【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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 今回はユーキの間抜けなビギンズナイト……





祐希(ボク)がジョゼットに成った理由(わけ)

.

 ユートが魔法を部屋に掛けると、銀髪の少女が科を作りながら宣う。

 

「お兄様、深夜に部屋に呼び出した上に、扉にロックを掛けてサイレントまで念入りに。ボクはこれから、お兄様に押し倒されて襲われたゃうのかな?」

 

 スパカーンッ!

 

「あ痛ぁぁぁぁぁっ!」

 

 その瞬間、愛刀? たるハリセン丸が少女のド頭にヒットした。

 

「お兄様……。乙女の頭になんて事を!」

 

 少女はハリセンに力一杯に叩かれ、赤くなった部分を擦りながら文句を言う。

 

「ド喧しい! 五歳の僕と三歳のユーキで、んな艶っぽいイベントが起きる訳がないだろう!?」

 

「プーッ! お兄様ってばシエスタを連れ帰って元気になったのは良いけどさ、その切っ掛けを作って上げたんだから、もう少しボクを労って欲しいよ」

 

「ハァ……まあね、それは感謝してるけどな」

 

 ユートは盛大な溜息を吐いて床に座った。

 

 少年の名前はユート・オガタ・ド・オルニエール、現在は五歳で、ド・オルニエール家の次期当主。

 

 実は【受容世界】と呼ばれる世界から、このハルケギニアに転生した【転生者】でもある。

 

 【受容世界】

 

 それはとある世界を俯瞰して因果情報を受け取り、容れる世界。この土地で起きるだろうある出来事を、ユートの世界の人物が受け取って、ソレをメディアで発表する事で、原典を識る一助となった。

 

 ユートの世界に於いて、【ゼロの使い魔】と称される作品として。

 

 そしてユートの目の前に居る少女、名前はユーキ・ジョゼット・ド・オルニエールと云う。

 

 ガリア王国の王子たる、シャルルと夫人の間に生まれた双子の片割れである。

 

 シャルロット・エレーヌ・ド・ガリアの妹だ。

 

 故にユーキが身に付けているアクセサリーであり、マジックアイテムを外す事で青い髪の毛となる。

 

 ジョゼットがド・オルニエールを名乗るのは、先のセント・マルガリタ修道院襲撃? 事件で貴族の子女や修道女、聖女達と共に連れ帰り、サリュート・ド・オガタ・ド・オルニエールとユリアナ・オガタ・ラ・アウローラ・ド・オルニエールの養女となったから、年齢的にユートの義妹と云う事になった。

 

 それでは何故、ジョゼットが名乗るファーストネームがユーキなのか?

 

 理由は二つ。

 

 一つ目は、ジョゼットを名乗り続けてはヴィットーリオやガリアに目を付けられ易くなる。

 

 二つ目はジョゼットが実はユートと同じ転生者で、嘗ての名前が【橋本祐希(はしもとゆうき)】だったから。

 

「それで、義妹の純潔を弄ぶのが目的じゃないなら、何の用? 未だ三歳の身空には夜更かしは辛いんだけどなぁ」

 

「今の内に訊いておきたい事があるんだ」

 

「訊いておきたい事?」

 

「この前は有耶無耶になったけど、ユーキが……否、橋本祐希がジョゼットとして転生した詳細をだよ」

 

 ユーキは目を閉じると、ゆっくり深呼吸をして再び目を開き、真っ直ぐユートを見据える。

 

「ま、何れは聞かれるんだろうとは思ってたよ。兄貴は抜けてる様で、存外と確りしてるしさ」

 

 茶化す気が無くなったのだろう、からかい半分で呼ぶ【お兄様】から【兄貴】に変わっていた。

 

「話すよ。橋本祐希の人生と、転生の理由を……さ」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 【橋本祐希】は、【緒方優斗】の様に江戸時代は武家だったとか、そんな背景がある家柄に生まれた訳ではなかった。

 

 両親は不仲で高校に進学してからは、見たくもない夫婦喧嘩に巻き込まれたくなかったから、学校の近くのアパートを借りて発明品やらプログラムなどの特許使用料で暮らす。

 

 問題はユーキの身体が、基本的に弱かった事。

 

 だからだろうか? 基本的には内向的で、趣味に没頭する時間が多かった。

 

 ライトノベルの世界に逃げ込んで、昔っから好きだった発明品造りをする事によって、外界からの情報をシャットアウトする。

 

 とはいえ、友人が居なかった訳ではないし、彼女だって居た。

 

 飽く迄も趣味に没頭している時だけ、周りの雑音などをシャットアウトしていたのである。

 

 中学二年生になった頃にプログラムや発明品など、幾つかが上手く当たった事で羽振りが随分と良くなっていたから、暮らし自体は悪くなかった。

 

 時折、突拍子もない発明品を造る以外は、特に問題もない素行の良い生徒。

 

 それが橋本祐希が周囲から受ける評価だ。

 

 そして発明品に関しては早い内から、祐希の閃きや造り出す手腕に目を付けた財団が在った。

 

 高倉財団のトップを務める高倉家当主、高倉 譲。

 

 譲翁は既に六十歳を越えており、息子の高倉庄治に当主の座を譲ろうかと考えていた。

 

 譲翁の息子の高倉庄治、彼には妻である高倉秋奈との間に三人の娘が居る。

 

 高倉結芽(二三)

 

 高倉恵那(二〇)

 

 高倉翔子(一六……付き合い出したのは一三)

 

 譲翁は孫娘の一人の翔子に祐希の恋人となる様に、命令をした。

 

 翔子は所謂、大和撫子に育てられた少女であって、内面性などは兎も角として外面は清楚に取り繕っているし、大好きな祖父の言葉に逆らう事は無い。

 

 翔子は祐希に対し、余りに真っ正直にアプローチをしたのだ。

 

『私は祖父の命令で、橋本君の頭脳を手に入れる為、貴方とお付き合いをしたいと思います』

 

 呆気に取られた祐希。

 

 それはもう、いっそ清々しいくらいに裏表が無い言い回し。

 

 ただ譲翁は孫娘を大事にしているのは確からしく、そんな大事な孫娘を使ってまで望まれたと言うなら、それも良いかと考えた。

 

 だけど交際に何の問題も無かった訳でなく、高校に上がる前から祐希に性交を持ち掛けているが、頑として首を縦に振らない。

 

 祐希は所謂、PTSD──心的外傷後ストレス障害というやつであり、両親がデキ婚で結婚後に不仲だった上に、祐希もよく暴力を振るわれたものだ。

 

 それが故に、子供を作る行為に疑問を持っており、性交そのものに忌避感を懐いていた。

 

 まあ、色々とあって何とか翔子との初体験を済ませた祐希は、ある程度ならばヤれる様になったが……

 

 翔子との交際は中学二年から高校二年まで続いて、それは唐突に終わる。

 

 別れたのでは無い。

 

 発明品の事故で、祐希が死んでしまったのだ。

 

 しかも事が事なだけに、表沙汰には出来なかった。

 

 バイオリズムを応用し、性交中に相手の受ける感覚を自分にフィードバックする実験で、切っ掛けは翔子との初体験以後、翔子が至った時の感覚を識りたいという欲求。

 

 発明家だけあり、祐希には知的欲求を抑えられない処があった。

 

 上手くいってシステム化出来れば殴られる痛みを、殴った相手に教えられる様になる。

 

 そうなれば、無駄な争いや暴力主義も減るんじゃないかと考えたのだ。

 

 シャワーを浴びて、ホカホカと肢体から湯気を立ち上らせ、翔子が困った表情でペタリと座り込む。

 

 相互に感覚を共有するのだから、これから翔子が行おうとしている事は祐希の感じた感覚を自分も感じるという事。

 

 確かに翔子とて、男の子の感覚に興味が無いと言えば嘘になる。

 

 しかし、実際にするとなるとやはり躊躇う。

 

「本当にするの?」

 

「うん。頼むよ翔子。他に頼める相手も居ないし」

 

「居たらお祖父様に殺されると思う……」

 

「……かもね」

 

 クスクスと笑い、少しは吹っ切れたのか翔子は祐希の股間へと顔を近付けた。

 

 第一の実験は成功。

 

 誤算だったのは〝味〟までフィードバックしてしまった事だろうか。

 

「ウプ、変な味……」

 

 祐希の絶頂を、していた側の翔子も感じて同じ様に絶頂していた。

 

 同時に、得も知れない味が祐希の舌に感じられる。

 

「み、味覚は切れる様にしておくべきだったよ」

 

「あの、それっていつも私が味わってるんだけど?」

 

 胡乱な目付きで祐希を睨む翔子だが、事の他アレの時の舌が這う感触を気に入ったらしい祐希に、翔子は毎回欠かさずシて上げた。

 

 それで性欲不全な祐希がヤル気を出すのであれば、きっと安いものだと思ったからだ。

 

「アハハ……」

 

 とはいえ、こればかりは祐希も笑って誤魔化すしかない。

 

「と、取り敢えず次の実験に進んでみようか?」

 

 次……本番という訳だ。

 

 祐希は翔子を抱き抱え、ベッドに横たわらせる。

 

 自分は翔子の上に覆い被さると前戯を始めた。

 

 翔子の受ける快楽が祐希にフィードバックされる。

 

 触れてもない祐希の部位に触れられて、感じた事の無い感覚が在った。

 

二人はまるで溶け合う様な感覚を覚えながら、快楽に耽って抱き合う。

 

 祐希が翔子の乳房に触れれば、同じ部位に同じ刺激が奔る。

 

 逆に翔子が祐希の敏感な部位を擦れば、同じ刺激が奔った。

 

 そんな繰り返しを続けて遂に核心へ。

 

 そして二人共が高まっていき同時に果てた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……。いつもと全然違うよ。一緒に男の子も感じちゃった」

 

 肩で息を吐きながら祐希を見るが、祐希は反応を返してこない。

 

「……祐希? 疲れて寝ちゃったの?」

 

 祐希を揺するが起きてくる気配は無かった。

 

「初めて味わった女の子の絶頂、気絶するくらい良かったの? ……え?」

 

 ふとした弾みで触れた、祐希の左胸。

 

「嘘、心臓……動いてないよ? 祐希?」

 

 何度も揺さ振るが、全くの無反応。

 

「嘘、嘘、嘘っ! 起きて祐希! ねぇ、目を開けて……ゆうきぃぃぃぃっ!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あれ? 此処は?」

 

「やるね、色男。腹上死なんて男の野望(ゆめ)なんじゃないかな?」

 

 何故か真っ暗な空間に独りで漂う祐希。

 

 キョロキョロと辺りを見回すと、上の方から声が聞こえてきた。

 

 祐希が見上げると其処には栗色の長髪をポニーテールに結った、紫水晶を思わせる瞳の女性が、白い服を纏って浮いている。

 

「高町なのは──のコスプレ……?」

 

 余りに似ていた為、呟くと桜色の刃が頬を掠めた。

 

「……」

 

「私は高町はるな。なの姉と一緒になんてしないでくれるかな?」

 

「イエス・マム! (妹? そんなの居たっけ?)」

 

 先程のは、はるなの得意としている技のディバインセイバーだ。

 

 祐希は、脂汗を流しながら答えた。

 

「さて、橋本祐希君」

 

「はい?」

 

「貴方は死にました」

 

「は? 何故に?」

 

 理解が及ばない。

 

 死ぬ要因が在ったとは思えない。

 

「あのね? 女の子の絶頂ってさ、初めからそれ前提に創られてる女の子の身体と違って、男の子には負担がキツいんだよ。詰まり、祐希君は翔子ちゃんの絶頂を受けて、心臓が麻痺して死んじゃったの」

 

「マジ?」

 

「大マジ!」

 

 祐希は膝を突いた。

 

「僕は、何てアホな理由で死んだんだぁぁっ!?」

 

 全く同情の余地も無い。

 

「翔子は? 翔子はどうなったんだ?」

 

「あの子は生きてるけど、貴方の死で精神的に壊れちゃったかもね?」

 

「そんな……」

 

 それは二重の絶望だ。

 

 自分は死んで、その所為で恋人が壊れてしまった。

 

「発明の趣旨は良かったんだけどね、使い方が悪かったんだよ」

 

 はるなの声は、既に死んだ身にすら死刑の宣告に聞こえ、いっそ自分も壊れてしまえればとすら思う。

 

「何とかして欲しい?」

 

「出来るのかっ!?」

 

「私はこれでも【異天の光魔神】という神名を戴く神だからね。君が私の依頼を受けてくれるんなら、対価として救けて上げるよ」

 

 【異天の光魔神】

 高町はるなが神化した際に与えられた神名。白き騎士と共に、世界間を跳び回っている異界の天を光照す魔神という意味だ。

 

「依頼? 依頼って、何なんだ?」

 

「とある世界群に、なの姉が選んだ人物が邪神を追い出す為に転生したんだよ。貴方は彼を追って、それを手伝ってくれれば良い」

 

「とある世界群?」

 

「確か、【ゼロの使い魔】の世界。なの姉には負けられないからね、私も君を送り込むんだよ」

 

「どうして僕だったんだ? 僕である必然性が解らないんだけど」

 

「嘗て、君の異時空同位体──詰まりは、別の世界の橋本祐希君が同じくハルケギニアへと転生したんだ。それを見込んで、祐希君を監視していたんだよ」

 

 観ていたなら止められたんじゃないかと思ったが、それが八つ当たりだと気が付いて呑み込んで訊ねる。

 

「二次創作よろしく転生って事は、何か特典が付いたりするのか?」

 

 邪神を追い出せと言うなら力が要る。

 

「私は下級神だから大した力は上げられないけどね、それなりの力は大丈夫」

 

「……ゼロの使い魔かぁ。なら、虚無を使いたいな」

 

「虚無? 私の力だと既存の人物への憑依転生させるしかないよ?」

 

「へ? それって、ルイズかティファニアかジョゼフかヴィットーリオになるしか無いって事?」

 

 はるなは頷く。

 

 誰を選んだにせよ、先に転生したらしい味方と無関係に原作ブレイクしてしまいそうで、それが怖い。

 

 それに下手をしたなら、味方の筈が敵視されてしまうかも知れない。

 

「(そうだ、いっそ全部をリセットしよう。男だった事実も……それに中盤までは関わらないキャラだったらイケるかな?)」

 

 そう考え、ものは試しに言ってみた。

 

「ガリアの虚無の予備であるジョゼットに転生して、初めから虚無に目醒めている状態。呪文も覚えている様にして。あと、僕の科学技術を彼方側で造れる様、何かが欲しい!」

 

「まぁ、それなら大丈夫」

 

「え? 本当に?」

 

 ダメ元で訊いたのだが。

 

「(性別が女の子だったら憧れのあの人の傍に居られるよね)」

 

 祐希は【ゼロの使い魔】だけでなく、色々なライトノベルを読んでいる。

 

 だから知識も豊富だ。

 

「それじゃ、送るよ?」

 

「は、はい。翔子の事を、お願いします」

 

「うん。解ってるよ」

 

「(さようなら、翔子……そして、ゴメンな? 勝手に死んじゃってさ)」

 

 パカッ!

 

「へ?」

 

「御約束(テンプレ)ってやつ……だよ♪」

 

「ウワァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 ニンマリと、魔王な笑みを浮かべるはるなの顔を最後に、橋本祐希はジョゼットへと転生するのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「……と、言う訳だよ」

 

「うん、きっと訊いた僕が莫迦だったんだよ」

 

 ユートは頭を抱える。

 

 まさか、そんなマヌケな死因だったとは。

 

 しかも、恋人が居たなんて思いもよらなかった。

 

 何かヤリまくってるし。

 

「(俺、彼女すら居なかったのになぁ……)」

 

 嘆息をすると……

 

「もう寝るわ」

 

 ユートは不貞寝するべくベッドに入った。

 

「う〜ん。一応、真面目な話だったんだけどな。ふわあ〜あ! 眠い……」

 

 三歳の身には本当に夜更かしが辛い。

 

 ユーキも寝るべくベッドへと入る。

 

 自分の部屋には帰らず、ユートのベッドへ。

 

 翌朝は、起こしに来てくれたシエスタに見られて、ユートはアタフタする事になるのだった。

 

 

 

.




 これが祐希がユーキと成った理由。翔子はいずれ、本編にも登場します。


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