珍しくアニメ一期とWeb版数話の知識で書いてみた噺だったり。
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「ようこそ死後の世界へ。私は貴方に新たな道を案内する女神です。ユート・スプリングフィールドさん、貴方は本日午後一五時四八分に亡くなりました。辛いでしょうが、貴方の人生は終わったのです」
銀髪の女性が慎ましやかな態度で告げてきた。
「此処は?」
「貴方がこれから逝く場を選ぶ空間です」
「成程……」
死んだ覚えが無いのに、何故か死んだ扱い。
「そちらは名前を知っているみたいだが、だけど僕は貴女を識らないんだよな。円滑なコミュニケーションを取るなら、互いに名前を知らないといけない」
「そうですね、私の名前はエリス。本来はこの場での仕事は担当をしてませんでしたが先日、アクア先輩が〝ちょっとしたトラブル〟に見舞われまして、天使が代行をしていたのですが、少し私が更に代行をしている訳ですね」
「そうか、ならエリス……死後の導きをしているって事で良いんだな?」
「はい」
ニコリと微笑む様は確かに女神然とした美しさで、『ちょっと欲しいな』とか思わせる容姿。
「それで貴方は全てを忘れて転生をするか、天国で暮らすのかを選んで下さい」
基本的に前者は論外で、天国というのも胡散臭い。
「それだけなのか?」
地獄は無いのか? という意味だったが……
「いえ、第三の選択肢も」
「ほう?」
「異世界転生です」
女神エリスが一番のお勧めと謂わんばかりに不自然な胸を張り、エヘンとこの『異世界転生』を話す。
「異世界転生……ね」
そう、不自然な胸だ。
異世界転生に興味を持った風を装いつつも片目を閉じて、それこそ不自然にはならない程度に女神エリスの姿を見つめてみた。
(パッドか詰め物かな? 多分だが貧乳を誤魔化している感じか……)
数多の美女・美少女の裸を堪能してきたユートなだけに自慢にもならないが、ある程度は確りと視て判断が出来てしまう。
女性らしいコンプレックスなのだろうが、似せ乳で誤魔化すより貧乳なら貧乳で堂々とした方が、ユートにとっては好ましい。
まあ、女性のおっぱい的コンプレックスは男にとっての分身と似ている。
大きければ良い訳でも無いのだろうけど、ミニマムでは相手を満足させるにはきっと足りないから。
「じゃあ、異世界転生で」
「判りました。では転生に当たり特典を一つだけ与えましょう」
「
「はい。この中から選んで下さい」
其処にはザ・チートとか呼ばれる特典程ではない、だが持てば確かに有益そうなものが存在した。
武装の類いなら【バルムンク】とか【グングニル】とか【エクスカリバー】、才能なら【完全記憶能力】とか【強魔力】とか【成長率三倍】とかだ。
何でも異世界転生させる理由は、その異世界で魔王が暴れていて死者が転生を厭うからであり、この侭では魂の流出で世界の人口が激減するから、異世界からの転生者に力を与えて補填しつつ、魔王退治を促しているのだとか。
魔王を退治したら更なる御褒美に、一つだけ願いを叶えるらしけど?
だが然し、ユートならば魔剣や聖剣の類いを造れてしまう上、今更の才能系に何ら魅力を感じない。
「お!」
ソコでポーンと閃いた。
「よし! 判った」
「はい、では選んだ特典を教えて下さい。それに沿って貴方に渡しますから」
ユートはズビシッ! とばかりにエリスを指差し、そして口を開く。
「君に決めた!」
「……はい?」
何を言われたのかは理解もしたが、まさかの内容にエリスは首を傾げていた。
そして脳内に浸透をした今の科白に……
「はいぃぃぃぃっ!?」
絶叫で応えたと云う。
「待って待って! そんなアクア先輩みたいな話を出されても!?」
だけど現実は残酷な天使のテーゼである。
帰ってきた代行天使が、何とユートの主張を認めてエリスを魔法陣に。
「ま、待ちなさい!」
「まあ、前例もありますからエリス様も諦めて下さいませね?」
「ちょっ!?」
正にアクア先輩という、見事な前例が有った。
そしてユートとエリス、一人と一柱はこの空間から消えてしまう。
天使はそれをニコニコと見送っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アクセルの街。
それは地球などでなく、明らかな異世界。
何故なら、地球には決して存在しない人種が普通に歩いていたから。
獣耳やエルフである。
「ファンタジー世界だな。ハルケギニアやシグザール王国みたいな、中世ヨーロッパ的な世界観か」
「ハァ……」
溜息を吐くエリスだが、いつの間にか服装がゴテッとしたローブから、まるで冒険者のシーフっぽい姿に変わっていた。
「やる気満々じゃないか」
「違うわよ! 私はこうして下界に降りて冒険者とかやってたからね。今の私はエリスじゃなくクリスさ」
口調も変わっている。
「じゃあ、クリスと呼べば良いんだな?」
「そ、やっちゃったもんは仕方がないし……取り敢えず君はどうしたい?」
「どう……とは?」
「私としては魔王を退治して欲しい。勿論、それが成されれば願いを一つだけ叶えて貰えるんだ」
「ふーん」
余り興味も無い。
とも思ったが……
「どんな願いでも?」
「うん、どんな願いだって可能な限りは」
どんな願いでも可能な限りはとなると、ユートが思い付いたのはやはり。
「なら、魔王を討った暁にはエリス……今はクリスだったか、君を完全に僕だけのモノに出来る訳だ」
「ふぇ?」
カーッ! と顔を真っ赤に染めたクリス。
神様なら少なくとも百歳を越えていそうなものなのだが、どうも可成り初心な反応を示してくれる辺り、処女なのかも知れない。
別に処女でなくとも構わないが、それはそれで美味しいから文句も無かった。
「その……」
モジモジしている。
「女神を特典に出来たし、〝可能な限り〟の願いには入りそうだ。女神エリスも美女だったけど、クリスも可愛らしいから旅するとかなら楽しめるね」
「う、うん……」
処女じゃなくても純粋なタイプか? シーフらしいフラッパーガールな口調ではあるが、見た目も可愛いタイプだから目の保養にもなるし、願いを叶えるに当たって彼女を自分の世界に連れ帰るのも良いだろう。
「さて、アクセルの街とか云ったか……」
「初心者冒険者の集う街。冒険者ギルドも在るから、まずは其処へ」
「ゲームで云えば最初の街って訳だ。確かに普通なら素人を行き成り無理ゲーなラストダンジョンに送り込んでも、折角生き返らせたのに死人をわざわざ量産する様なもんだからな」
「そうだね」
「案内は頼めるか?」
「私は君の選んだ特典だ。神の力は使えないけどね、一応は私も地上で盗賊とかやってるのさ。冒険者ギルドの場所も心得てるよ」
クリスが先導してユートは冒険者ギルドに向かう。
それなりに大きな建物、文字は読めないが恐らくは【冒険者ギルド】とか書いているのだろう、人の出入りもそれなりに激しい。
「よし、アクア先輩は居ないね……」
何故か無駄に盗賊としての技能らしきを使い、中を確認したクリスは何やら頷きながらちっぱいを撫で下ろしていた。
「どうした?」
「実は、君と同じ特典を選んだ少年が居てね。前任者の先輩が此方に居るんだ」
「会いたくないのか?」
「今は出来たら……」
「で? 居なかったのか」
「うん、どうやら出ているみたいだ」
「じゃあ、今の内だね」
ユートは冒険者ギルドに入り、女性が立つカウンターへと向かった。
「いらっしゃいませ」
女性が丁寧に挨拶をしてくれる。
ちょっとおっとりとした感じで、金髪にウェーブが掛かって胸かなどはち切れんばかりに大きな美女。
三つあるカウンターでも一番の容姿だろうか?
それを見たクリスが自分の胸元を凝視、パンパンと哀し気に叩いている。
「それで今日は如何されましたか?」
「冒険者になりたいから、登録を頼みたいんだ」
ユートはハルケギニアの時代、自らダンジョンを造った挙げ句に冒険者ギルドを創設しており、当然ながらこんな事にも慣れているものだった。
「ギルドに登録となりますと登録手数料に千エリス、お金が掛かりますが宜しいですか?」
「いっ? 参ったな。此方の通貨なんざ持ってない。どっかで貴金属なり宝石なり売って金を作るか?」
ユートの創設したギルドでは登録無料、そもそもが傭兵達が食い詰めない様に冒険者ギルドを創った訳だから、誰でも登録が可能な様にしていたからだ。
とはいえ、ギルドカードの再発行には五スゥばかり掛かる仕様だったが……
因みに、この世界に於けるカードは冒険者カードと呼ばれているとか。
「何なら貸すよ?」
「良いのかクリス?」
「君が冒険者にならないと意味が無いし、千エリスくらいなら子供のお小遣いのレベルさ」
「サンクス、仕事で報酬が入ったらすぐ返すわ」
「別に気にしなくても良いのに……」
「親しき仲にも礼儀有り、特にお金関係は友情も愛情も壊しかねない。きちんとシビアに……だよ」
「う、うん」
また仄かに頬を染めているクリスだが、『愛情』に反応をしたのだろう。
どうもクリス……というか女神エリスはユートからの『自分のモノにする』とか宣言され、可成り意識をしてしまったらしい。
「じゃ、登録料」
「確かに。それでは早速、登録をしてしまいますね」
受付嬢が何やらカードを取り出した。
「それではこちらのカードへと触れて下さい。それで貴方の潜在能力が分かりますので、潜在能力に応じてなりたいクラスを選んで下さいね。選んだクラスによって経験を積む事で様々なクラス専用スキルを習得が出来る様になりますので、その辺りも踏まえてクラスを選んでください」
「了解」
やはり手慣れた感じで、ユートはカードに触れた。
カードに何やら書き込まれているらしい。
「はい、結構です」
終わったらしく受付嬢がカードを読み取ると……
「――え?」
何やら驚愕の表情となりカードを凝視して、次いでユートの顔を見つめると、再びジッと冒険者カードを見遣る。
「そ、そんなまさか?」
「どうした?」
「軒並み数値が異常です。何これ……有り得ません」
どうやら普通とはちょっと違ったみたいで、受付嬢からすれば驚愕しかないと云う事みたいだ。
まあ、ユートはそもそも生まれてから聖闘士の修業をしていたし、異世界では神殺しの魔王になった。
唯でさえ鍛え抜かれていた肉体が、更なる強化を成されたからには闘氣や魔力や霊力やPSYONなどで強化せずとも、常人なんて遥かに越えた能力を持つ。
恐らく素の能力だろう、だがそれでも高い数値なのは寧ろ当然。
「筋力に俊敏に知力に頑強に魔力に魔力保有用量に、器用や幸運まで有り得ない数値。特に魔力保有用量なんて高レベルなアークウィザードの数十倍以上?」
確か、カンピオーネとは常人の数百倍の呪力を誇っていたし、それもまた当然の帰結といえよう。
「これならクラスは正しく上級クラスすら選び放題、はっきり言って何にだってなれますよ!」
受付嬢の言葉にクリスも驚愕を禁じ得ない。
(彼、本当に魔王を討ってしまうかも? そうすると私は御持ち帰りされる?)
ユートのモノに……というのがより現実味を帯び、真っ赤になりながら成り行きを見守っている。
アークウィザード。
クルセイダー。
ルーンナイト。
アークプリースト。
エレメンタルマスター。
ソードマスター。
上級クラスも可成り数が有るらしく、一部だけ抜粋して貰ったら出るわ出るわといった感じだ。
「ルーンナイトは魔法の使える騎士、若しくはソードマスターでも……」
魔法なら自分で使える訳だし、ルーンナイトにする意味は余り無い。
「っていうか、能力値なんかも違ってくるんだろうけどさ、クラスって何か意味があるのか?」
「クラスにはスキルが獲られるんだ」
「スキルか」
「スキルポイントがある筈だよ? それを用いて各々のクラススキルを習得するのさ」
「ああ! この999ってヤツか?」
「ブフッ! はぁ?」
数値がおかしい。
「普通は30〜40だし、70〜80も有れば天才と呼ばれるんだけどな」
文字通りの桁違い。
これならソードマスターのスキルは全て取れる。
ユートはクラスをソードマスターにし、全スキルを習得してしまった。
それでも存分に余る。
「レベルが1上がったら、スキルポイントも10増えるんだけど……」
もう不要だろう。
「さて、登録も終わった。仕事をしてとっととクリスに千エリス返さないとな」
「……ふぅ、そうだね」
ユートはクリスを伴い、仕事を記す掲示板を見に行くのだった。
尚、本来の主人公であるサトウカズマと女神であるアクア先輩とやらだけど、この時点では何故か肉体的な労働をしていたとか。
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連載予定の無い噺だし、Web版を最後まで読んではみますけどね。