【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 ザッと一巡目の世界を、とある少女の視点的に描いたものです。





故に世界は滅亡の道を歩み 我は新たな時の刻み手とならん

.

 一九九九年……

 

 この世に邪悪蔓延る時、必ずや現れるという希望の闘士……聖闘士。

 

 冥王ハーデスを討ち果たしてより九年後、闘争の神マルスと名乗る男が、地球の覇権をアテナと争うべく顕れた。

 

 四天王と火星士(マーシアン)を率いて、聖闘士とアテナに戦争を仕掛けてきたマルスに対抗をする為、黄金聖闘士・射手座の星矢を中心に、龍星座の紫龍、アンドロメダ座の瞬、白鳥座の氷河、鳳凰星座の一輝が再び集い、白銀聖闘士や他の青銅聖闘士も含めて、新たな聖戦として位置付け闘う。

 

 マルスは強大だったが、星矢達なら何とか抑えられそうだと思われた。

 

 だが、行き成り闇の隕石が落ちてきて全てが変わってしまう。

 

 マルスなど及びも付かぬ強壮な闇の小宇宙、それはアテナ……城戸沙織ですら凌駕しており、アイギスで防御してもそれが罅割れてしまう程であった。

 

 アテナの傍に何故か居た二人の赤ん坊を救うべく、光の小宇宙を限界まで燃焼させるアテナ、光の小宇宙を浴びた女の赤ん坊、闇の隕石より溢れた闇の小宇宙を浴びた男の赤ん坊。

 

 闇の子はアテナの許に、光の子はマルスの許に……

 

 聖闘士の纏う聖衣も変質して聖衣石に封じられてしまい、小宇宙には属性が付加された。

 

 マルスの銀河衣(ギャラクシー)すら変質し、闘いは混沌としてしまう。

 

 一時的に聖戦は終わり、男の子は光の牙……【光牙】と名付けられ、アテナが星矢達と共に育てた。

 

 その後、再びアテナの許に現れたマルス達。

 

 どうやら闇の小宇宙を浴びた光牙を狙い、襲撃を仕掛けて来たらしい。

 

 急遽、集う星矢と青銅聖闘士達はマルス達と闘い、これを何とか退けるものの闇の小宇宙による侵食……魔傷を負って小宇宙の燃焼すら困難になった。

 

 氷河は雪原に消え、瞬は世界を廻って人々を癒し、紫龍は全身の感覚を喪って五老峰へと戻って、一輝は行方知れずとなる。

 

 また、他の青銅聖闘士は各々の道を歩み始めた。

 

 そしてアテナは、光牙を育てる為に執事の辰巳徳丸と蛇遣い座のシャイナを伴って、三日月島に住まう。

 

 光牙が拾われて十三年の時が過ぎ、二〇一二年……

 

 マルスによる三度の襲撃が来た。

 

 十三歳となった光牙は、星矢の聖衣石を発動。

 

 ペガサスの聖衣を纏い、マルスに挑んだ。

 

 だが然し、マルスは余りにも強大な闇の小宇宙で、修業をサボりがちであった青銅聖闘士見習い如くが敵う筈も無く、敢えなく敗退して沙織を浚われる。

 

 光牙はアテナを助ける旅に出る事を決意した。

 

 様々な出逢いを、闘いを経験した光牙は仲間と共に強くなったがもう一人の救いたかった少女、アリアを喪ってしまう。

 

 それでもアリアの愛した地球を護る為、光牙は仲間達と新たな十二宮へ挑む。

 

 時に助けて貰い、時には見逃して貰い、時には斃しながら究極の小宇宙セブンセンシズに目覚める光牙と仲間の青銅聖闘士達。

 

 牡羊座(アリエス)の貴鬼

 

 牡牛座(タウラス)のハービンジャー

 

 双子座(ジェミニ)のパラドクス

 

 蟹座(キャンサー)のシラー

 

 獅子座(レオ)のミケーネ

 

 乙女座(バルゴ)のフドウ

 

 天秤座(ライブラ)の玄武

 

 蠍座(スコーピオン)のソニア

 

 山羊座(カプリコーン)のイオニア

 

 水瓶座(アクエリアス)の時貞

 

 魚座(ピスケス)のアモール

 

 立ちはだかるは黄金聖衣を纏う黄金聖闘士、牡羊座の貴鬼と天秤座の玄武だけは味方だったが、その他の黄金聖闘士に苦戦したが、青銅聖闘士達は闘いの中でセブンセンシズに目覚め、マルスの十二宮を駆け抜けて突破していった。

 

 魚座のアモールとの闘いの最中、ペガサス座の光牙とオリオン座のエデンは、仲間に先んじて火星へ。

 

 追って、鷲星座のユナや龍星座の龍峰、小獅子星座の蒼摩や、狼星座の栄斗も黄金聖闘士四人──牡羊座の貴鬼、牡牛座のハービンジャー、乙女座のフドウ、天秤座の玄武──によって火星へと跳んだ。

 

 双子座のパラドクスは、後に捕らえられスニオン岬の牢獄に入れられる。

 

 若き聖闘士に全ては託されたのだった。

 

 全てを目論んだメディアの陰謀は、弟のアモールをも騙して闇の神アプス復活を成し遂げる。

 

 それも我が子エデンの為であったというが、エデン本人はアリアの愛した地球を護りたいというもの。

 

 最期はアプスの攻撃に晒されたエデンを護る為に、消滅してしまった。

 

 青銅聖闘士達はアプスに乗っ取られた光牙を解放するべく闘い、マルスが最後の希望として残していた、射手座(サジタリアス)の星矢まで復活。

 

 全員の小宇宙を以て光牙を目覚めさせる。

 

 光牙から抜け出たアプスは沙織を闇に誘い、光牙は星矢から射手座の黄金聖衣を託され、沙織を救う最後の決戦へと臨んだ。

 

 闇の神アプスは斃され、沙織も救われて、取り敢えずはグッドエンド。

 

 アリアという、優しくも悲しい少女の死は悼めど、闘いは終わった。

 

 更に暫くして、アテナと敵対をする女神パラスが現れて、光牙達の闘いが再び始まってしまう訳だけど、歴史書を読む〝少女〟にはどうでも良い話である。

 

 この闘いで地球の小宇宙が火星に送られたものの、結局は全てが送り返されてしまい、それ処か余剰分を火星から奪ってしまった。

 

 結果として、急激に衰退した火星の同位相次元空間に造られた人造の異界も、どんどん衰退する。

 

「くっくっく、笑わせる。何が地上の愛と平和を護る聖闘士だ……火星はどうでも良いって事か!」

 

 火星側は地上への脱出を画策したが、脱出が可能なのは地球人──旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)人の子孫のみ。

 

 新世界にて生まれ育った亜人や魔獣は、地球に向かう事は不可能だった。

 

 故に人造異界消滅に伴い全てが消え去る。

 

 一〇億を軽く越える亜人や幻獣達は消え、六七〇〇万からなるMMの人間は、火星の大地に投げ出されてしまった。

 

 その人間達も何人もが、何千、何万もが死ぬ。

 

 火星に小宇宙を持って来ようとした影響か、僅かに残った緑と水が生命線。

 

 それで何とか糊口を凌いでいた。地球への移動手段を整えたは良いが、当然の事ながら地球側は火星の者を受け容れなかった。

 

 結局は暴力に訴え橋頭堡を確保して、自分達の権利を訴えようとしたのだが、火星士(マーシアン)の経験から聖闘士が動き、彼らは殲滅されてしまう。

 

 そうだ、火星の幻想世界に住まう人間は、地球上の愛と平和を乱す邪悪の徒だと聖闘士は見做した。

 

 元はと言えば同じ地球人だというのに。

 

 聖闘士という存在を碌に知らず、MMの正義を標榜する魔法使い達は彼らへと闘いを挑んだが、圧倒的な戦力差を思い知らされて、敗退してしまう。

 

 これが彼ら……

 

 ペガサスの光牙

 

 アクィラのユナ

 

 ライオネットの蒼摩

 

 ウルフの栄斗

 

 オリオンのエデン

 

 射手座の星矢

 

 この世代であったなら、まだ交渉の余地もあった。

 

 だけど彼らは聖闘士を既に引退していたし、アテナである城戸沙織も度重なる闘いに疲れ、碌に動けない状態だったという。

 

 結果として、動いたのはずっと若い聖闘士達。

 

「だからどうした! 私達が切り捨てられたのは事実じゃないか!」

 

 だけど、黄金聖闘士と呼ばれる最高位を相手にするには光の速度に達さねばならないと聞く。

 

 〝少女〟は知っていた。

 

 MM寄りの魔法使いは、魔法という武力を以て高圧的な態度で〝旧世界人〟と談じた人達に、威力外交を行った事を。

 

 故に、聖闘士を責めるのは御門違いも甚だしい。

 

 奇しくも、マルスと同じ事をしたのだから火星人を同一に見ても当然。

 

 嗚呼、そうだ。

 

 だけど、それでも……

 

 誰かを怨まねば、憎まねば生きていけなかった。

 

 そして遂に少女は至る。

 

 先祖譲りの頭脳を全て、理数系に注ぎ込んだ。

 

 生まれ付き魔法詠唱が出来ない体質で、使うのなら彼の【闇の福音】の技法を擬似的に術式化した紋様を刻むしかなく、これによって無理矢理に精霊を肉体に取り込んで魔法を使う。

 

 先祖が余りに有名過ぎ、その子孫が魔法を使えない事を許容出来ない者達に、無理矢理に手術された少女だったが、これも力の一つとして受け止めた。

 

 そんな少女が至った道、それは擬似的な光速戦闘と相手の速度を落とす技術。

 

 今は未だ、それを使う為のデバイスが無いが、この時流子を用いた技術なら、間違いなく黄金聖闘士とも戦り合える筈だ。

 

 過去、選択肢を間違った事で滅亡の危機に瀕して、現代の苦痛がある。

 

 ならば、過去へと戻ってやり直すまでだ。

 

 時代はインターネットの普及も済んで、御先祖様がまだ何色にも染まっていない頃が良い。

 

 そもそも御先祖様の失敗が原因の一つだし、此処は過去の御先祖様に責任を取って貰おう。

 

 〝現代〟での名前は捨てて〝過去〟では新しい名前を付け、先ずは過去の世界に馴染もうか。

 

 それから留学という手段で麻帆良の地に、御先祖様が教師をしたという土地で御先祖様を待つ。

 

 その間にもやるべき事は沢山あるのだ。

 

 彼の【闇の福音】を懐柔して、少なくとも中立を保って貰わねばならないし、あの時代なら最高の狙撃手が居た筈、自分と近い頭脳の持ち主とデバイスの共同開発をしなければならないだろうし、必要になる資金も稼がねばなるまい。

 

 何しろ、聖闘士は巨大なグラード財団をバックに持っているのだから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 時を遡り、少女は戸籍を先ずは用意する事にした。

 

 某・国家に入り込んで、戸籍を改竄する。

 

 名前もこの国っぽいものをセレクトし、いざ日本へ留学だと意気揚々と向かったのだが?

 

 地上暦二〇〇三年……

 

 御先祖様がやって来るのは三学期になってから。

 

 その間に様々な準備をしてきたのだが、イレギュラーが発生した。

 

 二学期終了間近の秋に、子供先生が転任してきたのである。

 

 正確には三学期から赴任の予定だが、早目に慣れるべく冬休み前に来たのだと云う。

 

 それは構わないが、その子供先生が御先祖様ではなくて、見た目には明らかに日本人っぽい少年。

 

「(……いったい誰ネ? こんな事ある筈無いヨ)」

 

 黒板に書かれた名前は、緒方優斗だと云う。

 

 少女は全く知らないし、記録に存在していない完全なイレギュラー。

 

 しかも自己紹介で日本人の顔立ちをしていながら、英国はウェールズの山奥に在る小さな村だと宣った。

 

 更には緒方優斗と名乗りつつ、本名はユート・スプリングフィールドだと言い放ってくれる。

 

 後でユート・スプリングフィールドについて調べた結果、確かにネギ・スプリングフィールドの双子の弟として存在していた。

 

「おかしい、御先祖様は確か一人っ子の筈ダヨ」

 

 とはいえ、魔力を殆んど持たない謂わば英雄の子供としては、兄であるネギ・スプリングフィールドの搾り滓に過ぎない。

 

 MMも彼を兄の体の良い弾除け、盾にでもなり派手に散ってくれれば美談として語ってやっても良い程度にしか見てない様だ。

 

「まあ、これなら気にする程でも無いナ」

 

 だが同情は禁じ得ない。

 

「英雄の息子として生まれながら、魔法が使えないが故に辛い人生を歩むカ……他人事じゃないヨ」

 

 自嘲する少女。

 

 ユート少年には可哀想な話だが、少女にしてやれる事など殆んど無い。

 

「いや、例のデバイスなら魔力が無くとも……」

 

 開発中の対聖闘士兵器、あれさえ完成すればユートも相対的に強くなる。

 

「力を与えるから味方になれと誘ってみるカ?」

 

 だが然し、それがとんだ傲慢だと直ぐ思い知った。

 

 何とあのぬらりひょん……別名、近衛近右衛門という学園長が何故かユートの能力調査に、エヴァンジェリン……【闇の福音】を使って軽く襲わせたという。

 

「あれ? 逆だったカ?」

 

 ともあれ、襲われたなら只では済まなかった筈が、寧ろ勝利を収めたとか。

 

 有り得ない!

 

 ナギ・スプリングフィールドに封印されて、魔力も最低限しか使えないとはいっても、相手は真祖の吸血鬼だというのに。

 

 しかも、肉体を粉々に砕いてしまったらしい。

 

 おまけに茶々丸まで。

 

 茶々丸は何故か彼の少年が回収をしてしまう。

 

 そして最大のイレギュラーとなったのは……

 

「莫迦ナ、エヴァンジェリンの封印が破壊されたと云うのカ!?」

 

 正直に言ってしまうなら侮っていたと思う。

 

 この事によって少女は、作戦の一部軌道修正を余儀無くされてしまったのだ。

 

「そんな、これはペガサス流星拳?」

 

 監視カメラでの撮影で、更なるイレギュラーを知る事になったが故に……

 

 

.




 そして二巡目の世界で、少女は最大のイレギュラーに出逢いました。



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