【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 多少、興が乗って書いてしまった……




HUNTER×HUNTER【魔を滅する転生狩】っぽい噺――ハンター仮免少女ポンズちゃん

.

「ポンズは連れて来なくて正解だよな」

 

 爆弾魔(ボマー)のゲンスルーとサブとバラという三人組との闘いを終えて、()()()()()()()()()()()()を前にユートは独り言ちる。

 

 現在は見習いハンターとして修業を行っている少女……と呼ぶには流石に薹が立つが、ポンズというのはまだ一〇代な彼女はライセンスだけは獲ていて正規のハンターを目指し修練中だ。

 

 ハンター試験にてユートに口説かれたポンズはそれに最終的には頷き、原典とは違って試験合格でハンター証を手に入れている。

 

 まぁ、サトツなる試験官に付いていくシンプルにして大変な最初の試験で結界を張ってポンズを抱くし、その後は合流呪文(リリルーラ)で一気に第二試験会場にポンズと共に跳んで試験を受けるしで、ユートの性欲解消の相手になった事を若干ながら後悔もしたが、約束した契約内容は余りにも美味し過ぎたから思わず初めてを上げてしまったのだ。

 

 契約内容は――

 

 ①ユートはポンズのハンター試験に関しては、自分がそれにより不合格にならないのである限りは最大限の協力を行う事。

 

 ②ポンズが不合格になった場合は次の試験までの一年間、金に糸目を付けず最大限のバックアップ――宿や食事の提供や勉強など――を行う事。

 

 ③ポンズが不合格になった場合は賠償金として壱億ジェニーを支払う事。

 

 ④ポンズがハンターを諦めた場合の将来を最大限にバックアップする事。

 

 ⑤試験に合格してハンター証を獲得した場合は【OGATA】を上げてスポンサーとなる事。

 

 ⑥ポンズが【閃姫】となる場合は他の男と関係を持たない限り受け容れる事。

 

 ⑦合格・不合格に拘わらずポンズに初めてを奪った対価に百万ジェニーを支払う事。

 

 可成り破格の条件にポンズならずとも怪しみはしても飛び付きたくなる。

 

 今期の試験でもユートからの協力が得られるのは魅力的なもの、個人だけでなくハンター試験にチームを組んでいる場合もあったから。

 

 例えばポンズは勿論だけど識り得ない事たが、モリ三兄弟とかヒソカ&イルミがそれだ。

 

 ユートがポンズを気に掛けた理由は彼女の死に纏わる話、既にハンター試験に合格しているのだからもう関係は無いにしても本来の世界線では、今期と来期のハンター試験に落ちた彼女は何故かポックル――今期のハンター試験に合格した一人――と幻獣ハンターをしており、キメラアント編でポックルは脳味噌クチュクチュされた挙げ句の果てに喰われ、ポンズもヘッドショット後に散々っぱら銃で撃たれて後は恐らく全身を美味しく喰われたのであろう。

 

 ひょっとしたら生き残っただとかワンチャン、蟻に転生したんじゃないか? など物議を醸し出してはいたけど、間違いなく顔にぶち込まれていたから死んでいるだろうし、兵隊に喰われたのだから転生も有り得ないと言える。

 

 何より、パームやカイトみたいに後日談があったなら未だしも、キメラアント編の終了で語られる事が無かったからには男塾みたいに実は生きてましたみたいな展開も無いだろう。

 

 肉片すら残らぬ彼女が、最早ユートの識らない原典続編で再び日の目を見る事は有り得ない。

 

 とはいえ、それなりに可愛いポンズがポックルの道連れみたいに無惨な死を晒すというのは些か勿体無いし、彼女がユートの言葉を聞き入れたなら助けてやりたいとも思って声を掛けた。

 

 そして原作単行本のキメラアント編や今行われているハンター試験を読ませ、頭に?を幾つも浮かべながら青褪めるポンズは訊いてくる。

 

『この念ってのを貴方も知ってるの?』

 

 是と答えると、ポンズはその覚悟を決めたみたいに紅い頬と潤んだ瞳で頷いた。

 

 第一試験はユートとヤった後で身嗜みを整え、合流呪文によりサトツのすぐ側に顕れ合格。

 

 第二試験は豚の丸焼きをプハラに食わせ、鮨をユートから教わってメンチからユート共々に合格を言い渡された。

 

 第三試験はユートに抱き抱えられてあの塔からノーロープ・バンジー、当たり前だが単に降りる事が合格条件だからトリックタワーの内部を何時間も掛けて降りる必要は無い。

 

 まぁ、強化系の念能力者以外が工夫もしないでやったら流石に死にそうな高さだけど。

 

 第四試験はポンズにとっての分水領となる訳だけど、ユートと組んでポイントは確りと確保が叶って割と早くに済ませた。

 

 一週間は退屈だったから追っ手や監視を振り切り結界まで張り、食事は勿論ながら摂りつつだったけど睦み事に励んでしまう。

 

 最終試験はユートと対決、あっさり『参った』と宣言されてその時点でハンター試験は合格。

 

 契約通りにしてくれたし、少女から女にされた事も相俟って胸が熱く高鳴ったものである。

 

 勿論、ユートが欲したのは性欲処理をしてくれる相手だとは理解もしているけど、今後はユートがポンズのスポンサーとなる事もあるから会おうと思えば会えるし、ユートは性欲が強いと聞くから会った際に求められるかも知れない。

 

 などと思っていたらハンター試験後も共に行く事になってしまった。

 

 というのもハンター試験に合格しハンター証を得ても、真っ当にハンターとしての仕事を受けられない可能性が高いのだとか。

 

 意味が解らなかったが、ハンターになる為にはハンター試験と後に受ける裏ハンター試験の双方に合格しないといけないと聞いた。

 

 原作は飽く迄も試験の部分とキメラアント編で自分が死ぬシーンのみ閲覧、だから裏ハンター試験なんてのは寝耳に水であったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「裏ハンター試験?」

 

「そう。これは表のハンター試験とは違って何処かの会場で行われる訳じゃない」

 

「じゃあ、どうすれば?」

 

「ハンターには絶対に持たなければならないって必須技能が有ってね、ソイツを修得する事こそが裏ハンター試験に通ったって事になる」

 

「必須技能? 聞いた事が無いわよ!」

 

 必須ならどうして初めからそれを受験者に教えておかないのか? ポンズは焦る。

 

「この技能は一般に流布されない。余りに危険な技能であり、修得そのものは誰にでも可能となっているからだね」

 

「誰にでもって……」

 

「資質により上下するし、修得の時間も変わる。だけど真面目に真っ当に修練を続ければ基本的には誰でも覚えられるんだ。犯罪者が使えるのならそれは犯罪にも使われるだろうよ」

 

「た、確かに……」

 

 それはきっと恐ろしい事。

 

 ポンズは戦慄を覚えながら頬を引き攣らせてしまい、万が一にも自分が巻き込まれたならば……と怖い夢想迄もをしてしまう。

 

「幻影旅団を知っているか?」

 

「え、ええ。何だか危ない盗賊団で勇名を轟かせている――まさか!?」

 

「全員がソレを修得している」

 

「じょ、冗談……じゃないのね」

 

「あの第二試験でメンチに文句を言っていた奴、賞金首ハンターとか言っていたけど笑えるよな」

 

「笑えないわよ」

 

 真に力を持たぬ単なる腕力自慢如きが、ソレを持つ賞金首を相手に何が出来るものか……と。

 

「それで、その力って何なの?」

 

「念」

 

「ネン?」

 

 訝しむポンズ。

 

「体内に在る生体エネルギーたるオーラ、それを使って闘う者を念能力者と呼ぶ」

 

「オーラと言われても……」

 

 ポンズは生まれてこの方、オーラなんて見た事も聞いた事も無いからいまいちよく解らない。

 

「通常、人間の精孔は閉じているんだ。一般人では自分のオーラを見る事すら叶わない」

 

「じゃあ、どうしたら?」

 

「閉じている精孔なら開けば良い」

 

「まぁ、理屈よね」

 

「精孔を開く手段は主に二つ。一つ目は滝に打たれたり座禅や瞑想をしてゆっくり起こす、二つ目は念能力者に念をぶつけられ無理矢理に起こす。前者は早くて一ヶ月、遅ければ一〇年掛かっても上手くはいかない。後者は今すぐにでも叩き起こせるかもしれないが、下手したら肉体に致命的な損傷を受ける可能性がある」

 

 つまりは安全だけど遅く起こすか、危険だけど早く起こすかと一長一短という訳である。

 

「だけど僕は第三の選択肢を提示する」

 

「……へ?」

 

「熟練者が肉体に意識を送り込み、その熟練者が取り敢えず精孔を開くから身体で覚える」

 

「はい?」

 

 意味が解らず間抜けな表情となった。

 

「体験すりゃ判るさ」

 

 ユートが印を組む。

 

「心転身の術!」

 

「あ゛……」

 

 ユートの精神がポンズの肉体に侵食していき、その身動きを封じられてしまった。

 

『え、何よこれ? 動けない!』

 

「現在のポンズの身体の支配権は僕にあるんだ。という訳で余り時間も無いから精孔を開いて基本の四大行、【纒】と【絶】と【練】を連続して行うから確り覚える様に」

 

『四大行ならもう一つは?』

 

「【発】というが、これは基本の三つを修めてからの話だよ」

 

『わ、判ったわ』

 

 ポンズ――INユートが瞑目をすると自然体となって一息吸って吐く。

 

「ハッ!」

 

 澱みが瞬時に払われるとポンズの全身の精孔は完全に開き、薄い靄っとしたナニかが彼女の内から噴き出して迸っていた。

 

「これがオーラだ」

 

『……オーラ』

 

 迸るオーラが単純に噴き出しているだけの垂れ流し。

 

「このオーラを肉体に留めるのが【纒】」

 

『オーラを纏うイメージ? だから【纒】なの。確かに実際に身体でやって貰うと何と無く感覚的に理解が出来そう』

 

 前の世界が丁度、同じJUMP漫画【NARUTO】で山中いのの山中家秘伝忍術『心転身の術』は視たから再現も出来た。

 

 世界の現象、その全ては数式により変換が出来るからこその再現であろう、心転身の術はこうして技術代替が簡単に出来て割かし便利なのだ。

 

「次がオーラを体内に納めて外に出さない技術で【絶】という、これは回復に努めるのにも使えて更に周りから気配を隠せる」

 

『気配を消す……氣殺というやつね』

 

「念能力云々に関係は無く気配を消すって技術は普通に在るからな」

 

 野生児にも近いゴンは可成り得意。

 

「通常以上のオーラを生み出す【練】!」

 

 これはDBを想像すると解り易い。

 

 ドンッッ! と音が鳴ったかと思うとポンズの全身からオーラが最初の迸りより更に噴き出し、正しく戦闘中のZ戦士の如く勢いが強かった。

 

 フィンフィンフィン! なんて音が響いているかの様にオーラは噴き出す。

 

「因みにこの【練】の状態を三〇分以上維持するのが応用技術の一つで【堅】、念能力者同士による戦闘には必須の技術だと覚えておく様に」

 

『応用? そりゃ、基本が在れば応用も在るか。他にも応用技術は在るのよね?』

 

「外部にオーラを移す【周】」

 

 ユートはその場の硝子製コップに【周】を掛けると落とす。

 

『割れない……』

 

 オーラで強化されたコップは割れない。

 

「周囲に自分のオーラを薄く伸ばして気配を掴む【円】、何処か一ヶ所――目が基本だけどオーラを集約する技術が【凝】、オーラの量を調節する事で攻防力を変化させる【流】、【絶】の応用技でオーラを視難くする【隠】、他の一切を【絶】にして一ヶ所にオーラを最大限に収束する【硬】。此処までが普通に知られている応用技になるが、次は僕のオリジナルで【円】と【隠】の複合技術である【然】、周囲に自分のオーラを溶け込ませて自身の身を隠すものだ」

 

『一杯在るのね』

 

 タラリと大粒の汗を流したくなるポンズだが、肉体の支配権が無いから精神的に流す。

 

 【然】はユートがよく使う自身の気配を周囲に溶け込ませるというのに、念能力的な名前を便宜上ではあるけれど付けた技術である。

 

 この世界は念能力がちょっと名の知れた人間には当たり前に浸透している為、本当に気配を消しても簡単にそれを捕まれてしまうから【然】と名付けたこの技術は必須となっていた。

 

 幻影旅団の連中もゴンやキルアの【絶】込みの尾行を気付くだけなら未だしも、割と位置までも特定をしてしまうくらいの使い手な訳だし。

 

 【絶】というか気配を消す行為は自身という、謂わば気配の空白を生み出してしまう。

 

 故に真に強い使い手ならその違和感を感じ取ってしまい、位置の特定までは出来なかったとしても誰かが居る事には気付ける。

 

 因みにG・Iでゴンやキルアが感じた視線に関しても似た事が云え、視線に乗るほんの僅かな気配を感じていたのが直接的に視線としていた。

 

 【隠】に近い事をすれば視線は感じなくなり、他のログインした連中が視線の主を大した使い手ではないと判断したのも頷ける。

 

 嘗て――転生をする前のユートが祖父を相手に、サバイバルな模擬戦をした事があった。

 

 気配を断って近付き、祖父に一撃を加えるべく攻撃をしたけど全く奇襲は上手くいかない。

 

 理由を訊いたら大自然の中で気配を断ったら、その()()()()()()の中に空白が生まれるのだと言われてしまい、それを聞いて愕然となったのを今でもユートは覚えているのだ。

 

 時間経過と共に精神は元に戻る。

 

「若し、あれを全て覚えるのにどのくらい掛かるのかしら? というかユートはどの程度の時間が掛かったの?」

 

「最初の質問は個人差があるから判らないとしか言えない。才能とやる気に満ちていれば一ヶ月で全課程を済ませてしまうかも知れない、やる気は有っても才能が無ければ一〇年は掛かるのかも知れない、才能は豊富でもやる気が無ければ一年は掛かるのかも知れないからね。その上でポンズの理想を云えば一年は欲しい」

 

「一年というのは理論値?」

 

「それでモノにならないなら諦めろって処だよ。単純にそれぐらいでモノにならないならハンターを諦めた方が良い。さっきも言ったが、幻影旅団みたいな連中と当たる場合もあるからな」

 

「……そっか」

 

 余り怖がらせてもアレだから言わなかったが、ネオン・ノストラードみたいに貴重な念能力ならクロロ・ルシルフルが動いて、【盗賊の極意(スキルハンター)】により奪おうとしてくる場合もあるので下手な事はさせられない。

 

 ネオンの時は穏便な方だったが、場合によれば生命を質に暴力で無理矢理に何てのも充分過ぎるくらい有り得るし、ポンズならそれこそ強姦されてもおかしくは無いであろう。

 

 斯く云うユートの念能力も穏便で模倣、強行にやるなら簒奪という手段で念能力を奪える。

 

 【模倣の極致(コピー&スティール)】――対象の魂を掌握する事により相手の能力を模倣か簒奪で獲られる特質系に当たる念能力。

 

 魂を掌握する手段は殺害が一般的なモノだが、女性に対しては性行為にて絶頂をさせるのであっても構わず、模倣の方はその時の場合の手段として用いられていた。

 

 簒奪の場合は完全な形で手に入るが、模倣だと性能が一段下がった状態で手に入る。

 

 制約は逝かせるにせよイカせるにせよ自らが行わねばならず、一度でも模倣乃至簒奪をした相手に対しては二度と使えない。

 

 模倣の場合は相手に能力が残るが、簒奪したら相手の能力は喪われてしまう。

 

「況してや、何処ぞの豚鼻な新人潰しみたいになって三〇年以上も佇んでいてどうするよ?」

 

 ポンズはアレと同一視はされたくなかったのか嫌な表情を隠しもしないが、確かに一年が二年になるくらいなら未だしも一〇年も芽が出ないなら諦めるべきだとは自分でも思えた。

 

「一年はそれなりに長いわね~」

 

 長くも短い一年が今は途方もない。

 

「別にリアルに一年も掛けない」

 

「え?」

 

「念能力とは別に僕は色々な能力を持っててね、閉鎖空間の空間拡張や時間の加速化で修業空間をでっち上げる。僅かな土地で広々とした生活空間を得られ、僅かな時間で延び延びとした修業時間を確保が出来るのさ」

 

「そ、そうなの?」

 

「外の一日が内部時間で三〇日、半月後には凡そ一年間の修業が終わる。ポンズには基礎的な肉体の修練と念能力の修業を同時に行って貰う」

 

 単なるOLとかなら戦闘力が5でも構わない、然しながらポンズは荒事を行うハンターとしての働きをする為、スタミナは勿論だが戦闘力だって無いと困ってしまう事態に陥る。

 

 原典でのキメラアント編みたいに。

 

(まぁ、単純なステータス値はそれなりに上がっているんだけどな)

 

 ユートに抱かれた女性は基礎的な能力値が伸びるので、見た目には変わらないから判らないだけでポンズも戦闘力8程度から80くらいにはなっているのではなかろうか?

 

 別に必ず一〇倍になる訳でもないけど。

 

 更に【閃姫】にも成れば様々な特典が付くし、ユートとの肉体的や精神的な繋がりも深くなる。

 

「それと僕が掛かった時間は少なくとも四大行と応用技は一日もあれば覚えた」

 

「……は?」

 

 余りな科白にポンズは間抜けな表情を晒すしかなかったという。

 

 正確に云うとユートはハルケギニアでも魔力で念みたいな修業をしており、魔力を全身に纏わせる【纒】、魔力を完全に引っ込める【絶】、魔力を通常以上に噴き出す【練】といった具合に行った経験が念修業に活きた訳だ。

 

 【発】に関して云うと時間を掛けたのはどんな能力にするかを決める為で、使い熟す修業自体は其処まで時間は掛けていない。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 そしてポンズの修業は本格化する。

 

 既に【纒】に関しては問題無く出来る様になっていたポンズ、ホテルの一室を一ヶ月ばかり借り切って拡張した空間に加速をさせた時間という、正しく【精神と時の部屋】と云わんばかりの室内で【纒】の修業をしていた。

 

 目標は眠っていても【纒】の持続をする事で、更に重たい衣服や腕輪や具足を着けて呪霊錠による負荷まで加えての基礎能力向上、それをやらながら戦闘技術を伝えて最低限でハンター試験時の一〇倍は強くなれと言ってある。

 

 最大限の目標は半年以内に四大行の内三つと、応用技の全てを完全に扱えるまでになる事。

 

 それが出来たら水見式で系統を調べる。

 

 そしてポンズは頑張って修業をし上手く基礎を修めると、応用技も確りと修めて愈々(いよいよ)【発】へと臨む事が出来た。

 

 普通なら四大行の【纒】【絶】【練】の三つを修めれば【発】に向かうが、やはりユートは応用技までやらせてから【発】に臨ませる。

 

「何だか水の中に異物が出てきたわね」

 

「異物が混じるのは具現化系の証しだな」

 

 蜂を操っていたからてっきり操作系になるのだとばかり思ったが、具現化系だと寧ろ操作系というのは相性としては最悪であったと云う。

 

「それで、どんな能力にする? ポンズは今なら容量(メモリ)が可成り増えてるから割と無茶な能力でも作れるけど」

 

「メモリ?」

 

「ヒソカが密かに言っている念の【発】には覚える許容量が有り、それを満杯にしたら他に能力は覚えられなくなる。それを彼は容量(メモリ)が足りないと表現しているのさね」

 

「ヒソカって、確か色々とやらかしてる奇術師然としたメイクの?」

 

「それ。単純に容量だと判らないならジョイステーションのメモリーカードを考えたら解り易くなると思う」

 

「ああ、メモリブロックを満杯にしたらそれ以上はセーブデータやシステムデータを記録が出来なくなるって事ね」

 

 何と無く理解したらしい。

 

 その後は色々と話し合い師匠の【発】に感銘を受けたポンズは、割かし似た感じのモノを一つと自分で考えた蜂を具現化して様々な毒をその都度で変化系で作るなど――【辛辣な蜂の針(デス・スティンガー)】というのを作ってしまった。

 

 普段から蜂を飼っていたから比較的とはいえど簡単に、更には小さな容量で作れた【発】なだけにこれからは活躍してくれそうである。

 

「という訳で、天空闘技場に行こうか」

 

「天空闘技場?」

 

「そう。彼処なら金を稼ぎつつ実戦的な闘いも出来るからね」

 

 飽く迄も素人レベルではあるが……

 

「僕がスポンサーだから基本的にハンターとしてはお金が掛からないが、当然ながら使い道とかに関しての報告書は出して貰う。まさか下着を買うのに使いました……なんて報告書は出したくないだろうから、自分が使うお金は稼いどいた方が無難だと思うけど?」

 

「そ、そうね」

 

 ポンズは素直に頷いた。

 

 別に湯水の如く使っても、その用途が何処其処の高級レストランで食事しました何て私用であっても構わない、然しながら税金とか諸々の手続きとかも有るのだからお金の流れを把握しておく為にも報告書の提出は必須。

 

 であるからには、私用で使うお金を稼ぐ必要は当然の事ながらあった訳だ。

 

 試しにちょっと豪華な昼食を摂って明細書だって貰っている。

 

 こんな事が可能なのはユートの稼ぎが尋常ではないからであり、普通ならスポンサーが一個人にこんなお金の使い方を許したりはしない。

 

 そんなこんなで天空闘技場。

 

 最初の第一戦目は危なげ無く勝利して受け付けからファイトマネーを受け取り、渇いた喉を潤す為にオレンジジュースを買って飲んだ。

 

「やっすいファイトマネーね」

 

「最初の戦闘では買っても負けても缶ジュースが一本分。次からは負ければ何も得られないけど、勝てばファイトマネーを貰えるよ。確か五〇階で五万ジェニーくらいだったか?」

 

「そうなんだ」

 

「百階を越えればン千万ジェニー、更には個室を貰える様になる。負ければ即チェックアウトだ。二百階に近付けば億は稼げるから頑張れ」

 

「が、頑張るけど……二百階より上は?」

 

「其処からはファイトマネーが出なくなるんだ。完全に名誉だけのバトルって感じだね」

 

「渋いわね」

 

 何百億になる訳では無いと知って苦笑いを浮かべるポンズ。

 

「二百階以上はフロアマスターを目指して闘う。このフロアマスターに成れれば地上の栄誉は約束された様なもんでね、例えば自分の流派を興したり何らかの顧問になったり講演会を開いたり会社を設立したりなんかも酷く簡単になる」

 

「会社……って、まさか貴方が経営をしているって財団の【OGATA】って!」

 

「そう正解。僕は今でもこの天空闘技場に於ける二一人居るフロアマスターの一人だよ」

 

「っ! 【OGATA】が一〇年くらい前に出来たのは知っていたけど……」

 

「勿論だが資金的には天空闘技場で得たお金じゃまるで足りんよ」

 

 とはいえ、フロアマスターになれたなら御宝を進呈されたりもするし、抑々にしてユートが初めにG・Iで得たカードの力を現実――G・I内も現実だけど――で使えるのだから権力者やマフィアなどに対して使ってやれば大金をせしめる事が可能だ。

 

 若返りの秘薬やら一度だけとはいえあらゆる病や怪我を癒す、御偉いさんが大枚叩いても欲しがるモノがG・Iのカードには有った。

 

 バッテラ氏にだけは全く接触しなかったけど、これはゴンが動く余地を奪わない為でもある。

 

 ちょっとした事故でくじら島に漂着してミトに拾われ、彼女を見たユートは血迷ったのか行き成り口説いて当たり前だがやんわりと断られた。

 

 仮にこれが超イケメン青年だったとしてミトの答えは変わらなかったろうが、すぐに転機が訪れたというか凄まじいタイミングでジン・フリークスが我が子を預けに帰ってきたのだ。

 

 どんなやり取りがあったかまでは窺い知れないのだが、戻ってきたミトはユートの口説き文句を受け容れると言い出す。

 

 代わりに仕事などで外す以外は基本的にこの島で暮らし、ゴンが自立するまでは仮の関係で居て自立後はミトが全ての人生を捧げる……と。

 

 意外と早かったがゴンはハンターとして自立、ユートはミトとの契約を遂行済みで満了した。

 

 ミトとしてはゴンがキルアを連れて帰った際、ユートが自分を連れ出すと覚悟も決めていたらしいけど、せめて祖母が亡くなるまではくじら島で暮らして構わないと言われ御言葉に甘えている。

 

 ゴンとキルアが金稼ぎと武者修業と称してこの天空闘技場に来ていたので合流、ウイングとズシの師弟とも出会いつつ目論見の通り稼ぐポンズ。

 

 とはいっても、折角ユートから習った闘い方も披露するまでもなく順調過ぎるくらい順調に上へと登っていた為、流石に中弛みしてきたなと感じてしまうのは仕方がない。

 

 先に百階に入るのはどちらか?

 

 ポンズはキルアと百階行きを賭けた対戦をする事になり、確かに元暗殺者として闘いに慣れていたキルアは強かったけど、この勝負を征したのはガチンコの修業を一年間続けたポンズ。

 

「やっと個室で寝泊まり出来るわ」

 

「勝ち続けないとすぐに転落だけどな」

 

「うっ、判ってるわよ」

 

 浮かれている場合でもなく、ポンズは【纒】の修業に入って【絶】と【練】へ移行していく。

 

 四大行と応用技も修めて【発】も作っており、後は取り敢えず習熟度を上げていくのみ。

 

「って言うか、何だか弱くない?」

 

「そうか?」

 

「私がユートに鍛えられたからそう感じるだけとも思えない。ゴンとキルアは別にしてズシ、彼くらいじゃないかしら強いと言えるのは」

 

「ズシはウイングさんをして一〇万人に一人の才だと言わしめる程に強いさ。実は天空闘技場だと二百階まで行かない限り大した使い手は居ない。居ても大概はさっさと二百階に行ってしまうから当たり難いのさ」

 

 寧ろ、二百階に行ってもピンキリでキリときたら昔はまだ居なかったけど初心者狩りの三バカ――サダソやギドやリールベルトである。

 

 ピンはヒソカのクラスになるけど。

 

「まぁ、早く二百階クラスに行こうかね」

 

「了解」

 

 ゴンとキルアも順調に上がって遂に二百階へと辿り着いたが、如何せん前に二百階へ上がれていたキルアも実際には上がらずに済ませていた為、どんな場所なのかは全く知らなかったりする。

 

「ポンズ様とゴン様とキルア様、それにユート様もいらっしゃいましたか」

 

 二百階のフロアへと入ると殺気がビンビン感じられてゴンとキルアは応戦の構え、ユートは特に何も感じないとばかりに歩いていてポンズは少し汗を流していた。

 

「久し振りだね、それと余り挑発行為は感心しないな……ヒソカ」

 

「「っ!?」」

 

 天空闘技場のスタッフらしき女性の背後から、奇術師ヒソカ・モロウが顔を出してくる。

 

「クックック♠ 久し振りだというのに連れないじゃないか♥」

 

「出たな、ヒソカ!」

 

 私は奇術師と云わんばかりのメイクをしている鋭い瞳にオールバックな赤毛、幻影旅団のNo.4を偽装する気紛れで嘘吐きな変化系能力者ヒソカ。

 

「ふん、この御姉さんとの再会なら幾らでも喜ぼうがお前さんとの再会は嬉しくないね」

 

「本当に連れない♠」

 

 クスクスと笑う奇術師にして道化師。

 

「お前が待っていた目的は判ってる」

 

「へぇ♠ 僕の目的とは?」

 

「ゴンとキルアへの忠告……だろ」

 

 その言葉に驚きを隠せない二人。

 

「二百階に二人は未だ早いってな」

 

「その通りさ♠ どれだけ早いかは彼ら次第ではあるんだけどね♦」

 

 ユートは二人に振り返って言う

 

「そういう訳だからお前らはウイングさんの所で修業をしてこい」

 

「けど!」

 

 ゴンが詰め寄るが……

 

「戯け、今のお前がヒソカに一撃くれるだけでも二万年とは言わんが百年は早い!」

 

「うっ!」

 

 念を覚えてやっと一〇年早いとなる訳だけど、ヒソカの戦闘経歴を考えれば戦闘者として俄かなゴンが敵う筈も無い、だからユートはあっさりとゴンのしつこさを切り捨てた。

 

「訊くが、二人が〇時までに二百階へ登録が出来ない場合どうなる?」

 

「ゴン様の場合は一階からやり直しとなります、ですがキルア様は一度二百階への登録を断られておりますので、今回も登録をなさいませんと登録の意志無しとして追放処分とされます」

 

「ゴンは兎も角、六年前の態度がキルアを追い詰めてるな。二人共、ウイングさんなら教えるのに最適な人材だから恐らく〇時までには戻れる筈、だからとっとと行って来い!」

 

「冗談じゃ……うっ!?」

 

 ヒソカが掌を広げた右腕を前に、ゴンとキルアに……序でにポンズにも掲げながらも【練】をして威圧感を放出した。

 

「進めないだろ? そっちの女の子は合格さ♥ だけど動けなくなった君らは駄目だね、さっきから言っている通り君達には未だ早い♠」

 

 まるで息すら出来ない錯覚に陥る二人は冷や汗をダラダラ流す。

 

「今の君らは極寒の中で素っ裸なのに、それには気付いていない状態なんだ。無理をしたらマジに死ぬからウイングさんの所へ行け!」

 

 最早、キルアは元よりゴンすらも頷くしか無くて撤退を余儀無くされた。

 

「やれやれ、困った坊や達だ」

 

「クックック♥ 君が師匠っぽいのに他人に彼らを委ねるのかい?」

 

「基礎なら僕より最適なのさ」

 

「それは何より♠」

 

 ポンズはヒソカの念に怖れるでもなく真っ直ぐに進んで登録をした。

 

 そんなポンズを見つめる者が居る。

 

「何か用ですか?」

 

 それは部位欠損したり車椅子だったりの三人、ポンズはすぐにそれが新入り狩りの三バカであると認識をする。

 

「どうやら彼女は使えるみたいだ」

 

「その様だね」

 

「クックック……洗礼は要らないな」

 

 車椅子の男がリールベルト、下半身が義体となって杖を付くのがギド、能面みたいな顔で左腕が無い男がサダソだった筈だとポンズの持つユート由来の知識が報せていた。

 

(登録したばかりの私と闘いたい訳ね。私も勝ちは欲しいし、覚えた【発】や体術も実戦で試してみたいから丁度良かったわ)

 

 師匠であるユートの許可はある。

 

 原典でゴンとキルアがウイングから戦闘許可が降りなかった理由は、取り敢えず二百階に登録をする為に【纒】を覚えただけで【練】すら知識に無い二人が闘える筈も無かったから。

 

 ポンズは加速時間内で一年間、修業に費やして体術と【発】を会得しているから後は実戦経験を積む、その為に二百階のキリである三バカであれば相手としては悪くない。

 

 いつでも戦闘OKとして翌日にサダソとの闘いを組まされる事に。

 

「ユート、やっぱりやらないと駄目よね?」

 

「恥ずかしいのは似た制約の僕も同じなんだし、頑張って恥を掻いて来い」

 

「うう……」

 

 因みに何処ぞのゲッター用語ではあるまいし、死んで来いと言ってる訳では勿論だけど無い。

 

 ――『ハジをかく』とはゲッター用語で死ぬ事を意味しているらしいから。

 

 対峙するポンズとサダソ。

 

 審判がルール説明をして『開始』を宣言するとポンズは意を決して左腕を曲げる、手首には何だかレスリングのゴングみたいな物がブレスレットとなって装着されていた。

 

「轟け獣の咆哮、ビーストオン!」

 

 カーン! 軽快なゴングの音が鳴り響いたかと思うと、頭はまるで蜂を模したかの全体防護用のヘルメットに覆われて全身を銀色のスーツに身を包んだポンズが佇む。

 

「我が紫激気は刺激を以て三つの心を一つに! トライアングルスピリット!」

 

 ポカーンとなるサダソ、観客も行き成り何故かヒーロー然としたスーツを纏うポンズを観ていて開いた口が塞がらない。

 

「燃え立つ激気はハンターの証、獣拳戦士ゲキシルバー!」

 

 本来は先に名前を名乗るけど一人でレンジャーも無いから戦隊でもゲキレンジャーでも無くて、『獣拳戦士ゲキシルバー』と名乗るポンズは正義を名乗るのが余り好きじゃないユートの意向で『ハンターの証』とか叫んでいる。

 

 尚、【獣拳戦隊ゲキレンジャー】の空き枠としてゴールドかシルバーがユートの頭に浮かんていたので、【炎神戦隊ゴーオンジャー】に登場したゴーオンウイングスのゴーオンシルバーが女性だったのでシルバーにした。

 

 取り敢えずどうでも良いが、ポンズが変身した時点で【獣拳戦隊ゲキレンジャー】のOPが流れていたりする。

 

 最後の部分は『獣拳戦士ゲキシルバー、ゲキシルバー!」に変わっているけど。

 

 ポーズまで決めるポンズにサダソは右手で指差しながら叫ぶ。

 

「何じゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 それはポンズ本人も実は叫びたいので大いに頷くのであった。

 

 

.




 本当はG・Iで爆弾魔との闘いを書く心算だったのに何故かポンズを掘り下げてしまいました。

 ポンズが主人公、若しくはオリ主辺りに魔改造される噺とか無いかな? キメラアント編ではポックル共々にトラウマ級の死亡だし。



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