【魔を滅する転生○】シリーズ外伝噺集   作:月乃杜

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本好きの下剋上 司書になるためなら手段を選んでいられません【魔を滅する転生本】っぽい噺――黄金郷での話し合い

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 金髪縦ロールな美幼女シャルロッテはジルヴェスターとフロレンツィアの第二子となる長女で、未だに会った事の無い第一子なヴィルフリートにとっては年子の妹であり、年齢的には三歳でしかないので本来ならユートが会う事も無かった。

 

 然しながらどんな偶発的な奇跡でも起きたか、偶々ではあるが城に上がっていた際に子供の話が出て、あれよあれよと二歳だったシャルロッテとの面会をする事になる。

 

 当初のフロレンツィアは良い顔をしなかったものの殊の他、シャルロッテはユートに懐いてしまったものだから一ヶ月に一回の回数でシャルロッテの勉強を見る話に発展した。

 

 二歳児がすわ転生者か? と思いたくなるくらいに賢くなり、三歳児でしかないシャルロッテはユートのお嫁さんに成りたいとジルヴェスターやフロレンツィアに言い募り、二人は一時期とはいえ頭を抱えてしまったのだと云う。

 

 とはいえ、本来ならば他領へ嫁に出す心算だったシャルロッテを領内に残せるのは悪く無いし、そういった意味に於いては相手がユートなのも決して悪い話では無い。

 

 何故か婿に取るのでは無く嫁入りを希望しているが、これはユートが妾を既に囲っているらしいと知ったシャルロッテが、自分を受け容れて貰う為に必要だと感じたかららしい。

 

 妾とシャルロッテ……どちらかを選ぶとなると自分が捨てられると本能的にピキィン! してしまったのだとか。

 

 ニュータイプも斯くやな女の勘であると思わざるを得なかったユート、実際にシャルロッテとの婚姻を秤に掛けた場合は愛妾契約を交わしているフリーダを選んでいただろうから。

 

 フリーダは性格的にも見た目的にもユートからしたら可成り好みにドンピシャで、既に愛妾契約を交わしていたヘンリックから譲って貰いたいと願ったくらいだ。

 

 こうして、今日も今日とてシャルロッテに対して教師の真似事をしているユートだが、三歳児でしかないシャルロッテは既に基本の三五文字は書けるし読めて、三桁の四則演算は普通に熟せている上にフェシュピールも未熟ながら爪弾けている優等生、しかもユートに誉められたいという欲望を全開にしているから更に躍進していける。

 

 然しながらこれが第一子ヴィルフリートにとっては仇と成ってしまうのだと、この時のジルヴェスターとフロレンツィアは気付いていなかった。

 

 優秀に成り過ぎたシャルロッテを見たからか、ヴェローニカが少なくともジルヴェスター並には育成をしていると、完全に信じ込む切っ掛けとなってしまったのだから皮肉なものであろう。

 

 尚、特に関係性が無いヴィルフリートに対してユートが気を遣うなど有り得なかったりする。

 

 ユートはシャルロッテが興味を惹き易い様に、彼女を膝に乗せた状態でフェシュピールを爪弾いており、耳に心地好い詩を唄って音楽好きに成る様に仕向けていた。

 

 思った通りにシャルロッテは唄ったり楽器を奏でるのを好む様に成る。

 

「おにいちゃまの御歌は大好きですわ」

 

 満面の笑みを浮かべて称賛されるのはちょっとばかり面映ゆい、実際にユートが爪弾いて唄うのは自身の作品では無かったからだ。

 

 とはいえ、ユルゲンシュミットには無い音楽であるが故にかシャルロッテには受けていた上に、フェルディナンドにも可成り大当たりをしたらしくて曲の提供を求められた。

 

 因みに、前の織地でローゼマインが提供をしたモノとは全く被ってはいない。

 

 今回の訪問理由はシャルロッテの勉学以外に、フロレンツィアへの提供品を渡す事にもある。

 

 正確にはエルヴィーラにも渡していた。

 

 それは髪に美しい艶を出す液体――即ちマインが造ったリンシャンであったと云う。

 

 流行とは上から下へと流すのが常道ではあるのだが、マインは前の織地では貴族への伝手なんか持ち合わせていない平民の身食い。

 

 だからギルベルタ商会へ直に製法を売り払った訳だが、矢張りというかエルヴィーラとしては少し面白く無かったらしく『これを下級貴族が独占していただなんて』と溢していたのだとか。

 

 それに新作の紙を紹介した時もギルベルタ商会の御得意先――下級貴族達が購入している物を、上級貴族である自分が後から同じ物を使うというのを厭うた科白を呟いていた。

 

 なので、マインからの依頼を受けて予め上級貴族であるエルヴィーラと領主の第一夫人フロレンツィアへ渡しておく。

 

 ヴェローニカ? 知らんがな。

 

 ジルヴェスターもフロレンツィアの髪の毛の艶を見て思わず元気になったらしい。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートを敵視する少年が居る。

 

 名前はコルネリウス・ゾーン・リンクベルクと云うユートの畑違いとなる兄、リンクベルク家に於ける三男坊で嘗て母親のエルヴィーラが第二夫人と第三夫人の争いの仲裁を余儀無くされていた上に、カルステッドが事在る事に第三夫人であるローゼマリーを擁護するから、リンクベルク家を乗っ取るべくヴェローニカから送られた第二夫人トルデリーデの味方をせざるを得なかった。

 

 その精神的な負担は半端じゃない。

 

 それが故にコルネリウスはローゼマリーの息子として、如何にカルステッドの血を引こうと関係無いと云わんばかりに敵視をしていた。

 

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはこの事だろう、長男エックハルトがユートを認めている節があるのも癪に障る様である。

 

 当然ながらユートもそんなコルネリウスと仲良くしたいとは思わないので、エックハルトや次男であるランプレヒトは兄上と呼ぶがコルネリウスは完全に呼び捨てだ。

 

 現在、リンクベルク家の邸の庭先にてユートとコルネリウスが木刀と木剣を構え対峙している。

 

 すぐ近くにはエックハルト。

 

「この模擬戦を以てお前達の仲違いは一旦終わらせて貰うぞ」

 

「はい、エックハルト兄上」

 

「……はい」

 

 ユートと違ってコルネリウスは不承不承だと云うのが丸判りな態度だ。

 

 然しながら勝てば自分が優位なのだと解らせる事が叶うとして、今回の脳筋一直線な決闘をする事をコルネリウスは了承した。

 

「それでは、始め!」

 

 エックハルトが叫ぶ。

 

「ユートユウガ、其方に……」

 

 何故か始まりの合図が出たにも拘わらず口を開くコルネリウスに……

 

「哈っ!」

 

「ゲフッ!」

 

 加速――【魔法先生ネギま!】的に瞬動術――して腹へと一撃を入れた。

 

「ガハッ!?」

 

 その衝撃と内部に浸透される痛みに膝を付いたコルネリウス。

 

「ひ、卑怯だぞ……」

 

「何が?」

 

「此方が喋っている内に……」

 

「阿呆か」

 

「な、なにぃ!?」

 

「其方はディッターの鐘が鳴ってもペチャクチャとお喋りに興じる阿呆よ」

 

 何やら煽り文句でも言う心算だったのかも知れないが、始まりの合図がエックハルトの口から出た時点で動くのは当たり前。

 

「勝者、ユートユウガ!」

 

「っ!?」

 

 エックハルトの裁定に驚愕して目を見開いているけど、これがランプレヒトやカルステッドであっても変わらぬ裁定であろう。

 

「それじゃ、エックハルト兄上。僕は用事が有るから行かせて貰います」

 

「ああ、ユートユウガ。面倒を掛けてしまって済まなかったな」

 

「いえ」

 

 その後、エックハルトはコルネリウスに未熟者として愛の鞭を伴う訓練を施したのだとか聴く、帰ってみたら何故かズタボロなコルネリウスが居たから間違いなく本当なのだろうが、その際には奴にギロリと睨まれた。

 

 解せぬ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 トゥーリを連れて懐かしの? 南の貧民区画に在る五階建て建築物の五階、トゥーリやマインの実家へとやって来ていた。

 

 五階建てとは云うが、実際には一階から二階は領主一族による大魔術――エントヴィッケルンにより創られた白の建物で、三階から五階は平民の大工が建て増しをした木造の建築物となる。

 

「久し振り父さん、母さん」

 

 ハグをしながら笑顔で言うトゥーリに母親たるエーファは仕事柄で偶に会うものの、父親であるギュンターは南門を護る兵士という職業だったから本当に久し振り、マインがよく求めるぎゅーっによりトゥーリを厚く出迎えてくれた。

 

「さて、ギュンターにエーファ。今回の訪問だけど前にも言った通り、マインは我が父たるカルステッドと第一夫人エルヴィーラ様の実子として、七歳……というか八歳で洗礼式を行って貴族籍を得る事となる」

 

 ギュンターもエーファも繰り返された説得や、放置した場合のデメリットが貴族に成った場合のメリットを完全に上回るし、何よりも家族だけの問題で済めば御の字という周りを捲き込む事になるのは矢張り手痛い。

 

「約束した通りに君らが気兼ね無くマインというかローゼマインに会える場所、今回は其処へ案内をする為に君らに態々休みを合わせて貰った」

 

 トゥーリはその気になればローゼマインと会える立ち位置だが、南の貧民区画に住むギュンターとエーファではそれが難しかった。

 

 一応は兵士として神殿の青色巫女や灰色達への護衛をしたり、染め物職人としてローゼマインに御伺いに出向いたりが出来ない訳では無いけど、それは飽く迄も上級貴族乃至は領主候補生としてのローゼマインが相手となる。

 

 赤の他人な御貴族様として。

 

 気軽に話せない、食事なども作ってやれない、ギューッなど以ての外なのだから。

 

 礼儀作法は習えば何とか成るが、赤の他人という体では如何にも寂しい。

 

「取り敢えず連れて行くのはマインの家族に加えてベンノの家族枠、それからギルベルタ商会でのダプラ予定となっているルッツだな」

 

 外には馬車が停められている。

 

「うわ、御貴族様の馬車にしちゃ小さいと思ったら結構な広さだった?」

 

 ルッツに関しては基本的に前の織地と変わらない扱いを家族から受けており、矢張り旅商人を目指したかったのをユートが確り教えておいた為、『マインが考えた物は俺が作る』と鼻息も荒く息巻いていた。

 

 尚、この時点で既にマインがローゼマインとして生きる事は教えてあるので、普段の生活は兎も角としてギルベルタ商会では礼儀作法を確りした見習いとして働いている。

 

「魔術で車内を拡張しているからな。それに新しい機構も備え付けているから空間拡張は無理だろうが、そういった観点から平民向けの馬車として売りに出せるだろうな」

 

 キュピーンとベンノの目が輝く。

 

 実際にサスペンションを搭載した上で、スプリング入りの椅子を備えた馬車の乗り心地はいつもの馬車に比べれば天国と地獄くらいの差だ。

 

 道がガタガタなのも相俟って、ジルヴェスターも前の織地では可成り文句を言っていたらしい。

 

「まぁ、馬車の知識チートは鉄板だろうからな。それに食事関連も必須事項だろうし」

 

「そうかも知れませんが、わたくし食事関連なら兎も角として馬車は知識が足りませんでした」

 

 それに関してもジルヴェスターは文句を言っていたが、マインの知識は本で読んだ以上のモノが無いのだから仕方が無かった。

 

 全員が揃ったら結構な大人数、ユートとマインに加えてギュンターとエーファとトゥーリというマインの家族枠に、ルッツとベンノとコリンナとオットーとリーゼとリアーネというギルベルタ商会組が加わる。

 

「ウフフ」

 

 そして更にフリーダ。

 

 尚、リアーネはがっしりとルッツの腕を取ってエスコートをさせているのだが、どうやら随分とルッツを気に入っていて姐さん女房になりそう、ユートとの関係を知る前は随分とフリーダを警戒していたらしいとはベンノの談。

 

 来たのはユートの下町拠点、其処にはミルダが常駐していて基本的に針仕事をしている。

 

 トゥーリも仕事は此処でしており、針子が基本の仕事だけどユートに言われて糸で形作る花飾りを作製、完成品はギルベルタ商会に販売を任せる形で利益を獲ていた。

 

 また、どんどん上手くなるトゥーリの花飾りはエルヴィーラやフロレンツィア、更にシャルロッテの髪の毛を見事に飾り立ててヴェローニカを苛立たしくさせているのだとか。

 

 ヴェローニカは領主一族で前アウブ・エーレンフェストの光の女神かも知れないが、然しながら所詮はグレッシェル出身の上級貴族に過ぎない。

 

 一応、母親(ガブリエーレ)は大領地アーレンスバッハの元領主候補生ではあったのだが、領主が決定した時点で同領主候補生は上級貴族に落ちる慣習である為、領主候補生の内に嫁入りをしたのかも知れないのだけれど、彼女が好き勝手をした報いか夫が上級貴族に落ちて領都の一部を削り、グレッシェルというギーベ領として其処へ封じた。

 

 エルヴィーラは兎も角、フロレンツィアは正真正銘のフレーベルタークに於いての領主候補生、だから本来の身分は現アウブ・エーレンフェストの光の女神にして領主候補生だったフロレンツィアの方が上、ヴェローニカは飽く迄も前アウブ・エーレンフェストの光の女神だった上級貴族で、本来ならとっくの疾に引退をして現アウブ・エーレンフェストの光の女神に全てを引き継がねば為らなかったのである。

 

 だからと言って、フロレンツィアの髪の毛を美しく飾る花が自分に献上されないなど、彼女からしたら許せる範囲を越えているのだろう。

 

 伝え聞くに、ヴェローニカは最近だと可成りの苛立ちを隠しもしていないのだと云う。

 

 しかも蜂蜜色の美しいまでの金髪が艶々して、白い肌は瑞々しさを、紅も引かぬ唇はプックリとした弾力を三人もの子を産んでからは失われつつあった()()を取り戻していた。

 

 益々のフロレンツィアの美貌と、弥頓に増している妖艶さに元々から惚れているジルヴェスターだったが、毎日毎日をまるで飢えた獣の如く求めていて下手をすると早々に四人目と成るやも? などと派閥の社交の場で微笑みながら語っていたのだとエルヴィーラが言っていたものである。

 

 勿論、実質的な派閥の長たるエルヴィーラにもフロレンツィアと同じ物を提供していた。

 

 それが余計にヴェローニカを苛立たせる要因と成るが、ジルヴェスターは頑として口を割らない上にならば……と、フロレンツィアへと毒を仕込んだのに歯牙にも掛けない。

 

 よもやフェルディナンドが? とも思ったが、城から出ないフロレンツィアが神殿住まいの彼と接触する機会は無かった。

 

 無論、ユートの仕業。

 

 フロレンツィアやエルヴィーラが夫から贈られた花飾りは、糸の花はトゥーリが造った物だったけど実は解毒の魔法陣が仕込まれている。

 

 仮に槍鍋(ランツェナーヴェ)の魔石化毒を吸っても平気な強力無比の防御用アクセサリーだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 拠点から転移をした場所は美しい景観を持った土地ながら、まるで空の上にでも在るかの如く青い果ての景色に皆が首を傾げている。

 

「黄金郷たるギーベ領エルドラドへようこそ! この土地は様々な事に対応をする為に在る」

 

「ギーベ領? エルドラドなんて聴いた事もありませんけれど、ギーベはいったい何方(どなた)が?」

 

「ギーベ・エルドラドはヘンリックだ」

 

 マインからの質問に答える。

 

「ヘンリック様? 若しやダームエル様の御兄様でいらっしゃるヘンリック・ベルネット様という事ですか? 以前にフリーダと愛娼契約を成されていた方ですよね」

 

 マインの説明的な科白に男性陣がギョッとした顔と成っていた。

 

「けど……ダームエル様が下級貴族だったのですもの、ヘンリック様も矢張り下級貴族の筈なのですよね? それなのにギーベですか?」

 

「彼には上級貴族に成れるだけの魔力を持たせてあるし、先代アウブ・エーレンフェストのアーデルベルト様にちゃんと了解を戴いてもいる」

 

 実際に過去へ遡ったから人工リンカーコアも新しく造る素材も獲れた為、ヘンリックにそれを与える事によって彼は上級文官としての魔力量だ。

 

「ま、フリーダの契約を譲って貰ったのに加えて彼女を実子として、ベルネット家で洗礼式を挙げるのを了承して貰えたからこれは云わば補填みたいなもんだよ」

 

 フリーダは貴族として洗礼式を挙げる事を遂に了承をした為、予め根回しをしておいた先代アウブ・エーレンフェストからの許可と、ヘンリック・ベルネットとユリアーネ夫人から了承を得ての実は養女計画だったが、魔力量がヘンリックと同じく上級という事もあって実子とする事に。

 

 形の上では長女という事に成ったが、問題に成るのはユリアーネ夫人が産んだのは有り得ないという事、ヘンリックが外聞を死なせてでも引き受けてくれたので訊かれた場合はカバーストーリーの披露をする手筈だ。

 

 ユリアーネ夫人がおおらかにも受け容れてくれたので、この度の洗礼式で実子としての立場を与える事が叶った事にした。

 

 勿論だが次期ギーベの位はヘンリックの息子が継ぐ予定だが、問題はこの地がエーレンフェストのギーベ領としていながらユートに紐付いているが故に、例えばユートがダンケルフェルガーへと移領をしたら其処へ動いてしまうという事。

 

 まぁ、このエルドラドは高度一〇〇〇〇mもの上空に存在する上に、透明化に近い偽装を施してあるので移領をしても気付かれない。

 

 しれっとエーレンフェストに在るものとして、その様に振る舞えば誰にも判らないであろう。

 

 尚、ユルゲンシュミットでは或る一定以上の空へ向かう事は出来ない、エルドラドはこのギリギリを攻めた配置と成っている。

 

「畑仕事をしているのは魔術具なのでしょうか、どう視ても人間ではありませんよね? 何と云いますか、GIM? みたいな感じですが」

 

「ジム・ファーマー。【SDガンダム外伝 騎士ガンダム物語】に登場するMS族と呼ばれている存在を基にした魔術具だ。とはいえ、ジム・ファーマー何てのは存在していないけどね」

 

 正確には魔術具では無くて、“魔獣創造(アナイアレイション・メイカー)”と呼ばれる神器の禁手たる“至高と究極の聖魔獣アナイアレイション・メイカー・ハイエンド・シフト”により、ユートが創造をしたMS族という聖魔獣だった。

 

 因みに、ユートの側仕えとして何体か側仕えキュベレイを創造しており、それの色は白と黒と朱の三色のキュベレイを基にしている。

 

 そして以前から存在しているのが主として創ったMS族のガンダム、ラクロアの勇者と呼ばれていた騎士ガンダムを中心にアルガス騎士やダバード騎士やブリティス騎士達が存在していた。

 

 流石にブリティスのキングガンダムⅡ世というのは拙いから、此方は皇騎士ガンダムという形でブリティス騎士団――円卓の騎士達を率いて貰っており、騎士団を率いる存在と彼らを率いる主は別物として扱わせている。

 

 また、騎士ガンダムもバーサル騎士ガンダムとしてパワーアップが可能だ。

 

 それは兎も角、畑以外に田圃が存在しているのをマインが目敏く見付けていた。

 

「ユート兄様! あれは田圃ですよね? 稲が、お米が在るのですか!?」

 

「ユルゲンシュミットには無かった。だから僕のアイテムストレージ内の稲を使って作らせているのがあの田圃だな。序でに云えば大豆も作らせているから醤油や味噌も造っているな」

 

「神に祈りを! ユート兄様に感謝を!」

 

 ブワッと祝福が舞い踊る。

 

「止めんか莫迦者!」

 

「アウチッ!」

 

 グリコポーズなマインのド頭をチョップしてしまうユート。

 

 米も大豆もユルゲンシュミットには存在自体が無かった為、仮にマインが全ての土地を捜したとしても絶対に見付からなかったであろう。

 

 当然ながら米で清酒の類いも造らせているし、売れるかどうかはオトマール商会に持ち込んで調べさせており、商人ギルド長のグスタフにも少し飲ませて利き酒をさせた。

 

 ユートは味こそ判るけど凄まじい毒無効化によって、広義では毒に当たるアルコールによる酔いが回らないから酔えない。

 

 解毒では無く無効化、実はこれが胆と成るであろう作戦も考えていたりする。

 

 グルキュルル~!

 

 ルッツの方から小さな音。

 

「どうした、ルッツ少年?」

 

「あ、いや……腹が減って」

 

「空腹? 確かにもうすぐ昼には成るだろうが、腹が鳴る程の空腹って? 家で食べさせて貰っていないのか?」

 

「両親は普通に飯を出してくれるんだけれどな、ラルフ達に奪われるから余り食えないんだよ」

 

 ルッツには都合、三人の兄が居るのはユートにも判っていた訳だけど、どうやら兄弟仲は険悪では無いものの食べ物を強奪されていたらしい。

 

「端から視たら完全に幼児虐待だな。ルッツ少年の両親はまともに子育てをする気が無いのか?」

 

 ルッツ少年は未だ六歳、ユートやマインと変わらない幼児なのだから本来なら食事をきちんと与えるのが両親の務めであり義務、それを怠るのならば親である資格は無いというのが考え方だ。

 

「う~ん、カルラさん達に虐待の意志は無いと思うんだけど。お兄ちゃん達も虐めようとか考えてる訳じゃないと思うよ」

 

「単にコミュニケーションの一環の心算だろうと幼子から食事を取り上げる、それは成長に必要な栄養を摂らせないという紛う事無き虐待だろう。事実としてルッツ少年は嫌がっているし、何より背丈がギリギリ六歳の最低限でしかないってのがまともに栄養を摂れていない証拠だろうよ」

 

 ルッツもマイン程に極端では無かったけれど、六歳としては正しくギリギリの背丈だった。

 

「少し早いが……まぁ、良いか。取り敢えず続きは昼食を摂ってからにしよう」

 

 そう言ってユートが案内をしたのは店屋みたいな体では無く、移動式食事処とも云うべき屋台が展開をしている場所である。

 

「やぁ、武者拉麺頑駄無」

 

「おやおや、主殿ではありませんか。この昼には我が拉麺を御希望で?」

 

「頼む」

 

 武者拉麺頑駄無、勿論ながらオリジナルである武者型のMS族である為にか、矢っ張りというか騎士型とはまた異なる存在だと云えた。

 

 拉麺なのに武人型で無く日本の武者型なのは、単純に中華料理としての拉麺では無いから。

 

 一応、中華料理を謳っているが日本の拉麺とは日本独自に発展をした日本の料理である。

 

 だからこそ、中華系武人型では無くて日本系の武者型に拉麺屋台をやらせていた。

 

「彼は武者拉麺頑駄無、闘う拉麺屋台のオヤジだと思えば正解だろうね」

 

「ラーメン! 本当に何年振りかしら! ではではえっと……シーフードラーメン? え? 在るのですか!? シーフードが!」

 

「在るよ。アーレンスバッハの海とエルドラドの海を繋げてあるからな」

 

 エルドラドの大地の周辺は雲海では無く普通に海の水が在り、其処にはアーレンスバッハ領の海から移動して既に生態系を作り出している。

 

 故に、アーレンスバッハ産の魚や海老や貝は勿論の事だけど、海藻の類いも産出されて食べる事が出来る様に成っていた。

 

 特に佃煮海苔みたいな御飯のお供なんてのは、マインからしても嬉しい海産物だろう。

 

「豚骨ラーメン、麺増しで」

 

 その後、ルッツはユートと同じ豚骨ラーメンの麺増しを頼んで、他の者は塩ラーメンを頼んでいたが味噌や醤油ラーメンを選ぶ者は居なかった。

 

「ライスと餃子も頼む」

 

「御任せを」

 

 餃子は言わずもがな、ライスはラーメンを食べた後の豚骨汁に浸けてオジヤ風に食べる。

 

 すき焼などの〆にうどんや御飯を容れて出汁毎食べるのと同じ感覚、ルッツも真似をして豚骨出汁飯を食べ久し振りに満腹感を得たらしい。

 

 とても幸せそうであり、マインもニコニコとした表情でルッツを見ている事から、矢張り大切な幼馴染みとして認識をしているのであろう。

 

 まぁ、男女間の彼是(あれこれ)は御互いに無さそうなのが或る意味で残念な思考だけど。

 

 とはいえ、青色のエグモンドと実はどさくさに紛れて確保していたリリーみたいに、貴族家に産まれながら完全に平民レベルでしかない彼女を孕ませた愚図とは違い、マインがルッツの子供を授かる事は決して無いのだから、自己防衛的にルッツを将来の相手として無しにしたのだろう。

 

 いずれにせよ、ルッツがマインの“大切”だという事なのには変わり無い。

 

「美味しかったけど、若しかしてこれもマインのヘンテコ料理みたいなもの?」

 

「だから、ヘンテコじゃないってば! どうしてヘンテコ呼ばわりするの?」

 

 トゥーリからしたら普通の作り方はエーファがやっている料理法、マイン法式の料理はおかしな作り方に見えてしまうのも仕方がない。

 

 マインからしたら、野菜をくたくたに成るまで煮込んでおきながら煮汁を棄てて、新しい水で再びくたくたに成るまで煮込んで、塩で味付けをした不味いスープこそが有り得なかった。

 

 しかも料理上手な筈のフリーダの家の料理人は於ろか、御貴族様の食べる料理を作る料理人までもが同じな料理法だったのには閉口をする。

 

 つまり、ユルゲンシュミット共通の料理法だというのだから。

 

 尚、御菓子といえば砂糖を固めた綺麗なだけの砂糖菓子くらいしか無かった。

 

 最初の一口は未だ良いが、二口目からは口に容れたく無くなるというのが上級貴族で護衛騎士見習いだったレオノーレの談で、マインもあれは余り食べたいとは思えなかったものである。

 

 平坦な甘味にザラザラとした舌触り、見た目だけを取り繕った程度な砂糖の塊でしかない。

 

 それしか無いから食べていただけで、貴族達も美味しいとは思っていなかったからであろうが、ローゼマインが出したカトルカールは大人気商品と成ったのだ。

 

「まっく、寧ろユルゲンシュミットのスープこそ残念スープなんだよ!」

 

 余り大声では言えない事をブツブツと言いながらも、マインはシーフードヌードルに舌鼓を打ちながら空きっ腹を満たしていった。

 

 お茶は普通の麦茶。

 

「ギュンター、エーファ」

 

「はい?」

 

「何でしょうか?」

 

 ユートは取り敢えずメスティオノーラの書から獲た知識から、必要だと思った事を一応でも伝えておく心算でエルドラドへと招いた。

 

「マインの弟妹についてだ」

 

「「は?」」

 

 行き成り何を言うのかとばかりにギュンターは呆気に取られ、エーファは少し頬を染めてしまったけど未だ若いという事だろう。

 

「未だ二人は若いんだ。いつかは仕込む……というか既に仕込み済み?」

 

「仕込んでない!」

 

「仕込まれていません!」

 

 叫ぶ二人、そして若いベンノとリーゼは互いを見合って赤くなり、リナアーネはルッツを見ながら頬を朱に染めてしまう。

 

 トゥーリとフリーダは矢張りというべきか? ユートを見て赤くなった。

 

「兎に角だ、いずれは……とか思っているんなら是非とも聴いて欲しいし、仮に作らないにしてもこの知識は無駄には成らないだろうからね」

 

「はぁ?」

 

 気の無い返事のギュンター。

 

「情報は力、未知は敵ってユート様が言っている事ですよね?」

 

 トゥーリはよくユートが口にする科白を簡潔に言って来る。

 

「まぁね。子供を産む時に下町でやっている事を調べてみて驚いたよ、全く以て衛生面に考慮をしていなかった事に。これでは流れる事も多いのは不潔な事も考えられるんじゃないかな?」

 

「「っ!?」」

 

 ギュンターとエーファが驚くのは、実際に二人の子供は本来なら五人から居たからだ。

 

 だけど二人は流れ、もう一人は産まれて間も無く死んでしまった。

 

 無事に産まれて育ったのはトゥーリとマインの二人だけ、しかもマインは虚弱体質でいつも熱を出しては寝込んでしまい気が気で無い。

 

 最近になってユートからマインが平民の魔力持ちたる身食いだと聴き、更に熱は魔力が膨れ上がったから出していた魔力の熱その物であり、魔力を抜けば熱も下がるのだと魔術具を与えられた。

 

 とはいえ、普通の魔術具では間違いなく前回の織地での金粉王子(笑)の許可証(笑)の如く金粉化は待ったなし、だからユートが特製の魔術具を造ってマインへと与えたのである。

 

 トゥーリを愛娼とする対価みたいなものというよりは、魔術具を与えるのが治療の一環だったからこそトゥーリを貰って対価とした。

 

 トゥーリは凄いのですよ……とはマインがよく口にするが、ユートとしてもそれは肯定をするだけの根拠がちゃんと有る。

 

 顔立ちはマインの姉でエーファの娘である事から美幼女であり、一〇年もして成人式を挙げた頃にはその気になって磨けば御貴族様も斯くやという美女にだって成れる器だ。

 

 御針子として働くべく練習もしていたみたいであるし、編み物だって練習をさせれば初めは拙い技術力も次第に良く成ってきた。

 

 なので、閉架図書内に有ったマインというか、ローゼマインの前の織地の記録から知った糸で編む花、これをやらせてみればみるみる上達をしていって今や上級貴族や領主一族の髪の毛を飾る。

 

 実は既にマントもアーデルベルトに会った際、貰ってきているからトゥーリに頼んで飾り刺繍はして貰っており、魔法陣に関しては既に母親であるローゼマリーが高みだからどうするか検討中。

 

 案の一つに婚約者となる予定のシャルロッテが洗礼式を挙げたら頼む、若しくは領主候補生に成ったらフロレンツィアに頼んでみる。

 

 養子契約自体はジルヴェスターとするのみで、彼の子供は義兄妹という事に成るのだけど彼女とは何処まで関係するか未知数ながら、シャルロッテと婚約するならばフロレンツィアが義母なのは間違いない、養母では無いけど義母であるならばマントの刺繍を頼んでも良かろう。

 

 或いはフロレンツィアもユートに興味を持っていたから、ジルヴェスターと共に養母として立つ可能性も捨て切れない。

 

「まさか、子供達が流れたのは不潔? であるという環境からなのですか?」

 

「不潔にしていると、雑菌と呼ばれる数多の菌が彼方此方に繁殖をしてしまう。目には見えないから判らないだろうが、ギュンターは兵士だから見たり聴いたりしていないか? 丈夫な兵士な筈が僅かな傷を負っただけで病気に成って高みに上がった……つまり死んだという例を」

 

「はっ! 確かに……」

 

 ギュンター達、兵士は危険と隣り合わせとなっている職業であるが故に、怪我をするくらいであればそれこそ、経理が主なオットーですら割かし有る事だったからこそ稀に、怪我をした者が死亡をする病に成る事はあった。

 

 そうやって死亡して家族が不幸に成る事も稀にではあれども……で、神殿に送られて二度と会う事も無くなるのは事実として有り得る。

 

 だからこそ、ギュンターとしてはユートの言う事を戯れ言として捨て置くなど出来はしない。

 

 況してや話の支点と成っているのはギュンターの愛妻エーファと、今は見ない未来の子供の事なだけにいい加減な態度では居られなかった。

 

「同じ事だ。寧ろ赤ん坊は大人よりも余程抵抗力が低いのだから、下手に雑菌に感染でもしたならあっという間に高みだ。流れるのは然もありなんと思った方が良いね。丈夫なトゥーリは兎も角として、マインは虚弱体質だから運が良かったと考えるべきだろうな」

 

 青褪めるギュンターとエーファ。

 

「衛生面に気を付けていれば死亡率も下がるし、若しもギュンターが子供云々に関係無く冬を呼びたい……じゃ判らんか。エーファを抱きたいなら避妊具を用意するから先ずは次の子供の為にも、衛生面の向上から始めるのが良いだろうね」

 

「ひにんぐ?」

 

「妊娠しない様にする道具。こんな具合の道具をギュンターの剣に装着する」

 

 それはピンク色のゴム道具、“近藤さん”とか揶揄をされる避妊具であったという。

 

「ちょっ、ユート兄様!?」

 

 マインに対して使った相手など特に居なかったのだけれど、“近藤さん”の形くらいは識っているから真っ赤になって叫んだ。

 

「つまり、あれにこうして……それによって彼処へああなって」

 

 使い方を聴くギュンター、エーファも聴かされて流石に頬を赤らめてしまうのは仕方がない。

 

 勿論、幼いながらも耳年増なルッツやマインやフリーダやリアーネも真っ赤だし、リーゼなんかは興味津々といった感じで聴いている。

 

 この世界には避妊具なんて流通していないし、避妊薬すら構築されていないからヤれば妊娠する可能性が少なからず有り、妊娠を気にせずヤりたいならそれこそ貴族の場合は自分の魔力感知外な相手とヤるしか無いであろう。

 

 ユルゲンシュミットに於ける魔力感知というのは第二次性潮むたいなもので、子作りが可能と成った証しと同じだから女性に限らず吹聴をする様な事では無い。

 

 そして魔力感知外はどちらかが魔力を感知しない程度に高い訳で、基本的には領主候補生であるなら中級貴族や下級貴族は魔力感知外である為、愛妾に近い第三夫人にでも娶れば妊娠の可能性も無いS⚪Xが出来る筈だ。

 

 魔力感知外で妊娠をした場合、それは不義密通が確実に疑われるのだから世知辛い。

 

 然しながらユートは肉体自体はユルゲンシュミット製だけど、魂がローゼマインの本栖麗乃とは違って強固な――魂だけで生命足り得るレベルの超越した存在、肉体が魂に引かれて世界の理から外れてしまうから平民で魔力など殆んど持たないトゥーリですら、ユートの子を孕む可能性が充分に過ぎるくらい有った。

 

 因みに、魔力感知に関してとユートは感知外でも子作りが出来るとトゥーリには話しているが、その際には頬を赤らめながら嬉しそうに涙を流していた辺り、愛妾に過ぎないとしても子供を出来るなら望んでいたのかも知れない。

 

 ユートの財力なら、元灰色巫女から何まで全てを孕ませて尚も破産しないから問題も無かった。

 

 一頻り話をしてY談に近いからユートを除いて全員が微妙な面持ちで黙りこくってしまったが、そんな空気を一新したいからかマインが意を決してユートへと話し掛ける。

 

「ユート兄様、アーレンスバッハと海が通じていてお魚が来ているならレーギッシュも?」

 

「ああ、あれもちゃんと捌いてやれば美味いんだけど平民では捌けないからな。実は数こそ少ないけどアーレンスバッハから輸入もしているんだ。あれに魔力を僕が叩き込めば鱗が虹色魔石に変わるからね」

 

「あ、()()()()()欲しいです」

 

「“が”では無く“も”?」

 

 ()()()()()欲しいのでは無くて、()()()()()欲しいと言う辺り目的はレーギッシュの身であって、魔石に関しては序ででしかないのだろう。

 

「まぁ、構うまい」

 

 ユートはアイテムストレージから虹色魔石を取り出すと、無地の白いハンカチの上に置いて包んでからマインへと手渡す。

 

「これ、虹色魔石って一個でも大金貨が一枚はしませんか?」

 

 ギョッとなるのは商人であるベンノやリーゼ、大金貨が一枚は一千万リオンという大金だ。

 

「全属性の魔石だからな。可愛い義妹に義兄からのプレゼントだよ」

 

「っ! ユート兄様、大好きです!」

 

 ぶわっと溢れる祝福。

 

 最近はそれなりに丈夫とはいえ、未だに体内にはエーヴェリーベの印が在るのだから祝福をバラ撒くのは止めて欲しい。

 

 専用魔術具とて万能では無いのだから、万が一にもあれが金粉化したら目も当てられない事態だと云えるが、流石にユートの魔力量からしたならそれは無いだろうと考えている。

 

 とはいえ、素材の限界を遥かに越えたら流石に金粉化してもおかしくは無いのだろうが……

 

 更に話し合う心算だけど、流石にラーメン屋で話すのはアレだったから移動をする事に。

 

 別に武者拉麺頑駄無も暇なので迷惑をしている訳じゃ無いが、だからといってラーメン屋で話し合いも無かろうとエルドラドの景観が良い別荘に向かおうという話になった。

 

 

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