する威力で飛ばされたルーシェなだけにダメージを負う。
聖衣で防御力を上げていなければ、致命傷ではないにしても拙かった筈。
ルーシェの身体能力的な内訳――パワー:C スピードS ディフェンス:E エネルギー:D 小宇宙:Cとなる。
与えられた白銀星聖衣に反して、ルーシェの小宇宙は青銅聖闘士の中級程度。
初期の星矢よりマシといった処でしかない。
「くっ!」
しかもパワーが無いからナッパに大したダメージを与えておらず、やはり隙を突いて必殺技を繰り出すより他は無さそうと判断。
再び構えた。
戦闘力の数値は近い場合だと絶対とは云えない。
仮にフリーザくらいなら速度特化型だったとして、単純な攻撃力だけでナッパをアボン出来るのだろう。
だがルーシェでは無理。
だから先ずはスピードで翻弄している。
「チィッ、ちょこまかと動きやがって!」
ナッパはタフネスでパワーもあるが反面、スピードはそれ程に速くはない。
勿論、今より戦闘力が伸びれば伴ってスピードも上がるのだが、今のスピードはルーシェに遠く及ばない程度だった。
「はっ!」
「ぐっ!? さっきよりも威力が大きいだと?」
明らかにパンチ力が上がっているのに驚くナッパ。
「これはいったい?」
クリリンもそんな変化に戸惑いを覚えていた。
「スピードだ」
「スピード?」
悟空の回答に首を傾げる悟飯だったが……
「そうか! スピードを乗せた一撃だから威力が増してるんだな!?」
「ああ、クリリン。それで間違いねぇ」
クリリンがその答えに辿り着いた。
ルーシェは己がスピードを増し、それを拳に乗せて殴り付けている。
速度が増せば威力だって上がるのは、パンチ力というのが質量に加速度を相乗させたものだから。
勿論、キック力も同様。
今のルーシェはマッハに等しい速度で動き回って、その速度をパンチに乗せる事で威力を上げていた。
とはいえ、元々が軽い為かタフなナッパにはやはり大して効いていない。
マッハに等しいとはつまりは亜音速、未だにルーシェの実力が青銅聖闘士並と云われてもおかしくなく、だが然し最大速度はそれでも音速にまで達した。
今は様子見だ。
然しながらナッパの隙を遂に突く機会を得る。
「こ、この野郎がっっ!」
幾ら大して効かないとはいえ、やはり一方的に攻撃を受けるのは面白くなく、大振りで掴まえようと動いてきたのだ。
「ふっ!」
ナッパの二の腕を跳躍の起点とし、更に右脚を伸ばして左脚は曲げた状態に、右足の爪先を立て形で蹴りを放った。
「
白銀聖闘士・鷲座の魔鈴が得意とした必殺技。
空中へと跳躍をして速度を自重に乗せた重たい一撃を爪先の一点へと集約し、急所を容赦無く撃ち貫くという無慈悲な技。
間違いなく急所を穿たれたナッパ。
「ゴハッ!」
血を吐き出してフラフラになってしまう。
「ち、畜生がぁぁぁっ!」
だが、やはりタフネスなだけあったか未だに生存をしていた。
「くっ、まだ斃せない!」
こうなれば仕方ないと、ルーシェは跳躍ではなくて舞空術――飛行で天高く舞い上がり、今度はまるっきり空中を蹴る様に足の裏を宙に叩き付け、先程よりも高速でナッパへと向かうと更に回転しながら鷲星閃光の形を執る。
「
虚空瞬動の反動と回転を利用して威力を弥ました。
これが鷲座のルーシェの現時点での最高の必殺技、それは間違いなくナッパの心臓すら貫いた。
「ば、かな……ゲフッ!」
信じられないとばかりに目を見開き、ナッパはフラフラと千鳥足でよろけると仰向けに倒れ伏す。
その目にはもう光は宿しておらず、左胸に空いた孔から大量の血を流しながら絶命していた。
「ハァ、ハァ……」
殺った。
今度こそ殺ったのだ。
初めての殺人に今更ながら震えがくるけど、それでも大事な最初の一歩を確かに踏み出したルーシェ。
その後、ベジータ戦に関してはほぼ歴史通りに推移をしたのだった。
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ベジータ戦も終了です。次はナメック星行きとなりますが、ユート自身はといえばクウラを目指します。