【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

49 / 59
 取り敢えず第一部の兵士の娘までの予定。





本好きの下剋上 司書になるためなら手段を選んでいられません【魔を滅する転生本】っぽい噺――メスティオノーラの書を得るユート的な裏技

.

 帰る際にトゥーリが一階まで見送りに来てくれたのだが、何処かしらナニかを期待している様な縋る瞳で此方を見つめてくる。

 

 大人バージョンに戻る……というのもおかしな話だけど、今は一六歳という成人したばかりなのを想定した姿と成っていた。

 

 そんなユートが六歳なトゥーリの頬を優しく触れると、自然と望みが叶ったとばかりに目を閉じ顔を上げて爪先立ちになる。

 

 唇を重ねトゥーリの口内へ舌を侵入させると、トゥーリ自身も舌を使ってユートの舌に絡めてくる辺り学習したらしく、互いに口内へ舌を入れては絡め合って唾液が混ざる音が聞こえた。

 

「ぷはっ!」

 

 六歳児には未だにキツいのか、頬を真っ赤にしながら唾液の橋が架かる口元を見つめる瞳には、ちょっとした疲労感が漂っているみたいだ。

 

 恋人という訳では無いにせよ、愛妾契約をしているからには今やそれは似た様な立場でもある。

 

 ぼんやりと潤んだ瞳でユートを見つめているのだが、ユートとの口付けが相当に気に入ったのかも知れない。

 

「キスが好きになっちゃったかな? 誰にでも求めてはいけないよ?」

 

「ユート様以外には求めません!」

 

 恥ずかしさに顔を背けて呟く。

 

 今のユートは五歳、精神的にも少し引き摺られているからか大人とは云い難いが故に、六歳児なトゥーリの赤らめつつ口元から涎を垂らしながら背ける顔とか、大人ならば結構扇情的な姿に股間のJr.がムクリと反応を示していた。

 

 これで成人前後の美姫であれば子供の精神的に堪え性が無く、思わず押し倒してしまっていたかも知れないと今の自分に戦慄すら覚える。

 

(取り敢えず荒ぶるJr.は帰ったらフリーダか……或いはロジーナに鎮めて貰うか)

 

 元より買い上げたのは其方も期待しての事で、ロジーナ本人もフェシュピールさえ弾かせて貰えるなら……と了承をしていた。

 

 勿論、買い上げたからにはユートのモノとしての義務ではあるものの、対価として可成り御高いフェシュピールをプレゼントしている。

 

 アレだ、マインが本の為にと巫女見習いに成ろうとしたりなど突飛な行動をしていたみたいに、ロジーナも大好きなフェシュピールを弾く為には多少なりマイナスな部分は呑み込んだ訳だ。

 

 ユートの識らない前の織地で、マインに命じられてフェシュピールの時間制限や灰色巫女としての業務をするなど、前の主たるクリスティーネは居ないし、マインがクリスティーネの代わりには成らないと理解した上でヴィルマからの説明も受けて、それを呑み込みマインへの恭順を示したのと或る意味では似ていよう。

 

 事実、ユートはロジーナが好きにフェシュピールを弾ける防音部屋というか、音楽部屋を地下室に増築をして共にセッションなんかもしている。

 

 ロジーナも他の楽器は出来たけどフェシュピールが一番得意で好きだから、基本的にはこれだけを弾き鳴らしてクリスティーネを想う事も。

 

 確かユートが知る限りでクリスティーネの親はヴェローニカ派、いずれは彼のカーオサイファを排除する心算だから下手に潰される前に此方側へと誘うのも考えていた。

 

 尚、前の織地では特にクリスティーネ本人が潰されたという事実は無い。

 

 ヴィルマはユートには懐いているけど、流石にエロティカル方面は早いと思って得意な絵を描かせており、ロジーナにフェシュピールを贈ったみたいに絵画用具一式を贈っている。

 

 ユートは戦闘も得意だが、最初の人生で実家が戦闘と芸事に才能が偏るタイプだった訳だけど、ユートの場合は割合が半々だったから芸事もそれなりに得意だった。

 

 流石に神童扱いの音楽家や画家などには敵わないものの、芸事補正からだいたいの芸術関係では満遍なく得意としている。

 

 当然だが舞踊や彫刻などもだ。

 

 故にロジーナとはセッションを、ヴィルマとは互いに肖像画を描いてとその仲は極めて良好。

 

 だからヴィルマは兎も角、ロジーナであるならばちょっと頼めば微笑みを浮かべながら『良いですよ』と言い、ユートの荒ぶるJr.をフェシュピールを奏でる手で鎮まる様にヤってくれるだろう。

 

 未だ冬を迎えて無いのが不思議な程に。

 

「それなら良いよ、契約したからにはトゥーリはもう僕のモノだから……ね?」

 

 笑顔って実は怖いんだというのを初めて知った気になるトゥーリ、若し貴族の誰かしらが居たら『ゲドゥルリーヒを囲うエーヴェリーベ』などと揶揄をしていたかも知れない。

 

 もう一度ユートは額に口付けをして貴族街の邸へと戻って行った。

 

「ふわぁ……」

 

 そんなユートを見送りながら姿が見えなくなると同時に、腰を抜かしたみたいに女の子座りとなって座り込んで真っ赤な顔の頬を両手で挟む。

 

 特に聴いた事は無かったが、吟遊詩人が唄うという恋物語の一節みたいな遣り取りに潤んだ瞳、うっとりと蕩ける様な表情で思い出すと更に顔が赤く成るのが判るくらい熱く、まるで身食いだというマインみたいに体温が上がった気がした。

 

 漸く取り繕えるくらいに落ち着いて五階の部屋へと戻ったら、鈍いギュンターは未だしも矢張り女性というべきかエーファにはお見通しらしく、ニヤリと口角を吊り上げていたから気付かれたと理解をするトゥーリだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「只今」

 

「お帰りなさいませ、ユート様」

 

 まるで若妻……というより幼妻の如く出迎えてくれたのはフリーダ、ユートが教えた日本的なる作法? 三つ指を床に付けて一種のDOGEZAなスタイルによる御出迎え。

 

 元々の世界では純粋? 祖先に異世界人が居たから微妙だけど日本人なユートなだけに、幼い頃に曾祖父を出迎える曾祖母を見ていたから余計に魂にまでこびり付いた挨拶だったと云う。

 

 因みに、ユートの邸には登録した魔力保持者が一〇〇mばかり近くに来ると判る魔術具を仕込んである為、ユートが帰って来たら普通にフリーダや元灰色巫女やロジーナ&ヴィルマは気付く。

 

 フリーダが代表みたいな挨拶をしてきているのは元灰色巫女は側仕え役、ロジーナは専属楽士でヴィルマは専属画家というのが基本的な役割で、フリーダだけが現在唯一の愛妾契約者だからだ。

 

 勿論ながら専属楽士とはいえ、ロジーナだって求められればエロティカル方面にも手を出すが、役割という意味合いに於いてはフリーダとなる。

 

 正妻が居ない処か人間と数えられていない今だからこそ、フリーダは今の内に妻の如く振る舞うのを目一杯に愉しんでいた。

 

「ロジーナ」

 

「はい」

 

「夕餉の前に少し頼む」

 

「良いですよ」

 

 微笑みを絶やさないロジーナには余裕すらをも見て取れるが、云う程に余裕が有る訳では決して無くて心の中では羞恥心が渦巻いている。

 

 うっすらと汗を流して仄かな朱が頬を差しているし、キュッと握り締められた拳には決意の表れが滲み出ていた。

 

 フリーダがちょっと羨ましそう。

 

 自室の豪奢な天蓋付きベッド、空間を湾曲して造り出したバスルームにキッチンにトイレット、ユート謹製の中身が空間を湾曲されて可成りの量を収納可能な魔術具の冷蔵庫やタンス、飲み水も充分に量を確保が出来ていてスパイスや塩や砂糖や蜂蜜なども沢山有る。

 

 ぶっちゃければ籠城戦が可能な一端の要塞邸とでも呼べるユートの邸の中で、一番特殊なのこそがユート自身の自室という訳だった。

 

 ユートは全裸となり、ロジーナも矢張り全裸で互いに見つめ合っているのだけれど、元の姿に戻ったユートは五歳児だから端から見たらショタにがっつくお姉さんである。

 

 まぁ、五歳で三歳くらいに見えるマインとは逆にユートの場合は、五歳児ながら既に洗礼式から二年が過ぎているくらいには見えるのだが……

 

「あらあら、御立派ですわ」

 

 相変わらずの大人顔負けなJr.は、ロジーナとて花捧げなどしていないから他を知らないけれど、エグモントや神殿長などに孕まされた元灰色巫女はユートのJr.を、明らかに別物だと話している事を鑑みれば花捧げを要求した男が子供に負けてて粗末なモノなのか、或いは逆にユートのJr.こそが花捧げを要求してきた大人より立派なのか?

 

 神殿長達の名誉の為に語るなら後者だ。

 

 強壮たる【C】に犯されて以来、呪われたらしくてエロティカル方面に強さを増していたから。

 

 その後、ロジーナはユートのJr.を手で充分に鎮めてから共にバスルームにてシャワーを浴びた。

 

 夕餉の席に着席をすると食べる前の挨拶をして食べ始める。

 

 基本的に元灰色巫女達とユッテとイルゼは別室で食べ、買い上げられた立場のロジーナとヴィルマとフリーダはユートと席を同じくしていた。

 

 ユートの食卓に並ぶのはユルゲンシュミットで当たり前に食される物では無く、現代日本に於ける美食の限りを尽くしたレシピに拠る物。

 

 前回の織地でローゼマインが齎したコンソメも普通に並ぶし、カレーライスやハンバーグなんかも食卓を彩って食は進む進む。

 

 レシピは当然イルゼが作っていた。

 

 ユート命名なユルゲンシュミットスープなど、旨味も栄養も全てを出し尽くした出汁を捨て去り再びクタクタになるまで煮込むスープであるが、ユートが初めて食べた時にそれは一種のトラウマとなるレベルの不味さ。

 

 だからユートはヘンリック男爵にフリーダとの契約を譲って貰う席にて、フリーダ、ヘンリック男爵、グスタフ、イルゼ、ユッテに某・食戟的な世界とか某・美食世界で培った腕前を披露した。

 

 イルゼの食い付きっ振りが凄いのは当然だが、食を商うオトマール商会の元会頭にして商業ギルドの長グスタフ、その孫娘のフリーダもよく食い付いて来たのだから大成功だろう。

 

 ヘンリック男爵と偶々居た弟君も天上の味だと大絶賛、フリーダとの愛妾契約は基本的に善意に拠るものだったからか、ユートがフリーダに無体を働かない事やオトマール商会から得る予定だった資金援助、それに上級貴族ンクベルク家へ紐付くのは下級貴族な彼からしたら上々の結果。

 

 食後の御茶を飲みながら話をする。

 

「確かユート様は今回、南の貧民層へと足を運ぶ予定でしたわよね」

 

「そうだな」

 

「平民の貧民層が使う森にでも御出掛けされたのですかしら?」

 

 頬に手を添えて小首を傾げるフリーダ。

 

「いや、行く予定ではあったんだが……ちょっとした出来事が在ったから行くに行けなかった」

 

「ちょっとした出来事ですの?」

 

「身食いの女の子を見付た」

 

「なっ!?」

 

 身食いは自身も患う体質、改善などは不可能で寧ろ成長をすればする程に体内の魔力は弥増し、いずれは破滅をする運命であると云ってしまっても過言ではあるまい。

 

 エーレンフェスト領の直近でユートが知り得る身食いは現在で四名、その一人は勿論フリーダの事で次は今日という日に出逢ったマインで、最後の一人は直に知り合いでは無いがギルベルタ商会でベンノ妻であるリーゼ、そしてベンノとリーゼの娘であるリアーネ。

 

 リーゼとリアーネは同じ貴族と契約していて、内容はリアーネが成人式を迎えたら愛妾として邸へ向かう事、だけど余りにも不可思議な邂逅だったから果たして何処に向かうべきかも判らない。

 

「リーゼ様やリアーネ様以来ですか」

 

「そうだな」

 

「とはいえ、リアーネ様はわたくしより一歳上ですが……その方は御幾つですの?」

 

「僕と同い年」

 

「随分と近しい年齢ですわね」

 

 即ち、五歳だと理解した。

 

 リーゼは抑々がベンノと同世代というか恋人としてギルベルタ商会のダプラと成り、ベンノの父が盗賊だか何だかに襲撃を受け亡くなって後に割とすぐ婚約をしたらしい。

 

 ベンノとは二歳下。

 

 今のリーゼは二四歳で、成人式後すぐに星結びをした二人は翌年にはリーゼの妊娠が発覚して、更に翌年にはリアーネが誕生した。

 

 リアーネが七歳で既に洗礼式を終えているし、来年の冬にはフリーダも洗礼式を迎える。

 

 序でにトゥーリも来年の夏に洗礼式だ。

 

 ユートは上級貴族の子息だから別口で洗礼式を行う事になるだろう。

 

「名前はマイン。五歳だけど五歳らしくないな、見た目も頭の中身も」

 

「確かにわたくしも六歳ながら四歳くらいにしか見えませんもの。ですが頭の中身というのはどういった意味でしょう?」

 

「考え方は大人に近い」

 

「まぁ!」

 

 見た目より子供というよりは良いのだけれど、残念ながら『見た目は子供、頭脳は大人』という某・名探偵みたいにはいかない。

 

「わたくし、お会いしてみたいですわ」

 

「機会が有れば会わせるよ」

 

「愉しみにしておりますわね」

 

 そんな話し合いを終えると、フェシュピールを持ってきてロジーナが曲を爪弾き始める。

 

 普段、地下室に設置された音楽ルームでのみの使用を自由な時間に弾く事を許されたものだが、食後のまったりした時間とフリーダの練習時間の時は弾くのを許可されていた。

 

 因みにヴィルマは美術ルームで絵画などを嗜んでいる。

 

 ユートはフェシュピールでは無くハープを取り出して爪弾く、元より弦楽器はそれなりに得意な方だったのはハルケギニアでもハープを使っていたからだし、他にはオカリナやヴァイオリンなど楽器はある程度を熟せていた。

 

 二人が爪弾くは“風のノクターン”という曲で、ユートが行った事のある世界にて女神の転生体がアカペラで唄っていたものを、ユート自身が楽譜へと落とし込んでハープやヴァイオリンやオカリナで曲を奏でられる様にしたのである。

 

 まぁ、そうしなくても実際にはユートも前世の時にゲームでプレイしていたから、楽曲としては割と簡単に落とし込めていた。

 

 そんな奏でられる楽器の音は耳に撫でやかで、芸術を解するフリーダやヴィルマは聴き惚れる。

 

 これで芸術の“げ”の字も解らない人間であったら単なる雑音だろうが……

 

「ハァ……相変わらずの美しい旋律ですわねぇ。ヴィルマもそうは思いませんこと?」

 

「はい。ロジーナは勿論ですが、ユート様も本当にキュントズィール様の御加護が篤いですもの」

 

 キュントズィールは芸術の女神、芸術に造詣が深いユートはこの女神にも祈りを捧げ魔力を確りと奉納していた。

 

 当然、『神に祈りを!』と叫びながらグリコのポーズを取る訳である。

 

 一曲を弾き終えたらロジーナはフェシュピールを置いて、ユートの方もその手にしていたハープをテーブルの上へと置く。

 

「さて、後は風呂にでも入って寝るだけだな……っていうか嫌な顔をするなよフリーダ」

 

「だって、御風呂は苦手なのですわ」

 

「いつも言ってるだろ? 長く浸かり過ぎだよ。そうだな……先ずは全身を洗って、それから湯船に浸かれば湯疲れも逆上せ湯も減るだろう」

 

「そうでしょうか?」

 

「盥を使った時と同じくらいの時間を入っているから疲れるんだよ、フリーダの場合は身食いだから肉体的に他人より弱いからだろうね。僕は特に湯疲れとかしないし」

 

「判りましたわ」

 

 尚、ユートは側仕えに洗わせるという荒業にて元灰色巫女達はユートの年齢にそぐわないJr.の事もよく知っており、流石は一児の母として一度は子を成しただけあり割かしら余裕の態度で背中だけではなく前のJr.をも洗う。

 

 勿論、心得たもので()()()()()()()洗い切るから寧ろ彼女達が汚れる事に。

 

 青色神官に召し上げられては色々とヤられていたからか、Jr.のサイズはどの青色神官よりも大人びていても本体は未だに未成熟な五歳児に過ぎない訳で、寧ろ愉しそうに弄って洗っているのだから喜んで貰えて何よりだった。

 

 風呂から上がったユートは新しく予定を立てるべく思案する為、ベッドの上の真新しくも真っ白なシーツを乱す事も無く座禅を組む。

 

 乙女座の黄金聖闘士がよくやるポーズであり、仏教関係な人間ならば最低でも一度はやる筈。

 

(そういえばこの世界の鏡って銅鏡みたいな金属を磨いた物だったな)

 

 普通の鏡を出してみるか? 硝子は存在しているのだから無理では無いだろう。

 

 折角だからマインと同じ程度には知識チートをしても良いかな? くらいに考えている。

 

(神々に一度は会って話し合いをしておきたい。政変の際に第二王子が第一王子に殺害されて喪われたグルトリスハイト。確かこれはメスティオノーラの書で執務に必要な部分を書き出した断章、取り敢えずツェントには成りたく無いけど書自体は在った方が良さそうだ。マインはメスティオノーラの書を一度は手にしたらしいし)

 

 ユルゲンシュミットの崩壊、それが実際に起きたからこそ織地が解かれて今の織地が在る。

 

 マインとの摺り合わせをしたから情報も多分に在るが、矢張り情報だけではどうにも如何ともし難いのが現状だった。

 

(マインに記憶を見せて貰えばゲートで行けるとは思うんだが)

 

 神雷に打たれそうになっていた少年を助け出した結果、その少年が救う筈だった少女達を代わりに救うべく行った世界で得た魔法の一種だ。

 

 記憶を見る魔法とゲートの魔法、どちらにしても無属性魔法として知られている魔法である。

 

 どうでも良い話だが、あの世界のα世界線にて彼の少年が特に手を出さなかった女性達は可成り居たけど、β世界線のユートは普通に手を出していたからか九人の嫁さんがあたふたしていた。

 

 それから眠りに就く訳だが、眠る時には矢張り添い寝をする役割の者が部屋に入ってくる。

 

 本日は普通にフリーダだった。

 

「ユート様、本日はお疲れ様で御座いました……明日もまた頑張って頂きたく存じますわ」

 

「ああ、シュラートラウムの祝福を以てフリーダに佳き夢の眠りを」

 

 単なる挨拶、魔術を使った訳では無いのだけど毎度の事にフリーダもクスクス笑って横になる。

 

 同じ身食いでもマインとは違いエーヴェリーベの印の子では無いフリーダは、他者の魔力に染まり易いという身食いの特徴こそ普通に持ってはいるものの、染まったら余程の大魔力で以てでないと戻らなくなる訳では無い。

 

 だけどこうして割と頻繁に添い寝をしており、ユートがその度に魔力を流しているから本来ならば一ヶ月もあったら戻るのに、フリーダの魔力はユートの色に染まった侭で戻った事が無かった。

 

 オマケに甘味を与えるみたいに同調薬を飲ませているから、戻る余地も無く染まり切ってしまったが故にか特製同調薬を飲むと、『あま~い』と頬を朱に染めながら熱に浮かされたみたいに文字通り甘えん坊に成る。

 

 まぁ、見た目が四歳児な六歳だからユートの見た目が約九歳~一〇歳だから未だアレだったが、本来の一九〇cm――基本的には一〇cm以上は小さく成っているけど――だったら正しく案件にしか見えない状況に。

 

 ユートが造った特製同調薬は女性がユートに染まった状態で飲むと、軽い媚薬みたいな効果が出る様にと調律を施した正に特製の物だ。

 

 飽く迄も軽い……だから未だに幼女の域を出ないフリーダの場合、ちょっとした興奮状態で全身が熱く感じるものでしかない。

 

 尚、流石に貴族の成人女性には試薬をしていないからスペック通りに成るかは判らなかった。

 

 スペック通りなら全身が快楽的に敏感肌と成るので、触れられただけで快感が全身を駆け巡って処女ですらその破爪に痛みを感じず快感が絶頂と成って意識を飛ばすだろう。

 

 フリーダがうとうととし始めたのでユートも目を閉じて思考を放棄、程なくして寝息が聞こえ始めたので自身も深い眠りに就いた。

 

 シュラートラウムの夢から覚めたユートは隣のフリーダを観る……

 

「ウヘヘヘヘェ」

 

 何だか淑女がしてはいけない表情で不気味でしかない笑みを呟いていた。

 

「金貨の風呂に入る夢でも視たか?」

 

 フリーダの趣味は金貨を数える事、そして貯めていく過程を見る事にあるから金貨風呂なんてのは夢現でも視たいだろう。

 

 とはいっても、フリーダのこういう処も可愛いと思うからこそ契約を譲って貰ったのだが……

 

 朝餉をゆっくりと食べてから各々がやるべき事を行うべく動く。

 

 ユートはマインの家に行く為のオルドナンツ代わりに、元灰色巫女の一人に手紙……というよりは木札を持たせてマイン宅へと向かわせた。

 

 了承の返事を貰ったから夕方前にマイン宅へと行く事になる。

 

 それからは幾度と無く話し合いをしてきたし、家族も含めての会話で日数も良い具合に経った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 漸くユートは本命をマインに話す。

 

「それで、今日の御来訪の理由は神々案件であると木札に有りましたが?」

 

「ああ、神々に会いたい。出来る事ならばメスティオノーラ神だと有り難いな」

 

「そう言われましても……」

 

 マインだって別に神々を個別に喚べるという訳では無いのだ……が、彼女の祈りを気に入られているのも確かだったりする。

 

「どうしてメスティオノーラ様と?」

 

「メスティオノーラの書を手に入れたい」

 

「……え? ユート兄様、まさかツェントに御成り遊ばす御心算ですの?」

 

「何でそんな面倒臭い地位に……と言いたいが、万が一の時の手札は必要不可欠だからな」

 

「万が一?」

 

「君自身が言ったんじゃないか、メスティオノーラの書は疎か魔術具のグルトリスハイトですら、王族は自ら取りに行こうとすらしなかったとな。しかも必要な時に妊娠して資格すら喪ったという自称『御友達』の大領地が姫、とことんまで怠惰な愚か者で心胆寒からしめてやりたくなる屑男な第一王子、己れが得た役割すら碌すっぽ果たせないツェント、ブルーアンファが舞い狂っているらしい第三王子、大事な時期に妻を行き成り孕ませた上に自分達の事を自分達でしない癖に、エーレンフェストの事はエーレンフェストでやれだとか命じる恩知らずな第二王子。子供に他人の悪口を吹き込む恥知らずなツェントの第三夫人。本当に王族って奴らは最低最悪な人間ばかりだろうに」

 

「うぐっ!」

 

 先日、請われるが侭に話した“前回のユルゲンシュミット”だったのだけれど、確かに王族というのは自分勝手が過ぎる莫迦ばっかだった。

 

 マイン自身、最悪な婚約を第一王子から脅迫も同然に押し付けられたのだから。

 

「君が……マインが逆行した理由にも王族案件が有ったからだろう? フェルディナンド様を隣領アーレンスバッハの『未熟なアウブを支える為に婚約者として婿入りする』とか、若しくは現在のアウブ・エーレンフェストを排してアウブに成るかを選ばないとツェント簒奪の容疑者だとかさ、余りにも巫山戯ているとしか思えない事を宣ったらしいじゃないか!」

 

「そ、それは……そうですけど……」

 

「しかも君を第三夫人に? 更にアダルジーザの離宮に住まわす? どうせ魔力の釣り合いも取れない白い婚姻しか出来ないだろう怠惰な愚図が、王族案件を盾に随分と戯けた事を言ったもんだ」

 

「え゛? ユート兄様はアダルジーザ離宮ってのを御存知なのですか!?」

 

「昔はいざ知らず、廃止されるまでの直近である約二〇年くらい前までアウブや次期アウブといった連中用の傍系王族の姫を使った超高級娼館」

 

「のおぉぉぉぉっ! もう少し貴族らしく御言葉を飾って下さいませぇぇぇっっ!」

 

 使()()()だの超高級娼館だの、花の乙女に言う様な科白では決して無い。

 

「まったく、家出しながら実家に泣きついたとかいう元王族が出した姫がアダルジーザだっけか。その離宮が今や高級娼館だったんだから世紀末ってのは現代なのかも知れないな」

 

「どうしてそれを?」

 

「この世界とは異なる世界の夢を司る神の権能、これで過去のユルゲンシュミットを視たからね」

 

 夢を司るオネイロス、他にも眠りを司る神であるヒュプノスの眷属神は居るけれど、彼の神から得た権能の【夢と現とその狭間(ドリーミング・ザ・ワンダーランド)】がこの国の過去を見せてくれる。

 

 未来や既に解かれたという織地までは見る事が叶わぬものの、単純な過去であるならユートが見る事に支障など有ろう筈も無い。

 

「権能?」

 

「神を神足らしめる能力だよ。僕は別世界に於いて“まつろわぬ神”と呼ばれる神々を弑奉り権能を簒奪した神殺しの魔王――カンピオーネだから、僕は様々な神々の権能を保有しているんだ」

 

「怖っ! ユート兄様、怖いですよ!」

 

 只でさえ殺伐としたのが苦手なマインは神々を弑奉るカンピオーネなる存在に、苦手意識も相俟って恐怖にすら感じてしまったのは仕方無い。

 

「基本的に僕が殺るのは人間に敵対的な邪神だ。マインだって例えば眠りを司る神が何かの気紛れでギュンターやエーファやトゥーリを、永遠に覚める事の無い眠りに誘ったらどうするよ?」

 

「ブラッディーカーニバルも辞しません」

 

「だろう?」

 

 “まつろわぬ神”はまつろわぬからこそ神としての特性を垂れ流し、人間に対して何ら保障をする事も無く『受け止めろ』と言い放つ。

 

 事実、まつろわぬアテナは辺りの文明を奪って闇を増大させながら歩いていたし、まつろわぬメルカルトは嵐を吹かせながら練り歩いた。

 

 きっぱりと迷惑千万。

 

「それで、どうやって行くのでしょう? 場所は貴族院ですし、基本的には閉じられていますからシュタープを取りに行く以外で普通は開けられる事は御座いませんよ?」

 

「シュタープを?」

 

「はい。彼処の最奥部に“始まりの庭”へと続いている階段が在りまして、わたくしみいな全属性の者は其処でシュタープを得るのです。中央に鎮座する白い樹木が元神エアヴェルミーン様でして、一定の手法で“始まりの庭”に至ればあの方が目覚めて色々と教えて貰えます」

 

「僕が会いたいのは神であって元神じゃないし、取り敢えず行ってみるしかないんじゃないか? 少し記憶を見せて貰えるかな、マイン?」

 

「それは構いませんが……」

 

 ユートは自身の額をマインの額に付けて魔法を行使する。

 

「よし」

 

 間違い無くあの世界の無属性魔法を発動させ、マインから“始まりの庭”への記憶も得られた。

 

「ゲート!」

 

 光の壁っぽいモノが顕れる。

 

「ふむ……」

 

 ユートが壁に手を伸ばすと……

 

「矢張りかを」

 

 単に壁の向こうに手が出ていた。

 

「どうしました?」

 

「始まりの庭には結界か何かが敷かれているみたいだね。ゲートは便利に使えるけど結界が張ってあると効果を喪うから」

 

「では?」

 

「結界の無い部分にまでゲートで行った後に僕の技で空間を繋げる」

 

「……は?」

 

 ユートは素粒子を操る双子座の聖闘士、それが故に亜空間への入口を作る“異界次元”と呼ばれる双子座の聖闘士の必殺技を持つが、これは可成り使い勝手が良くて本来はテレポーテーションなどが出来ないアテナの結界、これを貫いて割りかしら自由に動き回る事が出来たりする。

 

 敵を異界へと飛ばすだけでなく、自らを異界へと向かわせて改めて出口を繋げれば良い。

 

 尚、冥界一二宮編で冥闘士と成ったサガがそれをやらなかったのは、真の目的が建前となっていた『アテナの首級を取る』では無かったから。

 

 因みに似た事を、蟹座のデストールがあの世とこの世を繋げて行っていた。

 

「あの、御願いが御座います!」

 

「何だ?」

 

「わたくしも“始まりの庭”へと連れて行って下さいませ!」

 

「まぁ、貴族院までは君の記憶を頼りに行くんだから対価に連れて行くのは吝かでも無いんだが、マインが彼処へ行きたい理由は?」

 

 ユートは自身が何かをしたら対価を要求する訳だが、それは一方通行では無く逆に何かをして貰ったなら対価を差し出す。

 

 過不足無く……だ。

 

「神々に本当に会えるなら、メスティオノーラ様でもドレッファングーア様でも、何ならもう余り関係無いアーンヴァックス様でも良いですから御訊きしたいのです。織地を解いた後にわたくしが記憶を保持していた理由と、わたくし以外に記憶を持つ誰かが居るのか……を」

 

「確かに神々案件なんだから、向こうに訊くのが一番手っ取り早いのは確かだね」

 

 頷いて同行を許可する。

 

 ギュンター達は話に入れないので何も言えず、決定権は貴族未満とはいえどもユートに在った。

 

「では行くか」

 

「はい!」

 

 ギュンターもエーファもトゥーリも、一様に見送るしか無かったと云う。

 

 所は変わって貴族院のすぐ傍。

 

「こっからは……異界次元(アナザーディメンション)!」

 

 開かれた亜空間への入口へ躊躇いも無く飛び込んだユートを見て、多少なり逡巡を覚えながらもマインは同じく飛び込んだ。

 

 僅かに上下左右も無い空間を泳いだかと思えば再び開く孔……出口。

 

「本当に“始まりの庭”」

 

 正規の手段で入ればど真ん中な白い樹木が人の姿を取るのをマインは知っている。

 

「じじさま?」

 

 返事は無い、只の樹木の様だ。

 

「じじさまとは?」

 

「ああ、エアヴェルミーン様はツェントの間ではじじさまとも呼ばれてます。でも今回、わたくし達は非正規の手段だったから魔力の確保も出来ていないのでしょう」

 

「ふぅん」

 

 ニヤリと口角を吊り上げる。

 

 ユートは神殿によく行くが故に神話にも堪能、というかカンピオーネだからこそ本能的に神話を気にするのかも、知らず知らずの内に湧き上がってきた衝動の命ずる侭に神々の知識を得ていた。

 

「取り敢えず聖地とも云われ、元神が存在しているこの地は正しく神々の領域に最も近い場所か」

 

「ですから祈りを捧げれば或いは」

 

 貴族院は冬の間だけ開かれる、勿論だが貴族の中には特殊な環境も有るから季節外に受ける者も幾らかは折り、政変後にエーレンフェストは幾人もの貴族を中央に取られた為に、青色神官や青色巫女を還俗させて季節外に貴族院へと通わせたりもしていた。

 

 ヴィルマ達の元主クリスティーネみたいな年齢に問題が無い者は、通常の季節に通常のカリキュラムで貴族院に通っただろう。

 

 取り敢えず今は教師や寮監くらいしか常駐はしていないし、教わる者も基本的に領地へと戻っているだろうから多少は派手でも良さそうだ。

 

 そんな訳で二人はグリコのポーズ!

 

「「メスティオノーラ様に祈りを!」」

 

 シーンと静まり返る。

 

「矢張り来ないか」

 

「うう……」

 

 誰も居ないとはいえ、無意味にあんなポーズを取った精神的な負担は大きい。

 

「さて、一応は試したから次はコレだ」

 

 初めから祈ったくらいで降臨するとは思っていないユートは……

 

「聞こえているか、メスティオノーラ神! 何ならドレッファングーア神でもヴェントゥヒーテ神でも構わん! 降りて来い! 来ないなら此方は手段を選んでいられませんとばかりにこの白い木を叩っ伐る!」

 

 成長の神アーンヴァックスは流石に無いと思って呼ばない。

 

「来ませんね」

 

「聖地なのに聞こえない? 或いは所詮は人間と高を括っているのか? 宜しい、ならば伐採だ」

 

 ユートは久方振りに“精霊珠(エレメンタルティアー)の護符”をベルトと胸元と両手首に装着、これはリナ・インバースが獣神官ゼロスから買い取った“血魔玉の護符(デモンブラッドのタリスマン)”を真似て造った魔導具である。

 

「四界の方角を統べる主 汝ら全ての力以て 我に更なる加護を与えよ」

 

 以前と違う呪文、然しながら嘗てよりも遥かに効果が高まっているのだ。

 

 

 悪夢の王の一片よ

 世界の戒め解き放たれし

 凍れる黒き虚無の刃よ

 我が力 我が身と成りて

 共に滅びの道を歩まん

 神々な魂すらも討ち砕き

 

 

 力が集まる、凍れる程に寒々しい黒い虚無成りし刃、それは神々を討ち、魔王ですら砕く、然れども担い手を滅びの道へと誘う力で、悪夢の王が一片にして世界という戒めから解き放たれた刃。

 

神滅斬(ラグナブレード)ッッ!」

 

 顕れたのは斬艦刀を思わせる黒い大剣では決して無く、まるで三日月を視るかの様な巨大である刃が長い柄に填まった死神の鎌を思わせる。

 

「降りて来ないならそれでも構わん! この木を伐採してユルゲンシュミットを白砂に帰すまでだからな! 言っておくが、この刃は相手を滅ぼし虚無に帰す。仮に又候、織地を解いてもエアヴェルミーンは戻らない!」

 

 声に霊力――寧ろ神氣すら篭めて叫ぶ。

 

 流石に無視は出来ないと覚ったのか、三つの光が蒼空より降りて来た。

 

「何という事を!」

 

 怒りを以て言う光の一つ。

 

「貴方はユルゲンシュミットを滅ぼす心算なのですか!?」

 

「そちらが無視を続けるならな」

 

「くっ、クインタと同じで忌々しい事」

 

 人型をしていないから解り難いが、舌打ちでもしたかの如く呟いた。

 

「それで、わたくし達を呼んだのには理由がありましょう? いったい何の用向きですか?」

 

「そちらにも充分な利が有る話だ」

 

「へぇ? だから強引にでも呼んだと?」

 

「その通り」

 

「良いでしょう。話なさい」

 

「何、ちょっとメスティオノーラの書が欲しいと思ってね」

 

「確かにツェント候補が増えるのはわたくし達にも利は有りましょう。然しならばマインから取得方法を訊くなりして取れば宜しいのでは?」

 

「正規のやり方では間怠っこしい。なので裏技を使って取ろうと思ったのさね」

 

「ウラワザ?」

 

「そう。その為に貴女が必要だった」

 

「わたくしが? まさか、わたくしに書を寄越せとでも言う御心算?」

 

「はっ、それこそまさかだな」

 

「……」

 

 メスティオノーラは鼻で笑うユートに不快感を感じたらしく、鼻白んだみたいで押し黙ってしまうけど溜息混じりに話を再開する。

 

「わたくしの書を得るには御爺様と御婆様の名を得なければならないわ」

 

「そんな設定有ったか?」

 

「設定とか言わないで下さいませ!」

 

 流石にメスティオノーラは憤慨した。

 

「名前がどうのとかは関係無い。先んじて言ったけど僕は神殺しの魔王――カンピオーネなんだ。あの世界でなら円環の理の下、神の力が入ってきてそれがカンピオーネの権能となる。今回の場合だとメスティオノーラ神と僕が一体化をする事によって、擬似的に僕がメスティオノーラ神の力を取り込む事で権能を得る。こうして得た権能ってのは不思議でね、同じ神を弑奉っても同じ権能に成るとは限らないんだ。どうも想像力がそこら辺はモノを云うらしい。逆説的に水の神を殺して炎の権能を得るみたいな無茶は出来ないだろうが、ある程度は好きな権能を得られるって事になる。とはいえ、上手くいくかは五分五分なんだが」

 

「正直、神殺しとかいう危険人物との接触はこれ以上はしたくありませんが……」

 

それは『さもありなん』であろう。

 

「言ったろう、僕が討つのは人間に仇なす邪神であって君みたいな存在じゃ無いとな。それとも、メスティオノーラ神は人間を視ると無性に破壊したくなったり何て有るのか?」

 

「ありませんよ! カーオサイファだって権能がアレなだけでしませんからね?」

 

「それは重畳。エーレンフェストのカーオサイファは一に毒で二に毒、三、四が毒で五が毒だからどれだけ毒が好きなのやら」

 

 エックハルトとハイデマリー、フェルディナンドといった具合に知り合いがカーオサイファから毒を受けている。

 

 他にはライゼガング派閥が毒を受けているとも聴くが、そこら辺に関しては母のガブリエーレと共に迫害された意趣返しだろうから知らない。

 

「まぁ、良いですわ」

 

「それじゃ、交わろうか」

 

 メスティオノーラの光が強くなってユートの中へと入る。

 

「フッ」

 

 超絶美形主人公辺りがやれば様に成りそうな、そんな笑いを浮かべたユートを視た二柱の神。

 

「あ、何かを企んでいますね!」

 

「こうなればわたくし達も追いますよ、ドレッファングーア!」

 

「ええ、ヴェントゥヒーテ!」

 

 何と二柱の神は時の女神と機織りの女神であったらしく、促したヴェントゥヒーテを追い掛ける形でドレッファングーアもユートの中へ。

 

「ああ、あの二人……じゃなく二柱が織地を解いた張本神だったんだ」

 

 マインは呆然と見守っていた。

 

 数時間後、光が溢れたかと思ったらマインによく似た少女と見覚えの無い美女の合計で三人が、まるでレ○プでもされたかの如く状態で息も荒く頬を朱に染め、何より大事な部位から何やら垂れ流して真っ裸な状態で痙攣しているとか。

 

 口からははしたなくも涎を垂らし、涙は枯れ果てたと云わんばかりに跡だけが残っている。

 

 メスティオノーラもだがドレッファングーアもヴェントゥヒーテも、三者三様ではあるのだけれど共通しているのが事後な事。

 

「えっと、この神様はメスティオノーラ様なのですよね? 顔立ちは確かにユート兄様が言ったみたいにわたくしに似てますが、髪の毛が白いのはまさか兄様から心胆寒からしめられたから?」

 

「何を言い掛かりを付けてる」

 

「あ、起きられたのですね」

 

「間違い無くメスティオノーラ神は君と同じ瞳と髪の毛だったが、彼女の神氣を限界近くまで吸ったら今の色に成ったんだよ。因みに瞳は赤くなっている」

 

「何故に?」

 

「神話はマインの方が詳しかろ? メスティオノーラ神は闇の神とその妻の光の女神から色を与えられて白髪は宵闇の如く紺色に、瞳は月光を思わせる金色に変わったのだと云う……だろう?」

 

「ああ、確かに。神の力が減ったから元の色に戻ったのですね」

 

 重破斬を使ったリナ・インバースの髪の毛が、魔力不足により栗色から白髪に成ったみたいに。

 

 まぁ、あれは戻った訳では無いが……

 

「それで権能? はどうなりましたか? これだけヤって失敗しましたは洒落に成りませんよ」

 

「そうですね」

 

「メスティオノーラ様!」

 

 起き上がるメスティオノーラ。

 

「寝物語……みたいに聴かされた貴方の方策に関して確かに我々、神にとっても利が存在しましたから大人しく抱かれましたが」

 

 絶対に嘘だとマインは思った、何故なら確かにメスティオノーラの表情に険は無くて頬を紅潮させており、端から視れば抱かれた羞恥心からなのだろうと思わせるものの、ギュッと自身を庇うかの如く抱き締めるそれは納得尽くでは無かったのだと判らせるからだ。

 

 尚、神々は精神体に重きを置くから精神空間での精神体同士での遣り取りは、実体空間での実体同士の遣り取りと殆んど変わりは無い。

 

 然しながら、今は実体化しているから精神体でのあれやこれやは無かったに等しくなっており、抱けば普通に実体の方は処女だったりする。

 

 外的な要因は反映されているけど。

 

「ユート兄様、結局神々への利とは何だったのでしょうか? わたくしは未だ聴かされてはいませんよ。さぁ、詳らかにして下さいませ!」

 

「簡単な話だ。神々がローゼマインの死後に織っていた織地を解いたのは何故だ?」

 

「え、それは……魔力不足でしょうか」

 

「イグザクトリー。魔力不足でユルゲンシュミットが崩壊したらしい」

 

「うわぁ……」

 

 魔力不足で遂には枯渇してしまい、ユルゲンシュミットは白砂へと還ってしまうのが定め。

 

 然し疑問がある。

 

「あれ? わたくし、一応はツェントに成る為の方法を王族に伝えていましたのに? 幾ら腰が重い王族でもメスティオノーラの書と言いますか、グルトリスハイトが根底から失われたら捜さざるを得ないと存じますが?」

 

 怠惰で他人ばかりを当てにするトラオクヴァールを筆頭にした王族共、それ故にローゼマインがメスティオノーラの書を取りに行く羽目に陥った訳だが、そのローゼマインと推定持ち主だと考えられていたフェルディナンドが高みに上ったからには最早、子を産んだエグランティーヌが取りに行くしか無かった筈だ。

 

 他にも居たのかローゼマインは与り知らぬが、少なくとも大神全属性のシュタープの持ち主とは唯一、第二王子たるアナスタージウスと星を結んで早々に懐妊してくれたエグランティーヌのみ。

 

「あら、マインは記憶が繋がってないのね」

 

「え?」

 

「貴女が魔力暴走を起こしたのはクインタの死んだ時では無くってよ」

 

「……?」

 

 小首を傾げるマイン。

 

 マインの認識上、フェルディナンドの死亡直後に悲哀と絶望から暴走していた。

 

「メスティオノーラ神、止せ!」

 

「え? でも……」

 

「それをマインが知って、記憶が戻った影響によりこの場で暴走したらどうする!」

 

「ああ、そうね。また織地を解かなければならなくなる上に、わたくし達も実体化しているのだから死ぬ程の痛みを受けて高みに帰るわ」

 

 実体化しているリスク、人間と同じ視点で同じ生活に身を置かねばならない。

 

 生活はユートが面倒を見る契約だから良いが、エアヴェルミーンが居る上に礎の魔術の根幹が在る聖地、こんな大切な場所で魔力暴走なんて起こされては堪らないのだ。

 

 マインも気にはなったが、魔力暴走はしたくないので流石に詳らかにはして欲しくなかった。

 

「兎に角、上手く権能を得たら万が一に礎の魔術が再び枯渇してユルゲンシュミット崩壊が迫ったならば、僕がツェントに成ってでも魔力を満たすという契約を交わしたんだよ」

 

「ツェントに!? 大丈夫なのですか? 所詮はエーレンフェストなど最低辺の中領地、負け組の領地が軒並み政変後に順位を落としたり廃領になったから相対的に順位が上がっただけ、上位領地としての振る舞いも出来ない怠惰な領地ですよ。確実に侮られる未来しか見えません!」

 

「さもありなん」

 

 ユートはエーレンフェストを大人バージョンで視てきたから解る、騎士の駄目さ加減や文官共の使えなさ具合やライゼガングの老害、カーオサイファやその取り巻きの腐敗っ振りにあろう事か、アウブ・エーレンフェストの異母弟への縋りっ振りなど兄の威厳は何処にも無い。

 

 流行も特に発信しないし、特産物も見当たらないという見所の欠片も無い底辺な田舎の中領地、それが他領から視たエーレンフェスト領である。

 

「問題は無い。抑々、真のツェントでなければ礎に魔力を直截は注げない。トラオクヴァール王が一〇〇の魔力を毎日注いでも、礎に届いているのは僅か一か二程度らしいからな。確実に一〇年も経ったら崩壊が始まる。そうなれば愚者とて流石に侮っている場合じゃない程度は気付くだろう。血筋に依らず本来のツェント選定を復活したら、いずれは誰かがメスティオノーラの書を手にする日も来るだろうし、そうなれば僕は役御免となるって契約だからな」

 

 底辺領地出身ツェントが嫌ならさっさと新しく誰かがツェントに成れば良い。

 

「それで、結局ですけど得たのですか?」

 

 マインからの問い掛けに……

 

「グルトリスハイト!」

 

 ユートは短い聖句と共にメスティオノーラの書を取り出す。

 

「シュタープを変化させる訳では無いのですね、わたくしのメスティオノーラの書[完全版]の方はシュタープが無いので出せませんよ」

 

 マインのメスティオノーラの書は織地を解いても完全版、先の織地でフェルディナンドの死亡が確定した際に彼の書から英知が流れたのだけど、今の織地の書も不完全ながら存在しているのに対して、マインの書も完全版としての存在を確かに赦されていた。

 

「僕のはメスティオノーラ神から得た権能だから仕様が異なるんだ。勿論だが機能に翳りなど一つも無いからな」

 

「わたくしの図書館に繋がる機能なんてのは本来の仕様には在りません! 何という機能を付け足すのですか!?」

 

 遥かなる高みに存在すると云われている神話のメスティオノーラ図書館、それは書痴なマインからしたら正しく夢の如く施設であろう。

 

「ユート兄様が羨ましい妬ましいです!」

 

「良い子にしていたら連れて行ってやるからさ、マインはちょっとだけ大人しくしていなさい」

 

「はぁい」

 

「ちょっ、勝手な約束をしないで下さいませ! 人間が高みにも上らずに入るだなんて!?」

 

 ユートとマインの遣り取りに大慌てとなって止めるメスティオノーラだが、既にマインの本来は自身と同じく月色をした瞳がキラッキラに輝いてしまっており、これを止めるのが至難の業だというのは似たり寄ったりな性質な彼女からしたら、先ずを以て不可能であると云わざるを得ない。

 

(実体化で能力的には人間と余り変わらないし、まさか威圧をする訳にもいきませんわね)

 

 下手な威圧はマインを高みへと上らせる訳で、そうなると()()()()を犯す羽目に成るだろう。

 

 ユートの契約内容とは先にも述べられた通り、メスティオノーラ側は人間に対しては少なくともユートが指定した者へ、神の力を振るわない事というのが挙げられた内容と成っている。

 

「うう、()()()()……更には図書館まで奪われてしまったのね」

 

 メスティオノーラは世の理不尽を只管(ひたすら)に嘆く事しか出来なかったと云う。

 

 

.




 ラストのアレは内部時間で三年くらいを費やして三柱とヤりまくった結果です。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。