尚、これは本来の噺の後半を削って、取って付けた結末を付け足したバージョンです。
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A.G.108。
オーヴァン・コロニー。
炎に包まれた街、あちこちに徘徊する機械人形とも云うべき巨人共、碧銀の髪の毛の少年が家屋の残骸に挟まれた女性に縋っている。
「
然し女性は少年を突き飛ばした。
「お母さん!」
「フリット……貴方の運命を……ガンダムに……」
そして女性は落ちてきた破片や火に巻かれてしまい、それを視た『フリット』と呼ばれた少年は尻餅を突いた状態で目を見開く。
「お母さん、お母さん……」
涙を流す彼の手には母親から託された何らかのデバイスが握られ、偶々近くを徘徊していたのであろう機械人形を睨み付けた。
「お母さぁぁぁぁぁぁんっ!」
そして有らん限りの声で吼える。
これはこの世界――【機動戦士ガンダムAGE】の主人公フリット・アスノの決意の落日だった。
この時、フリット少年は七歳に過ぎないとか。
それはそれとして先程、火に巻かれて死亡したかと思われる意識を喪った女性を、横抱きにして抱えているユートがフリット少年の吼える明後日の方向に立ち、そして機械人形の破壊をしながらその場から悠然と翔び去って行ったのだと云う。
翔び去ったユートは自身の艦船によって
太陽系で一番の巨星である木星、その周囲を巡る数々の衛星、この衛星の中でも明らかに異質なモノが存在していたが誰も知るまい。
何故なら地球圏の人間は火星にすら行き着かずにおり、更に遥かな彼方に在る筈の木星になんて目を向けている余裕など無かったから。
その理由とは地球人類を数年前に襲った悪夢、『天使の落日』と呼ばれるUE――アンノウン・エネミーの襲撃、現在の地球圏はUEとの闘いに明け暮れる事も赦されぬ程の劣勢に立たされていた。
まぁ、現状でユートにはどうでも良い話だが。
人工衛星セイバートロン、地表に住まうのでは無くて内部へと生活空間を作る機械の星であり、その中の医療施設に女性を連れて戻る。
「悪いね」
ビリィッ! 既にボロボロな服を破って捨ててしまい、更にはブラジャーやショーツも脱がせると女性を真っ裸にしてしまった。
三十代と思われる美女、然しながらそれは別に性のイタズラな目的でやった訳では決して無い。
「ポッド展開」
医療ポッド、怪我や病気を治す機能を備え付けた多目的ポッドであり、必要に応じてハイバネーションすらも可能とした万能性を持つ。
服を着ていても何とか成るけど、素っ裸になっていた方が遣り易いのも確かだから脱がせた。
ポッドに容れると蓋を閉めて傷の治療を開始、完全に傷や火傷が癒えたなら彼女も目を覚ます。
「然し参ったな。【機動戦士ガンダムAGE】だってのは判ったけど、僕はこの世界には詳しい訳じゃないんだよな。死んだのは二〇一四年だけど、この作品が放映されていた頃から、余りアニメとか観ている余裕が精神的に無かったからな~」
ユートの事故死、その三年くらい前から精神的な余裕が余り無くて、好きなアニメやラノベに関してもちょっと観るくらいだった。
ガンダムも【機動戦士ガンダムSEED】や【機動戦士ガンダム00】は観ていたが、【機動戦士ガンダムAGE】は精神的に観れない状態。
全く識らない訳では無い。
主人公が三世代に跨いでガンダムの乗り手と成る事と、何だかヒロインっぽい娘が死んでしまったらしい事くらいは識っている。
主人公の名前がフリット・アスノ、アセム・アスノ、キノ・アスノだという事も既知だった。
だから置いてきた子供がフリット・アスノであったのも、女性が彼を『フリット』と呼んでいた時点で判っていたし、ユートが下手に介入をしなくてもこれが既定路線である事も理解している。
そして、助けた女性がマリナ・アスノなのも。
拙い知識では、マリナ・アスノは物語の始めには死亡しているから、助けても特に影響は無い。
勿論、堂々とフリット・アスノの前に出られたら大問題ではある。
「取り敢えず、子持ちの母とは思えないくらいの美女だからな。交渉次第だが手に入れたいかね」
女としても科学者としても。
彼女が“DODS”システムの開発者なのだから。
マリナ・アスノが外宇宙を往く艦船用に研究をしていた物で、メガ粒子を螺旋状に回転をさせる事により共振粒子現象を引き起こし、原子崩壊を起こすという特異な原理となっているのだとか。
現在、ユーキがアスノ家に伝わっているというMS“ガンダム”を再現するべく開発しているけど、それの武装にドッズライフルを使いたい。
その為にも、マリナ・アスノは必要な人間だ。
A.G.109。
オーヴァン・コロニー襲撃事件から約一年後、眠り続けていたマリナ・アスノが目を覚ました。
原典の開始には未だ六年くらいの猶予が有る、彼女には是非ともじっくりと研究開発に勤しんで欲しい。
「初めまして、僕は木星に居を構える連合議会の長を務めるユート・オガタ・スプリングフィールドという。君は名前を言えるかな?」
「……マリ……ナ・ア……スノ……で……す」
未だきちんと喋れないらしいが、一年間を眠り続けたので会話が遣り難いという事なのだろう。
自身が裸なのも理解はしていないと思われる。
「マリナ・アスノね。君は本当なら死亡していたのは覚えている?」
「……し……ぼう……」
虚ろな瞳が見開かれる。
「っ! フリット! わ、私は……どうして?」
「落ち着け。フリット・アスノは無事に保護をされているから」
「ほ、本当に?」
「嘘は吐かん。君は本来なら死んでいたんだが、見た目も能力的にも死なせるには勿体無くてね。その人材を喪失させるより、生かした方が良いだろうと思ったんだ。勿論、無理な強制などはしない心算だけどな」
マリナ・アスノは困った表情になりながらも、ふと肌寒さを感じて自身の体を見下ろしてみた。
「え、裸!?」
今まで頭が働かなかったから気付きもしなかったけれど、よくよく視てみれば自分は服は於ろか下着の一枚すらも身に着けていない。
思わず、胸や大事な部位やらを腕と手で隠す。
頬は朱に染まり、ジッと裸な自分を視ていた事を責めるみたいに彼女はユートの方を睨んだ。
一児の母とはいえ、未だ三十代前半の女盛りな若い年齢のマリナ・アスノ、夫をUEの襲撃にて亡くしているだけで女を捨ててはいない。
故に、若い……とはいえ視るからに一〇歳も違わない様にも思えたけど、そんな青年に真っ裸な姿を凝視をされては恥ずかしくもなる。
「ちょっと待ってな」
そう言うとユートはマリナ・アスノの両肩を掴んでやり、ビクリと肩を震わせる彼女を無視して瞑目してフワッとした風をおこすと……
「……え?」
先程までは真っ裸だった筈のに、いつの間にか白衣を着ていた。
流石に下着は身に着けていない、だけどインナーも含めて白衣を身に纏っているので問題無い。
「さて、君には選択肢を与える」
「選択肢?」
「君は本来ならば死んでいたんだ。故に君の生命は僕のモノ、だけどそれが気に入らないならその命を返して貰う事になるけどな」
「死ね……と? 取り敢えず、貴方に救われた命なので恩は返したいと思います。だけど……」
「女としては……と?」
「うっ!」
ユートの目が自分を女として視ているというのは気付いており、亡くしたとはいえ夫を愛していたから流石にちょっとアレだった。
「すぐにどうこうとは考えてない、今は研究者としてDODSシステムを構築して貰いたいんだよ」
「は、はぁ……」
確かにそれならと考える。
マリナ・アスノは木星圏連合議会の研究所へと就職、先ずはDODSシステムを構築する為の研究をする為の研究者という立場に成った。
ドッズライフルを造っていく中、外宇宙艦船を建造する許可も獲る。
「初めまして、ボクの名前はユーキ・ジョゼット・オガタ。兄貴であるユートの義妹に当たる」
「貴方が所長さん?」
「そうだよ」
ユーキが最初に連れて行ったのは研究所の中枢となる場所、それは格納庫で其処には白を基調とした一機のMSが静かに佇んでいた。
「嘘……これ、ガンダム?」
「正解。名前は特に無いから、取り敢えずだけどザ・ガンダムと呼んでる。だけど現在はUEの装甲を斬り裂けるエクスカリバーのみ、だからコイツの武装を増やす為に、マリナ職員にはドッズライフルの開発を……って思っているんだよね」
「ガンダム……」
マリナ・アスノにとって、正確にはアスノ家にとって“ガンダム”とは特別なMSだからであろう、彼女はザ・ガンダムを見詰めてしまう。
(この機体、白夜姉から獲た情報なんだけどね。ソシャゲの“Gジェネレーションエターナル”に出てきたらしい機体、だからガワだけなら間違いなくザ・ガンダムなんだよな。一応だけど、この世界のガンダムAGEに併せた技術で造ったけどさ)
とはいえ装甲はガンダニュウム合金だったり、心臓部はプラズマジェネレーター、それに装甲が装甲なだけにビームも可成り強化される。
尤も今はエクスカリバーという実体剣のみで、ビーム兵器は装備してないから意味が無かった。
だからこそ、ドッズライフルや他にビームサーベルの類いも装備させていく予定に成っている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「Gフライヤーシステムですか?」
「そうだよ、兄貴がザ・ガンダムに空を舞い宇宙を駆ける為と、武装をマウントする為にってね」
「成程、それがGフライヤーシステムですか」
ユーキはユートが引いて、ユーキが必要な部分を手直しした設計図をマリナ・アスノに見せた。
「それと、Gフライヤーシステムの飛翔ユニットはオートとパイロットの両方で動かす事になる。故に地球圏に行くのは兄貴だけじゃない」
「っ! 地球圏へ!?」
驚くマリナ・アスノ。
「まぁ、真っ当にやるとボクが行くんだけどね。それにマリナ職員が地球に行ったとしてフリット・アスノに自身の事は話せないぞ」
「うっ、そんな……」
地球圏には息子のフリット・アスノが居る為、名乗り出るのがNGでも一目成りとも見たい。
「何ならマリナ職員に代わって上げても良いよ」
「え?」
木星圏から地球圏では片道で数年は掛かる為、仮に宇宙船を手に入れてフリット・アスノに会いに行きたくても、食糧や水が足りないだろうから途中で飢えるか渇くかで死ぬ。
それは無駄死にでしかない。
それ以前に宇宙船を手に入れるのも不可能で、ユーキの言葉は嬉しいけどその対価が怖かった。
「代わりにどうしろと?」
「別に難しい事は言わないさ。母親として息子の成長した姿を見るのか、妻として今は亡き夫に操を立てるのか? 君が選ぶと良いさ」
「あ、貴女は義兄と呼びながら女性として彼を視ているのでしょう? それなのに、他の女が彼に近付くのを良しとするのですか!?」
「兄貴に女を沢山侍らす様に言ったのはボクさ、もう君が来て眠っていた時間を含めれば二年だ。そろそろ兄貴の事も理解しただろう?」
「それは……」
“天使の落日”から約八年、夫が逝ってから即ち八年が過ぎたという事、禊の時間には充分だろう事は確かなのかも知れないけれど。
「別にさ、前の男を忘れてしまえとは言わない。その上で新しい男に甘えても良いんじゃない?」
甘い毒の如く科白がマリナ・アスノの脳を侵食していく。
A.G.110と成った今、マリナ・アスノが公的に死んでから二年という年月が経過をした事になる。
「か、考えさせて」
Gフライヤーの格納庫からザ・ガンダムの置かれてる格納庫へ、あの機体はアスノ家に絵のみにて伝わるガンダムを元にデザインされたとか聴いているが、確かに彼女もあの絵を立体に起こしたらこうなると思える姿形をしていると思えた。
昇降ワイヤーでコックピットに近付いてみると開いており、其処ではユートが内部にて何らかの作業をしているらしいのが窺える。
「ユートさん」
「マリナか、どうした?」
「いえ、その……」
先程の遣り取りを思い出して頬を赤らめた。
狭いコックピット、ザ・ガンダムのこの中へはマリナ・アスノも入った事が無かった、その為にちょっとだけ心情的に興奮をしている。
ユートがしていたのはOSとコックピット内の調整、しかもそのコックピットはマリナ・アスノがよく知らない物だったから驚く。
「このコックピットは?」
「全天周囲モニターにリニアシートってやつだ、割かし便利だからこのシステムを採用している」
「全天周囲モニター」
Zガンダムに使われてから以降、恐らく全てのMSのコックピットに採用されているシステム。
この世界では未知のシステムであったと云う。
「こんなシステムが……」
驚きを露わとするマリナ・アスノだったけど、身体をユートへと委ねるのに心地好さを感じた。
シートに座るユートの膝に座るマリナ・アスノにとって、ユートの体温が至極身近で感じ取れていたし、息遣いも耳許で感じられている。
先の話の事も有って何だか意識をしてしまう。
夫を亡くして約一〇年、強制的に男を思い出させる強烈な臭い、ゴクリと固唾を呑んでしまう。
意識をしたら頬を赤らめるマリナ・アスノは、お尻に硬いモノが当たっているのに気付いた。
随分と久し振りに感じる男々らしい感覚には、思わず御股がじんわりと湿ってしまっている。
「そうだな、シミュレータを起動してみようか」
「シミュレータ?」
「量産型は兎も角、一点モノなMSにはそれぞれにシミュレータを積んでいてね。ザ・ガンダムにも当然の如く積んでいるから起動をする」
そう言ってユートはシミュレータを起動した。
周辺モニターが点いてまるで宇宙に居るみたいな感覚に陥る、ユートが操縦棹を握ってスロットルを踏み込むと強い振動が起きる。
「ぐっ!」
パイロットでは無いマリナ・アスノは衝撃を受けて呻く。
宇宙の彼方から飛来をしてくるのはMSであり、然し彼女はそのMSを全く見た事も無かった。
ザ・ガンダムの手にはエクスカリバーのみだ。
エアリーズ小隊やトーラス小隊、詰まりはMSの軍勢は【新機動戦記ガンダムW】のモノである。
勿論だがマリナ・アスノは知らない事だけど。
「さて、征くぞ!」
ザ・ガンダムが両手に持ったエクスカリバーを揮うと、足の速い近場まで来ていたエアリーズの首を刎ね飛ばし、動きを停めたその瞬間に胸部のコックピットを剣で貫いて破砕をしてやった。
エアリーズもトーラスも遠くからなら銃撃を、近くに寄れば剣檄によって攻撃をしてきている。
それらの攻撃の全てを紙一重で躱す技量には、マリナ・アスノも科学者としての目線で驚いた。
高性能なガンダムだからというのは勿論だが、パイロットの腕前が良くなければこんな躱し方は出来ないし、これがシミュレーションであるとは云えども大胆不敵、電光石火の機動なのだから、正しくガンダムの性能へと頼り切ってはいない。
「次はビルゴか!」
出てくるMSは完全なランダム、今回はコイツらだったに過ぎないので他の作品からも出てくる。
マリナ・アスノは我知らず、その細い肢体をユートへ委ねてしまう。
木星圏連合議会の本拠地たるセイバートロン星には、単なる住む場所のみならず娯楽施設なども多々存在する楽園にも等しい人工衛星だ。
数ヶ月という月日をマリナ・アスノはユートと過ごし、何なら逢瀬を繰り返して仲を少しずつだが距離を詰めて往くのであったと云う。
「ユートさん……」
「ザ・ガンダムのGフライヤーシステムの乗り手に成りたい?」
「はい。貴方にこの身を捧げますから、せめて私がフリットを想う事だけは赦して貰いたいのよ」
「構わんよ」
「……え? 良いの?」
「ああ、自分の子供を大切にしたいってのは当たり前な事だからな」
「あ、有り難う」
マリナ・アスノはユートの胸元に飛び込んで、我が子を大切にしたい想いを慮ってくれた事に感謝した。
目を覚ましてから約二年が経過、マリナ・アスノはユートにその全てを捧げる覚悟を決めたのである。
ホテルに二人で宿泊、真っ白なシーツの布団が敷かれたベッドの上には、シャワーを浴びてバスタオルを肢体に巻いたマリナ・アスノが。
「ユート……さん」
三十路も過ぎたけど、女としては今こそが盛りの刻であり、性欲だって未だに喪ってはいなかったマリナ・アスノは最初は軽めに唇を奪われて、次に来るのがディープに成るのは解っていたので口を半開きにしてユートの唇を迎え容れた。
化粧はナチュラルメイクすらしていないけど、今のマリナは高級品質な化粧品を使っているかの如く肌は健康的に白く、唇も赤みが差してプックリとした柔らかさを保水力も含め保持しており、元から美女と呼べる容姿をしてはいたけど今なら其処らの男がガン見する程に美しくて、女性としての肌の触り心地も最高位のモノと成っている。
クチュリと水音を響かせながらも再び重ねられた唇と同時に、マリナの口内へ舌を容れてやると彼女の温かくも柔らかい舌へ絡ませた。
何秒、何十秒とディープキスへと興じながら、ものの序でにとばかりに胸や何やら愛撫をする。
これが何の気持ちも無い相手からならば肢体の反応は兎も角、気分的には嫌悪感を懐いていたのかも知れないのだが、今はユートを受け容れたから触られるのも嫌では無くて、寧ろもっと触っていて欲しい程だ。
こうして二人は結ばれた。
その後、ユートは刻の神カイロスから簒奪した権能でマリナ・アスノを若返らせて一六歳にし、その若い肢体を二度目の初めての証を貫いたのと同時に、至極存分に愉しませて貰う事になる。
例の事件が起きる前、フリット・アスノが学校に入学する一年前の事になるが、ユートとマリナ・アスノが予め入学をしておく。
飽く迄も他人として、学校での先輩としてに過ぎないが、フリット・アスノと仲良くしており、彼を気にするエミリー・アモンドをモヤッとさせてしまうは、ある意味で仕方が無いのであろう。
そして歴史通りにUE――ヴェイガンの襲撃が起きる。
ガンダムAGEー1とザ・ガンダムが共闘をして、遥かな一〇〇年に亘る戦争が始まるのであった。
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どうでも良いけどユリンも助かりますが、数年くらいは目覚めません。