【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 本当はめぐみんを主軸にする予定が、意外と文字数を喰ったので変更。





この素晴らしい世界に祝福を!【魔を滅する転生祝】っぽい噺――この盗賊な女神様に祝福を!

.

「それにしても、ユートは本当に強いんだね」

 

 クリスは冒険者カードを見せて貰いながら呟く。

 

 数値が有り得ない。

 

 それはユートが子供の頃から聖闘士となるべく修業を続け、頑強な肉体を作り上げてきた上にそれを更に強化する神殺しの魔王となったのが主な原因。

 

 しかもこれが素の力で、更に魔力や闘氣などで強化される訳だ。

 

 どうやらこの世界でも、嘗て関わったあの世界みたいに、エネルギー強化という概念が無いらしい。

 

 基本的にレベルとスキルに任せた戦い方みたいだ。

 

 まあ、バフやデバフなんかのスキルは在るらしい。

 

 此処は地球じゃないから小宇宙は使えないのだが、素の戦闘力に闘氣を乗せれば基本的には強い。

 

「さて、依頼はどんなのにしようかね?」

 

 色々と在る。

 

「クリス」

 

「うん、何かな?」

 

「依頼を複数受けるってのはアリなのか?」

 

「そりゃ、熟せるのなら。けど期限が過ぎたりしたらあれだし、普通は受けようとは思わないよ?」

 

「ふむ」

 

 移動時間や実際に依頼を遂行する時間を鑑みれば、複数を受けるのは危険という事もあるし、確かに一つ一つを確実に着実に行った方が良いのだろう。

 

 特にアクセルの街とは、駆け出しの冒険者が集った街らしいし、どれだけ高いレベルでも30か其処らであるとか。

 

 というか、30ならDQでもIIIくらいなら魔王を斃せるレベルである。

 

 大魔王は無理だけど。

 

 この世界でもレベル30は既に駆け出しと呼ぶには無理がありそうだけれど、クリスが曰く何故かそんなレベルの〝男〟が普通に暮らしているらしい。

 

 うん、何故か……ね。

 

「なあ、クリスはアクセルや周辺の地図を持っていないのか?」

 

「持ってるよ」

 

 クリスは地上に降りてはシーフ――盗賊職として、冒険者ギルドに登録をしながら動いていた。

 

 盗賊なればこそ情報というものを軽視しないのか、マップの一枚や二枚くらいは所持していたらしい。

 

 ユートはマップと睨めっ子しながら依頼書を見て、十枚ばかり剥がして一番の美人受付嬢――ルナさんに持っていった。

 

「えっと、本気でこれ全部を受ける心算ですか?」

 

「まあね」

 

「確かに貴方のステータスは明らかにおかしいです。でも移動とか考えたら流石に無理があるかと……」

 

「大丈夫。マップを見て、近隣のを選んだから」

 

 確かに依頼書を見れば、依頼の場所が比較的に近いモノばかりだか、だからといって普通に移動をすれば一つ解決して次に行くとなれば二〜三日は掛かる。

 

 巨大蛙の討伐依頼だってそれなりに距離があった。

 

 持てる糧食や手に入れるモノ、それらを加味したら一旦は帰らなければならないだろうし、何より怪我や疲労をその侭に次の依頼に向かうのはマイナスだ。

 

「じょぶじょぶ、大丈夫」

 

「はぁ、受理します。ですけど無理はしません様に」

 

 こうしてこの世界に於ける冒険者仕事、初依頼を行うべくユートはクリスを伴ってアクセルの外に出た。

 

「で、どうするのさ?」

 

「いっちゃん近いジャイアント・トード討伐から行ってみようか」

 

「うん、判ったよ」

 

「じゃあ掴まって」

 

「うん?」

 

 掴まれの意味が解らず、クリスが小首を傾げる。

 

 何気に可愛らしい。

 

「良いから確り腕に掴まっていろよ?」

 

「わ、判ったけど……」

 

 女神様モードとは違い、上げ底をしていない薄い胸ながら、それでも仄かな脹らみを持ったそれわ押し付けて力の限り掴まるクリスを確認し、ユートは【力在る言葉】を言い放つ。

 

飛翔呪文(トベルーラ)

 

「ふぇ!?」

 

 別にレイ・ウイングでも良かったが、DQ系呪文は割と使うから馴染み深い。

 

 マップで確認した場所へ高速飛行した二人。

 

「キャアァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 行き成りの事で涙目となってしがみ付くクリス。

 

 腕に自己主張の少ない、だけどそれなりに柔らかく温かな感触が。

 

 とても心地好い。

 

 あっという間に着いた。

 

「此処がジャイアント・トードの棲息地か」

 

 確かに人すら丸呑みにしていまえそうな巨大な蛙が存在し、中には実際に呑まれている冒険者も居た。

 

 まあ、仲間に救出されてはいたけど。

 

「ハァハァ……まさか翔べるとは思わなかったよ」

 

 息を吐くクリスが言う。

 

「元々、持っていた魔法だからね。冒険者カードにも記載はされていないよ」

 

「……元々って」

 

 日本にそんな技能が在るとは思わなかったらしく、呆然と呟くしかないクリスであった。

 

「さて、ジャイアント・トードはどう屠るか……」

 

「ジャイアント・トードは肉も美味しいからね。始まりの街であるアクセルで、駆け出しの冒険者でも普通に食べれて、ちょっと固いけど味も良いから値段だって五千エリスで買い取って貰えるんだ」

 

「成程、報酬以外に美味しい取り引きか。それなら、丸々残した方が良いな」

 

 ぐちゃぐちゃになれば、恐らく買い取り金額も減額されるだろうから。

 

「ジャイアント・トード、五匹を三日で。それを四枚持ってきたから二十匹だ」

 

「また随分と……」

 

 この時期なら、ジャイアント・トードを仕留める事はある意味で容易い。

 

 数が居るからだ。

 

 勿論、駆け出しも駆け出しには厳しい相手であり、下手に近付こうものならばパクッと呑まれ、上手い事救出をされたとしてもヌルヌルな粘液塗れになる。

 

 だけど、ちょっと慣れた冒険者なら正しく美味しい獲物となるだろう。

 

 そもそもがそんなに強くはないし、その癖に報酬が一匹当たりで二万エリス、一匹の買い取り価格が五千エリス……つまり単純計算で一匹を綺麗に仕留めたら二万五千エリスが入る。

 

 依頼書の通りに二十匹を仕留めれば五十万エリス、何とも美味しい依頼だ。

 

「で、どうやって仕留めるのさ?」

 

「囮作戦」

 

「……誰が囮を?」

 

「仕留めるのは僕だから、当然ながら囮はクリス」

 

「だよねぇ」

 

 ダラダラと汗を流す。

 

「一気に十匹くらいトレインしちゃって」

 

「トレイン?」

 

「列車って判る?」

 

「地球に在る乗り物だろ? それくらいは知ってる」

 

「モンスターを引き連れて走る様が列車っぽいから、列車(トレイン)と呼ばれてる訳だね」

 

「成程……」

 

 ユートがプレイしていた【英雄譚(インフィニット・ブレイバー)】と云う、VRMMO−RPGなんかでも割と見掛けたもの。

 

 まあ、あれは擬似的なのだったりするが……

 

「取り出したるは魔導具ヘイトスプレー、吹き掛けると使用者が決めた相手……モンスターや獣のヘイトを高めるアイテムだ」

 

 プシュ! 吹き掛ける。

 

「そんなピンポイントな物が必要な事なんて!?」

 

「意外と使えるんだが」

 

 ユートはクリスを抱き上げると……

 

「ちょっ!?」

 

「それ!」

 

 ジャイアント・トードの群のど真ん中に放った。

 

「ひあぁぁぁぁっ!」

 

 猛ダッシュ!

 

 スプレー効果かジャイアント・トードは一直線に、クリスへと向かってピョンピョンと跳ねている。

 

「わぁぁぁぁっ!?」

 

 十匹をトレインするのは非常にアレだが、何とかかんとか成功して駆けた。

 

 呑まれたらヌルヌル粘液塗れとなるのだし、決して捕まる訳にはいかない。

 

「まあ、それはそれで……クリスのそそられる艶姿が見れるんだけどね」

 

「絶対に逃げ切る!」

 

 女神でありフラッパーガールを気取る盗賊職だが、それはそれとして女の子としての恥じらいから。

 

「良し、その侭で僕の横を駆け抜けろ!」

 

「い、良いんだね?」

 

「バッチコイ!」

 

 ダッシュダッシュ!

 

 端から見れば女を捨ててるレベルな逃げっ振りで、クリスはユートの横を通り抜けた。

 

 それを追ってくるジャイアント・トード、ユートが既に完成させていた呪文を【力在る言葉】と共に敵へと解き放つ。

 

即死呪文(ザラキ)!」

 

 ビクッ!

 

 全てのジャイアント・トードが一斉に痙攣したかと思うと、目を白く濁らせながらバタンと倒れた。

 

「え、え?」

 

「ザラキ。死の言葉を投げ掛けて相手の血液を瞬時に凝固させる呪文。当然ながら相手は死ぬ!」

 

 ユートの説明に目を剥くクリス、あの部屋で此方側の世界での転生を仕事としていた女神としては、凶悪な呪文だとも思ったのかもしれない。

 

 とはいえ、このザラキは神に仕える僧侶や神官とかが使用者だったり。

 

「さ、もう十匹程トレインしようか?」

 

 にこやかな笑顔を向け、クリスの肩を軽く叩く。

 

「鬼だ……」

 

 結局、クリスは再びトレインに挑戦した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 二日間の日程で依頼を全て消化したユートとクリスのパーティ、冒険者ギルドに戻ってルナに依頼料精算をして貰う。

 

「では、ユートさんパーティに支払われる依頼料――一二〇〇万エリスです」

 

 初心者の筈のユートが、よもや行き成りこれだけ稼ぐとは思わなかったのか、引き攣った笑みを浮かべながらルナはお金を渡す。

 

 ファンタジーな世界では珍しく、紙幣が完備されているから全部が紙幣だ。

 

 一二〇〇万エリスとなれば当然だろうが……

 

「本当に良いのかい?」

 

「寧ろ此方の科白だろう。一割で良いのかってさ」

 

 二人で山分けにしようとしたら、クリスは一割で構わないと言ってきた。

 

 つまりは一二〇万エリスで良い……と。

 

「実働時間を鑑みれば充分過ぎるよ」

 

 ジャイアント・トードの討伐は走っただけであり、トドメはユートがザラキで一気に殺している。

 

 それ以外も多少の手伝いはしたが、どれもユートが個人でやれた事を無理矢理にクリスへ振った感じだ。

 

 それでも二日間の稼ぎが一二〇万エリス、ボロいとしか言えないレベル。

 

 日本円とイコールだし、日当が六〇万エリスだとかどんな怪しい商売だか?

 

「ま、スタートダッシュとしては上々かね?」

 

 夕飯をクリスと共に摂りながら、御満悦といった感じで呟いたユート。

 

 ユートもスタートダッシュで大金を獲はしたけど、同じ調子でやる心算なんぞ毛頭無かった。

 

 飽く迄も衣食住に困らない程度に稼ぎ、後は悠々自適に冒険者をすれば良い。

 

 そして時が来たと判断をしたその際には、ユートの手で魔王を抹殺してやる。

 

 それで女神エリスは晴れてユートのモノに。

 

(とはいえ、クリスに手はまだ出せないからな。さて……どうしたものかね?)

 

 娼婦でも買うか? 金は取り敢えず有るのだし。

 

 まあ、女神が目の前に座る席で考える事でも無い。

 

 食事をしながらクリスを見れば、美味しそうに蛙肉を頬張る姿が可愛い。

 

 食べてるのが蛙肉なのがシュールだが、食用蛙なんて地球にも在ったのだし、エスカルゴなんて食用蝸牛だって存在している。

 

 ユートは食べた事なんて無いが、取り敢えず今現在はこうしてジャイアント・トードを食っていた。

 

 因みに、エスカルゴとは一応だが高級食材。

 

 だからか、金持ちな家に嫁に行くかも知れなかった緒方分家筋とか、食べた事がある者も多いとか。

 

 女の子限定で。

 

「いや〜、ジャイアント・トードは少し固いんだけど安いし美味しいよね」

 

 【始まりの街】とも云えるアクセル近辺のモンスターなだけに、然して強い訳でもないからそれなりに慣れた冒険者なら食われたりせず、コンスタンスに狩れる実に初心者向けだ。

 

 ジャイアント・トードを丸々卸せば、五千エリスで買い取って貰える訳だが、日本円で五千円と考えると余り効率は良くない。

 

「淡白であっさりした味わいが良いよねぇ」

 

 地上では飽く迄も盗賊職のクリスで通しているが、蛙を口に入れて喜ぶ女神様と考えたら少し笑える。

 

 お酒で後味も消した二人は今後について話し合う。

 

「私さ、地上で活動してる時は相棒と動く事が多いんだけど……連れてきて大丈夫かい?」

 

「相棒?」

 

「ん、勿論だけど女だよ」

 

「役には立つのか?」

 

「えっと、囮役なら嬉々としてやってくれるよ」

 

 目を逸らしながら言う。

 

「囮役を? 素早いタイプか硬いタイプか。クリスが疾さだから防御型かな?」

 

「うん、硬さには定評があるからね。多少の無茶だって生き残れるさ」

 

「攻撃に関しては?」

 

 更に目を逸らすクリス。

 

「まあ、取り敢えず面接をしてみようか。連れて来るって事は僕は待ってりゃ良いのか?」

 

「そう。ああ、折角だからユートも魔法職を勧誘したらどうかな?」

 

「ギルドでか?」

 

「そそ、ひょっとしたら手が空いてる魔法職も居るかも知れないし」

 

 魔法は便利なものが割と在るし、手透きな魔法職が早々と居るとも思えない。

 

 だが、ソードマスターのユートにシーフのクリス。

 

 ユートは普通に魔法とか使えるけど、専門職を入れるのもアリだと考えた。

 

「判った。アークウィザードやアークプリースト辺りが居れば勧誘しよう」

 

「流石にそれは難しくないかな? まあ、選別とかは任せるから」

 

 クリスはギルドを出て、素早く街中へと溶け込む。

 

「本当にシーフなんだな」

 

 女神モードも清楚で綺麗だったが、盗賊モードだとフラッパーで可愛らしい。

 

「さて、僕も魔法職を捜してみようかね」

 

 呟きつつ立ち上がろうとすると……

 

「あ、あの!」

 

 明らかに女の子の声で、話し掛けられた。

 

「? どちらさん?」

 

「魔法職を捜しているみたいなので、私なんてどうでしょうか?」

 

 見れば左目には五角形で十字が刻まれた金の縁取りに赤い眼帯を着けており、紅いローブに黒いマントにトンガリ帽子な魔女っ子の服装で、胸は下手をすればクリスより無さそうな小さい少女が立っていた。

 

 十二歳〜十四歳か?

 

 左手には赤い宝玉が付いた杖、確かに少女は魔法職らしい姿をしている。

 

 右目は血の如く紅。

 

「我が名はめぐみん……、アークウィザードにして、最強の攻撃魔法である爆裂魔法を操る者!」

 

 決めポーズを取りつつ、自らの名前を名乗った少女――めぐみん。

 

 ユートは思う。

 

 この娘はきっと十四歳に違いない……と。

 

 

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