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異世界トータス。
よくある召喚モノといえばそれまでだけど、古くは【轟世剣ダイソード】にて行われた異世界召喚事件。
或いは【聖なるかな】、兎にも角にも大勢が一斉に異世界転移する噺。
これもその一端。
学校全てがとまではいかないが、一クラスが異世界へと転移をしていた。
イシュタル・ランゴバルドなる教会の教皇とやらに迎えられ、取り敢えず歓待を受けたのである。
この異世界
【轟世剣ダイソード】ではヒロインがダイソードを手にするべく、複数人にて異世界……地球へと渡って同一座標から再び元の世界――【泡の中央界】に戻る事により、敵陣に存在しているダイソードに近付くという算段だったが、九江州中学が主人公を含む五五〇人の生徒と共に転移に巻き込まれた形。
つまり、異世界側の意思は関与していなかった。
【聖なるかな】も異世界に向かったのは、ヒロインの持つ永遠神剣に宿る神獣の能力で渡っており、斑鳩沙月という異世界人が主人公を監視していた意外は、異世界へ連れていく意図も無かったのである。
そして大概の異世界召喚は碌でもない事に主人公が巻き込まれ、その過程にてチート化という流れだ。
ユートはこの世界をよく識らないけど、少なくとも異世界召喚が絡むのならば主人公は手痛い目に遭うかも知れないと考えていた。
まぁ、ユートにはどうでも良い話ではある。
(本性を現すまでは適当に合わせとくか)
イシュタルからの説明、どうやら神にゆる召喚だから還す術が無いらしいが、現状ではこの世界の人間は危機的状況らしく、強い力を持つ異世界人に手を借りたいらしい。
「いったい何の冗談です? こんなドッキリがあるだなんて聞いてませんよ!」
ちっちゃくて童顔ではあるが二五歳、社会科教師である畑山愛子が怒鳴る。
クラス担任ではないが、授業後も生徒と雑談していたのか教室に居て巻き込まれたらしく、ある意味では運の無い女性だった。
年齢的にはアレだけど、見た目が可愛らしいのもあるが面倒見も良く、生徒からは慕われてもいる。
ユートも是非、ホテルで女性の肢体地図の個人授業をして欲しいくらいだ。
異世界という証明もされてしまい、畑山愛子先生もへたり込んでしまったし、他の生徒達も青褪めてしまっていた。
(貴金属や宝石は有るから換金すりゃ暮らしていくのは簡単だが、取り敢えずは金を稼げる手段を模索しないといずれ詰むよな)
ユートは異世界転移など何度も経験しているが故、万一備えの換金アイテムとなる貴金属や宝石なんかをアイテム・ストレージへと仕舞い、必要になったなら出して換金をしている。
とはいえ、換金アイテムも無制限に有る訳でなく、稼げる手段を模索するのも必要な事だった。
唯一神エヒト。
人間の創った偶像神ではないなら、オーバーロードの一種という事になる。
つまりは、ユートの再誕世界のアテナやハーデス、【カンピオーネ!】世界のまつろわぬ神などと同種。
(さて、どうなるのやら)
冷めた目で起こる出来事を見つめつつ、これからの事に思いを馳せていた。
というのも、畑山愛子は頑なに生徒を戦争に行かせるのは反対と叫んでるが、天之川光輝が率いるグループの面々は戦うのを肯定、それに他の生徒が呼応してしまったのである。
(愚かに過ぎる。況してや天之川光輝、あいつは何か英雄願望でもあるのか? 戦争するって意味を本当に理解してるのかどうか)
ユートは少なくとも彼が主人公であるという可能性は真っ先に潰してしまい、他に【主人公】になりそうな人間を捜してみる。
(坂上竜太郎は無いよな。精々が天之川光輝の腰巾着だろう。八重樫 雫は性格的に悪くなくて顔も可成りのレベル、ヒロイン枠でなら有り得るか。白崎香織はクラス処か学校の二大女神らしいし、メインヒロインを張れる可能性はあるな。だけどこの四人が主人公は有り得ない……か)
寧ろ、駄目人間レベルで白崎香織から構われている南雲ハジメ、彼が危急から成り上がる主人公の可能性は大だと思っていた。
最初は大した事が無く、パーティから外れた途端に真の力を発揮、チート化をして無双するとかはありそうな噺だったからだ。
(天之川光輝みたいな謂わば偽善者、あれより可能性が高いんだよな)
他の男子はユートが気に掛けるレベルではないし、女子も天之川光輝グループの二人と、畑山愛子くらいしかヒロイン枠だと思える娘は居ない。
ひょっとしたら意外な感じに居るかも知れないが、白崎香織と八重樫 雫よりヒロインしている女の子は見当たらなかった。
ハイリヒ王国の騎士団長メルド・ロンギヌが、集められた生徒にステータスプレートなる物を渡す。
「勇者御一行、協力に感謝をする。私はハイリヒ王国騎士団長を務めるメルド・ロンギヌだ。早速だが諸君らに渡す物がある。それがこのステータスプレート」
「これは?」
「文字通り自分のステータスを数値化してくれる物、身分証明書にもなぢているから失くすなよ?」
説明によれば血を付ければ所有者として登録され、ステータスが数値となって表されるらしい。
勿論、原理は知らないから聞くなと言われた。
神代のアーティファクトであり、神々が地上に在った頃の道具で唯一、聖教教会で作成が可能なアイテムだとか。
ユート・オガタ・スプリングフィールド
レベル:??
??歳 男
天職:天魔真王
筋力:測定不能
体力:測定不能
耐性:測定不能
敏捷:測定不能
魔力:測定不能
魔耐:測定不能
技能:表示不可能
「何じゃこりゃ?」
恐らくだが異世界人は、能力や技能が予め与えられるのだろうが、ユートには普通の地球人とは違い技能や魔法などがどっさりで、身体能力も鍛えに鍛えたのもあるし、神殺しの力をも得たからこのカードの機能では測定が出来なかったのであろう。
まともな表示なのは名前と性別と天職だけだった。
「仕方がないか」
天之川光輝は自分の天職や数値を堂々と言っているけど、勇者や初期値一〇〇なら誇らしいという事か。
(今時、勇者が主人公とは限らないのに莫迦な奴だ)
多分だが与えられる能力というのは、元々の能力や才能なんかをブーストした感じなのかも知れない。
(そうなると、南雲ハジメはステータスがガタガタなんだろうな)
真っ当な手段ではチートになるまい。
ユートは【狩人×狩人】な世界で視て得た能力――【
一度視た能力は模倣可能という謳い文句の通りで、視る機会がヒソカ・モロウの念能力を覚えたのだ。
但し、全てが全て模倣を出来る訳でも無いが……
例えば、幻影旅団の団長であるクロロ・ルシルフルの念能力だが、あれは流石に模倣が出来なかった。
まぁ、殺せば自身の持つ念能力――【
緒方優斗
レベル:1
17歳 男
天職:人形操者
筋力:15
体力:20
耐性:15
敏捷:35
魔力:50
魔耐:50
技能:人形創成 言語理解 素材採取
取り敢えずは無難な感じにと、どっかの錬金術士の初期値くらいを参考に入れてみた。
天職は人形操者。
メルド・ロンギヌが見て溜息を吐き首を傾げてしまうのだが、ちょっと拙かったのだろうか?
微妙だったのかも。
尚、南雲ハジメの天職は錬成師で技能は錬成と言語理解、ステータスの数値はオール10だったらしい。
トータスの人間の一般的な平均値が10らしい為、南雲ハジメは完全に普通という事になる。
錬成もユートの魔法である【錬成】程、オールマイティーな力でも無いのだろうと思われた。
能力値が上がって妄想力がアップすれば、ユートの【錬成】くらいに化けそうな技能なのだが、如何せん扱う為の魔力が低過ぎた。
(ホント、真っ当な手段じゃあチート化しないな)
彼がこの『世界』に於ける主人公だったとしても、チート化するには可成りの痛みを伴うだろう。
(ま、どうでも良いか)
チート化してから運命の交叉路が再び交わるなら、共に歩む時も来るかも知れないが、今現在は無関係という事だから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
約二週間後……
「うん? あれは白崎香織だよな。部屋は南雲ハジメの……まさかヤりに来たとかじゃ流石に無いかな?」
天職は治癒師らしいから回復魔法が得意だろう。
(ま、南雲ハジメの激励か何かだろうな)
実は違うが、そこら辺は見聞きしていないユートには判らなかった。
(うん? 檜山大介……だったか? 白崎香織を視ていたけど……ストーカーか何かか?)
南雲ハジメを虐めている連中のリーダー格だ。
明日には実戦訓練と称して【オルクス大迷宮】に挑むけど、何やら起きそうな予感を犇々と感じていた。
オルクス大迷宮。
その入口はまるで御祭り騒ぎの様相を醸し出す。
人人人で犇めき合う。
その中にはユートが普通に居たし、キョロキョロとする南雲ハジメも居る。
天之川光輝のグループ、他にも幾つかグループを作っているのがちらほらと。
目立つのは騎士に囲まれている畑山愛子だった。
愛子の天職は作農師で、ステータス数値は魔力以外はハジメと変わらない。
魔力だけは天之川光輝と同じく100で、技能欄には作農師に相応しい技能が狭しと並んでいた。
メルド・ロンギヌ達からすれば、ある意味では勇者な天之川光輝より驚愕して迎えたのである。
食糧事情が一変する程の伝説的技能だったから。
戦闘力はこの際、問題では無くて作農師という天職はこの地の誰もが垂涎の的として見る。
戦闘なんて以ての他で、本来ならオルクス大迷宮に入るなど有り得なかった。
なのに愛子が此処に来ているのは、偏に耳許で囁かれた言葉を気にしてだ。
『生徒を危険な迷宮に送り込んで、自分は作農師という天職に甘えて安全な場所で見ているだけ』
この二週間、そんな囁きが毎日毎晩と続いていて、ノイローゼにでもなりそうな状況だった。
だからこそ、最初の一日だけでも生徒達と大迷宮に入って、その大変さを経験しておきたいと我侭を言ってしまったのである。
悩んだメルド・ロンギヌ騎士団長だが、熱意に圧されて騎士達でガチガチに囲い込んだ上で戦わせない、そんな条件で今日だけという約束をして連れて来た。
尚、原典では当然の事だが大迷宮に入っていない。
緑光石という特殊な鉱石が多数埋まっている為に、灯りが無くてもある程度の視認が可能。
そして光源からよく見れば大迷宮は魔物の巣窟で、斃しても斃してもうじゃうじゃと湧いてくるのが嫌でも判った。
魔素がマテリアライズ、そうして産まれるのが謂わば魔物な訳で、魔素が在る限りは魔物が居なくなる事は無いだろう。
そして基本的に魔素は、ダンジョンの奥になればなる程に濃密になる所為か、降りれば魔物も格段に強くなってくるし、技能なんかも色々と使ってくる。
ユートは人形操者という天職に従い、青銅ゴーレムのゲシュペンストを魔物へと嗾けていた。
然しながら人間の身長の約三分の一、一般的な身長を一六〇cmとした場合の五三cmくらいしかなく、魔物をペチペチと叩くだけの攻撃に、檜山大介を中心に嘲笑うクラスメイト達。
南雲ハジメは自身の能力が微妙と云うにもショボいからか、苦笑いをしていて『ドンマイ』と言ってくる辺り、少し安堵しているのかも知れない。
流石に偽善者のグループ天之川光輝、勇者様(笑)は嘲笑いこそしなかったが、役立たずくらいには感じていたであろう。
溜息を吐いていた。
「あ、あの……きっと……レベルアップすれば大丈夫だと思います!」
「ん、ああ」
八重樫 雫は特に此方を見てないけど、白崎香織は励ましに来てくれた事から優しい人柄なのだろう。
(メインヒロインじゃないかも知れないな)
逆にメインヒロインではない疑いが濃厚になった。
まぁ、顔が可愛くて性格もバッチリだから人気者なのだろうが……
二〇階層の魔物も天之川光輝には物足りないのか、ちょっと危ない場面があってメルド・ロンギヌから叱られはしたが、傷を負った様子も見受けられない。
レベルもステータス数値も上がり、確実に実力など上がっているのだろう。
(南雲ハジメは……)
錬成を巧く使っており、中々に殺れていた。
本人はダメダメだと自嘲しているが、ユートからすればある意味で教え甲斐はあるかも知れない。
どちらにせよ今現在の話ではなかった。
ユートは既に現段階にてクラスメイトを見限って、何らかの事故を装い消える心算でいるからだ。
勿論、手土産くらいは戴いていく気満々である。
弱いからと嘲笑う連中、弱いからとシカトする連中なんて見限るしかない。
連中からすれば自分達が見限った心算だろうけど、実際にはユートの方こそが見放したのだから。
(さて、状況予測からして今日この日が何か起きる筈の分岐点だ。恐らくそれが南雲ハジメ覚醒イベント。それに乗じて動く!)
某か起きるのはそろそろの筈なのだ。
ユートのこれは予知とか予言とかの類いではなく、状況下に在る情報を無意識に読み取り、直感的に何かあると感じるというもの。
当たるも八卦当たらぬも八卦よりはマシなレベル。
何が起きるかなんてのは判らないし、正確な時間すらも判っていない。
飽く迄も直感だからだ。
「あれは何かな? 何だかキラキラしてるよ」
白崎香織の指摘に全員が指差した方を見る。
水晶の様な結晶体が蒼白く涼やかで煌びやかな輝きを放ち、それはまるで壁から大輪の華が咲いた様だ。
「ふむ……あれはグランツ鉱石だな。大きさ的にも悪くないし珍しいな」
「どんな鉱石なんだ?」
ユートが訊ねると……
「何かしら効力を持っている訳ではない。とはいえ、その美しさから貴族の御婦人や御令嬢方に人気でな。指輪、イヤリング、ペンダントなんかに加工して贈ると喜ばれる。特に求婚の際に選ばれる宝石としては、トップ3に入ると聞く」
何だか色々解り易く説明をしてくれた。
「はぁ、素敵ぃ……」
白崎香織がうっとりとした瞳で頬を朱に染めつつ、ソッと南雲ハジメの方へと視線を向ける。
気付いたのはユートと、親友の八重樫 雫と今一人……檜山大介だった。
「だったら俺らで回収してやろうぜ!」
「こら、勝手な事をするんじゃない! まだ安全確認をしていないんだぞ!」
怒るメルド・ロンギヌの言葉を聴こえない振りで、手慣れた感じにヒョイヒョイと崩れた壁を登る。
「団長、トラップです!」
「な、なにぃ!?」
檜山大介がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心として魔法陣が展開され、瞬く間に部屋全体に拡がって輝きを増す。
グランツ鉱石という美味しい獲物を囮にした罠だ。
「食うっ、撤退するぞ! 全員早く部屋から出ろ!」
メルド・ロンギヌからの指示だったが時既に遅く、ユートの見立てでは一種の転移トラップが完全発動。
(こ・こ・だぁぁぁっ!)
ユートはこのトラップに便乗、一部の術式を破壊して書き換えてしまう。
術式は『部屋に居る全員を指定の階層へ転移する』と端的に云えば書かれていたのだが、その一部を破壊して書き換えた結果として『ユート、白崎香織、八重樫 雫、畑山愛子を迷宮の最下層へ転移。その他は変わらず指定の階層へ転移』という形になっていた。
可愛らしく【作農師】という役立つ天職を持ってる畑山愛子、【治癒師】であり美少女で性格的にも花丸な白崎香織、【剣士】という個人でしか役立たないとはいえ護衛に向き、鍛えていてしなやかな肢体が心地好さそうで髪型なんか少し好みが入った八重樫 雫。
この三人を巻き込んだのは謂わば手土産代わりで、退職金みたいなものという訳である。
大して仕事をした覚えも特に無いけど。
三人は気絶していた。
「リリアーナか?」
〔はい、ユート様〕
口調から語尾にハートが付きそうな女の子の声が、ユートの持つスマートフォンから聴こえてくる。
普段、宿場町ホルアドに泊まっていたユートだが、先ずは王都の王宮に連れて行かれ、ハイリヒ王国王族に紹介をされている。
エリヒド・S・B・ハイリヒ国王。
ルルアリア・S・B・ハイリヒ王妃。
リリアーナ・S・B・ハイリヒ王女。
ランデル・S・B・ハイリヒ王子。
つまり、リリアーナとは一四歳のハイリヒ王国王女殿下という訳だが、ユートは不埒にも夜這いを決行して口説き、王女本人の異世界人や性への興味を惹いてやり、特殊なフェロモンで警戒心を抑えつつ少しずつ身体に接触、それを一週間という日数繰り返した。
七日目、遂に陥落してしまったリリアーナはユートとヤってしまい、心も身体も丸ごと全てユートのモノになってしまう。
簡単とはいかないけど、難しくもなかった。
異世界人に対する興味を異世界の話や地球でしか作られない御菓子で惹いて、本当に少しずつ少しずつだが侵食していき、御菓子を渡す際に指へ触れる程度から手へ、共にベッドを椅子代わりに座って話している内に腰へと触れる箇所を増やしていって、好感度を上げていくギャルゲに近いだろう行動だった日々。
最終的にはまだ一四歳と若いが故の、性への好奇心を刺激してバストタッチをしても頬を朱に染めながら形だけ『ダメですわ』と、嬉しそうに顔を背けるくらいになった頃、頬に手を据えて真面目な表情で真っ直ぐに見つめてやり、ほんの少し顔を近付けて目を閉じたらすっかりその気になったリリアーナは、自らも目を閉じてジッとする。
後は軽く唇を重ねてやるだけのキスを交わした。
何処ぞのあーぱー姫辺りに通用しそうなベタなやり取り、だけど上手くハマったリリアーナは堕ちる。
後は翌日からキスを深めていき、更に触れる箇所も増やしてリリアーナの準備が整う様にしてやった。
ケーキに微弱な媚薬を混ぜる辺りが、周到に過ぎるユートだったけど効果的で一〇日目には遂にベッドで夜を過ごすに至る。
今のリリアーナは王女ではなく、一人の
「暫く僕は予定の通り消えるから、そちらも予定通りに動いてくれ」
〔判りました。でも予定通りなら何人か連れて行かれるのでしょう? 妬けてしまいます〕
「戻ったらまた沢山可愛がって上げるよ」
〔約束……ですよ?〕
「勿論だ」
当然、計画的な失踪。
仲間を王宮に作っておけば役に立つ訳で、最上級な仲間をユートは引き入れたのである。
この際にリリアーナ専属侍女ヘリーナも毒牙に掛けており、リリアーナよりも割かし自由に王宮を動ける手駒として重宝していた。
昨夜もリリアーナと二人仲好く戴き、今朝は二人して寝坊していたらしい。
「それじゃあ、何かあったら連絡をしてくれ」
〔はい、ユート様〕
取り敢えず本日の会話は終了、後は三人が起きたら御楽しみと逝こう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん、う……ん……」
「な、何?」
「ふゆぅ……」
何が起きたのか未だ把握してない三人が、寝惚け眼でゆっくりと起きてきた。
「やぁ、起きたか」
「え?」
「なっ!?」
「緒方君っ!」
話し掛けられ漸く気付いた三人は、驚愕に目を見開いてユートを凝視した。
まぁ、驚くなという方が無理というもの。
仮にも女性が気絶していたとはいえ寝起きから男、異性がすぐ傍に居るなんて状況なのだから。
三人はハッとして身体を弄って、異変が無いかどうかを確かめている。
着衣の乱れやおかしな痛みや違和感、そういうのがあったら……眠っていた間にナニかされていたらと、恐怖もあったのだろう。
「満足したかな?」
取り敢えず着衣に多少の乱れはあるが、それ自体は戦いの中で付いた乱れだと理解したし、話に聞く股間への痛みや違和感は無い。
寝ている間にイタズラをされたとか、況してや犯されたなどは無いと判断をして一息を吐く。
「どういう状況かしら?」
ユートを睨み付けてきながら、八重樫 雫がキョロキョロと視線は動かしながら訊ねてきた。
「檜山大介……だったか、ハジ……南雲をよく虐めている第一人者? あの莫迦者がグランツ鉱石を使った迷宮の罠に掛かったんだ。一種の転移トラップで彼処に居た全員が一斉に転移したみたいだね。僕らが弾かれたのか或いは完全ランダムな転移だったのかは兎も角として、僕らは此処に跳ばされて来たという訳だ」
「ああ、思い出した。罠があるかどうかも調べないでメルドさんからの忠告すら無視して、それが原因って事なんだ……」
「そういう事」
しれっと言うが嘘八百を言った訳ではない。
自分達が弾かれたかランダムかは兎も角……などと曖昧に言い、確定した事を言った訳ではないからだ。
実際はユートがトラップに介入して、自身と三人を最下層へと転移させた。
(然し、最下層と指定したんだが……まさか上の迷宮の最下層が別の迷宮の入口になっているとか、思いもしなかったよな。つまりは此処が真のオルクス大迷宮って訳か」
更に下へ降りるらしく、また上へ戻るには余りにも此処は下層が過ぎた。
マッピング探査で走査をしてみたが、トラップ自体は地下六五階層への転移をする物だったらしい。
「帰り道なんだが」
「そうだ! 何処なんだ、此処は? オルクス大迷宮の中なのは周りの様子から明らかだけど……」
「ザッと魔法で調べたら、トラップで跳ばされるより更に下らしいね」
「「「なっ!?」」」
ユートは識らないけど、ユーキ辺りに聞けば原典の知識で教えてくれる筈で、此処は南雲ハジメが落ちた奈落である。
下手に動けば八重樫 雫でさえ、一瞬で殺されてしまい魔物の腹の中に収まるであろう。
熊っぽいのにやられた、南雲ハジメの左腕が如く。
「だから帰るなら上よりも下に向かうべきだ」
「下って……」
「少なくとも僕は上に行く心算が無い。それに君らの御守りをする気も全く無いんでね」
「なっ、御守り?」
怒りに震える八重樫 雫だが、ユートは何処吹く風と云わんばかり。
「一つ言っておくがこの場には結界を張ったから魔物に襲われないが、一歩でも結界を出たら二〇階層程度なんか問題外な魔物に襲われるぞ」
「……え?」
「僕も簡単に調べたけど、ざっくりステータス的には雫の今現在の二〇倍は無いと話にもならん」
「に、二〇倍って……」
「飽く迄も二〇倍は欲しいというだけで、その数値で何とかなるとは言わない。ただまぁ、君の今現在でのステータスだと間違いなく一瞬であの世逝きだな」
「ま、まさか!」
積極的に実戦訓練とするオルクス大迷宮での戦闘にも参加していたし、勇者の天之川光輝には及ばずとも次点くらいの強さには成っていると自信がある。
幾ら何でも有り得ないと雫は考えていた。
勿論、有り得ない。
とはいえ、雫では一瞬で死ぬというのは間違えようがないくらい事実。
何かしら通常を越える様な武器でも有るのならば、ステータス差を乗り越えて戦えるだろうが……
彼女が使う武器は本来、習っていたらしい八重樫流で扱う刀ではない。
況してや単なる鋼製で、切れ味だって刀には遥かに劣るだろうし、ステータスもだけど武器にも不安がある状態なのだ。
八重樫 雫の現状レベルはだいたい20程度か? 積極的に戦っていたのも確かだったから概算でユートは考えてみる。
尚、畑山愛子のレベルは基本的に上がっていない。
全く戦闘に参戦してないから当たり前である。
畑山愛子こそ瞬間的に殺られてしまうであろう。
「だいたい、君は何とかなったとして非戦闘員である先生と、治癒師である白崎を護りながらどうやって上る心算だ?」
「それは……」
八重樫 雫がふと見れば 二人は震えていた。
白崎香織は一応、魔法が使えるけど詠唱の事などを鑑みれば、やはり護り手無しでは話にならない。
「なら証明してやる!」
「あ、おい!」
「雫ちゃん!?」
「八重樫さん?」
雫は結界を飛び出す。
「あの莫迦が!」
「本当に雫ちゃんが勝てないくらいなの?」
「二〇倍は流石に言い過ぎだが、少なくともあの武器で今のレベルじゃ太刀打ちが出来ない」
「そ、そんな!」
「仕方がない……か」
死なれたら拉致った意味が無いし、ユートが結界から出ると……
「キャァァッ!」
兎っぽい白いナニかから蹴りを受け、吹き飛ばされて壁にぶつかる雫が居た。
「が、はっ……」
どうやら素早さに対応をし切れず、まともに発達した脚による蹴りを喰らってしまったらしい。
「大丈夫……じゃないな」
ユートにも向かってきた兎だが、慌てず騒がず腕を横薙ぎに一閃させる。
斬っ!
首が落ちて兎は死んだ。
「確か、魔物の肉は食えなかったよな」
聞いた話では魔物というのは、人間が食べると身体が砕けて死ぬらしい。
毒とかではないらしく、原因は不明だとか何とか。
「まぁ、食える様に加工をすれば良いか」
兎を片手に、雫は肩に担いで結界へと戻った。
「雫ちゃん!」
「そんな、八重樫さんが」
ボロボロな八重樫 雫を見てショックを受ける。
治癒師としての力を用いて回復を試みる白崎香織。
「ぁ、だめ……私じゃ治せないよ……」
まだ今の彼女では此処までの重傷は治せず、涙を流してへたり込んでしまう。
(まぁ、可成りグチャグチャに砕けてるからな)
よく調べたら肋骨が数本ばかり砕け、背中にも裂傷があったり背骨に罅が入っていたり、肩胛骨も砕けてしまっていた。
蹴りのダメージは肋骨、後は背中から硬い壁が砕けるレベルで叩き付けられた二次被害、思った以上に雫は脆くて重傷である。
「ったく!」
ユートは試験管っぽい瓶のコルク栓を抜き、中身の水分を口に含むと口移しでそれを飲ませた。
「え、何を?」
端から見れば気絶している彼女へとキスをしている訳で、顔を真っ赤に染めながら白崎香織と畑山愛子は見つめてしまう。
「神水って処かな? 壁の向こうにちょっと見付けた石から漏れた水なんだが、凄まじい快復効果がある」
「そんな物が!?」
ユートは彼女らが気絶をしている間、辺りを魔法で調べ回っていたのだけど、その際に土中から変わった波動があり、掘ってみたら見付けたのが青白く発光をしている鉱石。
神秘的な輝きを持つ美しい石からは、ポタリポタリと雫が落ちていた。
ユートの【神秘の瞳】で視たら、凄まじいばかりの回復が可能な水だと解り、この鉱石を採取したのだ。
名前は【神結晶】。
トータスの歴史上にて、最大級の秘法とされる遺失物的な鉱石で、千年という長い時を掛けて偶然出来た魔力溜まり、その魔力その物が結晶化した代物だ。
凡そ三〇〜四〇cmくらいの大きさで、結晶化した後は更に数百年もの時間を掛けて内包した魔力が飽和状態となると、それが液体となって溢れ出すとか。
その液体こそ先程、雫に飲ませた【神水】であり、部位欠損を修復までしたりは出来ないが、あらゆる病や傷を癒す奇跡の水。
テロメアすら癒す為に、飲み続けていれば寿命が尽きないとされ、不死の霊薬とさえ云われている程。
そして、本来は主人公の南雲ハジメが得る筈だった物であり、知らず知らずの内に彼の生存フラグが叩き折られていた。
万が一にでも原典通りになれば、南雲ハジメは死亡が確定していたのである。
「さて、どうする?」
「どうするとは?」
ユートの質問に畑山愛子が首を傾げた。
「僕は降りる。先生達は、いったいどうするんだ? 付いてきたいなら構わないが護らないぞ? 戻りたいなら八重樫を瞬殺する魔物がうようよしてる此処を、宛どなく彷徨ってみるか? という話だよ」
二人はブルリと震える。
「緒方君は護ってくれないんですか?」
「自分の女なら護るけど、そうでないなら対価を寄越せと言うしか無いね」
「対価……」
白崎香織は支払える対価なんて持ち合わせないし、それは教師生活数年である畑山愛子も同じ。
そもそも新任ではないにせよ、順調に教育実習を終えて教員免許を得たにしても二三歳くらいだろうし、二年くらいしか教師をしていない計算だ。
そんなにお金が有る筈もないだろう。
「さてと、此処でクエスチョンだ。君らはどうやって対価を支払う?」
「それは……」
「どうと言われても……」
気絶している八重樫 雫は兎も角、白崎香織と畑山愛子はオロオロしている。
否、畑山愛子は気付いてはいるのだが言い出せないでいた。
「1……生命分のお金で支払う。命の価値を考えて答えようか?」
「「……」」
はっきり言って支払えるとは思えない。
「2……女である事を利用して肢体で支払う」
ビクッ! 白崎香織の肩が震える。
畑山愛子も『やっぱり』という表情で暗い。
「僕は天之川光輝みたいな偽善者じゃない、情に訴え掛けても無意味だからな。寧ろ僕は相当、邪悪だぞ」
「光輝君が偽善者?」
「そうだよ。ああ、何なら勇者(笑)でも可」
「わ、わらいって……」
「そして考える事を基本的に放棄した脳筋。何だかんだとアレに追従した八重樫に白崎」
「私や雫ちゃん?」
「戦争の意味も理解せず、クラスメイトを戦争に巻き込んだ天之川が勇者とか、笑うしかないだろうに」
「で、でも……この世界の人が困ってるんだよ?」
「魔人族だったっけか? いずれにしてもこの世界の人種だろうが。戦争になったのも人族に何の瑕疵も無かったとどうして言える」
「それは……」
「一方的に人族の言葉だけを信じて戦争に参加して、魔人族だか何だかを殺す為の手伝いをする訳だ?」
「っ!?」
まぁ、人側は魔人族を謂わば魔物の上位種と定義しているらしいが……
「どうやら聖教教会というのは、亜人族を神に見放された穢れた種族とか言って差別しているみたいだし。亜人族って要は獣人の事だろうに。いったい何を以て穢れたとか言ってるのか」
ユートは獣人に対しての忌避感は無く、寧ろ女の子ならバッチコイだった。
【ハイスクールD×D】世界でも、狐耳と尻尾を持つ妖怪の九重や八坂を愛でていたし、猫又の上位種族な小猫や黒歌も同じくだ。
とはいっても、出逢った最初に敵対をした時には、容赦無くいぢめてやった。
結果として四肢をぶち抜かれた黒歌、恐怖からお漏らしをした九重の図が出来上がったのである。
「ま、種族云々はこの際だからどうでも良いんだが。あの勇者(笑)は先生が反対しようと戦争すべきだと、クラスメイトを巻き込んでいる。それでクラスメイトが死んでも責任なんか取れない癖に……な」
「……あ」
「ゲームじゃないんだし、死んだら死に戻りをしたり蘇生魔法で生き返ったり、そんな事が出来る訳じゃないのにな?」
そう言って未だに倒れた侭の八重樫 雫を視る。
「こいつももう少しで死んでいたな」
「ヒッ!」
この真オルクス大迷宮は来るには早過ぎた。
上澄みの迷宮でさえも、実は六五階層までしか攻略をされていない。
八重樫 雫が真オルクス大迷宮で生き残れる確率は……〇パーセントだ!
「その上で今一度だけ……チャンスをやる。肢体で支払えば間違いなく生きて帰してやる。それは迷宮からじゃない、地球にだ」
「っ!」
「本当なんですか!?」
「肢体で支払った奴はな」
つまり、男は御呼びじゃ無いという事である。
「で、出来る……の?」
漸く意識が戻ったのか、八重樫 雫が起き上がりながら訊いてきた。
「し、雫ちゃん!」
「八重樫さん!」
まだ辛そうではあるが、基本的に傷は治っている。
辛いのは恐らく精神的なものだろう。
「僕の力に【世界の破壊者】ってのがある。それなら次元を航るオーロラカーテンで移動は可能だよ」
「なっ、なら何でそれを話さなかったのよ!」
「あの時点でやろうとしても神とやらが邪魔をした。今も邪魔はされているが、準備さえすれば不可能じゃないだろう」
「神が邪魔?」
「奴らの言う神エヒトとやらが召喚したんだろう? なら、帰ろうとしたら邪魔するに決まっている」
「それは……そうかも……だけどさ」
「それにさっきも言ったが無償で何かしたりしない。世の中、何かが欲しいとか何かをして貰いたいとか、そういう場合は対価を支払うものだ」
「くっ!」
生命の安全と帰還の対価に肢体で支払う、ある意味では安くてある意味で高い対価であろう。
「そ、そもそも! 貴方は大して強くないでしょ!」
そういえばと白崎香織と畑山愛子は思い出す。
「これの事か? 【
「はぁ?」
「ペリッとシールの如く剥がしてやると」
その下に本当のステータスが書かれていた。
「天職、天魔真王?」
「年齢、レベルがクエスチョン、能力は測定不能?」
「技能が表示不可能って」
八重樫 雫も畑山愛子も白崎香織も驚く。
「天職が天魔真王ってのは判るんだよな。それから僕の年齢は僕自身がもう判らない。レベルや能力や技能が計れないのは走査に失敗したんだろうな」
「どういう……」
「魔力が僕の場合は一流の魔術師の数百倍は固いし、その所為で僕に魔法は効かないから。天職と名前だけは辛うじて表示が出来たみたいだけどな」
「そ、そんな莫迦な……」
「魔力が数百万くらい有るかも知れないな」
「数百万……」
最早、雫は閉口した。
概算だから一概には云えないが、どちらにせよ神を殺したカンピオーネだけに魔力走査が、どうやら余り通じなかったらしい。
「取り敢えず、肢体で支払わせるからには愛人として護ってやるさ」
「あ、愛人……」
「性奴隷が良かったか?」
「んな訳無いでしょっ! ってか、香織は好きな男が居るんだからね!」
「ちょっ、雫ちゃん!?」
「貞操を守って命を落としたいなら好きにしろ」
黙っているが三人を連れ出したのはユートだけど、だからといって護ってやる心算は無い。
自分のモノなら別だが。
「判った……」
「雫ちゃん、良いの?」
「取り敢えず私に好きな男は居ないしさ」
香織は悩む。
ずっと好きだった相手、仮にフラれるにせよせめて告白くらいしたかったが、死んでしまったら二度と会う事すら叶わない。
「私で香織と愛ちゃん先生の三人分とかは?」
「自分の代金は自分で支払うのが普通だろ? それとも三人分のセ○クスをして壊されたいのか?」
「っ!?」
ニヤリと口角を吊り上げられ、八重樫 雫は恐怖か嫌悪か判らないが寒気を感じてしまう。
「判り……ました……」
死にたくない。
親友のあんなズタボロな姿が数分後の自分だとか、恐怖しか湧かなかった為に白崎香織は頷いた。
「先生も、判りました」
畑山愛子も頷く。
本当は『駄目!』と言いたかったが、本気でこんな危険な魔物が居る場所へと置いてきぼりにされたら、一瞬で死ぬ未来しか見えないからか、真っ赤になりながら頷くしかなかった。
三人は真っ赤になった侭の状態で立ち尽くす。
「ま、ヤるなら安全そうな場所に着いてからだな」
「安全そうな場所?」
「ああ。安全地帯まで降りるからな。付いて来い」
「あ、ちょっ!」
「ま、待ってぇ!」
「先生を置いていかないで下さ〜い!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
真のオルクス大迷宮。
上澄みの迷宮で百階層、どうやら真のオルクス大迷宮も同じく百階層らしい。
「変身!」
《KAMEN RIDE DECADE!》
ユートは這い寄る混沌の力が一つの形を持った姿、【デイケイドライバー】を使い戦った。
「兎にはラビットだ!」
《KAMEN RIDE BUILD!》
赤と青で構成されている仮面ライダービルド。
《HAGANE NO MOON SAULT RABBIT TANK.YEAH!》
「うらっ!」
デイケイドビルドに変身して、赤い脚により兎っぽい魔物を蹴り付ける。
一撃で頭が吹き飛んで死んだ兎っぽい魔物。
「存外と脆かったな」
這い寄る混沌の神力が、【仮面ライダーデイケイド】となったのは、ユートは原典を識らないが【鬼神楽】の世界観で、イチ様という神様により喚び起こして貰ってからだ。
正確には【魔法少女リリカルなのは】主体世界で、他に幾つもの世界観が混じった混淆世界。
更に幾つもの世界を回り続けたユート、それにより仮面ライダーのカードが増えていった。
但し、ユートが識っている仮面ライダーに限る。
現在は昭和ライダーから平成ライダー、更に増えて仮面ライダーゼロワンまでをも網羅する勢いでカードを持っていた。
「次々と行くぞ!」
魔物は強くて戦闘職である八重樫 雫でも敵わず、ユートがデイケイドに変身した侭で戦い続けている。
実は護って貰う事にこそ憧れを懐く八重樫 雫は、今現在の状況を密かに愉しんでいた。
まるで騎士みたいに自分――と香織と愛子――を護ってくれるユート、ちょっとだけ状況を考えずときめいていたりする。
そして、あっという間に【真のオルクス大迷宮】の五〇階層に着いた。
「半分まで来たんだな……扉が有るとは」
「何かあるの?」
「さて……ね」
進むとガーディアンらしき魔物が動く。
「扉に近付くと発動をするタイプか」
《KAMEN RIDE FAIZ!》
とはいえ、然して脅威になる筈もなかった。
《FORM RIDE FAIZ ACCEL》
仮面ライダーファイズにカメンライド、更にフォームライドで強化形態であるアクセルフォームに。
「付き合ってやるよ、一〇秒間だけな」
左手首のファイズアクセルのスイッチを入れる。
《START UP》
次の瞬間には目にも留まらぬ疾さで駆け抜けた。
《FINAL ATTACK RIDE FA FA FA FAIZ!》
「はっ!」
二体の一つ眼巨人の周囲に幾つもの赤い円錘が出現すると……
「たぁぁぁっ!」
幾人ものファイズによるアクセルクリムゾンスマッシュが極る。
『『ギャァァァァァァァァァァァァァッ!』』
燃えて灰になり崩れていく一つ眼巨人。
《TIME OUT》
通常モードに戻ったら、早速とばかりに一つ眼巨人から獲たアイテムを、自らのアイテムストレージから取り出してみる。
「成程、だいたい解った」
二つの球を扉の窪みへと嵌め込むと、低い音を響かせながら扉が開いた。
「ふむ、真っ暗だな」
ユートはライティングの魔法を使って光を灯す。
「だ、れ……」
部屋になっている其処に金髪緋目の少女が、何故か立方体の中に下半身と腕を埋め閉じ込められていた。
見る限り服は着てない。
「な、何で女の子が?」
「助けないと!」
「そうです、こんな……誰が酷い事を!」
女三人寄れば姦しい。
「扉を閉めれば安全そうだから、此処でヤろうか」
「「「はい?」」」
ユートは少女なんか見なかった……と言わんばかりに言い放つ。
この少女との不可思議な出逢いこそが、本当の冒険の始まりだったと云う。
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