【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 日付けを見たら一昨年くらいに書いて放っていたモノが発掘されたので……


Fate/stay night【魔を滅する転生運】っぽい噺――裏切りの騎士を召喚しました

.

 この世界の暦に於いては西暦ではなく地上暦で二〇〇五年の二月頃。

 

 冬木市と呼ばれている某県の地方都市、其処では五十年に一度の割合で行われる魔術師による抗争――聖杯戦争が前回から僅か一〇年で起きた。

 

 都合、五度目となるそれは『第五次聖杯戦争』と呼ばれている。

 

 尚、一般的には二〇〇四年がこの原典作品の発売日な為に、起きた年もそれに倣うのだろうが、この世界は混淆世界であるが故に、様々な事件が重なった結果として、第四次聖杯戦争が一九九五年に起きてしまったので必然的に一〇年後は二〇〇五年となるだろう。

 

 一〇年後となった背景も異次元人や魔界人や機械人や鬼人が地球征服の為に、次々とやって来たというのがあった。

 

 他にもギリシア神話体系の大神二柱が、立て続けに地上侵攻をやらかしたりと色々とあったのも遠因。

 

 此処はユートの再誕世界のパラレルワールド、ユートが関わらなかった世界故に第四次聖杯戦争では勝利者が無かったし、一九九九年のマルスの乱で闇の隕石は落ち、聖衣石になって色々と変化していて恐らくこれから八年後に、再びマルスが現れて謂わば【聖闘士星矢Ω】の物語が始まるのであろう。

 

 ユートの再誕世界では、第四次聖杯戦争の勝利者はユートとマスターテリオンという形、遠坂 桜は蟲に犯されない侭に救われて、緒方 桜となっている。

 

 アイリスフィール・フォン・アインツベルンの死は免れなかったが、魂は確保をして衛宮切嗣はイリヤスフィールと共に数年間を暮らして死亡、イリヤスフィールはユートの【閃姫】となる事を誓った。

 

 桜を救う約束を取り付けてから死んだバーサーカーのマスター、バーサーカーの死による特殊能力の簒奪を対価としている。

 

 故にユートはランスロットの宝具やスキルなどを、軒並み獲てしまっていた。

 

 遠坂時臣は死を免れて逆に言峰埼礼はユートにより斃され、ギルガメッシュもユートに殺された挙げ句の果てに全ての財をスキルなどと共に簒奪されてしまっている。

 

 ユートはゲート・オブ・バビロンやその鍵に、更には乖離剣エアすらも扱える状態にて手に入れていたし、彼が友と呼ぶ天の鎖も余り使わないけど手に入れていた。

 

 生き残っていたセイバーに関してだが、ユートには莫大な魔力や霊力や念力や氣力のタンクが在ったし、令呪と共に切嗣が譲渡してしまい、閃姫として地上に残り続ける運びとなる。

 

 勿論、【閃姫】にする為には儀式をしなければならず、敢えなくセイバーはユートの毒牙に掛かってしまう。

 

 こうなれば身内であり、特に何もしなくとも食わせてやるが、流石にニートは嫌だったらしく仕事としてイリヤスフィールの護衛役や剣道場の師範をした。

 

 尚、当然ながら騎士王として拒否したがっていたから説得しましたよ?

 

 一番堪えたのは謂わばシミュレーションにて、例えばアルトリアが選定の剣カリバーンを抜かなかった場合、愚王が乱立されるは円卓の騎士達がバラバラに別の王の下で殺し合うは、ハッキリと云えばな事になっていなかった。

 

 つまり一番の望みだったカリバーンを抜かないというのは、余りに愚かな選択だと理解させられたのだ。

 

 そしてその結果は散々たるものでしかなくて、ブリテンの消滅にも等しいとなれば崩れ落ちるしかないであろう。

 

 勿論、所詮はシミュレーションでしかない訳だし、必ずそうなるとは限らないのだが、セイバーに試すだけの気力は沸かなかった。

 

 言われるが侭に抱かれて王としての矜持すら投げ捨ててしまう。

 

 その後は仕事として護衛や師範をやり、腹ペコ王の面目躍如と腹一杯にご飯を食べ、三食昼寝付きな生活を続けていたと云う。

 

 一応の仕事をしていなければ、正にニート騎士王様となっていたかも。

 

 後にユートは召喚をした英霊と【閃姫契約】を結ぶ事で、受肉と必要な霊力を得られるライン作りを行っている。

 

 第一号サーヴァントたるライダー、アストルフォが本来は男なのに男の要素が減り、肉体は全体的に女性となって男の象徴が小さく付いた両性具有化していたのも、この儀式を行うのに最低限必要な要素を満たす為だったのだろう。

 

 アストルフォなら似合うというのもある。

 

 そんなユートが起きなかった第五次聖杯戦争に興味を持ち、ユーキの発案にてユートが関わらなかったという一巡目の世界線に向かって、改めて聖杯戦争へと参戦をする事に。

 

 ユートはライダーであるアストルフォ、それに加えバーサーカー、ランサー、アサシン、アーチャー、キャスター、最後にセイバーを召喚しての参戦だ。

 

 ユートは衛宮士郎のセイバー対策でのセイバーとして……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 もう都合、マスターテリオンを含めて八度目となる呪文を詠唱する。

 

閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ)。繰り返す都度に五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 ――――告げる。

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

 

 少し改変される。

 

聖杯(われ)の寄るべに従いこの意、この理に従うなら応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者……我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ――!」

 

 触媒にはユーキが何処からか手に入れてきた木片、それはアーサー王の円卓の欠片だと云う。

 

 魔方陣が巡り巡り巡り、人影が確かに顕れた。

 

 セイバーのサーヴァントの筈だが?

 

 全身鎧に角っぽいのが付いた兜を被る騎士。

 

 全身鎧ならば第四次聖杯戦争でバーサーカーであるランスロットが着てたが、鎧の形状がまるで違うからランスロットがセイバーとして喚ばれた訳ではない。

 

「召喚に応じ参上した! 成程、お前がオレのマスターだな?」

 

「ああ、そうだ。セイバーで間違いないか?」

 

「ああ、オレこそセイバーに相応しいだろうさ」

 

 一応の確認をしたのは、聖杯の中身が汚れていてはイレギュラーが喚ばれてしまう可能性もあり、更にはメドゥーサみたいな反英雄が喚ばれるなどもある。

 

 そして喚ばれたのは確かにセイバーらしい。

 

 くぐもっているが声の感じから女性。

 

 とはいっても第四次聖杯戦争でも、セイバーだったのはアーサー王でありながらアルトリア・ペンドラゴンという女の子だったし、逸話と英霊が必ずしも合致しているとは限らない。

 

「顔を見せてくれるか?」

 

「これで良いか?」

 

 カシャンカシャンと金属音を響かせて、鎧の一部となりマスクが開く。

 

「な、に……? アルトリアだと!?」

 

「む? オレを父上と見たのか!? マスター?」

 

「アルトリアが父? って事は……モードレッド辺りなのか?」

 

「ちょっと待てマスター、お前はオレを喚び出す心算だったんじゃないのか? 顔を見て、オレがアーサー王の事を父上だと呼んで、それで初めて真名に辿り着いたみたいに……」

 

「実はその通りだよ」

 

「ハァァ?」

 

「これで召喚したからね」

 

 見せられたのは木片。

 

「何だこりゃ? う〜ん、見た事がある様な無い様な微妙な感じがする」

 

「円卓の欠片だな」

 

「んなっ!? こんなモンで適当に喚びやがったのかマスターは!」

 

 バコンッッ!

 

 手にした西洋剣でぶった斬るモードレッド。

 

「アーサー・ペンドラゴンの正当なる後継者のオレ、モードレッドを誰に当たるか判らないこんなモンで? 巫山戯んなよ!」

 

「うわぁ、御立腹だな」

 

「チッ……まあ、喚ばれたもんは仕方がないか」

 

 それでも聖杯戦争に喚ばれたからには、モードレッドも全力を尽くすだろう。

 

 円卓の欠片が召喚媒体、それこそ円卓の騎士の誰が召喚されてもおかしくない媒体であり、しかも誰もがセイバーに召喚されていても不思議は無い資質持ち。

 

 第四次聖杯戦争に於いてバーサーカーのクラスにて召喚され、桜の幸福を対価に令呪で縛られユートに殺されたランスロットだったかも知れない。

 

 或いは【まつろわぬアーサー】を弑逆して権能を得た事で連動し、第四次でも第五次でも正史でセイバーだったアルトリア・ペンドラゴンが召喚されてもおかしくなかった。

 

 ガウェイン卿でも良かったかも知れない。

 

 まあ、アルトリアからしてランサーだったりトリスタンならアーチャーだったりと、違うクラスで喚ばれるのは割とあるらしい。

 

 其処にきてモードレッド……裏切りの騎士である。

 

「にしても、モードレッドってアーサー王の不義による“息子”だった筈だが、体型は鎧で解り難いんだけどな……どう見ても顔立ちは女の子」

 

 チャキン!

 

 モードレッドの手には、腰に佩かれた剣が握られており、それをユートへと突き付ける形になる。

 

「二度とオレを女と言うんじゃねー!」

 

「どう取り繕おうと男は男だし、女の子は女の子にしかなれんよ」

 

「貴様、マスターだからといってオレを舐めてんのか?」

 

「何なら令呪を以て命令をしようか?」

 

「てめえ!」

 

 怒り心頭な様子。

 

「平行線になるだけだな。面倒臭いから賭けをしないか? モードレッド」

 

「賭け……だと?」

 

「どっかのナニかの御約束(テンプレ)ってやつでね、意見が割れたら模擬戦へと突入して、勝った方の意見が採り入れられる」

 

 今は亡き【ラピスな神話】でも似た噺は多かった。

 

「つまり?」

 

「僕と闘え。勝てば以降は君の意見を尊重もしよう」

 

「……オレが敗ければ?」

 

「そうだな……自身の肉体が飽く迄も女の子であると“刻み込ませて”貰おうか。うん、そうしよう」

 

「刻み込むだと? ああ、要はオレとヤらせろって事かよ? 変態野郎が!」

 

「イグザクトリィ」

 

「マスターとはいえ人間が英霊に敵うとか、本気で思ってんのかよ?」

 

「飯は食えば判る。戦闘力は()れば判るさ」

 

「正気とは思えねーけど、良いぜ……やってやる。マスター勝ったら好きにしやがれ。オレが勝ったら全てオレの言う通りにさせて貰うぜ?」

 

「構わん」

 

 柄の形状は【約束された勝利の剣】や【勝利すべき黄金の剣】とにているが、刀身の先に赤い十字が入っていたり、意匠などもやはり異なっていた。

 

「クラレント……か?」

 

 確かモードレッドは宝物庫のクラレントを盗んだ、とか逸話があった様な気もするので訊ねてみる。

 

「ああ、そうさ。ちょいと無断でだが永久拝借をした【燦然と輝く王剣(クラレント)】だ。【不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)】を着けてなければ真名解放も出来るからな、覚悟して挑めよ? マ・ス・タ・ー」

 

 からかう様な口調だが、その目付きからはハッキリと『殺ってやるぜ』とか、物騒な色を湛えている。

 

 因みに、マスターの語尾には(はーと)が付きそうな口調だったり。

 

「さて、封鎖領域(ゲフェングニス・デア・マギー)を展開!」

 

 キンッ! と、一瞬だが甲高い音が鳴り響いたかと思えば、行き成り空が灰色になって周辺も同じ色へと染まっていく。

 

「これは?」

 

「結界だ。封鎖領域って、極めて強力な結界を展開しておいた。この中でならば幾ら暴れても外への影響は無いよ」

 

「へぇ、そいつぁ面白ぇじゃないか」

 

「だから真名解放だろうが何だろうが、派手にいくぜって感じだよ」

 

「……面白ぇじゃないか」

 

 同じ科白ではあるけど、中身は別物であろう。

 

 モードレッドが獲物を前にした獣みたいに、ギラギラした瞳でユートを睨みつつクラレントを構える。

 

 対してユートは……

 

「我は刃金、勝利すべき黄金の刃金。我は鋼、約束された勝利の鋼、我は龍、全て遠き理想郷を望む龍!」

 

 聖句を紡いでいた。

 

麗しの騎士王(アルトリア・ペンドラゴン)!」

 

 それは聖なる紋言。

 

 ユートが力にアクセスをする為の言霊だった。

 

 その腰にはいつの間にか豪奢な鞘に納められた剣が佩かれ、ユートはその鞘から耀ける剣を慣れた風に抜き放つ。

 

 剣身は透明。

 

 風の結界にて偏光されて視認が不可能。

 

「そ、れは……っっ!?」

 

 目を見開き驚愕に染まるモードレッドの顔。

 

「そうだ、エクスカリバーと言えば解るだろ?」

 

「ざっけんな!」

 

 怒り処か憎々し気な表情となり、クラレントを振りかぶるモードレッドではあるが、そんな怒り任せでしかない剣では当たってやる義理は無く、鍔迫り合いすらしてやる理由が無い。

 

 スッと紙一重で躱して、パンッ! と頭を扇で殴ってやった。

 

「痛っ?」

 

「此方も構わんと言ったし賭けは了承、襲い掛かって来たからには取り消しは利かないぞ?」

 

「喧しい! てめえが勝ったら好きにヤりやがれっつったろうが!」

 

 よもや自身を男だと本気で思ってはいないのであろうが、女の子扱いされるのは嫌だとか随分と面倒な性格だ。

 

 恐らく男扱いも嫌がりそう。

 

 何よりアーサー王を憎みながら愛している。

 

(とんだファザコンだな)

 

 ある意味で、母親大好き(マザコン)でありお姉ちゃん大好き(シスコン)であるユートにだけは言われたくない科白であった。

 

 恐らくモードレッドは、他者がエクスカリバーを使うのが癪に障ったとかで、彼の剣は『父上のモノ』という認識が強いのだろう。

 

「だったらコイツなら?」

 

「あ?」

 

「最果てより光を放つモノ……其は空を裂き、地を繋ぐ嵐の錨!」

 

 新たに聖句を紡ぐと光が顕れて、その手には輝ける馬上槍が握られる。

 

「それは!?」

 

「懐かしかろう?」

 

「己れ己れ己れぇぇっ!」

 

 怒りに支配されたのか、モードレッドは出鱈目なる剣閃で攻撃してきた。

 

「駄目だな、全然駄目だ」

 

 嘗てカムランの丘に於けるアーサー王との決戦で、彼の王が使っていた武器はエクスカリバーではなく、この輝ける槍――ロンゴミニアドであったと云う。

 

 これは明らかな挑発だ。

 

「くそ、くそがぁぁっ!」

 

 凄まじいばかりのお怒りで頭に血が上っている状態なモードレッド、ユートは態々このロンゴミニアドを出して怒らせた。

 

 怒りとは力を発揮する契機にはなるが、判断力を鈍らせてその動きも単調になる。

 

 話した結果、元々が沸点は低そうな感じだった上に、愛憎入り交じるアルトリアへの複雑な感情を逆撫で、モードレッドはすっかりと計略に嵌まっていた。

 

 ギィンギィンッッ! と金属が打ち合う音を響かせながら鍔迫り合い、時には引いて時には押して右手の槍で剣を捌きつつ、左手の鉄扇で牽制もしていく。

 

 脚捌きは円を基本とした運動であり、その動きへとモードレッドは巻き込まれていたが頭に血が上り気付かない。

 

 実際に何度も鉄扇により打たれているのにさえモードレッドは気付いていなかった。

 

 本来なら心臓部に鉄扇を突き付けられた時点で【緒方逸真流狼摩派鉄扇術・心止】を使われて敗けは確定だろうけど、モードレッドは気付かずにクラレントを揮ってきている。

 

「このっ!」

 

 バックステップで最大限に下がり……

 

「此れこそは、我が父を滅ぼせし邪剣!」

 

 カシャカシャと変形していくクラレントを、上段にて思い切り振り被る。

 

 それを見たユートは槍、ロンゴミニアドを構えた侭の状態で浮かび上がった。

 

我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)ァァァッッ!」

 

 真っ赤に染まる剣身は聖剣というより魔剣――否や、最早それは邪剣と呼ぶに相応しいモノであったと云う。

 

 愛と怒りと哀しみに満ちた悲しき一撃。

 

「最果てより光を放て……其は空を裂き、地を繋ぐ! 嵐の錨!」

 

 それに対してユートも、ロンゴミニアドの真名解放を行う聖句を唱えて、耀ける槍の力を十全に発揮させてやる。

 

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

 

 二つの究極たる一撃が、二人の中央部でぶつかり合って燻るが、徐々に赤い光が圧され始めた。

 

「ば、莫迦な!?」

 

 所詮は偽物と高を括った果てがコレだ。

 

 其は星を繋ぎ止める嵐の錨であり、世界の表皮を留める塔が真なる姿。

 

 確かに偽物には違いないのだろう、だがアルトリアの力をコピーしたに等しいこの聖槍は確かな能力を発揮している。

 

「圧せよ、ロンゴミニアドォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオッッ!」

 

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

 遂にはモードレッドが、二つの極光が混ざる力の塊に呑まれてしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 微妙に手加減した為か、それで消えるなんて間抜けな話にはならず、ボロボロな状態ながら気絶をするに留まっている。

 

「オレは……敗けた……のか……」

 

「ああ、僕の勝ちだ」

 

「ん? 別に気絶している間じゃなくても拒絶なんざしねーぞ?」

 

「は?」

 

「オレは裸だし、ヤったんだろうに」

 

「まだヤってないよ。そもそも()()()()()()()()()()っつーたろ? 気絶の真っ最中にヤってどうするよ」

 

「ああ、そういや……」

 

 先程の契約を思い出したのか羞恥心に真っ赤なモードレッド。

 

「だから今からヤるんだ。モードレッドは男の振りをしていたし、男に性的な方へ興味も持たなかっただろうから当然、処女、生娘……初めてだろうから手加減はして上げるよ」

 

「チッ、契約だからな……好きにしりゃ良いだろ!」

 

 だけどモードレッドは知らなかった、ユートがある女の子をイカせる為だけに開発した性技の恐ろしさを、それでタップリと教え込まれるのだ、幾ら男の振りをしようとも自身が女性であると云う事実を。

 

 その身の内も外も全てに刻み込まれるであろうユートという()()を。

 

 翌朝、本当に手加減したのかと云わんばかりに疲弊したモードレッドの姿。

 

「うっ、く……」

 

「ああ、目が覚めたか」

 

「オレは……」

 

「随分と可愛らしく啼いていたな」

 

「っ!? そうか、思い出したよマスター」

 

 普段はそんな事など無いにも拘わらず、触れられただけでも感じてしまう肌にまるで全身が性感帯な気分である。

 

 途端に恥ずかしくなった。

 

「処で未だに触られているのは何故だ?」

 

「前戯と後戯は大事だよ」

 

「ま、まぁ……余韻を愉しめるって意味ではそうなのかも知れないがな」

 

 ちょっと困った表情ではあるが今更拒む意味も無いからかされるが侭というか、生娘だったからちょっとした知ったかぶりでしかない。

 

「そういえばモードレッドの願いはなんだ?」

 

「うん? 願い?」

 

「英霊が聖杯戦争の召喚に応じるのは、自身が願いたい事があるからだろ?」

 

「む、それは……」

 

「第四次聖杯戦争のライダーのイスカンダルは、自身の新生に等しい受肉だと言っていた。ランサーのデルムッドは聖杯に掛ける願いというのか、今度こそは主の為にって感じだったか」

 

「成程。確かに当然ながらオレにだって叶えたい願いはあるぜ」

 

「此処で少し残念な御知らせがあってな。実は聖杯の降臨には()()()()()()()()()()()の魂を()べなければならないんだ」

 

「な、なにぃ!? どういう事だよ! そりゃ詐欺じゃねーか!」

 

「最終的には自らが従えたサーヴァントを自決させて、この地に聖杯を喚び出すというのが聖杯戦争の締め括りとなるね」

 

「っざけやがって!」

 

 ギュッと拳を握り締め、怒りに表情が歪む。

 

「とはいえだ、僕は第四次聖杯戦争での勝利者であり、前回の戦争では色々とあって中身が駄々漏れになっていたのを僕が喰らった形だ。その後に神殺し、カンピオーネに成る事で聖杯の力を引き出す権能を獲得した。【万能の杯より溢れ返る(グレイテスト・ジ・ホーリーグラール)】って名前。何よりまた別世界で神器の【幽世の聖杯(セフィロト・グラール)】を取り込む事に成功した。だから僕は可成りの事が出来るんだよな。実際、召喚した六人の願いも叶えているしな」

 

「つまり、マスターはオレらを使い潰す事無く願いも叶えてくれる……と?」

 

「そうだよ」

 

 ちょっと思案をしつつ、モードレッドは頭を掻きながら口を開く。

 

「オレの願いは選定の剣へ挑戦する事だ」

 

「選定の剣ってアーサー王が抜いた【勝利すべき黄金の剣(カリバーン)】か?」

 

「あぁ……」

 

「どういう形で挑戦したい?」

 

「あん? そりゃどういう意味だよ?」

 

 意味が判らないのか、モードレッドはユートの主観で可愛らしく小首を傾げた。

 

 幾ら本人が男を偽ろうと女は女であり、抱いた事でアルトリアに似ているのもあってか可愛らしく映るものである。

 

「過去、アルトリアが選定の剣を抜く前に挑戦をしたいのか? それともシミュレーション的な感じでやるのかって話なんだが……」

 

「まさか、過去に戻れるのか!?」

 

「ああ、万が一にでもモードレッドが選定の剣を抜いた場合は平行世界化して違う歴史を歩む事になるし、多分だがそうなると剪定事象として消される羽目になるだろうがな」

 

「剪定事象?」

 

「平行世界の中でも【発展する先が無い】とされてしまい、平行世界として維持される必要無しと世界に判断され消滅した世界だ。他に完全に完成してしまって【成長の余地が無くなった】世界を含むが、モードレッドが選定の剣を抜いた場合は前者に位置するんだろうな」

 

「オ、オレじゃあ父上みたいにはなれないって云うのかよ!?」

 

「そもそもにして、モードレッドが産まれたのはアーサー王が騎士王としてブリテンの王位に就いたから。その歴史を覆すならモードレッドは産まれなかった筈だろうに」

 

「初めからオレが父上に挑戦なんて不可能?」

 

「だから剪定事象として消される。まぁ、抜けた場合は……だけどな」

 

「マスターはオレでは抜けないと?」

 

「僕はモードレッドで抜けるけどな」

 

「……」

 

「……」

 

「オッケー、オッケー。マスターはオレをおちょくりたいんだな?」

 

 クラレントを抜きながら言うモードレッドに対して、その刃に手を添えて『ジョークだから少し落ち着け』と笑う。

 

「チッ、それで?」

 

「挑戦したいだけなら今すぐにでもやらせよう。それとも抜けたらブリテンの王に成りたいとか言うのかな?」

 

「……そこまでは考えて無かった」

 

「おいおい」

 

 大雑把そうだとは思ったが、やはりそこら辺は大雑把そのものだったらしいモードレッドに呆れるより他は無い。

 

 そもそもにして、モードレッドはどんな王様に成りたいというのは有るのだろうか?

 

「ま、抜けたら考えろ。抜けなかったら放っておけばアルトリアが普通に抜くだろうからな」

 

「判ったよ。抜けなかったら……オレはどうすりゃ良いんだ? 聖杯戦争を勝てば良いのか?」

 

 予め願いを叶えてしまうのはモチベーションに関わるが、モードレッドとしてはそれでやる気を無くすなんて不義理はしたくなかった。

 

 不義理は自分の存在だけで充分なのだ。

 

「とはいえ、僕は普通にセイバーである君よりも前に英霊を六騎喚び出しているしな」

 

「はぁ?」

 

「ライダー、バーサーカーは別世界で。それで以てこの世界でもキャスター対策にキャスターを、ライダー対策にアサシン、アーチャー、ランサーを召喚している。セイバー対策にセイバーたる君を喚び出したから全部で七騎だ」

 

「待て、待て! そういやそんな事を言っていた気もするが……それはあれなのか? 他に七騎ものサーヴァントが居るのかよ?」

 

「というより、僕の陣営がイレギュラーなんだよ。本来のサーヴァントはこの世界で召喚される七騎であり、モードレッドを含む僕の七騎は本来なら存在しない筈のサーヴァントだからね」

 

「マジかよ……って、マスターは事前に誰が喚ばれるのか判っていたのか?」

 

「まぁね。ライダーはメドゥサ。アーチャーならエミヤ。ランサーはクー・フーリン。アサシンは佐々木小次郎(ハサン・サッバーハ)。バーサーカーはヘラクレス。キャスターはメディア。そしてセイバーは……」

 

「オレってか、円卓の騎士の誰かを召喚しようとしたなら父上なのか?」

 

「正解だ」

 

「おもしれーじゃないか」

 

 尚、アサシンは基本的に【山の翁】の誰かしか召喚されないらしいが、キャスターが召喚したというイレギュラーから亡霊をサーヴァントとしての殻に容れて顕れた様だ。

 

 原典での本人曰く……だが。

 

「にしても都合、一四騎のサーヴァントによる戦いになるのかよ。血が騒ぐぜ!」

 

「否、少なくとも一五騎だな」

 

「どういう事だよ、マスター?」

 

「僕の居た世界線は教えた通り僕が聖杯戦争を征した形だ。故に、セイバー以外は全員が消滅している。だけど僕が介入しなかったこの世界線では勝利者は居ない、そしてアーチャーだけは生き残って聖杯戦争の被害者を生ける屍の如く魔力元として喰らって一〇年間を在り続けたらしい」

 

「何だその胸糞ワリーのは? 要は魂喰らいってやつじゃねーかよ!」

 

「それで正解だよ、モードレッド」

 

「くそったれが!」

 

 モードレッドは正義感がある訳でも無いけど、矢張り根は騎士で表情を歪めながら叫んだ。

 

 とはいっても裸ではイマイチ迫力に欠けてしまうし、ユートはモードレッドが気絶し()ている間に用意した女性用の服を渡す。

 

「これは?」

 

「いつまでもマッパで居られても困るからな? それに、明らかに時代錯誤な服装で出歩かれるのも……ね。だから現代人が普通に街中で着ている服を用意したんだ」

 

「ふーん」

 

 迷いも躊躇いも無く着る、服なんて物の着方は余程の物でなければ大概は変わらないからかも知れないが、特に困る事が無いのは聖杯から獲ているこの時代の情報からだろう。

 

「悪かねーな」

 

「仲間が教えてくれた服だからな」

 

「どういう意味だよ?」

 

「君はこの時代の違う世界線で違う魔術師によって召喚されたそうだ」

 

「違う世界線?」

 

「そう。例えばこの冬木市の聖杯は僕の居た世界線では既に僕が手に入れている。つまり僕の居た世界線な冬木市に聖杯は存在していない」

 

「なっ!?」

 

 そういえば確かにユートは自分を含め七騎ものサーヴァントを召喚していて、聖杯を手にしているとも言っていたではないか?

 

「更に別の世界線では第三次聖杯戦争だったか、聖杯を冬木市から奪取した人間が別の地で聖杯――大戦を引き起こしたそうだ」

 

「聖杯大戦だぁ?」

 

「黒の陣営と赤の陣営で一四騎のサーヴァントを召喚、それにより赤VS黒の大戦になったんだと聞いている。其処に前回のルーラーとその時代のルーラーを含む一六騎のサーヴァントが入り乱れて闘ったとか。モードレッドも赤のセイバーとして死霊術師に召喚されたらしいぞ」

 

「マジに?」

 

「勿論」

 

 尚、現在だと味方となる筈のアストルフォは黒のライダーだったから本来は敵である。

 

「うん? 待てよ、つまりマスターは本来の世界線を乱して聖杯大戦を起こす心算なのかよ?」

 

「そうなるな。恐らくルーラーが(じき)に召喚されるだろうし……ね」

 

 第五次聖杯戦争と聖杯大戦は同じ時期に起きた平行世界の出来事、事実として嘗てユートと争ったイスカンダルのマスターが同じ年頃で塔に詰めていたのだから。

 

 つまり、ルーラーの元というか肉体を貸した者も普通に暮らしている筈だから、ルーラーに選ばれる英霊はジャンヌダルクであろうと推測され、そしてこの世界線での第三次聖杯戦争に於いてはルーラーが召喚された事実が無い、故にルーラー天草四郎時貞――シロウ・コトミネも居ない。

 

 コトミネの名前からも判る通り彼のルーラーは言峰璃正と関係性を持つ存在だ。

 

 だが、この世界線の言峰璃正に息子は居るだろうけど義息子は存在していない、第三次聖杯戦争でアインツベルンが召喚をしたのが別物だった――それが分枝の理由。

 

 アインツベルンがアヴェンジャーを召喚するかルーラーを召喚するか、それにより大きく変わったのは間違い無いであろう。

 

「で、それはその聖杯大戦の時に外を出回る際に着ていた服と同じデザインなんだ」

 

「へぇ、世界線とやらが違うのに同じのを見付けて来たのか? こんな短時間で」

 

「まさか。一応はモードレッドの可能性が高いと考えて予めウチで作ってあったんだよ」

 

「オレが喚ばれる可能性を考えてか」

 

 ユートの中の聖杯は謂わばユートという人格を有した聖杯、ちょっと違うけど【デジモンテイマーズ】でデジ・エンテレケイアがクルモンという人格を得たのに近い。

 

 それ故にランダム性が高いとユートに有利な形で召喚される為、見た目はアルトリアな女性体でオレっ娘のモードレッドが召喚されるかも知れないと考えられていた。

 

 実際、これまでに召喚をされたライダーであるアストルフォとバーサーカーたる清姫は明らかにユート好みに男の娘が両性具有化されていたし、ヤンデレは良い具合なツンデレ程度に緩和をされていたくらいには有利に。

 

 特に性格が丸くなった程度の清姫とは異なり、徹底的な肉体改変が凄まじいものがある。

 

 何しろ見た目は女の子でありながら肉体的には確実に男だったアストルフォ、召喚された時は何故か九五%が女性体に変化をしていたのだから。

 

 通常の両性具有はだいたいが九〇%くらいで、射精をすれば女性を相手に子も成せる。

 

 それは肉体的構造上、両性具有には精巣が在って精子も作られているからな訳だが、アストルフォの場合は体内にも精巣が存在しなかったのだ。

 

 精液は生成されているから絶頂に達したのであれば射精で精液は普通に出るものの、調べてみれば彼? 彼女? の精液の中には間違い無く精子が無かった。

 

 両性具有は珍しくはあっても皆無では無いし、それこそエロゲーなら両性具有処か男の娘でさえセ○クスの対象とされ、牝の顔をしながら後ろの穴を掘られて絶頂に至れば分身から精液を吐き出されてしまう。

 

 況してや両性具有は袋を持たず棒のすぐ下には女の部位を持ち、アストルフォが曰わくイク時に同時に駆け抜ける快感は相乗効果で凄まじいまでの気持ち良さだとか。

 

 そして同じ感想を【恋姫†無双】の登場人物の大喬、それとユートは原典を識らない鮎川優奈も息も絶え絶えにベッドの上で呟いていた。

 

 まぁ、本来のアストルフォのモノとはまるで違い通常モードは子供の小指程度に、勃起をしても大人の男の人差し指くらいにしかならない。

 

 そんなだからか、セイバーのモードレッド以外に召喚したサーヴァントも女の子ばかり。

 

 とはいっても、ライダー対策としてアサシンとランサーとアーチャーを召喚し、キャスター対策にキャスターを召喚したのだから必然的に召喚されるサーヴァントは女性となる。

 

 男なのに男の娘だったばかりに両性具有化したライダーのアストルフォ。

 

 男を焼き殺すヤンデレが弱ツンデレ化をしてしまったバーサーカーである清姫。

 

 第五次聖杯戦争のライダー対策として召喚したのはゴルゴン三姉妹、アサシンのステンノにアーチャーのエウリュアレにランサーのメドゥーサ。

 

 正確にはランサーは此方のランサー対策としてスカサハを召喚する筈が、何故だかメドゥーサが子供の姿でランサー枠にてアサシンとアーチャーに乗っかる形で召喚されただけだが……

 

 キャスター対策にはキャスター自身の過去の姿をぶつけるべくメディア・リリィを。

 

 これにセイバーのモードレッドを含めて七騎のサーヴァントが勢揃いする。

 

「で、オレへの報酬は戴くとしてよ。これからどうする? マスター」

 

「サーヴァントは揃ったからそろそろ介入を考えている。セイバーを衛宮士郎が召喚したら展開も急加速をするしな」

 

 間違っても衛宮士郎とは正確の不一致的に合わないが、セイバーとアーチャーとバーサーカーによる三騎が確実に現れる瞬間に立ち会う心算だ。

 

 いよいよ第五次聖杯戦争だとユートは、ニヤリと口角を吊り上げていた。

 

 

.




 ささっと仕上げてみたけど何しろ二年間も放置していたから、最早何が書かれているのか朧気にしか覚えていなかった……

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