飽く迄もこの噺までとか制限してたから、可成りの急ぎ足になってしまった。
.
「え、先に外に出る?」
「ああ、一時的にだがな」
「一人で?」
「勿論、一人でだ。下手にユエを王国や教会に晒せないからな」
雫との問答に答えた意味とは、吸血種が誰に滅ぼされたかにもよる話。
人間との戦争だったとしたら、ユエを聖教教会共が異端認定するかもだから。
実際、吸血種と人間種の戦争なんて語るのも億劫な程によくある噺だろう。
アーデルハイトが然り、エヴァンジェリン然り。
だから聖教教会のお膝元に近いハイリヒ王国に連れて行くのは時期尚早と考えていた。
まぁ、バレない様にするという手もあるけど。
「兎に角、君らがオルクス大迷宮を出るのは生身でも一定の実力を得てからだ」
「どうしてですか?」
「先生、言いたくないけど力無き正義は無様だよ」
「うぇ?」
「仮に幾ら『戦争は駄目です』とか、『争いに意味はありません』とか『生徒が戦うなんていけません』、そんな風に叫んでも力が無ければ黙殺される。それに力があれば殺さないという選択も採れるが、力が無ければ殺される一択だ」
「そ、それは……」
「どうせ地球に帰る事は、未だに不可能だと考えると弱い人間から死ぬ」
「は、はい……」
「事実として教会の発言力が強いのは、連中に力が有るからだ。そうでなければ誰が相手にするもんか」
「そうですね……」
完全に落ち込む愛子。
「と、いう訳でだ。三人はきちんと修業をする様に。向こうの様子はちゃんと教えてやる。尤も、知りたくもなかった情報だったとしても取り乱すなよ?」
「そうね、あれからどれだけ日にちが経ったのか解り難いけど、何か朗報があれば御の字よ。でも最悪の事も予測しておかないと」
雫が頷いて言う。
ユートは先ずこの場へと印となるジェムを。
これで一回だけに限り、このオルクス大迷宮の最深部であるオスカーの隠れ家に直通が可能、既に王国のリリアーナの部屋には同じジェムを印に置いてある。
ユートはその片割れとなるジェムを破壊した。
瞬間、ユートの姿が此処から掻き消えてしまう。
「……さ、修業」
「そうね」
力が無いのは害悪でしかないのが、この世界の理だというのなら……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「到着」
「へ? キャァアッ!」
行き成り部屋へと顕れたユートに、部屋の主であるリリアーナは吃驚した。
「お、リリアーナ。じかに会うのは久し振りだな」
「ユート様!」
リリアーナ・S・B・ハイリヒ王女、運が良いのか悪いのか? 割かし早々に侍女のヘリーナと共に喰われた金髪碧眼の美少女だ。
母親のルルアリア・S・B・ハイリヒ王妃の容姿を受け継ぎ、間違いなく容姿は満点だったが少しばかり残念な所もちらほらと。
因みにルルアリア王妃は三四歳だから、リリアーナが仕込まれたのは一九歳の頃であろう。
「
頬を朱に染めつつユートに縋り付き、腰に両腕を回してお腹へ顔を擦り付けてくるリリアーナを、優しく撫でてやる。
「明日、帝国から使者が着くと聞いたから一時的に戻ったんだ」
「はい。どうやら勇者様がオルクス大迷宮のベヒモスを討伐して、第六五階層を突破されたと耳にしたらしいですわね」
「確か帝国は実力主義とか聞いたな」
「はい。今までは勇者様の力の様子見かと」
「で、力を見せたから会ってやろうってか? 巫山戯た話だな」
「は、はぁ……」
苦笑いのリリアーナ。
ハイリヒ王国からしてもヘルシャー帝国のやり方、それに困惑というか迷惑を被っているのかも……だ。
「ガハルド・D・ヘルシャーが現在、ヘルシャー帝国の皇帝だったっけ?」
「はい。容姿は伝え聞くに銀髪を短かめ切り上げて、鋭い目付きの碧眼、極限まで鍛え上げた肉体ですが、所謂マッチョとかではなくスマートな偉丈夫だとか。今年で年齢は五〇歳を迎える頃ですけど、見た目には三〇歳後半くらいにも見える若々しい風貌……です」
「ふ〜ん、確か帝国は実力主義だったか? って事は実戦で鍛えたのかねぇ? 皇帝が自ら」
「ユート様……」
何処か期待する様でいて潤んだ瞳、ルルアリア・S・B・ハイリヒ王妃の美貌を正しく受け継ぐ美少女、確か王妃は三四歳とユートからしたら抱き頃な女性であり、そんな王妃の血を継ぐリリアーナは間違いなく美しい。
多少残念思考はあるが、取り敢えず許容範囲内だ。
「欲しいなら、何て言うんだったかな? リリィ」
ユートが敢えて愛称で呼んでやると、パァァッと輝くばかりの笑顔を浮かべ、頬を朱に染めながら淫靡な雰囲気を纏い……
「リリィを御主人様のお好きな様に、どうか滅茶苦茶に犯して下さいませ」
純白のドレスのスカートを大きく捲り、ユートを見て既に準備万端な肢体……下半身を見せて言った。
「良い子だ、ヘリーナが来る前に愉しませて上げるから悦べリリィ」
「はい」
月明かりが部屋を照らす中で、男女の人影が重なり合いつつベッドに倒れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヘルシャー帝国の使者がやって来る当日、リリアーナは腰を押さえながらヨロヨロと謁見の間へ。
赤いカーペットが敷かれた謁見の間には、聖教教会からイシュタルが率いている司祭が数名、王国側からは国王に王妃に王女に大臣と重鎮で占められており、迷宮攻略メンバーとなっている勇者(笑)達、国王の座る玉座から対面するかの様にゲストの帝国からの使者の数名が立っている。
〔リリアーナ、フットワークの軽い皇帝が自ら来ると思ったんだが〕
(はい、私も実はその心算で話してました)
念話での会話だ。
〔あ、居たわ〕
(え? 何処ですか?)
〔真ん中の奴、使者の右側に居る護衛が魔導具による姿変化か。よく視ればリリアーナの言っていた容姿、今現在の容姿がそいつに被っている感じだ〕
(なっ! 護衛の振り?)
〔そうなるな〕
ユートは笑いを押さえ、リリアーナは驚愕した。
「使者殿、よく参られた。勇者方の至上かる武勇を、今日は存分に確かめられるが良かろう」
「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝致します。して、どなたが勇者様なのでしょうか?」
「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」
「はい」
国王の言葉に天之川光輝が言われた通り前へ出る。
〔確かにあいつが勇者(笑)だが、ベヒモスを斃したのって仮面ライダーG3……つまりハジメだろうに〕
(やっぱり、勇者様の方が見映えするからでは?)
〔下らん見栄……か〕
ベヒモスを斃すには光輝ではレベルも士気も共に足らず、結局はハジメが自分の切札とも云えるG3システムを装着して戦った。
然しものベヒモスも所詮は上澄みに配置された魔物でしかなく、仮面ライダーG3の武装には太刀打ちが出来なかったのである。
勇者(笑)光輝を筆頭に、迷宮攻略のメンバーが次々と紹介をされていく。
「ほぅ、成程。貴方が勇者様ですか。随分とまたお若いですな。失礼ですが本当に六五層を突破したので? 確か、あそこはベヒモスという怪物が出ると記憶しておりますがな?」
天之川光輝を観察する様に見遣る使者、イシュタルの手前だからか露骨な態度まで取らないものの若干、疑わい目で視てきた。
護衛の一人が値踏みするが如くジロジロと舐める様に眺めてきて、その視線に居心地が悪そうに身動ぎをしながら、天之川光輝は口を開く。
「えっと……ではお話しましょうか? どの様にあのベヒモスわ斃したかとか、あっ! そうだ、六六階層のマップを見せるというのはどうでしょう?」
天之川光輝の必死な提案だが、使者はあっさりと首を振るとニヤリ……と不敵な笑みを浮かべてきた。
「いえ、お話はもう結構。それより手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもして貰えませんか? それなら勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」
「えっ……と、俺はそれでも構いません」
若干、戸惑った様な視線でエリヒド国王の方へと振り返ると、エリヒド国王はイシュタルに確認を取る。
イシュタルは頷いた。
神威を以て帝国に光輝を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、帝国は完全な実力主義というのを国是とし、皇太子すら必ずしも血縁にするとは限らない気性だとか。
ならば早々に本心から、ヘルシャー帝国認めさせるには、実際戦って貰うというのが最も早いと判断したのであろう。
「構わぬよ、光輝殿。その実力を存分に示されよ」
「決まりですな、では場所の用意をお願いします」
急遽として勇者VS帝国使者の護衛という、模擬戦が決定してしまった。
結論だけ云えば勇者(笑)がボロ敗けした形である。
(ま、所詮は現代日本人。戦争の意味も知らず、殺される覚悟も無い口先だけの男に過ぎんか)
何処かの黄金の獅子座が居れば、『男として認めん!』とか言いそうな程に、今の天之川光輝は精彩というものを欠いているのだ。
〔格好悪いですわ〕
リリアーナの視線は既に勇者様でなく、勇者(笑)に向ける失望と蔑みのモノに最早、成り果てていた。
そしてイシュタルにより護衛がガハルド本人だと、明かされた事で天之川光輝は茫然自失となる。
「こんなのが勇者とはな。本当にベヒモスを斃したのか怪しいもんだぜ」
既に皇帝ガハルドには、呆れと疑心しかなかった。
「待って下さい!」
「あん? 確か勇者一味の誰だっけか……?」
「中村恵里といいます」
「んで、何だよ?」
「ベヒモスを斃したのは確かです。だけど斃したのは光輝君じゃありません!」
「おいおい、だったら随分と話が違わねーか?」
慌てたのは王国側重鎮、とはいえ勇者一行を下手に拘束は出来ない。
「じゃあ、誰が斃したってんだよ?」
「ハジメ君です」
「ハジメ? 確か勇者一味に居たと記憶してるがよ」
そして焦るハジメ。
「ちょ、恵里?」
「だって、この侭だったらハジメ君の功績がうやむやにされちゃう! ボクは、そんなの嫌だよ!」
「へ? ボク?」
「あ……」
遂々、本来の一人称やら口調で話してしまう。
「えっと、実は普段からの話し方は本来のものじゃなくて……一人称もボク……だったりするんだ」
「うわ、恵里ってボクっ娘だったんだね」
「あ、あれ? 何か普通に受け容れられてる?」
オタクなハジメにとってボクっ娘は美味しいだけ、流石の恵里もそれは予想の範疇外だったと云う。
「ふん? コイツが?」
パクパクとバカ面を晒す天之川光輝を他所にして、皇帝ガハルドはハジメの事をジロジロと観ていた。
「冗談だろう、このガキが戦士って面か?」
「む!」
その言い方に当然だけど恵里は眉根を顰めていた。
だが然し反論がハジメのすぐ近くで起きる。
「当然だろう。そもそも、ハジメは錬成師。造る者であって戦う者じゃない」
「ぬ!?」
使者や本物の護衛が驚愕しながら見遣ると、其処には今までは居なかった筈の黒髪の少年が居た。
「お前は?」
「其処の負け犬な勇者(笑)やハジメの同郷だ」
「だ、誰が負け犬だ!」
「お前だよ、勇者(笑)」
「っていうか、君は生きていたのか!?」
「見りゃ判るだろう。僕が幽霊にでも見えてるか? 寧ろ頭は大丈夫か?」
「何で頭の心配をされているんだよ!?」
言われなければ解らないのだろうか? というより言われても理解が出来ないのだろう。
勇者(笑)の方は扨置き、皇帝ガハルドが口を開く。
「ほう、名は?」
「緒方優斗。まぁ、ステータスプレートにはユート・オガタ・スプリングフィールドとなっているけどね」
「つまり、ユートという名で間違いない訳か」
「そうだよ」
「今まで何処に居た?」
「ずっとこの場でやり取りを見ていたが、気が付かなかったのかな? 戦士としては随分と迂闊だね」
「言ってくれるな……」
皇帝ガハルドは少なくとも勇者(笑)より興味を惹かれたらしく、ふてぶてしい態度のユートに凶悪な笑みで会話を続ける。
「ふん、なら今度はお前さんが戦ってみるか?」
「……構わないが、それはどうなんだ?」
国王や教皇的にと暗に言ってみると……
「まったく、ガハルド殿はそういう遊びが過ぎる」
「そうですな。貴方は本気で言っておられますか? ガハルド陛下」
苦言を言うエリヒド国王とイシュタル教皇。
わざわざ勇者(笑)とやっていた模擬戦を止めたというのに、またぞろ模擬戦をされたのでは困る。
「まぁ、余興だ……」
「待て!」
「うん?」
皇帝ガハルドが話しているのを天之川光輝が止め、それに多少の不機嫌さを込めた眼を向けた。
「あ、いや……皇帝陛下にではなく……」
と言いつつユートへ顔を向ける勇者(笑)。
「香織はどうしたんだ!」
「はぁ?」
「香織の居場所を教えろ! 君が生きているんなら、香織だって生きてる筈! というより、君が連れているんじゃないのか!?」
「知っていても教えんよ、お前みたいなのにはな」
「なっ! 緒方! 香織は君みたいなのがどうにかする様な娘じゃないんだ!」
「あんな死と隣り合わせのダンジョン内、男女が寄り添えば所謂、種族保存本能が働くのは不思議かな?」
「っさまぁぁぁぁぁっ! 決闘だ! 俺が勝ったら、香織の居場所を白状して貰うからな!」
一人で激昂する勇者(笑)だが、ユートは冷めた瞳でそれを見つめながら言う。
「で?」
「な、何だ? で、とは」
「天之川が勝てば白崎の居る場所を教える、それなら僕が勝ったらお前は何を差し出すんだ?」
「な、何だと? 神聖なる決闘を賭け事にする心算なのか!?」
「……本気で言ってるのか天之川? 否、正気か? 頭は本当に大丈夫か?」
「な、何を!」
「お前は決闘に勝った場合の条件を僕に出したな?」
「そ、それが何だ?」
「その時点でお前は決闘で賭けを申し込んだんだよ」
「ち、ちがっ!」
「違わないだろう。賭けとは互いに某かを賭けて何らかの勝負を行う事。そして賭けは“お互いに賭ける”のが当たり前だ。従って、天之川がリスク無しで勝負を挑む事は許されない」
キレて口調からおかしくなっているが、どうもド頭にキてまともな思考すらも出来ないらしい。
まぁ、御都合解釈というのは天之川光輝の必殺技ではあるのだが……
「な、なら俺は!」
「命を賭けろ」
「は?」
流石にイシュタル教皇が何か言おうとするのだが、行き成り身動ぎすら出来なくなった。
「……!?」
呼吸は辛うじて出来て、死に直結しないにせよ全く動けず、声を上げる事すら叶わなかった。
ユートというより内部の優雅が、更に奥の瑠韻を叩き起こしてやらせている。
ユートには都合、三つの人格が存在しているのだ。
主人格の緒方優斗を基点としたユート。
ユートの生まれる前に死んだ双子の兄、緒方優雅となる筈だったユートと一つに融合した赤子が、前世の記憶を元に再構築した人格である優雅。
そしてユートの破滅型の因子、優雅が魂の相克とは成らなかったが故に世界の修正力が生んだ第三人格。
何故か少女としての人格であり、結局は表に出ない限りは相克とならない味方となってしまう。
万が一にでも表に出たら何処ぞの祝福の風も吃驚、大暴走をして世界に破滅を齎らしてくれる。
普段は寝ている瑠韻は、起きれば優雅と違って影響を及ぼすのも可能だ。
「し、死ねとでも?」
「ふん、死ぬのが怖いか? 戦争は殺すか殺されるかの二択、お前みたいな偽善者で御都合解釈大好き野郎は敗ければ無様を晒すし、勝てば傲慢にも命まで取らないとか言うんだろうな? どうせ捕虜にしてもお前の見てない所で死刑にするに決まってるのになぁ?」
「そ、そんな事が!」
「あるに決まっているさ。お前の士気を崩さない様、飽く迄も秘密裏にだがな」
「巫山戯!」
「聖教教会……否、聖光教会だったか? 当時の教会の歴史が云っている事だ。処刑人の一族ライセン……連中はちょっと教えと違う事をしたら異端呼ばわりして処刑場で殺させていた。ミレディ・ライセンなんて一桁歳の頃から、ライセン大峡谷に“罪人”とされた異端者を落としていたという記録も有ったぞ?」
真のオルクス大迷宮に。
「因みに、教会の名前は違うが普通に神の名はエヒトだったからな? つまり、聖教教会は単純に時の中で名前が変わっただけ、教義も異端者の在り方も変わりはしない」
今にも動かんとしていた銀髪シスター、然しそれも瑠韻が動きを止めていた。
否、魂を陵辱して肉体が空になったのをアイテム・ストレージへとこっそりと仕舞ってやる。
ユートのそれは制限など無い為、魂さえ無かったら生体として機能していても仕舞えるのだから。
「後、異端者とか僕に言うのも筋違いお門違いだぞ。そもそも地球人がエヒトなんて神を信仰している筈が無いしな。おっと、今更ながら僕を異端者と審問するのも悪手だ。何故ならそれは召喚したのがエヒト本神だからな。つまり僕が異端ならエヒトは間違いを犯したと喧伝するに等しい! 仮に神の使徒を名乗る輩が粛清に来たら、エヒト自ら間違いを認める行為だ!」
釘を刺しておく。
大声で王国の重鎮や皇帝や勇者(笑)達が居る中で、ユートが此処から居なくなる理由付け、そして楔を打ち込む行為をやったのだ。
仮に他に使徒が居ても、下手に動けば勇者(笑)達に不信感を懐かせ、目的に合わなくなってしまう。
まぁ、人間が駄目ならば魔人族を使うだろうが……
尚、イシュタル教皇は後に弁明する。
『確かに彼が言っていた事は嘗ての教会の闇でした。故に教会の名も改められ、今はその様な事など行われませんし、彼が貴方達同様に異世界人故にエヒト様を信仰していないのは寧ろ、当然の事なのです。故に、彼を異端者とするは勇者様を異端者とするも同然で、有り得ないと云えます!』
熱弁だったと云う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『殺しはしない、仮死状態にするだけだ。尤も、その後は果たしてどうなるかは知らんがね』
殺さない模擬戦に違いないとして、結局は決闘をする事になったユート。
勇者(笑)がアーティファクトの聖剣を構える。
「さぁ、ビルドじゃないが実験を始めようか」
義妹にして【閃姫】たるユーキが、【仮面ライダービルド】に変身する際に、この科白を言っている。
察するに二期からよく使われる戦闘前科白だろう。
仮面ライダー電王なんかも『俺、参上!』とか言っていたが、二期から割かし明確に言っている。
ユートが手にしているのは黒いUSBメモリ。
「あ、あれはひょっとしてガイアメモリ?」
「若しかして知ってるの? ハジメ君」
「うん。【仮面ライダーW】に登場するアイテムで、仮面ライダーとその敵であるドーパントが使ってる。それに優斗が腰に着けてるのはダブルドライバー?」
赤いバックルのベルト、二つのスロットを持つそいつは紛れもない、ハジメがよく知るダブルドライバーであった。
《JOKER》
スイッチを押すと電子音声が鳴り響く。
緑色のガイアメモリが、ダブルドライバーの左側のスロットに転送されたのを確認して……
「変身!」
叫んだ。
黒いガイアメモリを右側のスロットに填め込んで、両方を最後まで押し込む。
《CYCLONE/JOKER!》
再び鳴り響く電子音声、激しい音楽が鳴って緑色の風がユートを包む。
「な、何なんだ?」
どうやらオタクではない天之川光輝は識らないが、ハジメはその出来事に興奮を隠せない。
「「さぁ、お前の罪を……数えろ!」」
何故か声は二人分が重なって聞こえてきた。
「罪? 俺にそんなものがある訳ないだろう!」
「解らないならそれこそ、お前の罪だ!」
勇者(笑)の大振りの一撃だが、聖剣の刃を右手首で完全に受け止める。
『所詮は聖剣(笑)だね』
「だ、誰だ?」
『君に話す事は何も無い、似非勇者……若しくは公式勇者(笑)が!』
「かっこわらい?」
実は天之川光輝に対する勇者(笑)は公式、原作者が自ら綴る程の完璧にだ。
それを“もう一人のW”は識っていた。
〔にしても、兄貴は大概だよねぇ。まさか【ありふれた職業で世界最強】の世界に居たなんて……さ〕
〔そういうタイトルか……まぁ、先ずは奴を潰してからだな――ユーキ〕
ソウルメモリを使ったのはつまりユーキ、ユートの義妹にして【閃姫】でもあるパートナー。
初めてこそ恩師に譲った形だが、身体すら重ねてる身魂の全てで繋がる存在。
比翼の鳥、連理の枝。
「ふっ! はぁっ!」
「がはっ!?」
受け止めた聖剣を上に弾き飛ばし、すぐに腹へ蹴りを喰らわせてやる。
勇者(笑)は吹っ飛んだ。
『弱いな。まぁ、勇者(笑)は始終弱かったっけ?』
ユーキの死は【ありふれた職業で世界最強】が一応の最終回を迎えた後な為、勇者(笑)の末路も当然ながら識っている。
『とっとと終わらせるよ』
「ああ、そっちはヒートを頼むぞ」
『ま、良いけど』
《HEAT》
《METAL》
赤と白のメモリに交換。
《HEAT/METAL!》
仮面ライダーW・サイクロン/ジョーカーの姿からヒート/メタルへ、右側が灰色で左側が赤な半々に色の違う仮面ライダー。
背中のメタルシャフトを手にして、メタルメモリをスロットから外しシャフトのスロットへ。
《METAL MAXIMUM DRIVE》
両端に焔を放ったメタルシャフトを回し、勇者(笑)へと駆けて突っ込むW。
「「はぁぁぁっ! メタルブランディング!」」
「グハァァァァァッ!」
今度こそ壁にまで吹き飛ばされた勇者(笑)、壁へとめり込んで意識を飛ばす。
そして心臓が停まった。
「魂掌握! 読み込み……開始! 簒奪!」
ユートの念能力。
【
自分が心肺停止までさせた相手の、若しくは自分がイカせた相手の魂を掌握→読み込みで能力を閲覧し、更には簒奪か模写を行って技能系や魔法などを奪うかコピーする事が出来る。
イカせるのは当然ながら性的にだから、女性相手にしか行われない行為だ。
「終了」
ユートはとっても軽く、【LIGHTNING】メモリの力で勇者(笑)の心臓を叩く。
「がふっ!」
それにより息を吹き返した勇者(笑)。
《ZONE MAXIMUM DRIVE》
そしてその侭、アッサリ姿を消してしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「よ、ハジメ」
「ゆ、優斗!?」
部屋で待っていたハジメ+恵里だったが、行き成り顕れたので仰天する。
「悪いな、始める直前だったりするなら二時間くらい待つが?」
「待たなくて良いよっ! あれ? 僕が恵里と付き合ってるの知ってたんだ」
「ああ、リリアーナからの報告でな。ソースはヘリーナだけど」
「「ぶふっ!」」
意外なスパイに吹き出してしまう二人。
「ま、早く邪魔者には消えて欲しいだろうから手早く済ます。約束は守っていたみたいだな?」
「うん、苦労はしたんだけど完成させたよ。仮面ライダーG3を」
「よし、なら御褒美だ」
「これ、インストール・カードだよね? 【生成】って書かれてるけど。後は、丸薬みたいだね」
「真のオルクス大迷宮で見付けた神代魔法、生成だ。ハジメの錬成の上位互換、それを使えばG3ーXなんかすぐに造れるだろうし、G3をG3マイルドに改良も簡単に出来る。量産だって思うが侭だろうし、何ならガードチェイサーだって造れる筈さ」
「す、凄い!」
余りの壊れ能力に感動すら覚えるハジメ。
「丸薬は僕が錬金術を使って造った。魔物の血や肉に神水という希代の回復薬、その成分を抽出して融合させたんだ。飲めばステイタスが上がり、魔物の技能を覚える事が出来る」
「なっ!?」
「本来は死ぬ魔物の肉だ、副作用として飲んで暫くは苦しむだろう。死なないから心配はするな」
「二つ有るのは?」
「中村の分だ。強くなって干渉を跳ね除けろ。教会に利用されない様にな」
「それって、決闘の時に言っていた?」
「ああ、オスカー・オルクスの遺言だな」
ハジメも恵里も息を呑んでしまう。
オルクス大迷宮の名前の由来が人名で、しかも遺言を遺していた事に。
「詳しくは」
そう言いユートは人差し指をハジメと恵里に向け、脳に対して技を放った。
「幻朧拳の要領で脳に直接刻ませて貰った」
「これが……」
「真実?」
二人は茫然自失だ。
「出来たらG3ーXやマイルドが完成したら、二人でハイリヒ王国を脱出しろ。冒険者になって市井に紛れて身を隠せ。必要な力は与えたけど、下手したら教会の狗にされかねないから」
「う、うん」
「死体も残らない形で死んだ振りが一番だろう」
「わ、解ったよ」
言うだけ言ってユートはハジメの部屋から消えた。
「ハジメ君」
「先ずは……」
結局、ヤり始めた。
後にハジメと恵里は迷宮で奈落に落ちた振りをし、生成魔法で造った魔導具により姿を変えて冒険者となって、ハイリヒ王国からは姿を消す。
それから暫くの時間が経って、ユートはユエと香織と雫と愛子を連れてオルクス大迷宮を脱出。
舞台はライセン大峡谷へ移るのだった。
.
別口で書いてる元の文が文字数的に限界で書いてませんが、本来のメタルブランディングを喰らっていたら天之川光輝は胴体が二つに裂けて死にます。
とある世界の概念を籠めて造られている為、痛みは本物だけど死なない非殺傷設定と呼ぶには酷いレベルのシステムで、死なない様になっています。
当然、非殺傷と殺傷でのオンオフも可能。