【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 【偽りの仮面】を書いたらこうなったかも? という内容です。





うたわれるもの【魔を滅する転生白】っぽい噺――大将軍ユートの無慈悲な戦

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 ヤマトによるトゥスクルへの侵攻、それは彼の國の出身であるクオンに衝撃を与えるには充分過ぎた。

 

 『あの人』に相談したくて捜したが、普段から侍らせている双子と共に姿を消しており、相談なんて出来ない侭にハクに付いていくと決めるしかない。

 

 シャッホロ國を経由し、食糧をムネチカ達が居るであろう本陣に運ぶ。

 

 それが右近衛大将であるオシュトルから受けた任、ハクも相談がしたくて捜したのに、ユートは一向に見付からなかった。

 

「やっぱり、あの人は」

 

 シャッホロの皇にして、ヤマト八柱将が一人でもあるソヤンケクルに船を出して貰い、ハクは仲間達と共に船上の人となる。

 

 見付からないユートと、何故かユートに付き従っていた双子の少女、クオンは双子は兎も角としてユートの居場所には一ヶ所だけだが心当たりがあった。

 

「なあ、クオン」

 

「な、何かな? ハク」

 

 シャンとしていればそれなりな顔立ちなクセして、何処かしらお惚け顔な所為で損をしている青年ハク。

 

 クオンがクジュウリに在った未だに生きていた遺跡で見付け、その後は保護者となって一緒に歩んだ彼、クジュウリでユートも合流して、帝都でオシュトルの隠密となって働いていた。

 

 ウズールッシャとの戦に駆り出されたユートだが、その時は帝からの招致を受けて普通に出掛けている。

 

 クオンは識らないけど、双子はこの際の密約みたいなもので、完全にユートの従者となっていたり。

 

 本来、ユートの動きには同調しない立場だった筈なのが、付いていったというのが正にその証。

 

「エントゥアも居なかったしさ、ユートの居場所にはクオンが心当たりとかあるんじゃねーか?」

 

「それは……うん」

 

 エントゥアはウズールッシャを滅ぼした際、何故か戦の帰りにユートが連れてきた美しい女性。

 

 クオンは『またか』とか思ったが、エントゥアの瞳が何やら重たいモノを背負っていた気がして、取り敢えず隠密の方で受け容れる事となる。

 

「何処だ?」

 

「多分、トゥスクルかな」

 

「トゥスクル……か」

 

「きっとその内に現れると思う、あの人はトゥスクルの要職にあるから」

 

「それって、自分達の敵としてって事なのか?」

 

「うん。だからハク、先に言っておくかな。あの人と出会ったら戦わないで!」

 

「どういう事だ? そりゃ自分も仲間だから戦いたくはないが……」

 

「あの人は敵対したら容赦なんてしないかな! 仮に(わたくし)だったとしても刃……拳かもだけど……向けて来るから!」

 

「クオンにも?」

 

「先のウズールッシャ戦、敵対者はウズールッシャの兵だけでなく、本来ならばヤマトの民だった剣奴でさえ情け容赦無く葬ったのは伊達じゃないかな!」

 

 ウズールッシャとの戦争では、オシュトルから依頼を受けた訳でもないのに、何故か参戦をしていた。

 

 これには、ユートを慕う少女達も驚きを禁じ得ず、そして視てしまったのだ。

 

 一度だけチャンスを与えるくらいはしたが、人質の所為でウズールッシャ側に与するしかなかった剣奴(ナクァン)を容易く消し、ウズールッシャの兵も腕を消し飛ばし、倒れたら脚を踏み付けて頭を踏み砕くという徹底的な殺戮。

 

 尤も、情け容赦無い殺戮という意味では八柱将や、左近衛大将ミカヅチだって変わらないものだが……

 

「あのタタリすら滅ぼせるユートが敵……か?」

 

「間違いないかな。あの人はトゥスクルを護るべく、ヤマトを離れたと思うの。カルラ姉様やトウカお母様の様子から、きっと間違ってはいないかな」

 

「あの二人の……」

 

 カルラとトウカの二人、白楼閣の女将と女子衆として働くが、戦いに長けている女傑なのは判る。

 

 クオンの御気に入りだと見做されたか、ハクは酒宴に招かれた事もあった。

 

 クオンは姉様やお母様と呼ぶのだが、元より彼女はとある理由で周囲から可愛がられており、『父親』だと呼ぶ相手は三人も居たりするし、お母様やお姉様は更に何人も居るのだ。

 

 尚、姉妹で母と姉という全く別な呼び方も普通。

 

 例えば、ヤマトに訪れた大使なアルルゥとカミュにはそれぞれ実の姉が居たりするが、この二人を姉様と呼ぶクオンも姉の方の事はお母様と呼んでいる。

 

 また、原典とは違っていて現トゥスクル皇オボロは『オボロ父様』と呼んで、始祖皇ハクオロは『ハクオロ父様』と呼び、実父に対しては『お父様』と呼ぶ。

 

 オボロ皇は未婚だけど、ハクオロは一応だがクオンが母と呼ぶ一人と婚姻関係にあり、封印されている身ながら父親であると認識をしていたからだ。

 

「確かに強かったけどな、俺らが一斉に掛かれば案外どうにかならんか?」

 

「ならないかな」

 

「うげ、即答かよ!?」

 

 にべもなく即答されて、ハクはげんなりとした。

 

「あの人に常識を求めちゃ駄目かな。嘗ての戦で立てた戦功は一番なんだから。その二つ名は【白龍皇】、トゥスクル二代目の皇にして大将軍」

 

「其処が解らんな」

 

「ん?」

 

「始祖皇の次に皇になった二代目、それは理解も出来るんだが……何で皇を退いた後に大将軍?」

 

「あの人は皇になってから始祖皇のやってきた事や、やれなかった事をやって國を安定させたかな。そして皇を自ら退いて旅に出ようとしたけど、仲間からどうしてもと請われて大将軍という形でトゥスクル國に籍を残したかな」

 

 侍大将(オムツイケル)のベナウィでさえ、その武威はユートには敵わない。

 

 故にこそ仲間達は思う、三代目の皇となったオボロも思うのだ。

 

 國に某かがあったらすぐに駆け付けて貰える様に、万が一にも敵対する羽目にならない様に……と。

 

 一応、縛る鎖は在る。

 

 正妻扱いであるユズハ、カミュ、アルルゥ、ウルトリィなど側室扱いの女性、トゥスクル國を今は出ているカルラにトウカ。

 

 本来の世界線とは違う、ユートの介入が変化を与えるのはいつもの事。

 

 まあ、オンカミヤムカイの第一皇女ウルトリィや、第二皇女カミュを側室とか言ったらヤバい連中も居るけど、本人達は特に気にしてなくて仲良しだ。

 

 

 それでも原典を識らないが故に、取り零しはやはり出てしまうのだが……

 

 その最たる事はやっぱりトゥスクルさん。

 

 國の名前にすらなった、エルルゥとアルルゥの祖母であり、行く当ての無かったユートを家族として迎え入れてくれた人物の死。

 そしてユートは名前すら覚えてなかったヌワンギ、コイツは侍大将だったからだろう、手土産の代わりと謂わんばかりに首を取られてしまい、エルルゥに見せないのがせめてもの情けというやつだった。

 

 因みに『ドワンゴ』と呼ばれたのが最後である。

 

「それに個人での戦闘力も然る事ながら、土人形を喚び出しての集団戦闘も熟す兵かな。トゥスクルの前の國で敵将だった漢もこれに翻弄されたって聞くし」

 

「土人形? ゴーレムってやつなのかねぇ?」

 

「黒いゲシュペンスト部隊による蹂躙、しかも土人形だから人的損害も減らす事が出来るかな」

 

 とはいっても、基本的に余り使わない戦力だった。

 

 下手にこれだけで部隊を組み、戦でコイツだけを戦わせたりすると痛みを知らない莫迦が増長するから。

 

「【白龍皇】の名で呼ばれた数年間の皇時代、白龍の二つ名に違わぬ龍の如くな真白き鎧兜、蒼き光の翼にて空を駆ける姿は敵に恐怖を与えたかな。そうして付いた二つ名が【悪夢を統べる皇(ロード・オブ・ナイトメア)】……」

 

「ロード・オブ・ナイトメアって、また物騒極まりない二つ名だな」

 

 共に在り、笑っていた男の別の顔を知った気分で、ハクとしては嬉しいやら悲しいやら。

 

「ハクオロ皇が玉座に就いてから割とすぐ、嘗ての頃は三大強國として知られたシケリペチム國がトゥスクルへと侵攻、ハクオロ皇はその薬学の知識から火薬を造り出し、シケリペチム國の兵糧を焼き尽くす策に出たかな。だけどもっと恐ろしいのはあの人」

 

「……ハ、ハクオロ皇だって大概みたいだが?」

 

「あの人は焼け出されていたシケリペチム國の兵を、ゲシュペンスト部隊により強襲を仕掛け、凡そ千人を虐殺して回ったかな」

 

「ぎゃ、虐……殺……?」

 

 そう言われれば思い当たる節は幾らかある。

 

 何よりウズールッシャ戦では、敵兵も剣奴も無関係に殺し尽くしたらしいし、その残された遺骸はヒトの尊厳なんぞ、何処吹く風なくらいグシャグシャになっていたのだと云う。

 

 ただ、駆け抜けただけ。

 

 但し音すら置き去りとするレベルの逸さで。

 

 ハクの脳裏に浮かんだのはソニックムーヴ、音速を越える速度で駆け抜けた為に起きた大気変動。

 

 それとは違うナニかを、ユートは行ったらしい。

 

 戦う兵だろうが逃げ惑う兵だろうが、関係は無いとばかりに殺して殺して殺し尽くした白き龍。

 

 いつしか真白き鎧兜は、血の如く真っ赤に染まっていたのだとか。

 

「怖っ! ホラーかよ!」

 

 流石にクオンも識らなかったから説明が出来なかったが、単純に【白龍皇の鎧】から【赤龍帝の鎧】へとシフトしたに過ぎない。

 

 ユートはとある世界で、その両方を手にしたから。

 

 また別世界で怨念に塗れる前の神器、後には十三種の神滅具とさえ呼ばれる事になる代物を。

 

「トゥスクル大将軍ユート……か。聞けば聞く程に違いばかりが浮き彫りだな。否、恐怖の大王だか冥王みたいな部分は普通に有るんだがな」

 

「だから決してあの人が現れたら戦わないで欲しい、これは寧ろハクや皆の為に言っているかな」

 

「あ、ああ……」

 

 然しながら、クオンの願いも空しくユートはハク達の前に現れる。

 

 但し、それがユートだとクオンすら認識してない。

 

 何故ならば、ユートが纏っていたのは太陽みたいな黄金に耀く鎧、兜の側面には二つのアルカイックな貌を持ち、空間すら歪めて操る非常識な存在だったからである。

 

 ハク達はムネチカの許まで跳ばされ、デコポンポの兵は一兵残らず銀河すらも爆砕する一撃で消滅させ、ヤマトの帝が崩御した報に帰還するまで、ヤマトの兵に対して恐怖を撒き散らしたのだ。

 

 この際にユートが名乗った名前とは、『ジェミニ』であったと云う。

 

 

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